資金繰り更新 2026.10.18
資金繰りとは?キャッシュフローとの違いと、黒字でもお金が足りなくなる理由
資金繰りとは、入るお金と出るお金の日付と金額をつかみ、支払いの日に預金が足りなくならないよう調整することです。キャッシュフロー・利益との違い、黒字でも足りなくなる7つの原因、悪化の型とうまく回す5つの基本を解説します。
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フファクタリング図鑑編集部(執筆)・公開 2026.10.17

この記事は、「資金繰り」という言葉を銀行や税理士から聞いて、あらためて意味を確かめたい経営者・個人事業主に向けて書いています。利益は出ているのに預金が減っていく、という違和感の正体も、資金繰りの考え方で説明できます。
この記事を7枚で
1 / 7結論:資金繰りとは「払う日に、払えるお金があるようにする」こと
資金繰りって、要するに何をすることなの?
入るお金と出るお金の日付と金額を前もってつかみ、支払いの日に預金が足りなくならないよう調整することです。会社がつぶれるのは赤字のときではなく、払うべき日に払えなくなったときです。
資金繰りとは、入ってくるお金と出ていくお金の日付と金額を前もってつかみ、支払いの日に預金が足りなくならないよう調整することです。足りなくなりそうなら、入金を早める、支払いの時期を相談する、借りるといった手を先に打ちます。
資金繰りが必要になるのは、利益とお金の動きがずれるからです。売上は納品した月に立ちますが、代金が入るのは1〜2か月後です。借入の返済や設備の購入は、利益の計算とは別の時期に、別の金額でお金を減らします。
そのため、決算が黒字でも支払いができなくなることがあります。会社がつぶれるのは赤字になったときではなく、払うべき日に払えなくなったときです。
この記事で扱うことは次のとおりです。
- 資金繰りの意味:何を、いつ、どこまで見るか
- キャッシュフロー・利益との違い
- 黒字でもお金が足りなくなる7つの原因(計算例つき)
- 資金繰りが悪くなる5つの型と見分け方
- 数字で確かめる:中小企業の手元のお金と、月の中で足りなくなる日
- 資金繰りをうまく回す5つの基本
- 足りなくなりそうなときの考え方と、ファクタリングを使わない方がよい場合
- よくある失敗と注意点
資金繰りの意味をわかりやすく:何を、いつ、どこまで見るか
資金繰りでは、どのお金を数えればいいの?
その日に払える現金と普通預金・当座預金です。売掛金は入金日までは使えないので入金予定として数え、在庫や設備は数えません。少なくとも3か月先まで、苦しいときは日ごとに見ます。
「資金繰り」の「繰り」は、やりくりの意味です。手元のお金をやりくりして、支払いを滞りなく回すことを指します。お金を借りて回すことだけを指す言葉ではありません。
資金繰りで言う「お金」の範囲
資金繰りで数えるのは、支払いにすぐ使えるお金です。現金と、普通預金・当座預金がこれにあたります。
売掛金(あとで受け取る約束の代金)や在庫、土地は、会社の財産ではあっても、今日の支払いには使えません。定期預金も、解約に手間がかかるなら別に数えておきます。
| 種類 | 資金繰りでの扱い | 理由 |
|---|---|---|
| 現金・普通預金・当座預金 | 数える | その日に払える |
| 定期預金 | 別に数える | 解約すれば使えるが、担保になっていることがある |
| 売掛金・受取手形 | 入金予定として数える | 入金日までは使えない |
| 在庫・設備・土地 | 数えない | 売れるまで、お金にならない |
「資金繰りが良い・悪い・苦しい」の意味
資金繰りが良いとは、先の支払いまで見通せていて、手元に余裕がある状態です。資金繰りが悪い・苦しいとは、近いうちの支払いに預金が足りない、または足りなくなりそうな状態を指します。
本当に払えなくなることを「資金ショート」と呼びます。手形や小切手が期日に落ちない「不渡り」や、仕入先への支払いの遅れは、取引の停止につながります。
どのくらい先まで、どのくらいの細かさで見るか
資金繰りは、少なくとも3か月先までを見ます。銀行に融資を申し込んでから入金までに数週間かかるため、1か月先しか見ていないと間に合わないからです。
細かさは、余裕があれば月ごと、苦しいときは週ごと・日ごとにします。月末の残高だけを見ていると、月の途中の給料日などに足りなくなる日を見落とします。この点は数字で確かめる章の計算例で示します。
月ごとの入出金を表にしたものを資金繰り表と呼びます。項目の立て方や記入例は、資金繰り表の作り方の記事で紹介しています。
資金繰りとキャッシュフロー・利益の違い
利益とキャッシュフローと資金繰りって、何が違うの?
利益は稼いだ額、キャッシュフローは実際に出入りしたお金の量で、どちらも主に過去を見ます。資金繰りはこれから先、どの日にいくら残るかを見ます。利益が+50万円でも預金は40万円減ることがあります。
資金繰り・キャッシュフロー・利益は、どれも会社のお金の話ですが、見ているものと時間の向きが違います。まず表で並べます。
| 言葉 | 何を見るか | 時間の向き | 主に使う書類 |
|---|---|---|---|
| 利益 | 稼いだ額(売上から費用を引く) | 過去の一定期間 | 損益計算書 |
| キャッシュフロー | 実際に出入りしたお金の量 | 主に過去の一定期間 | キャッシュフロー計算書 |
| 資金繰り | 支払いの日にお金が足りるか | これから先(日付ごと) | 資金繰り表・入出金の予定表 |
違いの要は、利益は「いつ稼いだか」、キャッシュフローと資金繰りは「いつお金が動いたか・動くか」で数える点です。そのうえで、キャッシュフローは結果の振り返り、資金繰りは先の予定の管理に使います。
同じ月を3つの物差しで見ると
ある会社の1か月を例にします。今月の売上は500万円で、入金は翌月末です。今月の費用は450万円でした。今月の入金は先月分の売上480万円、支払いは仕入・給料など470万円と、借入の返済50万円です。
| 物差し | 計算 | 結果 |
|---|---|---|
| 利益 | 売上500万円−費用450万円 | +50万円 |
| キャッシュフロー | 入金480万円−支払い470万円−返済50万円 | −40万円 |
| 資金繰り | 来月の入金日の前に、給料と納税を払えるか | 日付で確かめる |
利益はプラスでも、今月の預金は40万円減っています。資金繰りでは、さらに「来月のどの日に、いくら残っているか」までを見ます。
キャッシュフローの3つの区分
キャッシュフロー計算書では、お金の出入りを3つに分けます。資金繰りを考えるときも、この3つで分けると原因がわかりやすくなります。
- 営業のお金:売上の入金、仕入・給料・家賃・税金の支払いなど、本業で動くお金。
- 投資のお金:設備や車の購入、売却など。
- 財務のお金:借入と返済、増資など。
健全な会社は、営業のお金でプラスを出し、その中から投資と返済をまかないます。営業のお金がマイナスなのに借入で埋め続けているなら、資金繰りの工夫では追いつかない状態です。
「利益は意見、キャッシュは事実」と言われる理由
利益は、減価償却(設備の代金を何年かに分けて費用にすること)や在庫の数え方など、会計のルールで金額が変わります。一方、預金の残高は通帳を見れば一つに決まります。
支払いに使えるのは利益ではなく預金です。決算書で黒字を確かめたうえで、通帳の残高の動きを別に見る習慣が、資金繰りの第一歩です。
黒字でもお金が足りなくなる理由:利益とお金がずれる7つの原因
黒字なのに、どうしてお金が足りなくなるの?
売掛金、在庫、設備の購入、減価償却、元金の返済、税金・社会保険料、前払い・前受けの7つで、利益とお金がずれるからです。見落としやすいのは、費用にならない元金の返済と、後から払う税金です。
利益とお金のずれは、次の7つでほぼ説明できます。どれも違法なことでも珍しいことでもなく、ふつうに商売をしていれば起きるものです。
| 原因 | 利益では | お金では |
|---|---|---|
| 1. 売掛金 | 納品した月に売上になる | 入金は1〜2か月後 |
| 2. 在庫 | 売れた分だけ費用になる | 仕入れた時点で払う |
| 3. 設備の購入 | 何年かに分けて費用になる | 買った時にまとめて払う |
| 4. 減価償却 | 毎年の費用になる | お金は出ていかない |
| 5. 借入の元金の返済 | 費用にならない(利息だけが費用) | 毎月出ていく |
| 6. 税金・社会保険料 | その期の費用になる | 払うのは後の決まった日 |
| 7. 前払い・前受け | 対象の期間に分けて計上 | 受け取り・支払いの日に動く |
反対に、買掛金(仕入れて、まだ払っていない代金)は、お金が出ていくのを後ろにずらしてくれます。売掛金の入金と買掛金の支払いの日数の差が資金繰りにどう効くかは、支払いサイトの記事で計算しています。
見落としやすいのは「元金の返済」と「税金の時期」
借入の返済のうち、費用になるのは利息だけです。元金の返済は、損益計算書には一円も出てきません。月50万円の返済があれば、利益が年600万円出ていても、預金は返済で年600万円減ります。
税金は、利益が出た期ではなく後から払います。法人税の確定申告と納付の期限は、事業年度が終わった日の翌日から2か月以内です。※1前の期の法人税額が一定以上あると、期の途中にも中間申告で納めます。※2
消費税も、前の期の税額によって中間申告の回数が年1回・3回・11回と増えます。※3
給料から預かった源泉所得税は原則として翌月10日までに、社会保険料は翌月末日までに納めます。※4
預かったお金も、納める日までは預金に混ざっています。残高が多く見えても、その一部はもう自社のお金ではありません。
個人事業主は、生活費と所得税の時期も入る
個人事業主は、事業のお金と生活費が同じ財布から出ていきます。事業が黒字でも、生活費として引き出した分は預金から減ります。資金繰りの予定には、毎月の生活費を「必ず出ていくお金」として書きます。
所得税は、翌年の3月に確定申告をして納めます。前の年の税額が一定以上あると、7月と11月に予定納税として前払いします。※5住民税や国民健康保険料も、前の年の所得をもとに後から請求が来ます。
つまり、売上が大きく伸びた年の翌年は、税金と保険料の支払いが重くなります。伸びた年のうちに、翌年の支払いの分を取り分けておきます。
計算例:利益600万円の年に、預金が310万円減る
ある会社の1年を、利益から預金の増減へたどってみます。税引き後の利益は600万円です。この年、売上が伸びて売掛金と在庫が増え、設備を買い、借入を返しました。
| 項目 | 預金への影響 | 理由 |
|---|---|---|
| 税引き後の利益 | +600万円 | 出発点 |
| 減価償却費 | +200万円 | 費用だが、お金は出ていない |
| 売掛金の増加 | −300万円 | 売上になったが、まだ入金されていない |
| 在庫の増加 | −150万円 | 払ったが、まだ費用になっていない |
| 買掛金の増加 | +100万円 | 仕入れたが、まだ払っていない |
| 設備の購入 | −400万円 | 代金を一度に払った |
| 借入の元金の返済 | −360万円 | 費用にならないが、お金は出る |
| 預金の増減 | −310万円 | 黒字なのに預金が減った |
600万円の黒字なのに、預金は1年で310万円減りました。この順で利益から預金までをたどる方法は、キャッシュフロー計算書の「間接法」と同じ考え方です。
この会社は来期の初めに、今期の利益に対する法人税も払います。預金が減った状態で納税の月を迎えるので、資金繰りはさらに苦しくなります。自社でも、決算書の数字をこの表に当てはめると、どこでお金が消えたかがわかります。
この章の根拠(5件)
- 法人税法74条1項・77条
- 法人税法71条
- 国税庁 タックスアンサーNo.6609
- 国税庁 タックスアンサーNo.2505・日本年金機構「厚生年金保険料等の納付」
- 国税庁 タックスアンサーNo.2040
資金繰りが悪くなる原因:5つの型で見分ける
うちの苦しさは、どこに原因があるの?
成長・赤字・季節・返済・回収の5つの型で見分けます。原因によって効く手は正反対です。赤字の型と返済の型は、お金の手当てだけでは直らず、利益や返済の見直しが先になります。
資金繰りが苦しいといっても、原因によって効く手は正反対です。成長で苦しい会社と、赤字で苦しい会社では、打つ手が違います。まず自社がどの型かを見分けます。
- 本業の入金から本業の支払いを引くと、毎月プラスか?はい → Q2へいいえ → 型2:利益が足りない(赤字の型)
- 借入の返済を引いても、年間でプラスか?はい → Q3へいいえ → 型4:返済が重い型
- 足りなくなるのは、売上が伸びた月の後か?はい → 型1:成長で立て替えが増える型いいえ → Q4へ
- 足りなくなる月は、毎年ほぼ同じか?はい → 型3:季節・一時の支払いが重なる型いいえ → 型5:回収の遅れ・取引先の問題を疑う
5つの型には、決算書や通帳に出るサインがあります。分かれ道で迷ったら、次の表で当てはまるものを探します。
| 型 | 決算書・通帳に出るサイン | 最初の手 |
|---|---|---|
| 1. 成長 | 売上と売掛金が同時に増え、預金が減る | 増える立て替えの額を出し、融資を相談 |
| 2. 赤字 | 本業の入出金が毎月マイナス | 値上げ・固定費など利益の見直し |
| 3. 季節 | 毎年同じ月に残高が落ち込む | 積み立てと短期の借入で平らにする |
| 4. 返済 | 本業はプラスだが、返済後にマイナス | 返済期間の見直し・借り換え |
| 5. 回収 | 売掛金が条件から考えられる額より多い | 期日を過ぎた分の一覧と催促 |
型1:売上が伸びて、立て替えが増える
売上が増えると、仕入や外注費、人件費の支払いが先に増え、入金は後から来ます。利益は増えているのに、預金が減ります。大きな受注や新しい取引先が始まった直後に起きやすい型です。
この型は、商売そのものは順調です。増える立て替えの分を、融資や入金を早める工夫で一時的に埋めれば乗り切れます。大きな受注の前に、最初の入金日までに出ていくお金の合計を出しておくと、慌てずに済みます。
型2:利益が足りない(赤字の型)
売上の減少、仕入値の上昇、値上げの遅れなどで、本業の入金が本業の支払いに届かない型です。毎月少しずつ預金が減り、借入や手元資金で埋め続けることになります。
この型では、お金の手当ては時間を稼ぐことにしかなりません。値上げ、取引先の見直し、固定費の削減など、利益そのものを戻す手を同時に打ちます。
型3:季節・一時の支払いが重なる
賞与、納税、仕入の山、年に1回の保険料など、特定の月に支払いが集中する型です。毎年同じ月に苦しくなるのが特徴です。
前もってわかっている支払いなので、資金繰りの工夫がいちばん効きます。毎月の積み立てや、時期に合わせた短期の借入で平らにできます。
型4:借入の返済が重い
本業ではプラスが出ているのに、元金の返済がそれを上回る型です。返済期間の短い借入を重ねた会社や、設備投資を短期の借入でまかなった会社に多く見られます。
金融機関に返済期間の見直しや借り換えを相談するのが筋です。返済額を本業のプラスの範囲に収めることが目標になります。
型5:回収の遅れ・取引先の問題
取引先の支払いが遅れる、値引きを求められる、取引先が倒産するといった、外から来る型です。売掛金の残高が、取引条件から考えられる額より多くなっていれば、この型を疑います。
期日を過ぎた売掛金を一覧にして、まず催促します。1社への売上が大きい会社ほど、この型の影響が大きくなります。
数字で確かめる:中小企業の手元のお金と、月の中で足りなくなる日
手元のお金って、どれくらいあれば普通なの?
法人企業統計から計算すると、中小企業の現金・預金は全産業で月商の約3.1か月分でした。業種で4倍以上の開きがあります。月初と月末が同じでも、給料日に足りなくなる日がある点にも注意します。
自社の資金繰りが楽なのか苦しいのかは、比べる物差しがないと判断できません。ここでは、財務省の法人企業統計(令和4年度の年報)から、中小企業の平均を計算しました。あわせて、月の中でお金が足りなくなる日の例を見ます。
中小企業は、月商の何か月分のお金を持っているか
資本金1億円未満の会社の合計で、期末の現金・預金、運転資金、借入金を、月商(年間の売上高÷12)で割りました。運転資金は「売上債権(受取手形+売掛金)+在庫−仕入債務(支払手形+買掛金)」で、商売を回すために立て替えている額です。
| 業種 | 現金・預金 | 運転資金 | 借入金 |
|---|---|---|---|
| 全産業 | 3.1か月 | 1.4か月 | 4.8か月 |
| 情報通信業 | 6.3か月 | 1.3か月 | 2.8か月 |
| 飲食サービス業 | 3.9か月 | 0.6か月 | 8.4か月 |
| 職業紹介・労働者派遣業 | 3.9か月 | 1.2か月 | 2.9か月 |
| 建設業 | 3.6か月 | 1.3か月 | 3.2か月 |
| 製造業 | 3.0か月 | 2.1か月 | 4.3か月 |
| 運輸業、郵便業 | 2.5か月 | 0.7か月 | 3.8か月 |
| 卸売業 | 1.9か月 | 1.4か月 | 2.4か月 |
| 小売業 | 1.5か月 | 0.9か月 | 3.0か月 |
全産業の中小企業は、現金・預金が月商の3.1か月分、運転資金が1.4か月分でした。業種で見ると、情報通信業の6.3か月分から小売業の1.5か月分まで、4倍以上の開きがあります。
全産業の平均平均以上の業種平均より少ない業種
小売業や飲食店は運転資金が月商の1か月分を下回ります。お客から現金やカードで代金を受け取るので、立て替えが小さいからです。一方、製造業は在庫と売掛金を抱えるため、運転資金が2.1か月分と大きくなります。
飲食店は、現金・預金が3.9か月分と多い一方で、借入金も8.4か月分あります。預金の多さが、借りたお金で支えられている場合もある点に注意します。
会社の規模による違い
全産業を資本金の規模で分けると、次のとおりです。
| 資本金 | 現金・預金 | 運転資金 | 借入金 |
|---|---|---|---|
| 1,000万円未満 | 3.0か月 | 1.0か月 | 7.3か月 |
| 1,000万〜5,000万円未満 | 3.4か月 | 1.5か月 | 4.6か月 |
| 5,000万〜1億円未満 | 2.4か月 | 1.4か月 | 3.3か月 |
| 1億〜10億円未満 | 1.6か月 | 1.6か月 | 2.5か月 |
| 10億円以上 | 1.6か月 | 2.2か月 | 5.2か月 |
資本金の小さい会社ほど、月商に比べて多くの預金を持っています。規模の小さい会社は融資を急に受けにくいため、手元に厚く置いていると読めます。資本金1,000万円未満では、借入金も月商の7.3か月分と大きくなります。
この数字は、たくさんの会社の預金と売上を合計してから割った値です。一部の会社が多くの預金を持っていると平均が上がるので、ふつうの会社はこれより少ないことがあります。あくまで目安として使います。
自社の数字を出してみる
決算書か試算表があれば、同じ3つの数字を出せます。月商500万円の会社を例にします。
- 現金・預金÷月商:預金が800万円なら1.6か月分。業種の平均と比べます。
- 運転資金÷月商:売掛金750万円+在庫300万円−買掛金250万円で800万円、1.6か月分です。
- 借入金÷月商:借入金が1,500万円なら3.0か月分。年間の返済額が本業のプラスに収まるかも見ます。
運転資金が業種の平均より大きければ、回収が遅いか在庫が多いかのどちらかです。前の年より増えていれば、どの取引先・どの商品で増えたかを確かめます。
月の収支が0でも、25日に100万円足りなくなる
次に、1か月の中のお金の動きを日付順に見ます。月初の預金は250万円、売上の入金500万円は月末に入ります。出ていくお金も合計500万円で、月の収支は差し引き0です。
| 日付 | 動き | 金額 | 預金の残高 |
|---|---|---|---|
| 1日 | 月初の残高 | 250万円 | |
| 10日 | 外注費の支払い | −150万円 | 100万円 |
| 25日 | 給料の支払い | −200万円 | −100万円 |
| 月末 | 売上の入金 | +500万円 | 400万円 |
| 月末 | 仕入・家賃の支払い | −100万円 | 300万円 |
| 月末 | 借入の返済 | −50万円 | 250万円 |
月初と月末の残高はどちらも250万円で、月ごとの表では何の問題もないように見えます。しかし25日の給料日に100万円足りません。預金がマイナスになることはないので、実際には給料が払えないことになります。
月ごとの資金繰り表に加えて、入金と支払いの日付を並べた予定表を持っておくと、こうした谷を前もって見つけられます。支払日を入金日の後ろに動かせないかを、ここから考えます。
資金繰りをうまく回す5つの基本
資金繰りをうまく回すには、何を習慣にすればいい?
毎週入出金を日付で並べ、毎月入金を早く確実にし、発注のたびに出るお金を売上に合わせます。年1回は手元に置く下限を決め、業績が良いうちに借りられる枠と相談先を作っておきます。
資金繰りの工夫は数多くありますが、土台になるのは次の5つです。順番に積み上げると、足りなくなる前に気づき、手を打つ時間が持てるようになります。
- 毎週入出金を日付で並べる3か月先まで、いつ・いくら入って出るか
- 毎月入金を早く・確実にする請求の早さ、条件の確認、前受金
- 発注のたび出るお金を売上に合わせる在庫・仕入の量と支払いの時期
- 年1回手元に置く下限を決める固定費の何か月分を割らないか
- 業績が良いとき要る前に借りる・相談先を作る試算表を出し、融資の枠を作る
1. 入出金を日付で並べる(毎週)
3か月先までの入金と支払いを、日付と金額で一覧にします。月ごとの資金繰り表で全体をつかみ、苦しい月だけは日ごとに分けます。
書く金額は、確実なものを優先します。入金は遅めに、支払いは早めに見積もると、外れたときに余裕の側にずれます。予定と実際の差を毎月記録すると、見積もりの癖がわかります。
2. 入金を早く・確実にする(毎月)
請求書は締め日の当日に出します。請求が1日遅れると、相手の締めに間に合わず入金が1か月延びることがあるからです。入金予定日に通帳を確かめ、入っていなければその日のうちに連絡します。
新しい取引では、支払条件を契約や発注書で確かめ、着手金や前受金を相談します。入金サイトを短くしてもらう交渉は、上で紹介した支払いサイトの記事で扱っています。
3. 出ていくお金を売上に合わせる(発注のたび)
在庫や材料は、売れる見込みに合わせて仕入れます。まとめ買いの値引きより、お金が寝る期間の方が重いことがあります。
仕入先への支払日は、自社の入金日の後ろになるようにそろえます。払う側の管理のしかたと、支払条件を見直すときの注意は、買掛金の記事で説明しています。
納税や賞与のように時期と金額が読める支払いは、毎月の積み立てに置き換えます。決算から2か月後の納税に向けて、利益の見込みに応じて月々取り分けます。
4. 手元に置く下限を決める(年1回)
預金がいくらを下回ったら手を打つか、という下限を決めておきます。決め方は、毎月必ず出ていく固定費(給料・家賃・返済など)の何か月分か、で考えるのがわかりやすい方法です。
たとえば給料・家賃・返済などで毎月300万円が必ず出ていく会社なら、その2か月分の600万円を下限にする、という決め方です。売上の入金が1か月止まっても、次の手を打つ時間が残ります。
法人企業統計の中小企業の平均は月商の3.1か月分でしたが、これは合計の値で、守るべき水準ではありません。入金が月末に集中する会社や、1社への売上が大きい会社は、厚めに持ちます。
5. 要る前に借りる・相談先を作る(業績が良いとき)
金融機関は、苦しくなってから申し込む会社より、業績が良いうちに相談してくる会社に貸しやすくなります。決算書と試算表を毎期届け、必要になったら使える融資の枠を作っておきます。
税理士や商工会議所など、数字を一緒に見てくれる相手を持っておくと、苦しくなりかけた段階で気づけます。融資とファクタリングの違いは、融資との違いの記事で比べています。
今の資金繰りを確かめる8つの質問
5つの基本ができているかは、次の質問で確かめられます。答えられない質問が多いほど、足りなくなるまで気づけない状態です。
- 今日の預金の残高を、すぐに確かめられるか。
- 3か月先までで、いちばん残高が少なくなる日と金額を言えるか。
- 主な取引先ごとの入金日と、支払条件を言えるか。
- 期日を過ぎても入金されていない売掛金があるか、把握しているか。
- 次の納税と賞与の月と、だいたいの金額を言えるか。
- 毎月の借入の返済額が、本業のプラスに収まっているか。
- 預金の下限を決めていて、今それを上回っているか。
- 足りなくなったときに、最初に相談する金融機関の担当者がいるか。
預金の下限を、入金のずれや1年の大きな支払いまで含めて出す手順と、業種別の目安は手元資金の目安(月商の何か月分か)で説明しています。
足りなくなりそうなとき:考え方と、ファクタリングを使わない方がよい場合
足りなくなりそうなら、ファクタリングを使えばいい?
まず不足の額と日付と型を確かめ、費用の軽い手から考えます。ファクタリングが合うのは、成長や季節の型のように不足が一時的な場面です。赤字や返済の型、毎月の不足を埋め続ける使い方には合いません。
資金繰り表で不足が見えたら、まず不足の額と日付、そして5つの型のどれかを確かめます。そのうえで、費用の軽い手から順に考えます。
手を打つ候補は、支払先との交渉、税金・社会保険料の猶予、返済条件の変更、公的な融資などです。その順番は、資金繰りが苦しい・支払いに間に合わないときの対処でまとめています。
用意する額は「最低の残高」と「下限」の差
用意すべき額は、予定表でいちばん残高が少なくなる日の金額と、自社で決めた下限との差です。たとえば下限が600万円で、来月20日の残高が150万円になる見込みなら、20日より前に450万円を用意します。
不足が1回で終わるのか、毎月続くのかも、ここで分けておきます。1回なら一時的な手当てで足ります。毎月なら、型2か型4の見直しが先です。
ファクタリングが合う場面
ファクタリングは、持っている売掛金を入金日より前に売ってお金にする方法です。借入ではないため、融資の審査に時間がかかるときや、借入を増やしたくないときの選択肢になります。
合うのは、型1(成長で立て替えが増える)や型3(一時の支払いが重なる)のように、不足が一時的で、売掛金がいずれ入ってくる場面です。何回使うかを決めて使えば、つなぎとして機能します。
使わない方がよい場合
- 型2(赤字)の会社:利益が足りない会社が手数料を払うと、赤字がさらに広がります。
- 型4(返済が重い)の会社:返済を手数料に置き換えるだけで、毎月の不足は解消しません。
- 毎月の不足を埋め続ける使い方:次の月の売掛金を先に使うので、やめどきがなくなります。
- 融資が間に合う場合:日数に余裕があるなら、金利の方がはるかに軽く済みます。
費用は年率に直して比べます。たとえば手数料10%・30日前の売却は、手数料額÷手取り額÷日数×365で実質年率約135%です。計算方法は手数料の計算と実質年率の記事、自社の金額での手取りは手取りと実質年率のシミュレーターで確かめられます。融資・早期支払いとの総額の比較はメリット・デメリットの記事にあります。
よくある失敗と注意点
資金繰りでつまずく会社って、何が共通してるの?
黒字だから大丈夫と思う、月末の残高しか見ない、預かっている税金や保険料を使ってしまう、苦しくなってから銀行に行く、などです。どれも数字を日付で並べていれば防げます。
資金繰りでつまずく会社には、共通する思い込みがあります。どれも数字を日付で並べていれば防げるものです。
決算が黒字だから大丈夫だと思う
利益とお金は別に動きます。黒字の年でも、売掛金・在庫・設備・返済で預金は減ります。決算書を見たら、利益だけでなく、前の期と比べた預金の増減も確かめます。
月末の残高しか見ていない
月末に足りていても、給料日や外注費の支払日に足りないことがあります。支払いが集中する日の残高を、予定表で先に確かめます。
預かっているお金を自社のお金と思って使う
消費税、源泉所得税、社会保険料は、いずれ納める預かりのお金です。残高が多く見える月に使ってしまうと、納付の月に足りなくなります。可能なら別の口座に移しておきます。
苦しくなってから銀行に行く
不足が来週に迫ってから申し込んでも、融資の審査と手続きは間に合わないことが多くなります。3か月先までの資金繰り表を持って、早めに相談します。
売上を伸ばせば資金繰りは良くなると考える
売上を伸ばすと、立て替えはかえって増えます。大きな受注を受ける前には、入金までに先に出ていくお金がいくらかを計算し、用意の手段を決めておきます。
同じ方法で毎月の不足を埋め続ける
カードローンやファクタリングのような費用の重い方法を毎月使うと、その費用が利益を削り、翌月の不足がさらに大きくなります。毎月足りないなら型2か型4を疑い、お金の手当てではなく利益や返済の見直しに手をつけます。
出典(6件)公的機関の資料・法令。2026.10.18に確認
- 財政金融統計月報第859号<法人企業統計年報特集>(令和4年度)業種別,規模別資産・負債・純資産及び損益表(財務省 財務総合政策研究所)www.mof.go.jp
- 法人税法(e-Gov法令検索)第71条・第74条・第77条laws.e-gov.go.jp
- No.6609 中間申告の方法(国税庁)www.nta.go.jp
- No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例(国税庁)www.nta.go.jp
- No.2040 予定納税(国税庁)www.nta.go.jp
- 厚生年金保険料等の納付(日本年金機構)www.nenkin.go.jp
FAQ
よくある質問
資金繰りとは簡単に言うと何ですか?
資金繰りとは、入ってくるお金と出ていくお金の日付と金額を前もってつかみ、支払いの日に預金が足りなくならないよう調整することです。足りなくなりそうなら、入金を早める、支払いの時期を相談する、借りるといった手を先に打ちます。お金を借りることだけを指す言葉ではありません。
資金繰りとキャッシュフローの違いは何ですか?
キャッシュフローは、一定の期間に実際に出入りしたお金の量で、主に過去を振り返るときに使います。資金繰りは、これから先の支払いの日にお金が足りるかを日付ごとに管理することです。どちらも利益ではなく、お金が動いた日・動く日で数える点は同じです。
黒字なのに資金繰りが苦しいのはなぜですか?
利益とお金の動きがずれるからです。売上は納品した月に立っても入金は1〜2か月後で、借入の元金の返済や設備の購入は、利益の計算とは別にお金を減らします。記事の計算例では、利益600万円の年に、売掛金・在庫・設備・返済で預金が310万円減りました。
資金繰りが悪化する原因は何ですか?
大きく5つの型があります。売上が伸びて立て替えが増える型、利益が足りない赤字の型、賞与や納税など季節の支払いが重なる型、借入の返済が重い型、取引先の支払いの遅れや倒産の型です。型によって効く手が違うので、まずどれに当てはまるかを見分けます。
手元資金は月商の何か月分あればよいですか?
決まった基準はありません。財務省の法人企業統計(令和4年度)から計算すると、資本金1億円未満の中小企業の現金・預金は、合計で月商の約3.1か月分でした。業種で1.5〜6.3か月分と開きがあります。自社では、毎月必ず出ていく固定費の何か月分を下回ったら手を打つか、という下限を決めて管理します。
資金繰りが苦しいときにファクタリングを使ってもよいですか?
成長で立て替えが増えたときや、一時の支払いが重なったときのように、不足が一時的で売掛金がいずれ入る場面なら選択肢になります。赤字の会社や返済が重い会社が毎月の不足を埋めるために使うと、手数料が利益を削り、不足が大きくなります。費用は実質年率に直して融資と比べます。
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