資金繰り更新 2026.10.17
資金繰り表の作り方|無料テンプレートと6か月の記入例、銀行に出す書き方
資金繰り表は、お金の入りと出を入金・支払いの月に書き、月末の残高を先まで計算する表です。この記事では、無料テンプレートの選び方、6つの手順と6か月の記入例、月次と日次の違い、銀行に出すときの書き方を説明します。
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フファクタリング図鑑編集部(執筆)・公開 2026.10.17

この記事は、銀行や日本政策金融公庫に「資金繰り表を出してください」と言われた方や、来月以降のお金の出入りを表にしておきたい中小企業の経営者・個人事業主に向けて書いています。無料のテンプレートの選び方から、項目の意味、6か月分の記入例、日ごとの表への直し方、銀行に出すときの書き方までを、1つの会社の数字で通して説明します。
この記事を6枚で
1 / 6結論:資金繰り表は「お金が底をつく日」を前もって見つける表
資金繰り表って、そもそも何のための表なの?
お金が底をつく日を前もって見つける表です。損益計算書が「もうかったか」を見るのに対し、資金繰り表は「払えるか」を見ます。売上ではなく入金の月で書き、3つの区分に分け、苦しい月は日ごとに見ます。
資金繰り表とは、いつ・いくらお金が入り、いつ・いくら出ていくかを月ごと(または日ごと)に並べ、月末の預金残高を先まで計算した表です。損益計算書が「もうかったか」を見る表なのに対し、資金繰り表は「払えるか」を見る表です。
作り方の要点は3つです。
- 売上ではなく入金で書く:3月に請求した売上が4月末に入るなら、4月の欄に書きます。支払いも同じで、払う月に書きます。
- 3つの区分に分ける:本業の出入り(経常収支)、設備などの出入り(経常外収支)、借入と返済(財務収支)を分けると、銀行が読める形になります。
- 苦しい月は日ごとに見る:月末の残高がプラスでも、月の途中でマイナスになる日があります。
テンプレートは、日本政策金融公庫が無料で公開しているものを使えば十分です。この先は、資金繰り表とは何か(2章)、テンプレートとフォーマットの選び方(3章)、作り方の手順(4章)、6か月の記入例(5章)、月次と日次の違い(6章)、見方と予定・実績の比べ方(7章)、銀行に出すときの書き方(8章)、よくある間違い(9章)、不足が見えたときの考え方(10章)の順に説明します。
資金繰り表とは:損益計算書・キャッシュフロー計算書との違い
決算書があれば、資金繰り表はいらないんじゃない?
決算書は過去の結果で、来月の給与が払えるかには答えてくれません。これから先を書くのは資金繰り表だけです。請求と入金のずれは損益計算書には出ず、資金繰り表にだけ出ます。
会社のお金を表す表は、ほかにもあります。資金繰り表との違いは、「いつの話か」と「何を数えるか」です。
| 表 | 数えるもの | 期間 | 主な使いみち |
|---|---|---|---|
| 損益計算書 | 売上・費用・利益(発生した時点で数える) | 過去の1年 | もうかったかを見る・税金の計算 |
| キャッシュフロー計算書 | 実際に動いたお金 | 過去の1年 | 決算書の一部として、お金の増減の理由を見る |
| 資金繰り表 | 実際に動くお金 | これから先の数か月(と直近の実績) | 払えるかを前もって確かめる・融資の相談 |
表からわかるとおり、資金繰り表だけが「これから先」を書く表です。決算書は年に1回、過去の結果を示すだけなので、来月の給与が払えるかには答えてくれません。
黒字でもお金が足りなくなる理由
損益計算書では、請求した時点で売上になります。ところが実際の入金は、締め日と支払日のぶんだけ後ろにずれます。一方で、仕入や給与は先に出ていきます。売上が伸びている会社ほど、先に払うお金が増えて手元が薄くなることがあります。このずれは損益計算書には出ず、資金繰り表にだけ出ます。
資金繰り表の項目
日本政策金融公庫の記入例は、行を次の4つにまとめています。会社ごとに行を足し引きしてかまいませんが、この区分は崩さない方が、銀行の担当者が読みやすくなります。
| 区分 | 主な行 | 書くお金 |
|---|---|---|
| 経常収入 | 現金売上・売掛金の回収・受取手形の入金 | 本業の売上として、実際に口座に入るお金 |
| 経常支出 | 現金仕入・買掛金の支払い・外注費・人件費・諸経費・税金 | 本業を回すために、実際に出ていくお金 |
| 経常外収支 | 設備・車両の購入、設備の売却、保険の解約金 | 毎月は起きない、本業の外の出入り |
| 財務収支 | 借入金・借入金の返済(短期・長期) | 借りたお金と返したお金。元金で書く |
いちばん下の行は「翌月繰越=前月繰越+経常収支+経常外収支+財務収支」です。公庫の記入例でも、この式で月末の残高を出しています。
資金繰り表を作るべきタイミング
毎月作るのが理想ですが、少なくとも次のような場面の前には作っておきます。どれも、ふだんより大きなお金が先に出ていく場面です。
- 融資を申し込む・返済条件を相談するとき
- 大口の受注で、材料や外注の支払いが入金より先に増えるとき
- 車両や機械など、設備を買うとき
- 決算のあと、法人税や消費税を納める前
- 売上が急に伸びている、または急に落ちているとき
とくに売上が伸びているときは、もうかっているのに手元が薄くなるので、資金繰り表を作らないと不足に気づきにくくなります。
無料テンプレートとフォーマットの選び方
表は一から作らないといけないの?
決まった様式はないので、日本政策金融公庫の無料テンプレートで十分です。迷ったら国民生活事業の「資金繰り表」と「記入例」を一緒に開きます。銀行が見たい形がそのまま入っています。
資金繰り表には、法律で決まった様式はありません。中小企業庁も、早期経営改善計画のひな形について、同じ以上の内容があれば別の様式で代えてよいとしています。ただ、一から作るより、公的な機関の無料テンプレートを使う方が、項目の漏れを防げます。
| テンプレート | 置き場所 | 形式 | 向いている人 |
|---|---|---|---|
| 資金繰り表・資金繰り表(簡易版)・記入例 | 日本政策金融公庫(国民生活事業)の各種書式ダウンロード | Excel・Word | 小規模事業者・個人事業主。公庫に融資を申し込む人 |
| 資金繰り表 簡易版・詳細版(それぞれ作成手順及び記載例つき) | 日本政策金融公庫(中小企業事業)の各種書式ダウンロード | Excel | 仕入や手形の行を細かく分けたい中小企業 |
| 資金予定表かんたん作成ツール(通常用・製造業用) | 中小企業庁「早期経営改善計画策定支援」のページ | 質問に数字を入れて作るツール | まず質問に数字を入れて、現預金の推移を大づかみにしたい人 |
迷ったら、公庫の国民生活事業の「資金繰り表」と「記入例」を一緒に開くのがおすすめです。記入例のPDFには、実績1か月と予定3か月の欄、前年同月の売上高の行、売上高や経費の「算出根拠」を書く欄があり、手順①〜⑦の説明が付いています。銀行が見たい形がそのまま入っています。
エクセルで自分で作るときのフォーマット
手元の会計ソフトや表計算で作るなら、次の形にしておくと、あとで公庫の様式に写すのも簡単です。
- 列:左端に項目、その右に月を並べる。左の数か月は「実績」、それより右は「予定」と見出しに書く。
- 行:上から「売上高(参考)」「前月繰越」「経常収入」「経常支出」「経常収支」「経常外収支」「財務収支」「翌月繰越」。
- 計算式:「経常収支=経常収入の計−経常支出の計」「翌月繰越=前月繰越+経常収支+経常外収支+財務収支」。翌月の「前月繰越」は、前の月の「翌月繰越」を参照する式にする。
- 表の下に、売上の見込みや仕入の割合などの算出根拠を書く欄を作る。
単位は「万円」か「千円」にそろえます。銀行に出すなら、表の右上に作成日と単位を書いておきます。
資金繰り表の作り方:6つの手順
何を用意して、どの順で書けばいいの?
通帳、請求書の控え、返済予定表、試算表を手元に置きます。今日の残高を前月繰越に書き、入金は入る月、支払いは払う月に書きます。抜けやすい税金や年に数回の支払いは、決算月から逆算して先に書きます。
手元に用意するのは、通帳(またはネットバンキングの明細)、売掛先ごとの請求書の控え、仕入先・外注先の請求書、借入の返済予定表、直近の試算表か決算書です。最初の1回は2時間ほどかかりますが、2回目からは実績を書き足すだけになります。
手順1:今日の預金残高を「前月繰越」に書く
出発点は、すぐに使える口座の残高の合計です。定期預金や、積立のように引き出しにくいお金は外しておくと、表が甘くなりません。会計ソフトの「現金預金」の残高ではなく、通帳の残高で書くのが確実です。
手順2:入金を「入る月」に書く
売掛先ごとに、締め日と支払日を確かめます。月末締め翌月末払いなら、4月の売上は5月の入金です。売上が決まっていない先の月は、確定している受注、過去の実績、季節の波から見込みます。公庫の記入例でも、予定の売上は「確定している分、過去の実績や季節性等を考慮し」て書くよう説明しています。
手順3:毎月の支払いを「払う月」に書く
材料の仕入、外注費、給与、家賃、リース料などです。仕入は売上に比例して動くので、「売上の何割」と決めて書くと、売上の見込みを変えたときに一緒に動きます。給与は振り込む手取りの額で書き、天引きした税金や保険料は、納める月に別の行で書きます。
手順4:税金と、年に数回の支払いを書く
資金繰り表でいちばん抜けやすいのが、毎月ではない支払いです。税金は納める時期が法律で決まっているので、決算月から逆算して先に書き込みます。
| 支払い | 納める時期 | 表に書くときの注意 |
|---|---|---|
| 法人税(確定分) | 事業年度が終わった日の翌日から2か月以内 | 3月決算なら5月。地方税もほぼ同じ月にまとまる |
| 法人税(中間分) | 事業年度が始まって6か月を過ぎた日から2か月以内 | 前期の法人税が20万円を超えると必要。納付書が届かない場合がある |
| 消費税(確定分) | 課税期間の末日の翌日から2か月以内 | 法人の場合。預かった消費税を使い込まないよう別に数える |
| 消費税(中間分) | 中間の期間の末日の翌日から2か月以内 | 前期の消費税(国税分)が48万円超で年1回、400万円超で年3回、4,800万円超で年11回 |
| 源泉所得税 | 給与を払った月の翌月10日 | 常時10人未満の納期の特例なら、1〜6月分を7月10日、7〜12月分を翌年1月20日 |
| 社会保険料 | 対象の月の翌月末日 | 賞与を払った月の分は、賞与にかかる保険料が加わる |
| 所得税の予定納税(個人) | 7月と11月 | 予定納税基準額が15万円以上の人。基準額の3分の1ずつ |
法人税の中間分は、前期の確定申告をe-Taxで出した法人などには、納付書が事前に届かなくなっています。国税庁も、消費税の中間申告書兼納付書は届くのに法人税の納付書は届かない場合があると注意を呼びかけています。表に月を書いておけば、納め忘れも防げます。※1※2
税金のほかに、賞与、保険料の年払い、車検、更新料なども、払う月に入れておきます。賞与の月に給与と賞与が重なる例は、資金繰りが苦しいときの対処の順番の記入例で扱っています。
手順5:設備の代金と借入を、別の区分に書く
車両や機械の購入は「経常外支出」、借入は「財務収入」、返済は「財務支出」に書きます。本業の支払いと混ぜないことで、「本業ではお金が増えているが、設備の代金で減った」のように、減った理由が見えるようになります。返済は元金の額で書き、利息は経常支出の諸経費に入れます。
手順6:残高を出し、毎月実績で書き直す
月ごとに翌月繰越を出したら、まず月末の残高が「月の支払いの合計」を下回る月がないかを見ます。下回る月があれば、その月だけ日ごとの表を作ります(6章)。月が終わったら、その月を実績の数字に置き換え、予定の月を1か月先へ足します。
- 15分今日の預金残高を書くすぐ使える口座の合計を「前月繰越」に
- 30分入金を入る月に書く取引先ごとの締め日と支払日で、売上を入金の月へ移す
- 30分毎月の支払いを書く仕入・外注・給与・家賃などを支払う月に
- 15分税金と年数回の支払いを書く法人税・消費税・源泉所得税・保険料の年払いなど
- 15分設備と借入を分けて書く経常外収支と財務収支の欄へ
- 毎月残高を出して実績で直す月末残高が月の支払いを下回る月は日ごとに見る
この章の根拠(2件)
- 法人税法71条1項・74条1項
- 消費税法45条1項・49条
記入例:従業員6人の会社の6か月の資金繰り表
実際の会社だと、どんな表になるの?
内装工事会社の6か月の例です。本業の収支はプラスでも、5月の税金と6月の車両の代金が重なり、6月末の残高は310万円まで減ります。売上の波は、1か月遅れて入金に出ます。
ここからは、1つの会社で通して見ていきます。前提は次のとおりです(単位:万円)。
- 従業員6人の内装工事会社。3月決算。3月末の預金残高は700万円。
- 売上は月末締め翌月末入金。材料は売上の3割で翌月末払い、外注は売上の2割5分で翌月10日払い。
- 給与(手取り)は毎月25日に180万円。社会保険料は前月分45万円を月末に納める。源泉所得税は納期の特例で、1〜6月分48万円を7月10日に納める。
- 5月末に前期の法人税など120万円と消費税180万円を納める。6月15日に車両300万円の代金を払う予定。借入の返済は毎月40万円。
3月末に作った、4月から9月の予定です。
| 項目 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 売上高(請求した額) | 900 | 1,000 | 1,100 | 1,200 | 800 | 1,100 |
| (参考)前年同月の売上高 | 850 | 950 | 1,000 | 1,050 | 900 | 1,000 |
| 前月繰越(A) | 700 | 785 | 525 | 310 | 392 | 567 |
| 売掛金の回収 | 1,000 | 900 | 1,000 | 1,100 | 1,200 | 800 |
| 現金売上 | 20 | 20 | 20 | 20 | 20 | 20 |
| 経常収入の計(B) | 1,020 | 920 | 1,020 | 1,120 | 1,220 | 820 |
| 材料の仕入(買掛金の支払い) | 300 | 270 | 300 | 330 | 360 | 240 |
| 外注費 | 250 | 225 | 250 | 275 | 300 | 200 |
| 給与(手取り) | 180 | 180 | 180 | 180 | 180 | 180 |
| 社会保険料(前月分) | 45 | 45 | 45 | 45 | 45 | 45 |
| 源泉所得税(納期の特例) | 0 | 0 | 0 | 48 | 0 | 0 |
| 家賃・諸経費 | 120 | 120 | 120 | 120 | 120 | 120 |
| 法人税・消費税(確定分) | 0 | 300 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| 経常支出の計(C) | 895 | 1,140 | 895 | 998 | 1,005 | 785 |
| 経常収支(D=B−C) | 125 | −220 | 125 | 122 | 215 | 35 |
| 経常外収支(E):車両の購入 | 0 | 0 | −300 | 0 | 0 | 0 |
| 財務収支(F):借入の返済 | −40 | −40 | −40 | −40 | −40 | −40 |
| 翌月繰越(A+D+E+F) | 785 | 525 | 310 | 392 | 567 | 562 |
6か月の経常収支を足すと402万円のプラスで、本業ではお金が増えています。それでも6月末の残高は310万円まで減ります。理由は2つで、5月に税金300万円を納め、6月に車両の代金300万円を払うからです。
もう1つ読み取れるのは、8月の売上の落ち込みが、9月の入金に出ていることです。8月の売上800万円は9月末に入るので、9月の経常収支は35万円しかありません。売上の波は、1か月遅れて資金繰りに出ます。月末締め翌月末払いの会社では、表を見るときにこのずれを頭に置いておきます。
この会社は前期の消費税・法人税の額から、11月に中間納付があります。6か月の表では11月が見えないため、税金のように時期が決まった支払いは、12か月先まで別の行に書いておくと安心です。
月の支払い(約900万円)の半分を下回る月それ以外
月次と日次の違い:月末の残高だけで安心しない
月末に残高が残るなら、安心していいよね?
いいえ。記入例の6月を日ごとに並べると、15日の車両の代金で25万円、25日の給与のあとは205万円足りません。入金が月末にまとまるためです。余裕のない月は日ごとの表に直します。
月ごとの表(月次の資金繰り表、月繰り表)は、半年から1年の流れをつかむのに向いています。一方で、月の中の入金日と支払日のずれは見えません。残高に余裕がない月は、日ごとの表(日次の資金繰り表、日繰り表)に直します。
| 月次(月繰り表) | 日次(日繰り表) | |
|---|---|---|
| 書く単位 | 1か月ごとの合計 | 入金・支払いの日ごと |
| 見る期間 | 6か月〜1年先 | 今月と来月 |
| わかること | 季節の波、税金の月、借入が必要な時期 | 残高がいちばん少なくなる日と、その日の不足額 |
| 作るとき | 毎月1回 | 月末残高が月の支払いを下回る月・大きな支払いがある月 |
記入例の6月を日ごとに並べる
記入例の6月は、月末に310万円残る予定でした。日付順に並べ直すと、次のようになります。
| 日付 | 出入り | 金額 | 残高 |
|---|---|---|---|
| 1日 | 前月から繰越 | 525 | |
| 10日 | 外注費(5月分) | −250 | 275 |
| 15日 | 車両の代金 | −300 | −25 |
| 25日 | 給与 | −180 | −205 |
| 月末 | 売掛金の回収 | +1,000 | 795 |
| 月末 | 現金売上(月の合計) | +20 | 815 |
| 月末 | 材料の仕入(5月分) | −300 | 515 |
| 月末 | 社会保険料(5月分) | −45 | 470 |
| 月末 | 家賃・諸経費 | −120 | 350 |
| 月末 | 借入の返済 | −40 | 310 |
15日に車両の代金を払った時点で25万円、25日の給与のあとは205万円足りません。入金が月末にまとまり、支払いが月の半ばにあるためです。月ごとの表だけを見ていたら、この不足には気づけません。
不足が見えたら、どう直すか
この例の不足は、車両という設備の代金が原因です。設備の代金は、本業の入金ではなく長い期間の借入で払うのが基本です。たとえば12日に設備資金として300万円を借りられれば、25日の残高は95万円、6月末は610万円になります。返済が月5万円増えても、9月末の残高は847万円です。
借入が間に合わない場合でも、車両の代金を月末の入金のあとに払う約束にできれば、25日の残高は95万円で済みます。どちらの手も、5月の時点で日ごとの表を作っていれば、ゆとりをもって相談できます。設備資金と運転資金の違いや、融資の考え方はファクタリングと融資の違いにまとめています。
資金繰り表の見方:3つの数字と、予定と実績の比べ方
表ができたら、どこから読めばいいの?
経常収支がプラスか、翌月繰越のいちばん少ない月と額、財務収支に頼りすぎていないかの3つです。月が終わったら実績を書き、予定とのずれが一時的なずれか、続くものかを確かめます。
できあがった資金繰り表は、上から順に読むより、次の3つの数字を先に見ると早く読めます。
- 経常収支がプラスか:本業の入金で本業の支払いをまかなえているか。マイナスの月が続くなら、借入で埋めても同じことが繰り返されます。
- 翌月繰越のいちばん少ない月と額:記入例なら6月の310万円。月の支払い(約900万円)と比べて少ない月は、日ごとに見る。
- 財務収支に頼りすぎていないか:借入で残高を保っている月が多いと、返済が始まったあとに苦しくなります。
記入例では、経常収支は5月以外プラスで、5月のマイナスは税金の月だけです。足りなくなる理由は本業ではなく、税金と設備の時期が近いことだと読めます。こう読めれば、打つ手は「設備の代金を借入でまかなう」に絞れます。
予定と実績を並べて、ずれの理由を書く
資金繰り表は、一度作って終わりではありません。月が終わったら実績を書き、予定とのずれを確かめます。記入例の会社(6月に設備資金を借りた場合)の7月は、次のようになりました。
| 項目 | 7月の予定 | 7月の実績 | 差 | 理由 |
|---|---|---|---|---|
| 売掛金の回収 | 1,100 | 980 | −120 | 1社の入金が8月にずれた |
| 材料の仕入 | 330 | 345 | +15 | 材料の値上がり |
| 経常収支 | 122 | −13 | −135 | |
| 翌月繰越 | 687 | 552 | −135 |
予定より135万円少なくなりましたが、理由のうち120万円は入金が1か月ずれただけです。そこで8月の売掛金の回収を120万円増やして1,320万円に書き直すと、8月末の残高は842万円で、当初の予定(857万円)との差は材料の値上がり分の15万円まで縮みます。
ずれの理由が「一時的なずれ」か「続く変化」かで、書き直し方が変わります。材料の値上がりが続くなら、8月以降の材料の割合を3割から上げておきます。この見直しを毎月続けると、表の精度が上がり、銀行に出したときの説得力も増します。
銀行に出すときの書き方
銀行に出すとき、どう書けば信用してもらえる?
直近の実績とつなげて出し、月末残高を通帳と合わせます。売上や経費の算出根拠を短く書きます。まだ決まっていない借入は、入れる前と入れた後の2つの表で示すのが確実です。
融資の申込みや返済条件の相談で資金繰り表を出すとき、銀行の担当者が見ているのは「この会社は借りたお金を返せるか」と「表の数字は信用できるか」です。表の形を整えるより、数字の根拠を示すことが大切です。
実績と予定をつなげて出す
予定だけの表では、数字が信用できるかを判断できません。直近の実績を少なくとも1か月、できれば3か月並べ、その続きとして予定を書きます。公庫の記入例も、左端の1か月が実績です。実績の月末残高は、通帳の残高と一致させます。
算出根拠を書く
公庫の様式には、売上高や経費の「算出根拠」を書く欄があります。たとえば次のように、短く書けば十分です。
- 売上高:受注済みの工事が7月まで計2,800万円。8月はお盆で例年1割ほど落ちる。
- 材料・外注費:前期の実績から、売上の3割と2割5分で計算。
- 人件費:6人分。7月に1人採用の予定があるが、表には入れていない。
前年同月の売上高の行も埋めます。前年より大きく増える月・減る月は、理由を一言添えると、担当者が質問しなくても読めるようになります。
借入の書き方で信用を落とさない
まだ決まっていない借入を財務収入に入れておくと、「借りられる前提の表」に見えてしまいます。申し込む融資は、入れる前と入れた後の2つの表で示すのが確実です。記入例でいえば、「設備資金なしでは6月25日に205万円足りない」「300万円を借りれば6月の最低残高は95万円、9月末は847万円」と並べれば、借りる額と時期の理由がひと目でわかります。返済予定表の額と、表の返済の行も一致させます。
専門家と作る場合の補助
資金繰りの計画を税理士などと作り、金融機関に示したいときは、中小企業庁の「早期経営改善計画策定支援」が使えます。国が認定した専門家(認定経営革新等支援機関)の支援を受けて、資金繰り計画やビジネスモデル俯瞰図、アクションプランなどを含む計画を作る費用の3分の2を補助する仕組みです。通常枠の上限は、計画策定支援費用が50万円、伴走支援費用が30万円です。相談先は、各都道府県の中小企業活性化協議会です。
- 実績の月がある直近の実績を少なくとも1か月、できれば3か月
- 前月繰越が通帳と合う実績の月末残高=口座の残高の合計
- 売上と試算表がつながる売上高の行が試算表・決算書と同じ数字
- 前年同月の売上がある増減の理由を一言で書ける
- 算出根拠の欄を埋めた入金・仕入・人件費の見込みの出し方
- 税金の月が入っている確定納付・中間納付・源泉所得税
- 決まっていない借入を入れる申込み中の融資は別の案として示す
- 経常外の支払いを経常に混ぜる設備の代金は経常外支出の欄へ
資金繰り表でよくある間違い
作るときに、ありがちな間違いって何?
いちばん多いのは、売上をそのまま入金の欄に書くことです。減価償却費を支出に入れる、返済を元金と利息に分けない、前月繰越が通帳と合わない、といった書く場所の誤りも質問を受けやすくなります。
銀行に出した表で質問を受けやすいのは、計算の誤りより、書く場所の誤りです。作り終えたら、次の点を見直します。
1. 売上をそのまま入金の欄に書く
いちばん多い間違いです。試算表の売上高を、そのまま同じ月の「売掛金の回収」に写すと、入金が1〜2か月早く見えます。売上高の行と回収の行は、別の数字になるのがふつうです。
2. 減価償却費を支出に入れる
減価償却費は損益計算書の費用ですが、お金は出ていきません。お金が出ていくのは、設備を買って代金を払った月です。資金繰り表には、払った月に経常外支出として書きます。
3. 借入の返済を、利息と元金に分けない
返済額をまるごと経費に入れると、損益と合わなくなります。元金は財務支出、利息は経常支出に分けます。返済予定表に元金と利息が分けて書かれているので、そのまま写します。
4. 消費税の込み・抜きがそろっていない
入金と支払いは、実際に動く税込みの額で書きます。ところが試算表から写すと、税抜きの数字が混ざりがちです。税込みで受け取った消費税は、確定・中間の納付で出ていくので、税金の行に書きます。
5. 前月繰越が通帳と合わない
実績の月の残高が通帳と合わない表は、予定の数字も信用されません。合わないときは、カードの引落し、口座振替の保険料、振込手数料など、通帳にしか出ない支払いの書き忘れを探します。
6. 入金の額から差し引かれるお金を見落とす
取引先によっては、振込手数料を差し引いて入金したり、立替金や協力会費を相殺したりします。請求額のまま回収の欄に書くと、毎月少しずつ表が甘くなります。過去の通帳で実際の入金額を確かめ、差し引かれる分を見込んでおきます。手形やでんさいで受け取る売上は、期日の月に入金として書きます。売掛金を早く現金にする方法を比べたいときは、売掛金を早く現金にする方法の比較を見てください。
7. 個人事業主が生活費を入れ忘れる
個人事業主は、事業の口座から生活費を引き出すことがあります。この分を行として入れないと、表より実際の残高が少なくなります。所得税の予定納税(7月と11月)も、対象の人は忘れずに入れます。
表で不足が見えたとき:ファクタリングで埋めない方がよい場合
表で足りないとわかったら、ファクタリングで埋めていい?
まず不足の理由を確かめます。設備や税金の時期が原因なら、借入や支払日の相談で埋まることが多いです。ファクタリングは手数料10%・15日で年率約270%。前もって気づけば、安い手が間に合います。
資金繰り表で不足が見えたら、まず不足の理由を確かめます。記入例のように設備の代金や税金の時期が原因なら、借入や支払日の相談で埋まることが多く、費用もかかりません。毎月の経常収支がマイナスで不足が続くなら、どの方法で調達しても足りない状態は変わりません。いま足りないときの手の打ち方は、資金繰りが苦しい・支払いに間に合わないときの対処の順番で、費用の小さい順に説明しています。
ファクタリングは費用が高い
ファクタリング(売掛金を売って、入金日より前に現金にする方法)は、短い期間ほど年率に直した費用が高くなります。記入例の会社が6月15日に、月末に入る売掛金を売って205万円を用意するなら、手数料10%として約228万円分の売掛金が要り、手数料は約23万円です。手数料10%・15日を年率に直すと約270%になります(手数料額÷手取り額÷入金までの日数×365)。同じ手数料で30日なら約135%です。計算のしかたは手数料の計算と実質年率、手取りはシミュレーターで確かめられます。
図鑑のデータで見る、ファクタリングと資金繰り表
図鑑に載せている197サービス(2026年10月16日時点)のうち、最短の入金時間を公式サイトに書いている178サービスでは、152サービスが「最短1日以内」としています。早さだけを見れば、不足の前日でも間に合うように見えます。
しかし、早いことは「直前まで放っておいてよい」理由になりません。前もって不足に気づけば、費用の安い融資や支払日の相談が間に合います。資金繰り表の役目は、この選べる時間を作ることです。
また、必要書類を公式サイトに書いている138サービスのうち、資金繰り表を挙げているのは1サービスだけでした。一方、通帳や入出金明細を挙げているのは107サービスです。ファクタリングの申込みには資金繰り表がなくても進むことが多いですが、どの書類を求められるかはファクタリングの必要書類で確かめてください。使うかどうかを決める前に、資金調達診断でほかの方法と比べることもできます。
ファクタリングを使うのは、資金繰り表で「入金までの数日だけ足りない」「融資が間に合わない」とはっきりした場合に限るのが安全です。使ったら、翌月の表で手数料のぶん入金が減ることも書き込みます。
出典(11件)公的機関の資料・法令。2026.10.17に確認
- 各種書式ダウンロード 小規模事業者/個人事業主の方【国民生活事業】(日本政策金融公庫)www.jfc.go.jp
- 各種書式ダウンロード 中小企業の方【中小企業事業】(日本政策金融公庫)www.jfc.go.jp
- 資金繰り表(記入例)(日本政策金融公庫 国民生活事業)www.jfc.go.jp
- 早期経営改善計画策定支援(中小企業庁)www.chusho.meti.go.jp
- 法人税法(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 消費税法(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 法人税予定申告分の納付書等の送付について(国税庁)www.nta.go.jp
- No.6609 中間申告の方法(国税庁)www.nta.go.jp
- No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例(国税庁)www.nta.go.jp
- No.2040 予定納税(国税庁)www.nta.go.jp
- 厚生年金保険料等の納付(日本年金機構)www.nenkin.go.jp
FAQ
よくある質問
資金繰り表とは何ですか?
資金繰り表は、いつ・いくらお金が入り、いつ・いくら出ていくかを月ごとや日ごとに並べ、月末の預金残高を先まで計算した表です。損益計算書がもうかったかを見る表なのに対し、資金繰り表は払えるかを前もって確かめる表です。本業の出入り、設備などの出入り、借入と返済の3つの区分に分けて書くと読みやすくなります。
資金繰り表の無料テンプレートはどこでダウンロードできますか?
日本政策金融公庫の各種書式ダウンロードのページで、資金繰り表、簡易版、記入例を無料で入手できます。中小企業向けのページには、作成手順及び記載例つきの簡易版と詳細版もあります。中小企業庁の早期経営改善計画策定支援のページには、質問に数字を入れて作る資金予定表かんたん作成ツールがあります。
資金繰り表はエクセルで自分で作ってもいいですか?
作ってかまいません。資金繰り表には法律で決まった様式はなく、公的なひな形も、同じ以上の内容があれば別の様式で代えてよいとされています。左に項目、右に月を並べ、経常収支、経常外収支、財務収支、翌月繰越の行を作ります。翌月繰越は前月繰越に3つの収支を足す式にし、表の下に売上や仕入の見込みの算出根拠を書く欄を作ると、銀行にもそのまま出せます。
資金繰り表は何か月分作ればいいですか?
月ごとの表は6か月から1年先までが目安です。銀行に出すときは、直近の実績を少なくとも1か月、できれば3か月並べ、その続きとして予定を書きます。税金の中間納付のように時期が決まった支払いは、6か月の表では見えないことがあるので、12か月先まで別に書いておくと安心です。残高に余裕がない月は日ごとの表も作ります。
月次の資金繰り表と日次の資金繰り表はどう違いますか?
月次は1か月ごとの合計で、半年から1年の流れや税金の月をつかむのに向いています。日次は入金・支払いの日ごとに並べ、残高がいちばん少なくなる日を見つける表です。記入例では、6月末に310万円残る予定の月でも、日ごとに並べると25日に205万円足りませんでした。月末残高が月の支払いを下回る月は、日ごとに見ます。
銀行に資金繰り表を出すときに気をつけることは何ですか?
実績と予定をつなげて出し、実績の月末残高を通帳と一致させます。売上や仕入の見込みの算出根拠と、前年同月の売上高も書きます。まだ決まっていない借入を財務収入に入れると、借りられる前提の表に見えるので、借入を入れる前と入れた後の2つの表で示すのが確実です。返済の行は、返済予定表の元金の額と合わせます。
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