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資金繰り更新 2026.10.18

法人税・消費税が払えないときは?納税の猶予と換価の猶予の条件・申請の手順

ハカセ
結論

法人税・消費税を一度に払えないときは、納期限の前に税務署の徴収担当に相談し、換価の猶予か納税の猶予を申請します。この記事では、2つの猶予の違い、申請の手順と書類、延滞税の計算例、中間納付への備えを説明します。

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フファクタリング図鑑編集部(執筆)・公開 2026.10.17

法人税・消費税が払えないときは?納税の猶予と換価の猶予の条件・申請の手順

決算を終えて税額を見たら、法人税と消費税を合わせた額が口座の残高を上回っていた。売掛金の入金が遅れ、預かった消費税まで運転資金に回ってしまった。そんなとき、まず知っておきたいのは、国税には「一度に払えない会社」のための正式な制度があることです。この記事では、法人税・消費税が払えないときに使える2つの猶予の違い、申請の手順と書類、延滞税の計算例、次の中間納付への備え方を説明します。

この記事を6枚で

1 / 6
納付書 一度に払えない 税務署に相談 毎月分けて納める

この記事の流れ

払えない税は、猶予で分けて納める

この記事で何がわかるの?

法人税・消費税を一度に払えないときは、納期限の前に税務署の徴収担当へ相談します。猶予が認められると、原則1年以内で毎月分けて納められます。

納期限 督促状 差押え 50日以内 10日を過ぎると 売掛金の差押えは取引先に通知 代金は税務署に払われる

POINT 1

放っておくと差押えに進む

払わずにいると、どうなるの?

納期限から50日以内に督促状が届き、その10日後からは差押えができます。売掛金の差押えは取引先に通知され、代金は税務署に払われます。

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換価の猶予 一度に払うと 事業が続けにくい 申請は納期限から 6か月以内 延滞税 年1.3% 納税の猶予 災害・病気・休廃業 大きな損失 期間は2つとも 原則1年・最長2年 災害・病気は免除

POINT 2

2つの猶予の違い

2つの猶予は、どう使い分けるの?

資金繰りが苦しいだけなら換価の猶予を、納期限から6か月以内に申請します。災害・病気・休廃業・大きな損失があれば納税の猶予です。猶予中の延滞税は年1.3%で計算されます。

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100万円以下 申請書財産収支 100万円を超える 申請書財産目録収支明細 e-Taxで 出せる 補正の通知から20日以内に直す

POINT 3

申請の書類は金額で変わる

申請には、何の書類がいるの?

100万円以下なら申請書と財産収支状況書、超えるなら財産目録と収支の明細書を付けます。補正の通知を受けたら20日以内に直します。

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450万円を月45万円ずつ10か月で納める猶予あり約2.6万円猶予なし約14万円ファクタリング50万円

POINT 4

猶予があると延滞税は約5分の1

猶予があると、どれくらい違う?

450万円を月45万円ずつ10か月で納める例では、延滞税は猶予ありで約2.6万円、猶予なしで約14万円です。ファクタリングで用意すると手数料は50万円でした。

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毎月30万円を別の口座へ 4〜9月の6か月 11月末に中間 180万円 決算後に確定 180万円 3月決算・中間申告が年1回の例

POINT 5

次の中間納付に備える

次の中間納付には、どう備える?

月の売上1,000万円・仕入れ700万円の会社なら、消費税は月30万円が目安です。別の口座に積み立て、11月末の中間180万円に備えます。

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01

結論:払えないと分かったら、納期限の前に税務署の徴収担当へ

社長

税金が払えないとわかったら、まず何をすればいい?

納期限の前に、税務署の徴収担当へ相談します。換価の猶予か納税の猶予が認められると、原則1年以内で毎月分けて納められます。猶予中の延滞税は、2026年は年1.3%で計算されます。

ハカセ

法人税や消費税を納期限までに一度に払えないときは、所轄の税務署の徴収担当に相談し、「換価の猶予」か「納税の猶予」を申請します。認められると、原則1年以内の期間で毎月分けて納められ、差押えや財産の売却を待ってもらえます。

猶予期間中の延滞税も軽くなります。2026年は、猶予期間中の延滞税を年1.3%で計算します(ふつうは納期限の2か月後から年9.1%)。災害や病気による納税の猶予なら、猶予期間中の延滞税は全額免除です。※1※2

反対に、何もせずに納期限を過ぎると、督促状が届き、その10日後からは預金や売掛金を差し押さえられることがあります。税金を払うために手数料の高いお金を集めるのは、猶予を検討したあとです。

この先は、払わずにいると何が起きるか(2章)、2つの猶予の違い(3章)、どちらを申請するか(4章)、申請の手順と書類(5章)、600万円の計算例(6章)、消費税・法人税の中間納付への備え(7章)、猶予が使えないときの方法(8章)、よくある失敗(9章)の順に説明します。

法人税・消費税が払えないと分かったときの動き方
納期限の前に電話所轄の税務署の徴収担当に「一度に払えない」と伝え、使える猶予を聞く
申請書を出す申請書に、財産と毎月の収支を書いた書類を付ける。e-Taxでも出せる
毎月分けて納める原則1年以内。猶予期間中の延滞税は2026年は年1.3%で計算される
次の税は期限内に猶予中に別の税を滞納すると、猶予が取り消されることがある
この章の根拠(2件)
  1. 国税通則法63条1項
  2. 租税特別措置法94条2項
02

法人税・消費税を払わずにいると何が起きるか

社長

少しくらい遅れても、待ってもらえるよね?

督促状を発した日から10日を過ぎると、裁判を経ずに差押えができます。売掛金の差押えは取引先に通知され、代金は税務署に払われます。差押えの前に動くことが大事です。

ハカセ

税金の滞納は、ほかの支払いの遅れと違い、裁判を経ずに財産を差し押さえられます。どの順番で何が起きるかを先に知っておくと、相談の時期を逃しません。

時期 起きること
納期限の翌日から 延滞税が日割りでかかり始める
納期限から50日以内 督促状が届く
督促状を発した日から10日を過ぎても完納しないとき 財産の差押えができる状態になる(預金・売掛金・車両・不動産など)
差押えのあと 差し押さえた財産の取立て・売却(公売)で税に充てられる

表のとおり、督促状が届いてから差押えまでの時間は短いです。実際には電話や文書での催告が先に来ることが多いですが、法律の上では督促から10日を過ぎれば差押えができます。※1※2

売掛金が差し押さえられると、取引先に知られる

会社にとって痛いのは、売掛金の差押えです。売掛金の差押えは、取引先(売掛先)に「債権差押通知書」を送って行います。通知を受けた取引先は、あなたの会社ではなく税務署に代金を払うことになります。※3

取引先に税金の滞納を知られるうえ、入るはずの代金も入らなくなります。差し押さえられた売掛金はファクタリングで売ることもできません。差押えの前に動くことが大事なのは、このためです。

延滞税は「年2.8%から」だが、それだけでは済まない

延滞税の割合(2026年は、納期限の翌日から2か月までが年2.8%、その後が年9.1%)と計算のしかたは、資金繰りが苦しいときの対処の順番にまとめています。割合だけを見ると、ファクタリングやビジネスローンより安く見えます。ただし、放っておけば差押えに進み、取引先との関係や金融機関の評価まで失います。

融資の相談にも響く

東京信用保証協会は、「税金を滞納し完納の見通しが見込めない」場合は保証を取り扱えないと案内しています。滞納があっても、猶予の許可を受けて分割の計画どおりに納めていれば、完納の見通しを説明しやすくなります。保証付き融資の仕組みは信用保証協会とはで説明しています。

滞納のいちばん多い税目は消費税

国税庁によると、令和7年度に新しく発生した国税の滞納は9,935億円で、そのうち消費税が5,172億円(52.1%)、法人税が1,456億円(14.7%)でした(地方消費税を除く)。消費税は売上と一緒に預かるお金ですが、納めるまでは口座の中で運転資金と混ざります。払えなくなる会社が多いのは、この「預かっている感覚」が持ちにくいためです。7章で備え方を説明します。

取引先に届く通知書の中身、全額が差し押さえられる決まり、外してもらう手順は、売掛金の差押えとは(取引先に通知が届くまでの流れと外し方)で詳しく説明しています。

この章の根拠(3件)
  1. 国税通則法37条2項
  2. 国税徴収法47条1項
  3. 国税徴収法62条
03

納税の猶予と換価の猶予の違い

社長

換価の猶予と納税の猶予って、何が違うの?

使える場面が違います。資金繰りが苦しいだけなら換価の猶予で、ほとんどの会社はこちらです。災害・病気・休廃業・事業の著しい損失などがあれば、納税の猶予を使います。

ハカセ

国税の猶予には、大きく分けて「換価の猶予」と「納税の猶予」の2つがあります。名前は似ていますが、使える場面が違います。どちらも申請先は所轄の税務署で、法人税・消費税・源泉所得税などの国税が対象です。

換価の猶予:一度に払うと事業が続けにくくなるとき

換価(かんか)とは、差し押さえた財産を売ってお金に換えることです。換価の猶予は、もともと「売るのを待つ」制度ですが、申請して認められると、新しい差押えや売却を待ってもらいながら、毎月分けて納めることになります。資金繰りが苦しいだけで、災害などの特別な事情がない会社が使うのは、ほとんどがこちらです。※1

国税庁の手引によると、「事業の継続を困難にするおそれがある」とは、事業に要らない資産を処分するなどの見直しをしても、なお一度に納めると事業を休んだりやめたりするおそれがある場合をいいます。「誠実な意思」とは、その国税をほかの支払いより先に納める意思があると税務署長が認められることです。遊休の土地や有価証券がある会社は、先にそれを処分するよう求められることがあります。

納税の猶予:災害・病気・休廃業・大きな損失があったとき

納税の猶予は、払えなくなった原因が特定の事実にあるときに使います。法律が挙げている事実は次のとおりです。※2

  • 財産が災害(震災・風水害・火災など)にあった、または盗難にあった
  • 本人(個人事業主の場合)や生計を一にする親族が病気・けがをした
  • 事業を廃止した、または休止した
  • 事業で著しい損失を受けた
  • 上の事実に似た事実があった(売上の著しい減少や経費の著しい増加で損失が出ている場合など)

このほか、申告期限から1年以上たってから修正申告などで税額が決まった場合も、納税の猶予の対象です。この場合は、その税の納期限(修正申告なら提出した日)までに申請します。※3

2つを並べると

違いを表にまとめます。期間・分割・担保の決まりはほぼ同じで、違うのは「使える場面」「申請の期限」「ほかの滞納」「延滞税の軽くなり方」です。

項目 換価の猶予(申請) 納税の猶予
使える場面 一度に納めると事業の継続が難しくなるおそれがあり、納税に誠実な意思がある 災害・盗難・病気・休廃業・著しい損失などで、一度に納められない
申請の期限 納期限から6か月以内 法律に期限の定めはない(修正申告などで1年以上あとに決まった税は、その納期限まで)
ほかの国税の滞納 あると申請できない(猶予の申請中・猶予中のものは除く) 要件にはない
期間 1年以内。やむを得ない理由があれば、合わせて2年まで延長されることがある 同じ
納め方 原則として猶予期間中の毎月に分けて納める 税務署長が分割の納め方を決めることがある
担保 原則必要。100万円以下・3か月以内・担保にできる財産がないなどの場合は不要 同じ
猶予中の延滞税 猶予特例基準割合(2026年は年1.3%)を超える部分を免除 災害・病気は全額免除、休廃業・損失などは年1.3%を超える部分を免除

延滞税の軽くなり方は、法律の上では「免除」の形をとります。換価の猶予と、休廃業・損失による納税の猶予では、猶予期間中の延滞税のうち猶予特例基準割合(銀行の短期貸出の平均金利をもとにした平均貸付割合0.8%に、0.5%を足した割合)で計算した額を超える部分が免除されます。※4※5

税務署が自分から猶予することもある

申請がなくても、税務署長が職権で換価の猶予をすることがあります。財産をすぐに売ると事業が続けにくくなる場合や、待った方が税を集めやすい場合で、納税に誠実な意思があると認められるときです。申請期限の6か月を過ぎてしまったときも、相談をあきらめる必要はありません。※6

この章の根拠(6件)
  1. 国税徴収法151条の2
  2. 国税通則法46条2項
  3. 国税通則法46条3項
  4. 国税通則法63条1項
  5. 租税特別措置法94条2項
  6. 国税徴収法151条1項
04

どちらを申請するか:問いでたどる分かれ道

社長

うちは、どっちを申請すればいいの?

延滞税の免除が大きい順に確かめます。災害や病気なら納税の猶予。休廃業や大きな損失もそうです。当てはまらず、納期限から6か月以内でほかに滞納がなければ、換価の猶予を申請します。

ハカセ

迷ったら、延滞税の免除が大きい制度から順に当てはまるかを確かめます。災害や病気による納税の猶予なら猶予中の延滞税がゼロになり、それ以外は年1.3%で計算されます。

法人税・消費税が払えないとき、どの猶予を申請するか
  1. 財産が災害・盗難にあった(個人事業主なら本人や家族の病気・けがも)?はい → 納税の猶予(猶予中の延滞税は全額免除)いいえ → 次へ
  2. 事業を休んだ・やめた、または直近1年の損失が前の1年の利益の半分を超えた?はい → 納税の猶予(損失がわかる仮決算書を付ける)いいえ → 次へ
  3. 申告期限から1年以上たって、修正申告などで税額が決まった?はい → 納税の猶予(その税の納期限までに申請)いいえ → 次へ
  4. 納期限から6か月以内で、ほかに滞納している国税がない?はい → 換価の猶予を申請いいえ → 税務署で納付の計画を相談(職権による換価の猶予もある)

「事業の著しい損失」は数字で決まる

2つめの問いの「著しい損失」には、国税庁の手引に数字の基準があります。猶予を受けたい期間の始まりの前日までの1年間(調査期間)の損益で、その前の1年間(基準期間)の利益の半分を超える損失が出ていることです。基準期間も赤字だった場合は、調査期間の損失が基準期間の損失より大きいことが基準になります。

たとえば、前の1年に800万円の利益を出していた会社が、直近の1年で500万円の損失を出したとします。基準は800万円の半分の400万円で、損失500万円はこれを超えるため、著しい損失に当たります。損失が300万円なら当たらないので、換価の猶予を検討します。申請するときは、2つの期間それぞれの仮決算書などを付けます。

消費税も法人税も、同じ制度で申請できる

猶予の制度は税目で分かれていません。法人税と消費税をまとめて申請でき、源泉所得税も対象です(納税の告知がされていない源泉所得税は「所得税徴収高計算書」を付けます)。法人住民税・法人事業税などの地方税と、社会保険料は窓口が違います。地方税の徴収の猶予や、年金事務所での換価の猶予は資金繰りが苦しいときの対処の順番で触れています。

05

申請の手順と書類

社長

申請には、どんな書類がいるの?

猶予を受けたい額が100万円以下なら申請書と財産収支状況書、超えるなら財産目録と収支の明細書を付けます。e-Taxでも出せます。補正の通知を受けたら、翌日から20日以内に直します。

ハカセ

ここでは、多くの会社が使う換価の猶予を例に、申請から許可までの流れを説明します。納税の猶予も、提出する書類が少し増えるほかは同じ流れです。

換価の猶予を申請するまでと、許可のあとの流れ
  1. 1日払える額を出す資金繰り表で、今すぐ払える額と毎月払える額を出す
  2. 当日税務署に電話所轄の税務署の徴収担当に、納期限の前に連絡する
  3. 数日書類を作る申請書と、財産収支状況書(100万円超は財産目録と収支の明細書)
  4. 提出出す・今の分を納めるe-Taxか窓口で出し、今すぐ払える額はすぐに納める
  5. 20日以内補正に応じる補正の通知を受けたら、翌日から20日以内に直す
  6. 許可後計画どおり納める通知された分割の計画どおりに、毎月納める
  1. 今すぐ払える額と、毎月払える額を出す:3か月から1年先までの資金繰り表を作ると、この2つの数字が出ます。作り方は資金繰り表の作り方で説明しています。
  2. 所轄の税務署の徴収担当に電話する:法人税・消費税なら、会社の所在地を管轄する税務署です。納期限の前に「一度に払えない」と伝え、申請する制度と必要な書類を確かめます。
  3. 申請書と添付書類を作る:猶予を受けたい額が100万円以下なら「換価の猶予申請書」と「財産収支状況書」、100万円を超えるなら申請書に「財産目録」と「収支の明細書」を付けます。書式は国税庁のホームページから取れます。
  4. 担保を用意する:猶予を受ける額が100万円以下、猶予期間が3か月以内、担保にできる財産がない、のどれかなら不要です。必要なときは、土地・建物・国債・確実な保証人の保証などから選びます。※1
  5. 提出して、今払える分を納める:e-Taxで作って出すこともでき、スマホからも使えます。財産収支状況書に書いた「現在納付可能資金額」は、すぐに納めます。
  6. 補正と質問に応じる:書類が足りないと、電話や補正通知書で直すよう求められます。補正通知書を受けた日の翌日から20日以内に直さないと、申請を取り下げたものとみなされます。
  7. 許可通知のとおりに納める:許可されると「換価の猶予許可通知書」が届きます。書かれた分割の計画どおりに、毎月納めます。

財産収支状況書で、毎月の納付額が決まる

申請でいちばん大事なのは、財産収支状況書(100万円超は財産目録と収支の明細書)です。毎月いくら納めるかは、この書類の数字から決まります。国税庁の手引の書き方は、次の3段階です。

  • 現在納付可能資金額:申請する日の現金・預金・すぐ売れる株などのうち、すぐ納められる額。おおむね1か月以内に払う事業の支出(仕入・給与・家賃など)に充てる分は、残してよいとされています。
  • 納付可能基準額:今後の毎月の平均的な収入から、事業を続けるのに本当に必要な支出を引いた額。これが毎月の分割額の目安になります。
  • 分割納付計画:猶予期間のすべての月に、納める額を書きます。臨時の入金や支出がある月は、増やしたり減らしたりできます。

支出に入れてよいのは、事業の継続に本当に必要なものだけです。要らない資産を買うための支出や、返す期限の決まっていない借金の返済は認められません。減価償却費のように実際にお金が出ていかない費用も入れません。数字が実態と合っているかは、帳簿で確かめられることがあります。

手引の記入例では、支出の側に「11月の消費税35万円を納めるための積立て」を入れています。猶予中も、次に来る税は期限どおりに納める前提で計画を作るということです。

許可されないことがある場合

要件に当てはまらないときのほか、税務署の職員の質問に答えない、帳簿の確認を拒む、偽りの帳簿を出す、といった場合も許可されません。不許可となった後に、同じ税で申請をくり返すと、誠実な申請ではないとされることがあります。不許可や、許可の内容に不服があるときは、決められた期間内に不服申立てができます。

なお、換価の猶予を申請しても、許可されても、督促状は届きます。手続きの上で送られるものなので、届いても慌てる必要はありません。

この章の根拠(1件)
  1. 国税通則法50条
06

数字で確かめる:600万円の税を10か月で納めると

社長

猶予があるかないかで、そんなに違うの?

450万円を月45万円ずつ10か月で納める例では、延滞税は猶予ありで約2万6,000円、猶予なしで約14万円でした。ファクタリングで一度に用意すると、手数料は50万円です。

ハカセ

猶予を受けるかどうかで、かかるお金はどれだけ違うのか。1つの会社の例で計算します。

前提

  • 3月決算の会社。5月末の納期限に、法人税240万円と消費税(地方消費税を含む)360万円、合わせて600万円を納める
  • 手元からすぐ払えるのは150万円。残りの450万円は、毎月45万円ずつなら払える(10か月で払い終わる)
  • 延滞税は、月を30日、毎月末に45万円ずつ払うとして、残っている税額に日割りでかけた概算(端数の処理は省き、猶予期間は納期限の翌日から始まるとする)

150万円と月45万円は、どう決まるか

この2つの数字は、5章の財産収支状況書の考え方で出します。申請する日の預金が400万円で、そのうち今後おおむね1か月に払う仕入・給与・家賃などに250万円が要るなら、すぐ納められる額は150万円です。

毎月の額は、税込の平均的な入金が月1,100万円、事業を続けるのに必要な支出が月1,055万円なら、差し引き45万円です。支出には減価償却費を入れず、借入の返済は約定どおりの額を入れます。この数字が実態より小さいと、帳簿の確認で直されることがあります。

やり方 かかるお金 計算
A 換価の猶予が認められ、10か月で分けて納める 延滞税 約2万6,000円 残っている税に年1.3%
B 猶予を受けずに、同じように分けて納める 延滞税 約14万円 最初の2か月は年2.8%、その後は年9.1%
C ファクタリングで450万円を一度に用意して納める 手数料 50万円 売掛金500万円を手数料10%で売る(30日後に入金予定のもの)

同じ450万円を10か月かけて納めるのでも、猶予の許可があるかどうかで延滞税は約5倍違います。Bは延滞税の額だけでなく、そのあいだ督促と差押えのおそれを抱えたままになる点がもっと大きな違いです。

Cのファクタリングは、手数料が50万円で、Aの延滞税の約19倍です。手数料10%・30日の実質年率は、10÷90÷30×365で約135%になります(計算の式はファクタリングの手数料の計算と実質年率)。しかも、450万円を前倒しで手に入れた分、翌月の入金が減ります。来月また足りなくなれば、もう一度売ることになります。

税600万円のうち450万円を、月45万円ずつ10か月で納めるときにかかるお金(計算例)
  1. 換価の猶予が認められた約2.6万円
  2. 猶予なしで同じように分けて払った約14万円
  3. ファクタリングで450万円を一度に用意50万円

延滞税(猶予特例の年1.3%)延滞税(年2.8%→年9.1%)ファクタリングの手数料(10%)

この計算の結論は「税金のために高いお金を集めるのは、順番が逆」ということです。手数料の額と、猶予を受けた場合の延滞税は、手取りと実質年率のシミュレーターで自分の数字に置き換えて比べられます。

07

消費税・法人税の中間納付に備える

社長

今回をしのいでも、また次の税が来るよね?

半年後には中間納付が来ます。月の売上1,000万円・仕入れ700万円の会社なら、消費税は月30万円が目安。別の口座に積み立てておけば、11月末の中間180万円に困りません。

ハカセ

猶予で今回の税をしのいでも、半年後には中間納付が来ます。消費税の滞納が多いのは、確定の納付だけでなく、中間納付が資金繰り表から漏れやすいことも理由です。

消費税の中間申告は、前の年の税額で回数が決まる

消費税の中間申告の回数と1回の額は、直前の課税期間の確定消費税額(国税分。地方消費税を含まない)で決まります。中間納付のときは、国税分に地方消費税(国税分の78分の22)を足して納めます。

前の年の確定消費税額(国税分) 中間申告の回数 1回の額(国税分)
48万円以下 不要(任意で出せる) -
48万円超・400万円以下 年1回 前の年の6/12
400万円超・4,800万円以下 年3回 前の年の3/12
4,800万円超 年11回 前の年の1/12

前の年が12か月より短い場合は計算が変わります。期限は原則として、中間申告の対象の期間が終わった翌日から2か月以内です。

計算例:月の売上1,000万円の会社

税抜の売上が毎月1,000万円、課税仕入れ(消費税のかかる仕入れや経費)が毎月700万円、税率10%の会社で考えます。

  • 毎月の納める消費税の目安:(1,000万円-700万円)×10%=30万円
  • 1年の納める消費税:30万円×12か月=360万円(うち国税分は280.8万円)
  • 国税分が48万円超・400万円以下なので、中間申告は年1回。中間の額は、国税分140.4万円+地方消費税39.6万円=180万円
  • 3月決算なら、4〜9月分の中間納付の期限は11月末。残りの180万円は、決算後の確定申告で納める

この会社は、毎月30万円を別の口座に移しておけば、11月と翌年5月の納付に困りません。国税庁は、将来納める見込みの国税を、e-Taxに登録した口座から指定した日に前もって納められる「予納ダイレクト」も案内しています。積み立てた分を少しずつ先に納めてしまえば、口座の中で運転資金と混ざりません。

業績が落ちた年は「仮決算」で中間の額を減らせる

中間申告は、前の年の実績で計算する方法のほかに、中間の期間で仮の決算をして、その実際の数字で申告する方法も選べます。上の会社で、上期の売上が落ちて、4〜9月の実際の消費税が120万円だったとします。前の年の実績なら180万円、仮決算なら120万円で、中間で60万円少なく済みます。

注意点は3つあります。仮決算で税額がマイナスになっても、中間では還付されません。仮決算の中間申告は期限内にしか出せません。中間申告書を出さないと、前の年の実績による額で申告したものとみなされます。

法人税の中間申告も同じ考え方

法人税も、前の事業年度の法人税額を月数で割って6を掛けた額が10万円を超えると、中間申告と納付が必要です。前の年の法人税が240万円(12か月)なら、中間は120万円です。法人税にも仮決算による中間申告があり、仮決算の税額の方が少ないときに使えます。期限は、事業年度が始まってから6か月を過ぎた日から2か月以内です。※1※2

中間納付も国税なので、払えないときは同じように猶予を相談できます。ただ、確定の税で猶予を受けている最中に中間の税を滞納すると、今の猶予が取り消されることがあります(9章)。猶予の分割額と次の中間納付は、同じ資金繰り表に並べて計画します。

この章の根拠(2件)
  1. 法人税法71条1項
  2. 法人税法72条1項
08

猶予が使えないとき・使っても足りないときの方法

社長

猶予が使えなかったら、どうすればいい?

それでも、まず税務署に納付の相談をします。税より後回しにできる支払いを見直し、公的な融資も相談します。ファクタリングを使うなら、差押えの前の短いずれだけにとどめましょう。

ハカセ

猶予は万能ではありません。要件に当てはまらない場合や、分割にしても毎月の額が払えない場合の方法を、費用の安い順に並べます。

1. 要件に当てはまらなくても、まず税務署に相談する

ほかに滞納がある、納期限から6か月を過ぎた、などで換価の猶予を申請できなくても、税務署との納付の相談はできます。前の章で触れた職権による換価の猶予もあります。相談せずに放っておくことが、いちばん選択肢を減らします。

2. 支払いの順番を見直す

税を優先して納める意思があることは、換価の猶予の要件の1つです。役員報酬を減らす、急がない設備の購入を延ばす、仕入先に支払いの延期を頼むなど、税より後回しにできる支払いがないかを先に見直します。

3. 公的な融資・保証付きの融資を相談する

日本政策金融公庫や保証付きの融資は、ファクタリングよりずっと低い費用で運転資金を借りられます。ただし、申込みから入金まで1か月ほどかかり、納期限の直前では間に合わないことがあります。猶予で時間を確保してから、そのあいだに申し込む順番が現実的です。公庫の申込みの流れは日本政策金融公庫の融資で説明しています。

4. ファクタリングは「差押えの前」の短いずれだけに

ファクタリングを使ってよいのは、売掛金の入金日と納付の日が数週間ずれているだけで、入金のあとは自力で回る場合です。たとえば猶予の分割で決めた月に、大口の入金が数日だけ遅れるようなときです。毎月の税をファクタリングで払う形になるなら、資金繰りそのものを見直す段階です。

図鑑に載せている197サービス(2026年10月16日時点)のうち、税金・社会保険料の滞納中でも申込みを受け付けると公式サイトに書いているのは80(41%)、受け付けないと書いているのは6でした。残りの111は記載がありません。滞納がある場合の審査の見られ方は審査に落ちる理由と次にやること、滞納中に使える会社は税金を滞納しているときのファクタリングで調べられます。

どの方法が自分の会社に合うか迷うときは、資金調達診断で、急ぎの度合いと金額から順番を確かめられます。

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よくある失敗と注意点

社長

猶予をもらったあとに、気をつけることは?

猶予中に次の税を滞納したり、分割の計画どおりに納めなかったりすると、猶予が取り消されることがあります。督促状を放っておいて6か月を過ぎる、補正の期限を逃す、にも注意です。

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猶予を受けられる会社でも、手続きの進め方で受けられなくなったり、途中で取り消されたりすることがあります。国税庁の手引に書かれている決まりから、つまずきやすい点を挙げます。

督促状を放っておき、6か月を過ぎる

換価の猶予の申請は、納期限から6か月以内です。督促状や催告の電話をそのままにしているうちに期限を過ぎると、申請による猶予は使えなくなります。払える見込みが立たなくても、まず連絡を入れます。

猶予中に、次の税を滞納する

猶予を受けている税とは別に、新しく納める税が滞納になると、猶予が取り消されることがあります。中間納付、源泉所得税、翌年の確定申告の税が当てはまります。分割の計画を作るときは、次に来る税の積立てを支出に入れておきます。

分割の計画どおりに納めない

許可通知に書かれた計画どおりに納めないと、猶予が取り消されたり、期間が短くされたりすることがあります。取引先の倒産など、予想できなかった事情で払えなくなりそうなときは、遅れる前に税務署に相談します。やむを得ない事情があれば、計画の変更や期間の延長が認められることがあります。

今すぐ払える額を納めない

財産収支状況書に書いた「現在納付可能資金額」は、すぐに納める前提の額です。手引には、納めないと不許可になることがあると書かれています。手元に残す運転資金は、おおむね1か月以内の支出の分までです。

補正の期限を逃す

書類の不備で補正通知書が届いたら、受けた日の翌日から20日以内に直します。過ぎると申請を取り下げたものとみなされ、最初からやり直しになります。

源泉所得税や消費税を運転資金に使い続ける

源泉所得税は従業員の給与から、消費税は取引先から預かったお金です。これを給与や仕入の支払いに回すと、決算の後にまとめて足りなくなります。毎月の積立てを口座で分けておくことが、いちばん確かな対策です。

税金を高い手数料で払い、翌月も同じことになる

6章の計算のとおり、ファクタリングの手数料は猶予中の延滞税より一桁以上高くつきます。猶予を検討せずに資金を集めると、その手数料の分だけ翌月の資金繰りがさらに苦しくなります。

出典(10件)公的機関の資料・法令。2026.10.18に確認
  1. No.9206 国税を期限内に納付できないとき(国税庁)www.nta.go.jp
  2. 猶予の申請の手引(国税庁・令和8年4月)www.nta.go.jp
  3. 延滞税の割合(国税庁)www.nta.go.jp
  4. No.6609 中間申告の方法(消費税)(国税庁)www.nta.go.jp
  5. 令和7年度租税滞納状況の概要(国税庁・令和8年8月)www.nta.go.jp
  6. 国税通則法(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
  7. 国税徴収法(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
  8. 租税特別措置法(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
  9. 法人税法(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
  10. ご利用いただけない中小企業とは(東京信用保証協会)www.cgc-tokyo.or.jp

FAQ

よくある質問

法人税が払えないとどうなりますか?

納期限の翌日から延滞税がかかり、納期限から50日以内に督促状が届きます。督促状を発した日から10日を過ぎても完納しないと、預金や売掛金などを差し押さえられることがあります。売掛金の差押えは取引先に通知されます。払えないと分かった時点で、納期限の前に所轄の税務署の徴収担当へ相談し、換価の猶予などを申請するのが先です。

消費税が払えないときは分割できますか?

できます。換価の猶予が認められると、原則1年以内の期間で、毎月分けて納めます。やむを得ない理由があれば、合わせて2年まで延長されることがあります。申請は納期限から6か月以内で、ほかに滞納している国税がないことなどが要件です。猶予期間中の延滞税は、2026年は年1.3%で計算されます。

納税の猶予と換価の猶予は何が違いますか?

換価の猶予は、一度に納めると事業の継続が難しくなるおそれがあるときに使う制度で、納期限から6か月以内に申請します。納税の猶予は、災害・病気・事業の休廃業・事業の著しい損失などがあって一度に納められないときに使います。災害や病気による納税の猶予では、猶予期間中の延滞税が全額免除になります。

猶予の申請にはどんな書類が必要ですか?

猶予を受けたい額が100万円以下なら、申請書と財産収支状況書を出します。100万円を超えるなら、申請書に財産目録と収支の明細書を付けます。納税の猶予では、損失がわかる仮決算書など、猶予の理由になる事実を示す書類も付けます。100万円を超え、期間が3か月を超える場合などは、原則として担保も必要です。

猶予中の延滞税はいくらになりますか?

2026年は、猶予期間中の延滞税を年1.3%で計算します。猶予がなければ、納期限の翌日から2か月までが年2.8%、その後は年9.1%です。この記事の計算例では、450万円を月45万円ずつ10か月で納めると、猶予ありで約2万6,000円、猶予なしで約14万円でした。

税金を払うためにファクタリングを使ってもよいですか?

使うこと自体は違法ではありませんが、順番が逆です。この記事の計算例では、450万円を手数料10%で用意すると手数料は50万円で、猶予を受けた場合の延滞税約2万6,000円の約19倍でした。まず猶予を申請し、入金が数日遅れるだけの短いずれを埋めるときに限って検討します。

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