会計更新 2026.10.17
買掛金とは?未払金との違いと支払いの管理、支払いを延ばすときの注意
買掛金とは、商品や材料の仕入・本業の外注で、代金をあとで払う約束になっている未払いのお金です。この記事では未払金との違い、仕訳、管理の4つの手順、支払日が資金繰りに効く大きさを計算例で示し、支払いを延ばすときの取適法の注意をまとめます。
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フファクタリング図鑑編集部(執筆)・公開 2026.10.17

この記事は、仕入先や外注先への支払いを抱え、「買掛金という言葉の意味」から「支払いをどう管理し、足りないときに支払日を動かしてよいのか」までを知りたい中小企業の経営者・個人事業主に向けて書いています。帳簿の言葉の説明だけで終わらせず、買掛金が手元のお金にどう効くかを計算例で示し、支払条件を見直すときに法律で引かれている線も確かめます。
この記事を6枚で
1 / 6結論:買掛金は「仕入れて、まだ払っていない代金」。管理の要は支払日と残高
買掛金って、そもそも何のこと?
商品や材料の仕入、本業の外注で、代金をあとで払う約束のお金です。借金ではありませんが、決まった日に必ず出ていきます。管理の要は支払日と残高です。
買掛金(かいかけきん)とは、商品や材料を仕入れたり、本業のために外注したりして、代金をあとで払う約束になっているお金です。財務諸表のルールでは「通常の取引に基づいて発生した営業上の未払金」とされ、1年以内に払う負債(流動負債)に入ります。※1
買掛金は借金ではありませんが、決まった日に必ず出ていくお金です。仕入先から見れば、あなたの会社の買掛金は「売掛金」です。売る側の話は売掛金の記事にゆずり、この記事では払う側の目線で書きます。
押さえることは3つです。
- 意味と区別:本業の仕入・外注なら買掛金、それ以外の未払いは未払金。この区別で仕訳も管理表も分かれます。
- 管理:請求書と納品の照合、仕入先ごとの台帳、支払予定表、残高の確認。この4つで二重払いと払い忘れを防ぎます。
- 資金繰り:支払日が後ろにあるほど手元にお金が残ります。ただし、支払日を延ばすには相手との合意が要り、取適法の対象の取引では「受け取ってから60日以内」の線を越えられません。
この先は、ほかの科目との違い(2章)、仕訳(3章)、管理の手順(4章)、計算例で見る資金繰りへの影響(5章)、支払条件の見直し方(6章)、取適法で禁じられていること(7章)、支払いに足りないときの選び方(8章)、よくある失敗(9章)の順に説明します。
この章の根拠(1件)
- 財務諸表等規則47条2号
買掛金と未払金・未払費用・支払手形の違い
未払金とは、どう分ければいいの?
軸は本業の仕入・外注かどうかです。本業なら買掛金、パソコンや広告費などは未払金にします。迷う外注費は会社ごとに決め、毎年同じ扱いを続けます。
「まだ払っていないお金」には、いくつかの科目があります。分け方の軸は、本業の仕入・外注かどうかと、支払いの形です。
| 科目 | どんな未払いか | 例 |
|---|---|---|
| 買掛金 | 本業の商品・材料の仕入、本業の外注で、代金をあとで払うもの | 小売店が卸から仕入れた商品、工務店が下請けに出した工事、制作会社が外注したデザイン |
| 未払金 | 本業の仕入以外で、支払額と支払日が決まっている未払い | パソコンや車の購入代金、広告費、事務用品のカード払い |
| 未払費用 | 家賃や利息など、続けて受けているサービスのうち、期末までに過ぎた期間の分でまだ支払日が来ていないもの | 決算日までの借入金の利息、月の途中で締める給与の残りの日数分 |
| 支払手形・電子記録債務 | 買掛金を手形やでんさいで払うと決めたもの | 仕入代金を約束手形で振り出した分 |
同じ外注費でも、本業そのものの外注なら買掛金、本業と関係の薄い依頼なら未払金にする会社が多いです。どちらにするかは会社ごとに決め、毎年同じ扱いを続けます。年によって変えると、決算書を見る金融機関が増減の理由を読めなくなります。
買掛金になる取引・ならない取引
買掛金が生まれるのは、品物やサービスを先に受け取り、代金をあとで払う「掛け」の取引だけです。仕入の場でその日のうちに現金や振込で払えば、買掛金は立てずに「仕入/現金」で終わります。反対に、代金を先に払ってから品物を受け取る場合は、払ったお金を「前払金」にし、品物が届いたときに仕入へ振り替えます。
個人事業主も、掛けで仕入れていれば同じように買掛金を使います。年末に払っていない仕入代金を買掛金にしないと、その年の経費が少なくなり、所得が実際より大きく出ます。
買掛金と売掛金は、同じ取引の表と裏
1つの取引を、仕入れた側が書けば買掛金、売った側が書けば売掛金です。金額も支払日も同じものを指します。自社が持つ売掛金をどう管理し、早く現金にするかは、売掛金を早く現金にする方法の比較で扱っています。
決算書で見られる場所
買掛金は貸借対照表の「流動負債」の先頭近くに載ります。金融機関は、売上や仕入に比べて買掛金が急に増えていないかを見ます。急な増加は、支払いを遅らせて資金をつないでいるサインとして読まれることがあるためです。
買掛金の仕訳:仕入れたとき・払ったとき・値引きと相殺
仕訳は、どう書けばいいの?
仕入れたときに貸方に立て、払ったときに借方で消す、の2行が基本です。返品や相殺も買掛金を減らします。残高は、請求書のまだ払っていない額と一致させます。
買掛金の仕訳は、仕入れたときに右側(貸方)に立て、払ったときに左側(借方)で消す、の2行が基本です。ここでは税込みの金額で書く方法(税込経理)で示します。
| 場面 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 商品33万円を掛けで仕入れた | 仕入 330,000 | 買掛金 330,000 |
| 月末に普通預金から払った | 買掛金 330,000 | 普通預金 330,000 |
| 不良品1万1,000円分を返品した | 買掛金 11,000 | 仕入 11,000 |
| 仕入先に売った代金22万円と相殺した | 買掛金 220,000 | 売掛金 220,000 |
| 早く払って6,600円の割引を受けた | 買掛金 330,000 | 普通預金 323,400/仕入割引 6,600 |
表の最後の「仕入割引」は、支払日より早く払ったことへの見返りで、利息に近い性格の収益として扱います。品質の問題などで代金を下げてもらう「仕入値引」とは別の科目です。振込手数料を自社で負担したときは「支払手数料」で費用にします。
税抜経理の場合
消費税を分けて記録する方法(税抜経理)では、仕入の額と消費税を別の行にします。買掛金は、仕入先に実際に払う税込みの額のままです。
| 場面 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 商品30万円(消費税10%)を掛けで仕入れた | 仕入 300,000/仮払消費税 30,000 | 買掛金 330,000 |
どちらの方法でも、買掛金の残高は「仕入先の請求書に書かれた、まだ払っていない額」と一致させます。台帳と請求書の額がずれる原因の多くは、税込みと税抜きの取り違えです。
決算日に払っていない分は、そのまま買掛金として残ります。仕入れた品物が届いているのに請求書がまだ来ていない分も、納品書をもとに計上します。計上を忘れると、利益が実際より大きく見えます。
ファクタリングを使ったときの売掛金側の仕訳や、手数料の消費税の扱いはファクタリングの仕訳と勘定科目にまとめています。
買掛金の管理:二重払いと払い忘れを防ぐ4つの手順
二重払いや払い忘れを防ぐには?
注文・納品・請求の照合、仕入先ごとの台帳、支払予定表、月末と決算の残高の確認、の4つを毎月同じ順で回します。支払日ごとに分けると、預金が最も少なくなる日がわかります。
買掛金の管理とは、「何を、いくら、いつ払うのか」を、請求書が届く前から把握しておくことです。仕入先が5社を超えたあたりから、記憶や通帳だけでは追えなくなります。次の4つを、毎月同じ順番で回します。
手順1:注文・納品・請求の3つを照合する
請求書が届いたら、注文書(発注書)と納品書と突き合わせます。数量、単価、値引きの反映、前月分との重なりを確かめます。照合で合わない請求書は、払う前に仕入先へ問い合わせます。払ってから返金を頼むより、ずっと手間が少なく済みます。
手順2:仕入先ごとの台帳(買掛金元帳)をつける
仕入先ごとに「前月の残高+今月の仕入−今月の支払い=今月の残高」を記録します。会計ソフトなら、買掛金に取引先の補助科目を付けると自動で作れます。台帳があると、仕入先から残高の問い合わせが来たときに、すぐに答えられます。
手順3:支払予定表を作り、資金繰り表に写す
締め日と支払日を仕入先ごとに一覧にし、向こう2〜3か月の支払額を日付順に並べます。これを預金の残高と入金の予定と並べれば、どの日にお金が足りなくなりそうかが前もってわかります。支払予定表は、買掛金の管理と資金繰りをつなぐ表です。
たとえば仕入先が3社なら、次のような表になります(単位:万円)。
| 仕入先 | 締め日 | 支払日 | 11月に払う額 | 12月に払う額 |
|---|---|---|---|---|
| A社(材料) | 月末 | 翌月末 | 320 | 350 |
| B社(外注) | 20日 | 翌月10日 | 180 | 210 |
| C社(消耗品) | 月末 | 翌月20日 | 40 | 40 |
| 計 | 540 | 600 |
月の合計だけでなく、10日・20日・月末の支払日ごとに分けて見ると、預金が最も少なくなる日がわかります。この例では、12月10日にB社へ210万円、20日にC社へ40万円、月末にA社へ350万円が出ていきます。売上の入金が月末に集まる会社なら、月の半ばの支払いが資金繰りの山になります。
手順4:月末と決算で残高を確かめる
決算のときは、主な仕入先に残高の確認を頼むか、仕入先から届く請求書の「前回請求額・入金額・今回請求額」の欄と台帳を突き合わせます。ずれていたら、どちらかの計上漏れか二重計上です。
請求書を受け取る人と、振り込む人を分ける
小さな会社では、社長が1人で請求書を受け取り、振込までしていることがよくあります。間違いや不正を防ぐには、請求書を照合する人と、振込を承認する人を分けるのが基本です。2人で分けられないなら、振込の前日に支払予定表と振込の一覧を見比べる時間を、毎月の決まりにします。インターネットバンキングの多くは、振込の作成と承認を別の担当者に分ける設定ができます。
- 請求書が届いたら注文・納品・請求を照合数量・単価・値引きを確かめ、合わなければ払う前に問い合わせる
- 毎月仕入先ごとの台帳をつける前月残高+仕入−支払い=今月の残高
- 毎月支払予定表を作る締め日と支払日を一覧にし、2〜3か月先まで資金繰り表に写す
- 月末・決算残高を確かめる仕入先の請求書の前回請求額・入金額の欄と台帳を突き合わせる
書類の保存と、払い忘れの時効
請求書や納品書は、法人なら確定申告書の提出期限の翌日から原則7年間の保存が必要です。青色申告で欠損金が出た年は10年間になります。
払い忘れた買掛金も、すぐには消えません。仕入先が「払ってもらえる」と知った時から5年、または払ってもらえる時から10年のどちらか早いほうで時効になります。※1ただし、残高を認める連絡をすると時効は振り出しに戻ります。※2時効を当てにせず、見つけた未払いは払うのが基本です。
この章の根拠(2件)
- 民法166条1項
- 民法152条1項
買掛金は資金繰りにどう効くか:計算例で確かめる
支払日って、資金繰りにどれくらい効くの?
月600万円を仕入れる会社の例では、買掛金は平均約900万円です。支払日を10日延ばすと平均200万円が手元に残りますが、増えるのは最初の1回だけです。
買掛金は「仕入先にお金を立て替えてもらっている状態」とも言えます。支払日が後ろにあるほど、その間は手元にお金が残ります。どのくらい効くのかを、ひとつの会社の例で計算します。
前提:月に600万円を仕入れる会社
- 毎日ほぼ同じ額を仕入れ、月の仕入は600万円(1日あたり20万円)
- 支払条件は「月末締め翌月末払い」。納品から支払いまで30〜60日、平均で約45日
この条件だと、月末の支払いの直前には、前月分と今月分の2か月分、1,200万円の買掛金があります。支払った直後は600万円で、平均すると約900万円です。平均で900万円を、仕入先に立て替えてもらっていることになります。
| 場面 | 計算 | 結果 |
|---|---|---|
| 今の買掛金の平均 | 1日20万円×平均45日 | 約900万円 |
| 支払日を10日延ばしてもらえたら | 1日20万円×10日 | 平均で200万円が手元に多く残る |
| 入金が平均75日・支払いが平均45日のとき | 1日20万円×差30日 | 600万円を自社で立て替えている |
支払日を10日延ばすと、平均で200万円が手元に増えます。ただし、増えるのは最初の1回だけです。翌月からは支払いの時期がずれるだけで、毎月200万円ずつ増えるわけではありません。また、売上の入金が支払いより遅い会社は、その差の日数分を自社で立て替えています。入金と支払いのずれが資金繰りに与える影響は、資金繰りが苦しいときの対処の順番の資金繰り表の例でも確かめられます。
自社の「支払いまでの平均日数」を出してみる
自社の買掛金が何日分の仕入にあたるかは、決算書の数字で出せます。式は「買掛金の残高÷(1年の仕入÷365)」です。これを買入債務回転期間と呼びます。
例の会社なら、1年の仕入は600万円×12か月で7,200万円です。決算日の買掛金が900万円なら、900÷(7,200÷365)で約46日になります。支払条件から見た平均の約45日とほぼ同じなので、約束どおりに払えていると読めます。
この日数が前の年より大きく伸びているのに、支払条件を変えた覚えがないなら、どこかで支払いが遅れているか、計上が二重になっている疑いがあります。金融機関もこの日数の変化を見るので、決算の前に台帳で原因を確かめておきます。
仕入が増える月は、支払いが1か月遅れてやってくる
掛けの仕入では、仕入が増えた月ではなく、その翌月以降に支払いが増えます。例の会社が繁忙期の11月に仕入を900万円に増やすと、11月の支払いは前月分の600万円のままで、12月末に900万円が出ていきます。12月は賞与や納税が重なりやすい月でもあります。仕入を増やすと決めた時点で、支払予定表の翌月の欄に書き込み、その月の預金で足りるかを確かめます。
早く払う割引は、年率に直すと大きい
反対に、仕入先から「翌月10日までに払えば2%引き」と持ちかけられることがあります。翌月末より20日早く払う代わりに、600万円なら12万円が安くなります。
これを年率に直すと、2÷98÷20日×365で約37%です。手元にお金があるなら、預金に置いておくよりはるかに得です。年2%の融資で20日分のお金を借りても、利息は600万円×2%×20÷365で約6,600円です。割引の12万円を大きく下回ります。
支払いに充てるお金の費用を、同じ物差しで比べる
買掛金の支払いに足りないときに考える手段も、年率に直すと差がはっきりします。ファクタリングで支払いのお金を作る場合、売掛金を手数料10%・30日前に売ると、実質年率は10÷90÷30×365で約135%です。手取り600万円を作るには約667万円の売掛金を売り、約67万円の手数料を払う計算です。年率の出し方は手数料の計算と実質年率で説明しています。
遅れたときの損害金法律の利率・割引の年率支払いのお金を作る費用
図の上2本は、支払いが遅れたときに相手に払う損害金の率です。取適法の対象でない取引で、遅れたときの率を契約で決めていなければ、法定利率の年3%で計算します。※1※22026年4月から2029年3月までの法定利率も年3%です。600万円の支払いが10日遅れると、年3%なら約4,900円、取適法の年14.6%なら約2万4,000円です。
ただし、損害金が安いことは、遅らせてよい理由になりません。黙って遅らせれば、次から前払いや取引の停止を求められ、失う信用は損害金よりずっと大きくなります。動かすなら、支払日の前に相談して合意を取ります。
この章の根拠(2件)
- 民法419条1項
- 民法404条
支払条件を見直す・延ばしてもらうときの進め方
支払いを延ばしてもらうには、どう頼めばいい?
困ってからではなく、取引が順調なうちに切り出します。理由と期間と見返りをそろえて伝え、合意は書面に残します。断られたら、それ以上押さないことも大切です。
支払日は、仕入先と合意して決める取引条件です。こちらの都合で一方的に変えることはできません。見直しを頼むなら、困ってからではなく、取引が順調なうちに切り出すのが基本です。ここでは平時に条件を見直す進め方を説明し、目の前の支払いに間に合わないときの頼み方は支払先との交渉のしかたにゆずります。
頼む前に確かめること
- その取引が取適法の対象か:対象なら、受け取ってから60日を超える支払日にはできません(次の章)。
- 相手の資金繰り:相手が小さな事業者で、自社からの入金を給与に充てているなら、延長は相手を苦しめます。
- 自社の入金の条件:売上の入金が遅いことが原因なら、支払いを延ばす前に、取引先の入金を早める相談が先に効くこともあります。
相手にとっての見返りを用意する
延長を頼むだけでは、相手には損しかありません。次のような見返りを組み合わせると、話が進みやすくなります。
- 発注量の見通しを示し、一定期間の取引を約束する
- 支払日を延ばす代わりに、振込の日を毎月固定し、確実に払う
- 一部の取引だけ延ばし、残りは今の条件のままにする
- 手元に余裕がある月は、割引を受けて早く払う
伝え方の例
平時の見直しは、理由と期間と見返りをそろえて伝えます。たとえば次のように書きます。
「来年4月から、売上先の支払条件が月末締め翌々月末払いに変わります。つきましては、4月納品分から、貴社へのお支払いを月末締め翌月末払いから翌々月10日払いへ変更させていただけないでしょうか。代わりに、来年度の発注量の見込みを四半期ごとにお伝えし、お支払い日は毎月必ずこの日に固定します。」
この例は、相手が取適法の対象の受注者でない場合の話です。対象の取引なら、月末締めで翌々月10日払いにすることはできません。相手から断られても、それ以上押さないことも大切です。取引上の立場を使って条件をのませると、取適法の対象外の取引でも、独占禁止法の優越的地位の濫用が問題になることがあります。
合意は書面に残す
新しい締め日・支払日・適用を始める月を、メールや覚書で残します。支払予定表と資金繰り表も、その日から書き換えます。適用を始める月の支払いを、旧条件と新条件の両方で数えて二重に計上する間違いがよく起きます。
支払方法を変えるときの注意
支払いを手形に切り替えて実質的に先へ延ばす方法は、取適法の対象の取引では2026年1月から使えません。でんさい(電子記録債権)や一括決済方式も、支払期日までに満額の現金に換えにくいものは同じく禁止です。対象外の取引でも、相手が現金化のために割引料を負担する形になる支払い方法は、相手にとって実質の値下げであることを踏まえて相談します。
支払いを延ばす・減らすときに取適法で禁じられていること
支払いを延ばすのに、法律の決まりはあるの?
取適法の対象の委託取引では、支払期日は受け取った日から60日以内です。「月末締め翌々月払い」は越えます。手形での支払いや、振込手数料を代金から引くことも違反です。
2026年1月から、下請法は「中小受託取引適正化法(取適法)」に変わりました。製造・修理・情報成果物の作成・役務の提供・運送を、資本金や従業員数が一定の基準を満たす相手に委託する取引が対象です。自社が発注する側(委託事業者)に当たるなら、買掛金の払い方にいくつもの決まりがかかります。
まず、その買掛金が「委託」かどうか
公正取引委員会のQ&Aでは、規格品や標準品をそのまま買うことは、仕様を指定していないので原則として「委託」に当たらないとしています。一方、規格品でも自社の社名を印刷させるなど仕様を指定すれば委託に当たります。卸から既製品を仕入れた買掛金と、自社の仕様で作らせた部品や外注の買掛金とでは、守る決まりが違うということです。
自社の買掛金が対象かは、次の順に確かめます。
- 取引の中身:製造・修理・情報成果物の作成・役務の提供・運送を、自社の仕様や指示で頼んでいるか。
- 両者の規模:自社と相手の資本金、または常時使用する従業員の数が、法律の基準に当てはまるか。相手の従業員数は、見積書の備考欄などで書面に残して確かめる方法が示されています。
- 迷ったら相談:公正取引委員会や中小企業庁の相談窓口で、取引の内容を伝えて確かめる。
委託の取引で守ること
| 決まり | 買掛金の払い方で気をつけること |
|---|---|
| 支払期日は受け取った日から60日以内 | できる限り短い期間で、具体的な日を定める。「納品後○日以内」のような期限の書き方は認められない |
| 月単位で締める場合 | 締め日から30日以内に払う。「月末締め翌月末払い」は収まるが、「月末締め翌々月払い」は越える |
| 支払遅延の禁止 | 定めた期日に全額を払う。手形での支払いや、期日に満額の現金に換えにくいでんさい・一括決済も支払遅延に当たる |
| 減額の禁止 | 「歩引き」などの名目で差し引くことも、振込手数料を代金から引くことも、相手の合意があっても違反 |
| 遅延利息 | 60日を過ぎた日から払う日まで、年14.6%の遅延利息を払う義務がある |
| 一方的な代金の決定 | 相手から価格の協議を求められたのに応じない、説明しない、は違反 |
この表から言えるのは、委託の取引では「支払日を延ばして資金繰りをつける」余地がもともと小さいということです。月末締め翌月末払いを、翌々月払いへ延ばすことはできません。資金繰りのために支払いを延ばしたいなら、まず対象外の仕入(既製品の仕入など)で相談し、委託の取引ではほかの方法を考えます。受注する側から見た60日ルールと、フリーランス法との違いは取適法とフリーランス法の60日ルールで比べています。
違反したときに起きること
公正取引委員会は、違反した発注者に勧告を行い、支払遅延なら代金と遅延利息の支払いを、減額なら差し引いた額と遅延利息の返還を求めます。勧告は会社名とともに公正取引委員会のサイトの「取適法勧告一覧」に載り、取引先や金融機関の目にも触れます。違反の多くは、悪意よりも「月末締め翌々月払いを昔から続けていた」「振込手数料を差し引くのが業界の慣行だった」という思い込みから起きます。2026年1月の改正を機に、自社の支払条件を一度見直しておくと安心です。受注する側が公正取引委員会などに知らせたことを理由に取引を減らすことも、報復措置として禁じられています。
買掛金の支払いに足りないとき:選ぶ順番と、ファクタリングを使わない方がよい場合
支払いにお金が足りないときは、どうすればいい?
費用のかからない手から考えます。まず支払日の前に仕入先へ相談し、次に融資です。ファクタリングは手数料が年率で100%を超えることもあるので、使うなら1回限りと決めます。
あなたの会社の支払いの遅れは、仕入先にとっては売掛金の入金の遅れです。相手もその入金で給与や仕入を払っています。支払予定表で足りない日が見えたら、費用のかからない手から順に考えます。順番を間違えると、少しの不足を埋めるために高い費用を払うことになります。
- 足りないのは数日〜数週間だけか?はい → 支払日の前に仕入先へ相談し、一部を期日に払って残りの日を決めるいいえ → 毎月足りないなら、条件の見直しと融資の相談へ
- 取引のある金融機関の枠や、公的な融資に間に合うか?はい → 融資で支払う。年率は数%で済むことが多いいいえ → 次へ
- 入金が確かな売掛金があるか?はい → 取引先に早く払ってもらう相談、それも無理ならファクタリングを検討いいえ → ファクタリングは使えない。支払日の再相談と専門窓口へ
- 手数料を年率に直しても、払う価値があるか?はい → 1回限りと決めて使ういいえ → 支払日の相談と融資に戻る
ファクタリングを使わない方がよい場合
- 毎月の支払いに足りない:入金より支払いが毎月多いなら、手数料が毎月かかり、手元のお金は減り続けます。
- 仕入先が待ってくれる:数日の遅れを相談で解決できるなら、手数料を払う理由がありません。
- 融資が間に合う:年率数%の融資と、年率で100%を超えることもある手数料では、費用の差が大きすぎます。融資との違いはファクタリングと融資の違いで整理しています。
それでもファクタリングを使うとき
ファクタリングは、持っている売掛金を期日前に売ってお金にする方法です。借入ではないので、融資の審査に間に合わないときの最後の手段になります。図鑑に載せている197サービス(2026年10月16日時点)のうち、公式サイトに最短の入金時間を書いているのは178サービスで、そのうち152サービスが「最短で1日以内」と書いています。個人事業主を対象と書いているのは117サービスです。
ただし「最短」は、書類がそろい、審査がすぐ済んだときの話です。支払日の前日に申し込むのではなく、支払予定表で不足が見えた時点で見積もりを取ります。手数料の額は、手取りと実質年率の計算で、支払いを遅らせたときの損害金や融資の利息と並べてから決めます。
融資を相談するときは、支払予定表を持っていく
金融機関に運転資金を相談するときは、「いつ、いくら足りないのか」を説明できると話が早く進みます。4章で作った支払予定表と、売上の入金予定を並べた資金繰り表を持っていき、足りなくなる日と額、戻る日を示します。買掛金の台帳があれば、仕入先ごとの残高と支払条件も答えられます。審査には時間がかかるので、不足が見えたらすぐに相談を始めます。
買掛金でよくある失敗と注意点
買掛金で、やりがちな失敗って何?
同じ請求書を2回払う、締め日を取り違える、偽の振込先変更に応じる、などです。口座の変更は、登録済みの電話番号に折り返して確かめるまで反映しないと決めておきます。
最後に、買掛金の管理と支払いでよく起きる失敗をまとめます。どれも、4章の手順を回していれば防げるものです。
| 失敗 | 起きること | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 同じ請求書を2回払う | 請求書の再発行分や、月をまたいだ分を重ねて払う | 請求書番号で台帳に記録し、払う前に照合する |
| 締め日を取り違える | 仕入先ごとに違う締め日を一律に扱い、支払日を間違える | 支払予定表に仕入先ごとの締め日と支払日を書く |
| 振込先の変更に応じてしまう | 仕入先を装ったメールで、別の口座に振り込んでしまう | 口座の変更は、登録済みの電話番号に折り返して確かめる |
| 相殺を口頭で済ませる | 相手と金額の認識がずれ、残高が合わなくなる | 相殺する額と日付を書面で合意し、両方の台帳に記録する |
| 決算で未着の請求を落とす | 買掛金と仕入が少なく、利益が大きく出て税金が増える | 納品書をもとに計上し、翌月の請求書で確かめる |
| 黙って支払いを遅らせる | 前払いを求められたり、取引を止められたりする | 支払日の前に相談し、払える額と払う日を伝える |
| 支払条件を口約束のままにする | 担当者が替わったときに、締め日や支払日の認識がずれる | 取引の始めに、締め日・支払日・支払方法を書面で取り交わす |
特に注意したいのは、振込先の変更を装う手口です。請求書のPDFやメールの差出人が本物そっくりでも、口座の変更は電話で確かめるまで反映しないと決めておきます。
買掛金が増えすぎているサイン
次のようなことが重なったら、支払いが回らなくなる手前にいる可能性があります。
- 支払いまでの平均日数が、前の年より10日以上伸びている
- 仕入先から、残高の確認や支払日の念押しの連絡が増えた
- 一部の仕入先から、前払いや現金での取引を求められた
- 支払予定表で、月の半ばに預金が足りなくなる月が続いている
この段階なら、まだ打てる手が多く残っています。金融機関への相談や、支払条件の見直しを、取引先から言われる前に始めます。
買掛金は、正しく管理すれば資金繰りの見通しをいちばん早く教えてくれる数字です。毎月の支払予定表を作り、足りない日が見えたら早めに相談する。この2つを続けるだけで、急いで高い費用のお金を集める場面はかなり減らせます。
出典(10件)公的機関の資料・法令。2026.10.17に確認
- 財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則 第47条(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 民法(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 令和8年4月1日以降の法定利率について(法務省)www.moj.go.jp
- No.5930 帳簿書類等の保存期間(国税庁)www.nta.go.jp
- 委託事業者の義務(公正取引委員会)www.jftc.go.jp
- 委託事業者の禁止行為(公正取引委員会)www.jftc.go.jp
- 取適法の概要(公正取引委員会)www.jftc.go.jp
- よくある質問コーナー(取適法)(公正取引委員会)www.jftc.go.jp
- 取適法勧告一覧(公正取引委員会)www.jftc.go.jp
- 優越的地位の濫用・取適法の考え方及び相談窓口(公正取引委員会)www.jftc.go.jp
FAQ
よくある質問
買掛金とは簡単に言うと何ですか?
商品や材料を仕入れたり、本業のために外注したりして、代金をあとで払う約束になっているお金です。財務諸表のルールでは通常の取引から生まれた営業上の未払金とされ、1年以内に払う流動負債に入ります。仕入先から見ると、同じ取引が売掛金になります。
買掛金と未払金の違いは何ですか?
本業の商品・材料の仕入や本業の外注で生まれた未払いが買掛金、パソコンや車の購入代金、広告費など本業の仕入以外の未払いが未払金です。どちらにするか迷う外注費は会社ごとに基準を決め、毎年同じ扱いを続けます。年によって変えると、決算書の増減の理由が読めなくなります。
買掛金の支払いを延ばしてもらうことはできますか?
仕入先と合意できれば延ばせますが、一方的には変えられません。取引が順調なうちに、理由・期間・見返り(発注量の見通しや支払日の固定など)をそろえて頼み、合意は書面に残します。取適法の対象の委託取引では、受け取った日から60日を超える支払日にはできません。
買掛金の支払期日は何日以内と決まっていますか?
法律で一律に決まっているわけではなく、取引ごとの合意で決まります。ただし取適法の対象の委託取引では、受け取った日から60日以内のできる限り短い期間で定める義務があり、月単位で締める場合は締め日から30日以内に払います。月末締め翌月末払いは収まり、翌々月払いは越えます。
買掛金の支払いが遅れるとどうなりますか?
遅れた日数分の損害金がかかります。率を契約で決めていなければ法定利率の年3%で、取適法の対象の取引では60日を過ぎた日から年14.6%の遅延利息です。600万円が10日遅れると年3%で約4,900円ですが、前払いを求められるなど信用への影響のほうがずっと大きいので、遅れる前に相談します。
買掛金の管理は何から始めればいいですか?
請求書が届いたら注文書・納品書と照合し、仕入先ごとの台帳をつけ、締め日と支払日を並べた支払予定表を作り、月末と決算で残高を確かめる、の4つを毎月同じ順番で回します。支払予定表を2〜3か月先まで資金繰り表に写すと、お金が足りなくなる日が前もってわかります。
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