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資金繰り更新 2026.10.30

資金繰り改善の方法12選|すぐ効く手と時間がかかる手を、効く額で比べる

ハカセ
結論

資金繰りの改善は、入金を早める・在庫と支払いを整える・固定費と税金の払い方・借入の組み方の4方向で考えます。12の方法を効く額と効くまでの時間で比べ、月商1,000万円の会社の試算と90日の進め方を示します。

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フファクタリング図鑑編集部(執筆)・公開 2026.10.17

資金繰り改善の方法12選|すぐ効く手と時間がかかる手を、効く額で比べる

この記事は、いますぐ足りないわけではないものの、毎月の資金繰りに余裕がなく、何から手をつければよいか知りたい経営者・個人事業主に向けて書いています。資金繰りを良くする方法を12に分け、どれだけ効くか、いつ効くかを1つの計算例で比べます。

この記事を7枚で

1 / 7
資金繰り改善の4つの方向入金を早める在庫・支払いを整える固定費・税を見直す借入を組み直す効く額と早さで順番を決める

この記事の流れ

資金繰り改善は4つの方向

この記事で何がわかるの?

資金繰りを良くする12の方法を、入金・在庫と支払い・固定費と税金・借入の4つに分け、効く額と効くまでの早さで比べます。

Q1本業でお金が増える?いいえ→固定費Q2返済を引いても増える?いいえ→返済期間Q3売上増で足りない?はい→入金・在庫Q4月の途中だけ足りない?はい→支払日

POINT 1

まず悪い理由を見分ける

まず何を見分ければいいの?

本業で増えるお金、元金の返済額、月の途中の最低残高の3つを出し、4つの問いをたどります。本業でお金が減る会社は、入金を早めても足りません。

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月商1,000万円の会社(計算例)1回だけ戻る940万円毎月残る(1年分)420万円時期がずれるだけ180万円

POINT 2

何が、何回変わるか

全部やると、どれくらい変わる?

月商1,000万円の会社の試算では、1回だけ戻るお金が940万円、毎月残るお金が1年で420万円でした。税金の払い方の見直しは、時期がずれるだけです。

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入金を早めて戻るお金(1回)回収条件300着手金180遅れの回収120請求を締め日に100単位:万円

POINT 3

入金を早める4つの方法

入金を早めるには何がある?

請求を締め日に出す、回収条件の見直し、着手金、遅れている売掛金の回収です。いちばん大きいのは回収条件の見直しの300万円で、相手の同意が要ります。

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源泉所得税(毎月15万円・10人未満)1月2月3月4月5月6月7月10日に90万円後で払うお金。取り分けておく

POINT 4

税金の払い方も見直す

税金で工夫できることはある?

給与を払う人が10人未満なら、源泉所得税を半年分まとめて納められます。中間申告の仮決算と合わせ、計算例では90万円+90万円が後ろにずれました。

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借入3,000万円の元金の返済 残り5年 月50万円 10年 月25万円 1年で300万円が手元に残る 利息は約152万円→約302万円(年2%)

POINT 5

返済期間を組み直す

返済を軽くするとどうなるの?

残り5年で月50万円の元金の返済を10年にすると、月25万円が残ります。その代わり、年2%で計算すると利息は約150万円増えます。

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1週目表と4つの問い2週目自社だけでできる手1か月目在庫・固定費・資産2か月目相手と相談する手3か月目税・返済・融資の枠

POINT 6

最初の90日の進め方

最初の90日は何をすればいい?

自社だけでできる方法から始め、相手との相談、税理士や金融機関と組む方法を並行して進めます。毎月残る方法を必ず組み合わせます。

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01

結論:資金繰りの改善は「効く額」と「効くまでの早さ」で順番を決める

社長

資金繰りを良くしたいけど、何から始めればいいの?

入金・在庫と支払い・固定費と税金・借入の4つの方向で考え、効く額と効くまでの時間で順番を決めます。方法によって、1回だけ戻るのか毎月残るのかが違う点も大事です。

ハカセ

資金繰りを改善する方法は、大きく4つの方向に分かれます。入金を早める、在庫と支払いを整える、固定費と税金の払い方を見直す、借入の組み方を変える、の4つです。

どれから手をつけるかは、効く額と、効くまでの時間で決めます。費用がかからず、相手の同意も要らない方法から始め、相手との相談や金融機関との話し合いが要る方法を並行して進めます。

もう1つ大事なのは、方法によって「何が、何回」変わるかが違うことです。入金を早める方法の多くは、手元のお金が1回だけ増えます。固定費や返済額の見直しは、毎月お金が残ります。税金の払い方の見直しは、払う時期が後ろにずれるだけです。

月商1,000万円の会社で12の方法を試算すると、1回だけ戻るお金が合計940万円、毎月残るお金が月35万円(1年で420万円)になりました。この会社の本業の利益は月50万円なので、1回だけ戻るお金は約19か月分の利益にあたります。

なお、今月や来月の支払いにすでに足りない場合は、この記事の方法では間に合わないことがあります。その場合は資金繰りが苦しいときの対処の順番を先に読んでください。

この記事で扱うことは次のとおりです。

資金繰りの改善は「何が、いつ、何回」変わるかで分ける
940万円1回だけ戻るお金入金を早める・在庫を絞るなど7つの方法。例の会社の月の利益の約19か月分
月35万円毎月残るお金固定費の見直しと返済期間の組み直し。1年で420万円
180万円払う時期がずれるだけのお金税金の払い方の見直し。後で払うので、使わずに取り分けておく
02

どこから手をつけるか:資金繰りが悪い理由を4つの問いで見分ける

社長

うちの資金繰りが悪い理由って、どう見分けるの?

本業で毎月増えるお金、元金の返済額、月の途中のいちばん少ない残高を出し、問いを上から順にたどります。本業でお金が減っている会社は、入金を早めても減るのが少し先に延びるだけです。

ハカセ

資金繰りの改善で最初にやることは、方法を選ぶことではなく、お金が足りなくなる理由を見分けることです。理由が違えば、効く方法も違います。

たとえば、本業そのものでお金が減っている会社が入金を早めても、減るのが少し先に延びるだけです。逆に、本業は黒字で売上も伸びている会社なら、入金を早めるだけで足りることがあります。

見る数字は3つだけ

見分けるのに使う数字は、次の3つです。決算書と通帳、借入の返済予定表があれば出せます。

  1. 本業で毎月増えるお金:本業の利益(営業利益)に減価償却費を足したもの。減価償却費は費用ですが、お金は出ていかないので足し戻します。
  2. 借入の元金の返済額:返済予定表の元金の欄の合計。元金の返済は費用にならないので、利益からは見えません。
  3. 月の途中のいちばん少ない残高:月末ではなく、給料日や大きな支払いの日の残高です。

1と2を比べると、返済が本業の稼ぎに収まっているかがわかります。3は、月末の残高だけを見ていると気づけない不足を見つけるためのものです。利益とお金がずれる仕組みそのものは、資金繰りとはの記事で原因ごとに説明しています。

4つの問いでたどる

3つの数字が出たら、次の問いを上から順にたどります。当てはまったところが、最初に手をつける方法です。

資金繰り改善をどこから始めるか
  1. 借入の返済の前で、本業のお金は毎月増えているか?はい → Q2へいいえ → 固定費と値決め(方法8)が先。入金を早めても毎月減る
  2. 元金の返済を引いても、1年でお金が増えるか?はい → Q3へいいえ → 返済期間の組み直し(方法11)を金融機関に相談
  3. 売上が増えると、お金が足りなくなるか?はい → 入金を早める・在庫を絞る(方法1〜5)いいえ → Q4へ
  4. 月末は足りるのに、月の途中で足りなくなるか?はい → 支払日をそろえる(方法6・7・10)いいえ → 平時の備え(方法12)と固定費(方法8)

Q1で「いいえ」になる会社は、どの方法で入金を早めても毎月お金が減り続けます。固定費の見直しと、値上げや採算の悪い仕事の見直しが先です。Q2で「いいえ」の会社は、利益は出ていても返済の速さが稼ぐ速さを上回っています。

Q3の「売上が増えると足りなくなる」は、売掛金と在庫に立て替えているお金が多い状態です。その額の出し方は運転資金の計算方法の記事にあります。

03

資金繰り改善の方法12選の一覧:効く額・早さ・費用・相手の同意

社長

12の方法って、どこが違うの?

何が変わるか、効くまでの時間、費用、相手の同意が要るかで並べました。いちばん大事なのは「何が変わるか」です。1回だけ戻るお金では毎月の不足は埋まらないので、毎月残る方法を必ず組み合わせます。

ハカセ

12の方法を、何が変わるか、効くまでの時間、費用、相手の同意が要るかで並べると次のようになります。上から順に、入金・在庫と支払い・固定費と税金・借入の4つの方向です。

方法 何が変わるか 効くまで 費用 相手の同意
1 請求書を締め日に出す 1回だけ戻る 翌月 なし 要らない
2 回収条件を見直す 1回だけ戻る 2〜3か月 値引きを求められることがある 要る
3 着手金・前受金をもらう 案件ごとに先に入る 次の受注から なし 要る
4 遅れている売掛金を回収する 1回だけ戻る 1〜2週間 なし 相手しだい
5 在庫を絞る 1回だけ戻る 1〜3か月 値下げした分 要らない
6 支払日を入金日の後ろにそろえる 月の途中の残高が上がる 合意した月の翌月 なし 要る
7 経費の払い方を変える 1回だけ戻る 翌月 年会費など 要らない
8 固定費を見直す 毎月残る 1〜3か月 解約金 契約による
9 使っていない資産を売る 1回だけ戻る 1〜2か月 売却の損 要らない
10 税金の払い方を見直す 払う時期が後ろへずれる 届出・中間申告の時期 手間 要らない
11 返済期間・借入の種類を組み直す 毎月残る 1〜2か月 利息が増える 要る(金融機関)
12 業績が良いうちに枠を作る 足りないときに使える 数週間〜 使った分の利息 要る(金融機関)

「何が変わるか」の欄は、改善の計画を立てるときにいちばん大事な欄です。1回だけ戻るお金は、一度手元に来たら、それ以上は増えません。毎月の不足を埋め続ける力はないので、毎月足りない会社は「毎月残る」方法を必ず組み合わせます。

「相手の同意」が要らない方法は、今週から始められます。要る方法は、効くまでに1〜3か月かかるので、早めに相談を始めます。

04

入金を早める4つの方法(方法1〜4)

社長

売上を増やさずに、お金を早く入れる方法はある?

請求書を締め日に出す、回収条件を見直す、着手金をもらう、遅れている売掛金を回収するの4つです。例の会社では回収条件の見直しの300万円がいちばん大きく、ただし相手の同意が要ります。

ハカセ

入金を早める方法は、売掛金(あとで受け取る約束の代金)として寝ているお金を、早く手元に戻す方法です。売上を増やさなくても、手元のお金が増えます。

方法1:請求書を締め日に出す

多くの会社は、請求書の受付期限を決めています。「月末締めで、翌月5日までに届いた請求書をその月の支払いに回す」といった決め方です。期限に1日でも遅れると、入金が1か月後ろにずれます。

請求書が遅れる原因の多くは、納品や作業の記録がそろわないことです。締め日の前に、納品書・作業報告・検収の記録を集める日を決めておきます。請求書の作成を担当する人と、出す期限を決めるだけで直ることもあります。

例の会社では、毎月約100万円分の請求が相手の締めに遅れていました。これを締め日に出すようにすると、遅れていた1か月分の100万円が1回だけ早く入ります。費用はかからず、相手の同意も要りません。

方法2:回収条件を見直す

回収条件とは、取引先が代金をいつ払うかの決まりです。「月末締め翌々月末払い」の取引先を「翌月末払い」にしてもらえれば、その取引先の1か月分の売上が手元に戻ります。

例の会社では、月300万円の取引があるB社が翌々月末払いでした。翌月末払いになれば、300万円が1回だけ戻ります。12の方法の中で、1回に戻る額がいちばん大きい方法でした。

ただし、相手の同意が要ります。相談しやすいのは、新しい取引を始めるとき、単価を見直すとき、契約を更新するときです。交渉の進め方と伝え方の例は支払いサイトを短くしてもらう交渉の記事で説明しています。

自社が仕事を受ける側で、相手が発注する会社のときは、法律の決まりも交渉の材料になります。取適法(2026年1月に下請法から変わった法律)の対象になる委託の取引では、発注した会社は、物を受け取った日から60日以内のできる限り短い期間で支払期日を決める義務があります。※1

さらに2027年4月1日からは、取適法の対象にならない製造委託などの取引でも、受け取った日から60日を過ぎても払わないことが、独占禁止法の決まり(支払告示)で禁じられます。※2

方法3:着手金・前受金・中間金をもらう

大きな仕事や期間の長い仕事では、材料費や外注費を先に払い、代金は完成後に受け取る形になりがちです。その間の立て替えを減らすのが、着手金・前受金・中間金です。

例の会社が600万円の大口の仕事を受け、着手金として30%をもらうと、180万円が仕事の始めに入ります。材料や外注の支払いをこのお金でまかなえるので、ほかの取引の入金に頼らずに済みます。

頼むときは、見積書と契約書に「契約時に30%、納品時に70%」のように書きます。口頭の約束だけにすると、後で払ってもらえないことがあります。工事・制作・システム開発など、期間の長い仕事ほど頼みやすい方法です。

方法4:期日を過ぎた売掛金を早く回収する

入金予定日に入っていない売掛金は、放っておくほど回収しにくくなります。入金予定日の翌営業日には通帳を確かめ、入っていなければその日のうちに連絡します。

連絡が遅れる会社では、売掛金の一覧を取引先ごとに作っていないことが多いです。取引先・請求日・入金予定日・入金日を並べた一覧を月1回見直すだけで、遅れに気づけます。

例の会社では、期日を過ぎた売掛金が120万円ありました。担当者の確認漏れや請求書の行き違いが原因なら、連絡すれば1〜2週間で入ることが多い額です。同じ取引先で遅れがくり返すときは、取引の量を増やす前に、相手の支払い能力を確かめます。

この章の根拠(2件)
  1. 公正取引委員会「発注者の義務」(取適法)
  2. 公正取引委員会「約束手形の利用廃止を踏まえたサプライチェーン全体での支払の適正化について」(2026年9月2日)
05

在庫と支払いを整える3つの方法(方法5〜7)

社長

払う額を減らさずに、楽にすることはできるの?

在庫を絞り、支払日を入金日の後ろにそろえます。動いていない在庫から現金に戻すのがこつです。支払日を動かすのは相手にとって入金が遅れる話なので、一方的に決めず合意の上で進めます。

ハカセ

入金を早める方法と対になるのが、出ていくお金を整える方法です。払う額そのものは減らさずに、お金が寝る期間を短くしたり、払う日を入金の後ろに動かしたりします。

方法5:在庫を絞る

在庫は、仕入れた時点でお金が出ていき、売れて代金が入るまで戻りません。在庫が多いほど、お金が倉庫で眠っていることになります。

例の会社は、月の仕入650万円に対して、1か月分の650万円の在庫を持っていました。0.8か月分に絞ると、130万円が1回だけ戻ります。

進め方は、まず商品ごとに「最後に売れた日」を出し、3か月以上動いていない在庫を分けます。動いていない在庫は、値下げ・返品の相談・まとめ売りで現金に戻します。売れ筋は、売れる量に合わせて発注する量と時期を決め直します。

値下げした分は損になりますが、置いておいても価値は下がっていきます。ただし、売れ筋まで減らして品切れを起こすと売上を落とすので、絞るのは動いていない在庫から始めます。

方法6:支払日を入金日の後ろにそろえる

月末に入金がまとまる会社で、支払いが月の10日や20日に分かれていると、月の途中で残高が落ち込みます。月末の残高は足りていても、途中の支払日に足りなくなる形です。

例の会社では、外注費200万円を「月末締め翌月10日払い」にしていました。外注先と相談して翌月末払いにそろえると、払う総額は変わりませんが、月の途中のいちばん少ない残高が200万円上がります。

この方法は、相手にとっては入金が遅くなる話です。一方的に決めず、相手の資金繰りも考えて合意の上で進めます。自社が発注する側で、相手が中小の受注者やフリーランスの場合は、取適法やフリーランス法で支払期日の決まりがあります。払う側の注意は買掛金の管理と支払いを延ばすときの注意の記事にまとめています。

方法7:経費の払い方を変える

通信費・ソフトの利用料・出張費など、毎月の経費の一部は、口座振替や法人カードの引落しにまとめられます。カード払いにすると、使った日から引落しの日まで、多くはおよそ1か月の間があきます。

例の会社が月30万円の経費をこうした払い方に寄せると、切り替えた月に約30万円分の支払いが後ろにずれます。支払いの日も月に1回にまとまるので、管理も楽になります。

注意点は2つです。1つは、分割払いやリボ払いは使わないことです。手数料がかかり、借入と同じになります。もう1つは、年会費とポイントの損得を比べることです。効く額は小さいので、手間をかけすぎない範囲で行います。

06

固定費と税金の払い方を見直す3つの方法(方法8〜10)

社長

毎月お金が減っていく会社は、どうすればいい?

毎月の出ていくお金そのものを減らします。使っていない契約や重なった保険から見直し、人件費は最後です。税金は額は変わりませんが、払う時期を後ろにずらせる決まりがあります。

ハカセ

ここまでの方法の多くは、手元のお金を1回だけ増やすものでした。毎月お金が減っている会社に必要なのは、毎月の出ていくお金そのものを減らす方法です。

方法8:固定費を見直す

固定費は、売上に関係なく毎月出ていくお金です。一度減らせば、毎月残り続けます。12の方法のうち、借入の組み直しと並んで「毎月効く」方法です。

見直す順番は、売上や働く人に影響が小さいものからです。

  1. 使っていない契約:ソフト・回線・保守契約・会員サービスなど。請求書と通帳の引落しを1年分並べて洗い出します。
  2. 重なっている保険:会社と個人、複数の保険で同じ危険に備えていないか。
  3. リース・レンタル:使う頻度の低い機器。中途解約の費用と、残りの期間の支払いを比べます。
  4. 家賃・倉庫代:在庫を絞った後に、広さが余っていないか。
  5. 外注の範囲:社内でできる作業まで頼んでいないか。

例の会社では、使っていない契約などで月10万円を減らせました。1年で120万円です。人件費は最後に考えます。辞めてもらうと、売上を生む力が落ちるうえ、残る人の負担も増えるからです。

方法9:使っていない資産を売る

使っていない車両・機械・備品・会員権などは、持っているだけで保険料や維持費がかかります。売れば、そのお金が1回だけ手元に入り、維持費も減ります。

例の会社では、使っていない車両を売って80万円が入りました。帳簿の価格より安く売ると、その差は損として決算に出ます。損が出ても、お金が入ることと、維持費が減ることを優先して判断します。

方法10:税金の払い方を見直す

税金の額は変わりませんが、払う時期が後ろにずれる決まりがあります。使えるのに使っていない会社が多い方法です。

1つは、源泉所得税の納期の特例です。給与から差し引いた源泉所得税は、原則として給与を払った月の翌月10日までに納めます。給与を払う人が常時10人未満の会社は、税務署に申請すると、1〜6月分を7月10日に、7〜12月分を翌年1月20日に、まとめて納められます。※1

申請書は「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」で、却下の通知がなければ、出した月の翌月末日に承認されたものとみなされます。例の会社(従業員9人)で毎月の源泉所得税が15万円なら、納める月までに最大で90万円が手元に残ります。

もう1つは、法人税の中間申告の選び方です。事業年度が6か月を超える会社は、期の途中で中間申告をします。方法は、前の期の法人税額をもとにする「予定申告」と、最初の6か月で仮の決算をする「仮決算」の2つから選べます。※2

予定申告の額は、前の期の法人税額を前の期の月数で割り、6をかけた額です。前の期が好調で、今期の前半が落ち込んだときは、仮決算の方が少なくなることがあります。例の会社で前の期の法人税が300万円なら予定申告は150万円で、仮決算の税額が60万円なら、差の90万円は確定申告まで手元に残ります。

仮決算の税額が予定申告の額を上回るときは、仮決算は使えません。消費税の中間申告も、仮決算による申告ができます。ただし、仮決算で税額がマイナスになっても、中間申告では還付されません。

どちらも、払う時期が後ろにずれるだけです。後で必ず払うお金なので、別の口座に取り分けておきます。仮決算は手間がかかるので、顧問の税理士がいれば費用と合わせて相談します。

この章の根拠(2件)
  1. 所得税法216条
  2. 法人税法71条・72条
07

借入の組み方と平時の備え(方法11・12)

社長

利益は出てるのに、なぜかお金が増えないのは?

返済が速すぎることがよくあります。例の会社は残り5年で月50万円返していましたが、10年に組み直すと月25万円になります。その代わり、年2%で計算すると利息は約150万円増えます。

ハカセ

利益は出ているのに毎月お金が減る会社では、借入の返済が速すぎることがよくあります。元金の返済は費用にならないので、決算書の利益を見ているだけでは気づけません。

方法11:返済期間と借入の種類を、お金の使い道に合わせる

設備のための借入は、その設備が稼ぐ期間に合わせて返すのが基本です。運転資金を短い期間で返す借入で借りると、本業の稼ぎを上回る返済になりがちです。

例の会社は、3,000万円の借入を残り5年で返していて、元金の返済は月50万円でした。本業の利益の月50万円をすべて返済にあてている状態です。10年で組み直すと、元金の返済は月25万円になり、1年で300万円が手元に残ります。

その代わり、利息の合計は増えます。年2%で計算すると、5年で返すときの利息は約152万円、10年では約302万円で、約150万円多くなります。月の返済を軽くする効果と、利息が増える費用を比べて決めます。

売上が続く限りずっと要る運転資金は、返済の短い借入より、期日ごとに書き替えて続ける短期の借入や、決まった枠の中で借りて返せる当座貸越が合うこともあります。どの形が合うかは、取引のある金融機関に、返済予定表と資金繰り表を持って相談します。

すでに返済が苦しい場合に、返済を一時的に減らしてもらう「リスケ(返済条件の変更)」は、この方法とは別の、苦しいときの手です。進め方は対処の順番の記事で説明しています。

方法12:業績が良いうちに、借りられる枠と備えを作る

金融機関は、苦しくなってから申し込む会社より、業績が良いうちに相談してくる会社に貸しやすくなります。決算書と試算表を毎期届け、必要になったときに使える融資の枠を作っておきます。

当座貸越の枠は、使わなければ利息はかかりません。使った分だけ利息を払う形なので、平時に作っておくほど、足りないときの選択肢が増えます。取引先の倒産に備えるなら、経営セーフティ共済(国の共済で、取引先が倒産したときに借りられる)も平時に入っておく備えです。

手元にいくら置いておくかの下限も、このとき決めます。下限の決め方は、資金繰りとはの記事の「うまく回す5つの基本」で説明しています。

自社の支払いから手元資金の下限と目標を出す5つの手順は、手元資金の目安の記事で説明しています。

08

数字で確かめる:月商1,000万円の会社で12の方法を試すと

社長

全部やると、どれくらい効くものなの?

月商1,000万円の会社の試算では、1回だけ戻るお金が合計940万円、毎月残るお金が月35万円で1年420万円でした。自社の数字に置き換えれば、同じ手順でどの方法がいくら効くか出せます。

ハカセ

ここまで方法ごとに出てきた例の会社の数字を、まとめて比べます。数字はすべて仮定ですが、自社の数字に置き換えれば、どの方法がいくら効くかを同じ手順で出せます。

例の会社の前提

項目 例の会社の数字
月商 1,000万円(A社500万円・B社300万円・その他200万円)
回収条件 A社とその他は月末締め翌月末、B社は月末締め翌々月末
月末の売掛金 1,300万円(月商の1.3か月分)
仕入(原価) 月650万円。在庫は1か月分の650万円
固定費 月300万円(従業員9人の給与・家賃など)
本業の利益 月50万円
借入 3,000万円。残り5年で、元金を毎月50万円ずつ返している

この会社は本業で月50万円を稼いでいますが、元金の返済も月50万円です。利益は出ているのに、返済を入れると手元のお金が増えない状態です。売上が増えると、売掛金と在庫の立て替えも増えて、お金はむしろ減ります。

12の方法の効き目

方法 前提 手元に残るお金
1 請求を締め日に出す 毎月100万円分の請求が、相手の締めに遅れていた 100万円(1回)
2 回収条件を見直す B社の300万円を翌々月末から翌月末へ 300万円(1回)
3 着手金をもらう 600万円の大口の受注で30% 180万円(案件ごと)
4 遅れている売掛金 期日を過ぎていた120万円 120万円(1回)
5 在庫を絞る 1.0か月分から0.8か月分へ 130万円(1回)
6 支払日をそろえる 翌月10日払いの外注費200万円を月末払いへ 月の途中の最低残高が200万円上がる
7 経費の払い方 月30万円の経費を、引落しが約1か月後の払い方へ 30万円(1回)
8 固定費 使っていない契約などで月10万円 月10万円(年120万円)
9 使っていない資産 使っていない車両を売る 80万円(1回)
10 税金の払い方 源泉所得税の納期の特例、中間申告の仮決算 90万円+90万円(時期がずれるだけ)
11 返済期間 残り5年を10年で組み直す 月25万円(年300万円)
12 融資の枠 業績が良いうちに作る 足りないときに使える

表を「何が変わるか」で分けると、次の図のようになります。1回だけ戻るお金は7つの方法で合計940万円、毎月残るお金は2つの方法で月35万円(1年で420万円)です。

月商1,000万円の会社(計算例)で、12の方法が手元に残すお金

1回だけ戻るお金(合計940万円)

  1. 方法2 回収条件を見直す300万円
  2. 方法3 着手金・前受金180万円
  3. 方法5 在庫を絞る130万円
  4. 方法4 遅れている売掛金120万円
  5. 方法1 請求を締め日に出す100万円
  6. 方法9 使っていない資産を売る80万円
  7. 方法7 経費の払い方を変える30万円

毎月残るお金を1年分にすると(合計420万円)

  1. 方法11 返済期間を組み直す年300万円
  2. 方法8 固定費を見直す年120万円

1回だけ戻る毎月残る(1年分)

1回に戻る額が大きいのは回収条件の見直し(300万円)でした。ただし、効くまでに2〜3か月かかり、相手の同意も要ります。すぐに始められて費用もかからない方法1・4・7だけでも、合計で250万円が戻ります。

この会社にとって大事なのは、毎月残る方法です。1回だけ戻る940万円は、一度入れば終わります。返済の組み直しと固定費の見直しで月35万円が残れば、本業の利益と合わせて毎月お金が増える会社に変わります。

同じ300万円をファクタリングで用意すると

比べるために、B社の売掛金300万円を毎月ファクタリング(売掛金を期日前に買い取ってもらう方法)で現金にした場合を考えます。手数料を10%とすると、毎月30万円、1年で360万円の費用です。

手数料10%で30日早く現金にするときの実質年率(手数料を1年あたりの割合に直したもの)は、手数料額÷手取り額÷日数×365で計算して約135%になります。回収条件の見直しで同じ300万円が戻れば、この費用はかかりません。自社の数字での年率は手取りと実質年率のシミュレーターで出せます。

最初の90日の進め方

12の方法は、一度に全部はできません。自社だけでできる方法から始め、相手や専門家との相談が要る方法を並行して進めると、次の順番になります。

資金繰り改善の最初の90日
  1. 1週目表と4つの問い3か月の資金繰り表を作り、どこから手をつけるかを決める
  2. 2週目自社だけでできる手方法1・4・7:請求の締め日、遅れている売掛金、経費の払い方
  3. 1か月目中を絞る方法5・8・9:在庫、固定費、使っていない資産
  4. 2か月目相手と相談する手方法2・3・6:回収条件、着手金、支払日
  5. 3か月目専門家と組む手方法10・11・12:税金の払い方、返済期間、融資の枠

1週目に作る資金繰り表には、改善の効果も書き込みます。いつ、いくら戻るかを表に入れると、どの月に余裕ができるか、まだ足りない月はどこかが見えます。表の作り方と記入例は資金繰り表の作り方の記事にあります。

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改善で間に合わないとき:ほかの方法と、ファクタリングを使わない方がよい場合

社長

改善が間に合わないときは、どうすればいい?

融資や支払日の相談、税金の猶予など、外から用意する方法を並行して考えます。ファクタリングは不足が一時的で入金が確かな場面向きです。本業でお金が減る会社や、毎月使うことになる会社には合いません。

ハカセ

この記事の方法は、効くまでに1〜3か月かかるものが多くあります。数週間のうちに支払いに足りない場合は、改善と並行して、お金を外から用意する方法も考えます。

外から用意する方法

主な方法は、金融機関からの融資、日本政策金融公庫の融資、支払先への支払日の相談、税金や社会保険料の猶予などです。早さ・費用・返済の要否で比べた一覧は資金調達の方法15選の記事にあります。

支払いに間に合わないときに、どの順番で手を打つかは、対処の順番の記事で記入例とともに説明しています。この記事では詳しく扱いません。

ファクタリングが合う場面

ファクタリングが選択肢になるのは、不足が一時的で、売掛金がいずれ入ることが確かな場面です。たとえば、回収条件の見直しに合意したものの、新しい条件が始まるまでの1〜2か月だけ足りない、といった場面です。

この場合も、費用は実質年率に直して融資と比べます。上の計算のとおり、手数料10%で30日なら約135%で、融資の金利とは桁が違います。

ファクタリングを使わない方がよい場合

  • 本業で毎月お金が減っている:最初の問いのQ1で「いいえ」の会社です。手数料が毎月の不足をさらに大きくします。
  • 返済が稼ぎを上回っている:Q2で「いいえ」の会社です。先に返済期間の組み直しを相談します。
  • 毎月使うことになる:毎月同じ売掛金を売ると、例の会社では1年で360万円がかかります。これは本業の利益の7か月分を超えます。
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資金繰り改善でよくある失敗と注意点

社長

改善を進めるときに、気をつけることは?

1回だけ戻るお金を毎月の改善と取り違えないことです。支払いを一方的に遅らせる、在庫を減らしすぎる、税金の時期をずらしたお金を使ってしまう、といった失敗にも気をつけます。

ハカセ

1回だけ戻るお金を、毎月の改善と取り違える

回収条件の見直しや在庫の圧縮で手元のお金が増えると、資金繰りが良くなったように見えます。しかし、毎月お金が減る会社なら、その分を使い切った後に同じ不足が戻ってきます。毎月の収支が改善したかは、毎月残る方法で確かめます。

支払いを一方的に遅らせる

支払いを黙って遅らせると、仕入先の信用を失い、取引条件が厳しくなったり、前払いを求められたりします。自社が発注する側なら、法律の違反になることもあります。支払日を動かすときは、必ず事前に相談して合意します。

在庫を減らしすぎて売上を落とす

在庫を絞る目的は、動いていない在庫を現金に戻すことです。売れ筋まで減らして品切れを起こすと、売上も入金も減ります。絞るのは、最後に売れた日が古いものから始めます。

回収を早めるために、大きな値引きをする

「早く払ってくれれば値引きする」という条件は、手元のお金は増えますが、値引きの分だけ利益が減ります。300万円を1か月早く受け取るために2%値引きすると、毎月6万円、1年で72万円です。年率に直すと、融資の金利よりかなり高くなることが多いので、値引きは小さく抑えます。

税金の時期をずらしたお金を使ってしまう

納期の特例や仮決算で手元に残ったお金は、後で必ず払うお金です。7月や1月、確定申告の月にまとめて出ていくので、別の口座に取り分けておきます。払えなくなると延滞税がかかり、かえって資金繰りが悪くなります。

返済を軽くしたお金で、また借りる

返済期間を延ばして浮いたお金で新しい借入や設備投資をすると、返済が元の重さに戻ります。浮いたお金は、まず手元に置く下限まで積み上げる、と決めておきます。利息が増える分も、毎年の資金繰り表に入れておきます。

一度の見直しで終わらせる

回収条件や在庫は、取引先や商品が変わるたびに元に戻りがちです。新しい取引先と始めるとき、決算のとき、売上が大きく変わったときに、4つの問いをもう一度たどります。月1回、資金繰り表の予定と実際を比べると、どの方法が効いているかがわかります。

出典(6件)公的機関の資料・法令。2026.10.30に確認
  1. No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例(国税庁)www.nta.go.jp
  2. 法人税のあらましと申告の手引 令和6年10月 中間申告(国税庁)www.nta.go.jp
  3. 法人税法(e-Gov法令検索)第71条・第72条laws.e-gov.go.jp
  4. No.6609 中間申告の方法(国税庁)www.nta.go.jp
  5. 発注者の義務(取適法の概要、公正取引委員会)www.jftc.go.jp
  6. 約束手形の利用廃止を踏まえたサプライチェーン全体での支払の適正化について(公正取引委員会、2026年9月2日)www.jftc.go.jp

FAQ

よくある質問

資金繰りを改善する方法には何がありますか?

大きく4つの方向があります。入金を早める(請求を締め日に出す・回収条件の見直し・着手金・遅れている売掛金の回収)、在庫と支払いを整える、固定費と税金の払い方を見直す、借入の返済期間と種類を組み直す、の4つです。費用がかからず相手の同意も要らない方法から始め、相談が要る方法を並行して進めます。

資金繰りの改善は何から始めればよいですか?

最初に、本業で毎月増えるお金、借入の元金の返済額、月の途中のいちばん少ない残高の3つを出します。本業でお金が減っているなら固定費と値決め、返済が稼ぎを上回るなら返済期間の組み直しが先です。売上が増えると足りなくなるなら入金を早める方法と在庫の圧縮、月の途中だけ足りないなら支払日をそろえる方法が効きます。

すぐに効く資金繰り改善の方法はありますか?

請求書を締め日に出す、期日を過ぎた売掛金をすぐに催促する、経費を口座振替や法人カードの引落しにまとめる、の3つは自社だけでできて費用もかかりません。月商1,000万円の会社の計算例では、この3つで合計250万円が戻りました。ただし、どれも1回だけ戻るお金で、毎月の不足を埋め続ける力はありません。

黒字なのに資金繰りが改善しないのはなぜですか?

借入の元金の返済や、売掛金と在庫の立て替えが、利益を上回っていることが多いです。元金の返済は費用にならないので、決算書の利益には出ません。計算例の会社は本業の利益が月50万円で、元金の返済も月50万円でした。返済期間を5年から10年に組み直すと、月25万円が残るようになります。

資金繰りの改善に税金の払い方は使えますか?

払う額は変わりませんが、時期を後ろにずらす決まりがあります。給与を払う人が常時10人未満なら、源泉所得税の納期の特例で半年分をまとめて納められます。法人税の中間申告は、前の期の実績による予定申告と仮決算を選べ、今期の前半が落ち込んだときは仮決算の方が少なくなることがあります。後で払うお金なので取り分けておきます。

資金繰りの改善にファクタリングを使ってもよいですか?

回収条件の見直しが始まるまでの1〜2か月など、不足が一時的で売掛金が確実に入る場面なら選択肢になります。手数料10%で30日早く現金にすると、実質年率は約135%です。本業でお金が減っている会社や、毎月使うことになる会社は使わない方がよく、計算例では毎月使うと1年で360万円の費用になりました。

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