安全更新 2026.10.15
ファクタリングの契約書で確かめる箇所。条項ごとの読み方と電子契約
契約書でまず確かめるのは、契約が「売買(債権譲渡)」と書かれているか、売掛先が払えないときに買戻しや支払いの義務がないか、金額の内訳が見積りと同じか、の3点です。次に表明保証・回収金の送金期限・違約金・遅延損害金・合意管轄を並び順に読み、電子契約でも署名済みの控えを保存してください。
- 21分読み終わるまで
- 10章見出し
- 13件公的な出典
フファクタリング図鑑編集部(執筆)・公開 2026.10.15

先に結論:時間がなくても、この3か所と「控え」だけは外さない
ファクタリングは、売掛金(取引先からまだ受け取っていない代金)を期日前に売って現金にする取引です。金融庁は、ファクタリングを法的には債権の売買(債権譲渡)契約と説明しています。ただし、契約書に「売買」と書かれていても、中身がお金の貸し付けと同じになっている取引があり、金融庁はそうした偽装ファクタリングに注意するよう呼びかけています。
自分の会社を守るのは、署名する前の契約書です。入金の期限が迫っていても、最低限次の3つは読んでください。どれかに問題があれば、署名を見送る理由として十分です。
| 箇所 | 確かめること | 問題のある書き方 |
|---|---|---|
| 契約の種類 | 「売買契約」「債権譲渡契約」と明記されているか | 売買と書かれていない。金銭消費貸借(お金の貸し借り)のような返済の定めがある |
| 償還請求・買戻し | 売掛先が払えないとき、利用者に支払いや買戻しの義務がないか | 「買い戻す」「償還する」「不足分を支払う」 |
| 金額の内訳 | 債権額・買取額・手数料・その他費用・手取り額 | 見積りにない費用がある。買取額が債権額に比べて著しく低い |
この3つは、金融庁のリーフレットが「被害が疑われる例」として挙げている内容と重なります。そしてもう1つ、署名した契約書の控え(紙なら写し、電子契約ならPDF)を手元に残してください。控えがないと、あとで何を約束したのかを誰も確かめられません。
この記事は、契約書を手にしている人が「どの順に、どこを、どう読むか」に絞っています。償還請求権の考え方そのものは償還請求権とは、裁判所がどんな契約を貸付けとしたかはファクタリングは違法かで扱っています。
署名前の10分チェックリスト
担当者から「今日中に署名を」と言われていても、10分あれば次の確認はできます。上から順に進め、1つでも「いいえ」があれば、その場で質問してください。答えはメールやチャットなど、記録が残る形でもらいます。
- (1分)表題と第1条:表題か目的の条に「売買」「債権譲渡」とあるか。「金銭消費貸借」「融資」「借入れ」の言葉がないか。
- (1分)対象の請求書:売る請求書が、売掛先名・請求書番号・金額・支払期日で特定されているか。「将来発生する一切の債権」のような広い書き方になっていないか。
- (2分)お金の計算:債権額から手数料と費用を引いた額が、振り込まれる額と1円単位で一致するか。見積りになかった項目がないか。
- (2分)売掛先が払わなかったとき:「買戻し」「償還」「再譲渡」「不足額の支払い」「支払いを保証」の言葉を探す。電子契約なら画面の検索機能で探すと早い。
- (1分)表明保証:約束するのが「請求書が本物で、ほかに売っていない」ことにとどまるか。売掛先の支払い能力まで約束させていないか。
- (1分)2社間の送金期限:売掛先から入金があった日から何営業日以内に送るか。遅れたときの扱いが書かれているか。
- (1分)違約金と遅延損害金:金額か計算式が書かれているか。売掛先の不払いだけで発生する書き方になっていないか。
- (1分)控えと連絡先:署名済みの控えをいつ・どの形で受け取れるか。運営会社の正式な名称・所在地・電話番号が契約書に載っているか。
手数料は実質年率でも確かめます。式は「手数料額 ÷ 手取り額 ÷ 入金までの日数 × 365」で、たとえば手数料10%・入金まで30日なら、10 ÷ 90 ÷ 30 × 365 = 約135%です。計算は手数料と実質年率の計算でもできます。それぞれの条項で何を見るかは、次の章から契約書の並び順に説明します。
急いでいるときによくある読み落とし
- 個別契約だけ読んで、基本契約を読まない:金額の明細だけを確かめて署名し、表明保証や違約金が書かれた基本契約を読んでいなかった、という失敗です。2回目以降は基本契約が出てこないことも多いので、最初の1回で読みます。
- 見積りの率と契約書の率が違う:見積りでは「8%〜」と聞いていたのに、契約書では審査の結果として別の率になっていた、という例です。署名の直前に、契約書の手数料の額を見積りと並べて確かめます。
- 空欄のある書類に押印する:通知書や委任状の日付・宛先が空欄のまま押印すると、あとでいつ・誰に使われるかを自分で決められなくなります。空欄は埋めてもらうか、斜線を引いてから押印します。
契約書の全体像:基本契約と個別契約、どこに何が書いてあるか
ファクタリングの契約書は、会社によって形式が違いますが、多くは次のような組み合わせになっています。どの書類に何が書いてあるかを最初に把握すると、読み落としが減ります。
| 書類 | 書かれていることが多い内容 | 読むときの注意 |
|---|---|---|
| 基本契約書(債権譲渡基本契約書など) | 取引全体のルール。表明保証、回収の委託、解除、違約金、合意管轄など | 2回目以降の利用にも効く。最初の1回で全文を読む |
| 個別契約書・買取明細・譲渡通知書 | 今回売る請求書、債権額、買取額、手数料、支払日 | 毎回金額を照らし合わせる。基本契約と食い違う条件がないか |
| 付属の書類(委任状、通知書、登記の申請書類など) | ファクタリング会社が利用者の名前で通知や登記をするための書類 | 日付や宛先が空欄のまま署名・押印しない |
契約書の本文は、おおむね「目的 → 対象債権 → 譲渡代金と手数料 → 費用負担 → 表明保証 → 買戻し・償還 → 回収事務の委託 → 回収金の引渡し → 通知と登記 → 解除 → 違約金 → 遅延損害金 → 合意管轄」の順に並びます。条の番号や名前は会社ごとに違うので、見出しの言葉ではなく中身で探してください。
以下では、各条項について、安全な書き方の例、危ない書き方の例、署名の前に聞くことを並べます。例文はすべて、説明のために図鑑が作ったものです。実在の会社の契約書から引用したものではありません。同じ意味でも言い回しは会社ごとに違うので、言葉が一致するかではなく、「売掛先が払わなかったとき、誰が損をするか」が同じかどうかで見比べてください。
条項ごとの読み方(1)目的・対象債権・お金の条項
最初の4つの条項は、「何を、いくらで売るのか」を決める部分です。ここが曖昧だと、あとの条項をどれだけ読んでも、自分が何を約束したのかが定まりません。
目的(契約の種類)
契約の性質を決める条です。売買なのか、貸し借りなのかの入り口になります。
- 安全な書き方の例:「甲は、本契約の定めに従い、別紙記載の売掛債権を乙に売り渡し、乙はこれを買い受ける。」(例文)
- 危ない書き方の例:「乙は甲に対し、別紙記載の売掛債権を担保として、資金を融通する。」のように、担保・融通・貸付けの言葉で書かれている。(例文)
- 聞くこと:「この契約は売買ですか。利用者がお金を返す義務が生じる場面はありますか」
対象債権(売る請求書)
何を売ったのかを特定する条です。範囲が広いほど、ほかの会社や銀行との取引で困ることになります。
- 安全な書き方の例:「対象債権は、甲が丙(売掛先)に対して有する、令和○年○月○日付請求書(番号○○)記載の代金債権○○円とする。」(例文)
- 危ない書き方の例:「甲が現在および将来において丙に対して有する一切の債権」のように、期間や金額の限りがない。(例文)
- 聞くこと:「今回売るのはどの請求書だけですか。次の月以降の売掛金も含まれますか」
将来の売掛金まで含む書き方は、乗り換えや併用のときに問題になります。詳しくは乗り換え・併用にあります。あわせて、売掛先との取引の契約書も見直してください。「債権を他人に譲渡してはならない」という譲渡制限特約があっても、売ること自体の効力は妨げられません。※1ただし、特約を知っていたか、重大な過失で知らなかった買い手に対しては、売掛先が支払いを拒めることがあります。※2特約があるときは、ファクタリング会社に事前に伝えてください。また、売掛先が利用者に対して別の債権(買掛金や貸付金など)を持っていると、相殺で受け取れる額が減ることがあります。※3どちらも、黙っていると後で表明保証の違反を問われる原因になりえます。
譲渡代金と手数料
契約書の中でいちばん数字が多い条です。見積りの数字と1行ずつ照らし合わせます。
- 安全な書き方の例:「債権額○○円、譲渡代金○○円(債権額から手数料○○円を控除した額)。乙は令和○年○月○日までに甲の指定口座に振り込む。」と、全部の金額と支払日が書かれている。(例文)
- 危ない書き方の例:「譲渡代金は、乙が別途定める基準により算出する。」「手数料は乙の審査結果により変動する。」のように、金額が契約書から読み取れない。(例文)
- 聞くこと:「振り込まれる金額はいくらで、いつですか。署名後に金額が変わることはありますか」
計算の例を示します。債権額100万円で、差し引かれるのが率10%の手数料(10万円)だけなら、手取りは90万円です。ここに、見積りになかった事務手数料が仮に3万円加わると、差し引かれる額の合計は13万円、手取りは87万円になります。入金から売掛先の支払いまで30日なら、実質年率は 13 ÷ 87 ÷ 30 × 365 = およそ182% です。見積りの率だけを見ていると、この差に気づけません。
費用負担
登記の費用、振込の手数料、印紙代などを、誰が払うかを決める条です。
- 安全な書き方の例:「本契約に関する費用のうち、債権譲渡登記の費用○○円および振込手数料は甲の負担とし、譲渡代金から控除する。それ以外の費用は乙の負担とする。」(例文)
- 危ない書き方の例:「本契約に関して乙が要した一切の費用は甲の負担とする。」のように、項目も上限もない。調査費・出張費・書類作成費などが後から加わる余地がある。(例文)
- 聞くこと:「手取りから引かれる費用は、この一覧で全部ですか。あとで請求される費用はありますか」
この章の根拠(3件)
- 民法466条2項
- 民法466条3項
- 民法469条
条項ごとの読み方(2)表明保証・買戻し・回収の条項
この部分は、売掛先が払わなかったときに誰が損をかぶるかを決める、契約の中心です。償還請求権の理屈は償還請求権とはに任せ、ここでは「どんな言葉で書かれていたら要注意か」に絞ります。
表明保証
利用者が「この売掛金は本当にある」などの事実が正しいと約束する条です。売る物が実在することを約束するのは、売買として自然な内容です。
- 安全な書き方の例:「甲は、対象債権が真に存在し、第三者に譲渡または担保に供していないこと、および丙との間に譲渡を禁じる特約がないことを表明し保証する。」(例文)
- 危ない書き方の例:「甲は、丙が支払期日に対象債権の全額を支払うことを表明し保証する。」「丙に支払停止、破産手続開始の原因その他信用不安の事由がないことを保証する。」のように、売掛先の支払い能力まで約束させる。(例文)
- 聞くこと:「保証の違反になるのは、どんな場合ですか。売掛先が倒産した場合も違反になりますか」
売掛先の支払い能力を約束させる書き方は、ノンリコースと書かれていても、実質的には売掛先の不払いの損を利用者に戻す働きをします。金融庁も、こうした表明保証を求めた契約が貸付けとされた例を紹介しています。※1
買戻し・償還
売掛先が払わなかったときの扱いを決める条です。名前が「買戻し」でなくても、同じ働きをする条項があります。
- 安全な書き方の例:「丙の支払不能その他の事由により対象債権が回収できない場合でも、乙は甲に対して償還、買戻しその他の請求を行わない。ただし、第○条の表明保証の違反がある場合を除く。」(例文)
- 危ない書き方の例:「支払期日から○日を経過しても回収できないときは、甲は乙の請求により対象債権を額面で再譲渡を受ける。」「甲は不足額を補填する。」のように、言い方を変えた買戻し。(例文)
- 聞くこと:「売掛先が倒産した場合、私が払うお金は1円でもありますか」
契約書では、次の言葉を全部探してください。「買戻し」「償還」「再譲渡」「買取請求」「補填」「保証」「連帯して」。代表者などを連帯保証人にする条があれば、何を保証するのかも読みます。利用者が契約の約束を破ったときの責任なのか、売掛先が払えなかった分なのかで、意味がまったく違います。
回収事務の委託(2社間)
2社間ファクタリング(売掛先に知らせず、利用者が代金を受け取ってファクタリング会社へ送る形)では、利用者が回収の担当を任されます。
- 安全な書き方の例:「乙は甲に対し対象債権の回収事務を委託し、甲は丙から受け取った金銭を乙に引き渡す。甲は、丙からの入金がない場合に自己の資金で支払う義務を負わない。」(例文)
- 危ない書き方の例:「甲は、丙からの入金の有無にかかわらず、支払期日に回収金相当額を乙に支払う。」(例文)
- 聞くこと:「売掛先から入金がなかったら、私は何をすればいいですか。そのときお金を払う必要はありますか」
任された側は、受け取ったお金を任せた側に渡す義務を負います。※2ですから、入ったお金を渡すのは当然です。問題は「入ってこなかったお金」まで払う約束になっていないかです。
回収金の引渡し期限
売掛先から入金があってから、ファクタリング会社へ送るまでの期限です。
- 安全な書き方の例:「甲は、丙からの入金を確認した日から3営業日以内に、回収金を乙の指定口座に送金する。」のように、起算日と日数がはっきりしている。(例文)
- 危ない書き方の例:「甲は、丙の支払期日当日に送金する。」と、売掛先の入金が遅れても期日に送る書き方。あるいは「直ちに」とだけあり、遅れると即座に違約金が発生する。(例文)
- 聞くこと:「売掛先の入金が1日遅れたら、何が起きますか」
売掛先の支払いが遅れることは珍しくありません。入金の確認から数営業日の余裕があるか、遅れたときに先に連絡すればよいのかを確かめ、無理のない期限か考えてください。売掛先の入金を受け取る口座を、ほかの支払いの引き落とし口座と分けておくと、うっかり使い込む事故を防げます。
この章の根拠(2件)
- 金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」
- 民法646条1項
条項ごとの読み方(3)登記・解除・違約金・管轄の条項
最後の部分は、トラブルになったときに効いてくる条項です。普段は使われないため読み飛ばされがちですが、もめたときに何を払うか、どこで争うかはここで決まります。
通知と登記
売ったことを売掛先やほかの人に主張するための手続きを決める条です。売掛先に主張するには、売った側からの通知か売掛先の承諾がいります。※1法人なら、債権譲渡登記で、売掛先以外の人との関係で確定日付のある通知があったのと同じ扱いを受けられます。※2
- 安全な書き方の例:「乙は、甲に第○条の違反があった場合に限り、甲の名義で丙に譲渡の通知を行うことができる。」「登記の存続期間は○年とし、取引の終了後、乙は速やかに抹消の手続きをとる。」(例文)
- 危ない書き方の例:「乙は、必要と認めるときはいつでも、甲の名義で通知を行うことができる。」と、通知を出す場面に限りがない。登記の範囲や抹消についての定めがない。(例文)
- 聞くこと:「通知はどんな場合に出されますか。登記はどの売掛先・どの期間を対象にし、いつ消しますか」
個人事業主は債権譲渡登記を使えません。登記の費用や手続きは債権譲渡登記とは、取引先に知られるかどうかは取引先に知られるかにあります。
解除
どんな場合に契約を終わらせられ、そのとき何を払うかを決める条です。
- 安全な書き方の例:「甲または乙は、相手方に重大な違反があり、催告しても是正されないときは、本契約を解除できる。」と、解除の理由が具体的で、双方に解除の権利がある。(例文)
- 危ない書き方の例:「乙は、甲の信用状態に不安があると判断したときは、何らの催告なく本契約を解除し、甲は直ちに譲渡代金相当額を返還する。」(例文)
- 聞くこと:「解除されるのはどんな場合ですか。解除されたら、受け取ったお金を返す必要がありますか」
解除のときに「受け取った代金を返す」となっている場合、それは売掛先の不払いの損を利用者が負うのと同じ結果になることがあります。会社の側だけに広い解除の権利がある契約も要注意です。
違約金
約束を破ったときに払う額を前もって決める条です。契約に書かれた違約金は、損害の賠償額を前もって決めたものと推定されます。※3書かれた額をそのまま請求されうる、という前提で読んでください。
- 安全な書き方の例:「甲が第○条に違反したときは、乙に生じた損害を賠償する。」のように、違反の内容と結びつけて書かれている。額を決める場合も、計算の基準が明確。(例文)
- 危ない書き方の例:「甲は、理由のいかんを問わず、債権額の2倍に相当する違約金を支払う。」「丙が期日に支払わないときは、甲は違約金として債権額を支払う。」(例文)
- 聞くこと:「違約金がかかるのは、どの約束を破った場合ですか。売掛先が払わなかっただけでかかりますか」
売掛先が払わなかったときに債権額以上を払わせる書き方は、実質的な償還請求です。公正証書(公証役場で作る、強制執行に使える書面)の作成や、白紙の書類への署名・押印を求められたら、その場で応じずに専門家へ相談してください。
遅延損害金
送金などが遅れたときに、遅れた日数に応じて払う額を決める条です。お金の支払いが遅れたときの損害は、契約に率がなければ法定利率で、契約で決めた率のほうが高ければその率で計算されます。※4法定利率は年3%を起点に、3年ごとに見直されます。※5
- 安全な書き方の例:「甲が回収金の送金を遅滞したときは、遅滞した金額に対し年○%の割合による遅延損害金を支払う。」と、対象が利用者自身の送金の遅れに限られている。(例文)
- 危ない書き方の例:「丙の支払いが遅延したときは、甲は1日あたり債権額の○%の遅延損害金を支払う。」のように、売掛先の遅れでも利用者に損害金がかかる。(例文)
- 聞くこと:「遅延損害金がかかるのは、私の送金が遅れたときだけですか。売掛先の支払いが遅れたときもかかりますか」
1日あたりの率で書かれていたら、年率に直してみてください。日0.1%なら年36.5%、日0.3%なら年109.5%です。数字が大きいほど、少しの遅れで負担が膨らみます。
合意管轄
もめたときに、どこの裁判所で争うかを決める条です。第一審の裁判所は、書面(電子契約の記録を含む)で合意して決められます。※6
- 安全な書き方の例:「本契約に関する紛争は、被告の本店所在地を管轄する地方裁判所を第一審の管轄裁判所とする。」のように、どちらか一方だけに有利な場所に固定していない。(例文)
- 危ない書き方の例:「本契約に関する一切の紛争は、乙の本店所在地を管轄する裁判所を専属的合意管轄裁判所とする。」と、会社の所在地だけに決められていて、自社から遠い。(例文)
- 聞くこと:「もめた場合、どこの裁判所になりますか。オンラインで手続きできますか」
遠方の裁判所に決められていると、争うだけで交通費と時間がかかり、不利な条件でも和解せざるをえなくなります。管轄の条項は、会社がどこまで本気で争うつもりかを示す目安にもなります。
このほか、「次回以降も利用する」「他社と取引しない」といった継続利用の約束がないかも確かめてください。
この章の根拠(6件)
- 民法467条1項
- 動産債権譲渡特例法4条1項
- 民法420条3項
- 民法419条1項
- 民法404条
- 民事訴訟法11条
電子契約で結ぶとき:印紙・署名・控えの残し方
オンラインで完結するファクタリングでは、電子契約サービスで契約することが増えています。画面で読んで、ボタンを押して署名する形です。紙の契約と効力が変わるわけではありませんが、気をつける点が3つあります。
印紙は要らない
紙で作る債権譲渡の契約書には、契約金額が1万円以上なら200円の印紙が要ります(契約金額の書かれていないものも200円)。※1一方、印紙税がかかるのは「文書」で、電子データは文書に含まれないため、電子契約には印紙税がかかりません。国税庁は、電子署名を付けたデータを電子メールで送った事例について、印紙税は課税されないと回答しています。※2紙の契約で「印紙代」を請求されたら、契約金額に照らして額が合っているかを確かめてください。
署名の前に、全文をダウンロードして読む
電子契約の画面は、スクロールしながら署名欄まで進めてしまいがちです。署名の前に、契約書のPDFをダウンロードできるかを確かめ、手元で全文を読んでください。画面の検索機能で「買戻」「償還」「保証」「違約」を探すと、時間がなくても要所を拾えます。本人が電子署名をした電子データは、本人が作ったものと推定されます。※3押したら紙の署名と同じ重さがある、と考えてください。
控えを残す:3か所に保存する
- 署名済みのPDF:電子契約サービスから届く完了メールや、サービスの画面から保存する。サービス上の閲覧期間が限られていることがあるので、自分のパソコンや社内の共有フォルダにも保存する。
- 見積りと説明の記録:見積書、担当者とのメールやチャット。契約書と見積りが食い違ったときの証拠になる。
- 入金と送金の記録:買取代金の入金、2社間なら回収金の送金の通帳の記録。
法人や個人事業主が電子データで受け取った契約書は、税務の上でも、電子データのまま保存することが求められています。国税庁は、日付・金額・取引先で探せるようにしておくことを求めており、ファイル名を「日付_金額_取引先」の順にそろえて1つのフォルダに集める方法でもよいとしています。※4保存しておけば、税務と、トラブルのときの証拠の両方に使えます。
この章の根拠(4件)
- 国税庁 No.7141 印紙税額の一覧表 第15号文書
- 国税庁 質疑応答事例「取引先にメール送信した電磁的記録に関する印紙税の取扱い」
- 電子署名法3条
- 国税庁「電子帳簿保存法対応!令和6年1月以降の電子取引データの保存方法について」
図鑑の86サービスで見る:契約書を前もって読める会社は少ない
ファクタリング図鑑は、86サービス(2026年10月15日時点)の公式サイトの表記を確かめています。契約書に関わる項目を数えると、次のとおりです。会社ごとの名前は出さず、全体の数だけを示します。
| 項目 | 数 | 読み方 |
|---|---|---|
| 契約書のひな形(雛形)を公式サイトで公開 | 86中1 | ほとんどの会社では、申し込む前に条項を読めない |
| 電子契約に対応すると明記 | 86中34 | 約4割。対応しないと明記したのは1、残る51は記載なし |
| うち2社間に対応するサービス | 34中32 | 電子契約の会社の大半は、利用者が回収を任される形も扱う |
| 電子契約と「償還請求権なし」の両方を明記 | 86中19 | 電子契約の34のうち半分強 |
| 電子契約・償還請求権なしのどちらも記載なし | 86中24 | サイトの情報だけでは契約の形がほとんどわからない |
「償還請求権なし」を明記しているサービス全体の数と、その読み方はファクタリングは違法かにまとめています。ここで言えるのは、契約書を前もって読める会社はほとんどなく、多くの利用者は申し込んだ後、署名の直前に初めて条項を目にするということです。
だからこそ、見積りの段階で「契約書のひな形をPDFで先に送ってください」と頼むのが、いちばん効く対策です。ひな形が手元にあれば、入金日の前日までに落ち着いて読めます。ネット上で拾える一般的な雛形は、条項の並びを知る参考にはなりますが、実際に署名するのは相手の会社の契約書です。ひな形の文言と、当日出てくる契約書が同じかどうかも確かめてください。
サイトに記載がないことは、その会社が問題だという意味ではありません。逆に、サイトに書いてあっても契約書が同じとは限りません。会社ごとの表記と出典は図鑑の各社のページで確かめられます。
契約書を見せない・控えを渡さないと言われたら
「契約書は署名の当日にお見せします」「控えはお渡ししていません」と言われることがあります。売買としてのファクタリングには、契約書の写しを渡すことを会社に義務づける法律の定めはありません。一方、貸金業者が貸付けの契約を結んだときは、内容を書いた書面を渡す義務があります。※1つまり、控えを渡さない会社は、少なくとも利用者に契約の中身を確かめさせる気がない、と受け取るべきです。
署名の前なら
- 「契約書の全文を事前に読ませてください」と、メールなど記録の残る方法で頼む。
- 断られたら、その理由を聞く。「社外秘」と言われても、署名する本人が読めない理由にはならない。
- それでも見せない、または「控えは渡さない」と言うなら、その会社とは契約しない。急ぎでも、ほかの会社に見積りを頼んだほうが安全です。
もう署名してしまったなら
- 控えの交付を、メールなど記録の残る方法で求める。断られた、はぐらかされたという事実も記録になる。
- 電子契約なら、完了メールやサービスの画面から自分でPDFを保存できないか確かめる。
- 手元にある見積り、メール、振込の記録、担当者の名前と電話の日時をまとめておく。
そのうえで、弁護士や公的な相談窓口に相談してください。窓口ごとにできることと、相談の前にそろえるものはトラブル事例と相談先にまとめています。
この章の根拠(1件)
- 貸金業法17条1項
使わない方がよい場合と、ほかの方法
次のような場合は、契約しない方がよいでしょう。買戻しや償還請求の定めを外してもらえないとき、契約書を事前に見せない・控えを渡さないとき、実質年率で見た負担が事業の利益で払える水準を超えるとき、毎月のように使わないと資金が回らなくなっているときです。金融庁は、高額な手数料を払うとかえって資金繰りが悪化し、多重債務に陥る危険があると注意しています。
ほかの方法として、融資(利息は法律の上限の範囲。元本100万円以上なら年15%まで※1)、仕入先への支払いの延期の相談、国税を一度に納めるのが難しいときの税務署への猶予の申請も比べてください。資金が足りないときの対処の順番は支払いに間に合わないときの対処の順番にあります。
不安な点があれば、弁護士に相談するよう金融庁も呼びかけています。一般的な相談は、金融庁 金融サービス利用者相談室(0570-016811)、悪質な取立てを受けたときは警察相談専用電話(#9110)でも受け付けています。
この章の根拠(1件)
- 利息制限法1条
出典(13件)公的機関の資料・法令。2026.10.15に確認
- ファクタリングの利用に関する注意喚起:金融庁www.fsa.go.jp
- その資金調達 大丈夫ですか?(金融庁 ファクタリング注意喚起リーフレット 表面)www.fsa.go.jp
- 民法(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 法務省:第1 債権譲渡登記制度とは?www.moj.go.jp
- 民事訴訟法(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 電子署名及び認証業務に関する法律(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 貸金業法(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 利息制限法(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- No.7141 印紙税額の一覧表(その2)第5号文書から第20号文書まで(国税庁)www.nta.go.jp
- 取引先にメール送信した電磁的記録に関する印紙税の取扱い(国税庁 質疑応答事例)www.nta.go.jp
- 電子帳簿保存法対応!令和6年1月以降の電子取引データの保存方法について(国税庁、令和6年11月)www.nta.go.jp
- 納期限までに納付することが困難な方へ|国税庁www.nta.go.jp
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