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法律更新 2026.10.15

債権譲渡登記とは。ファクタリングで求められる理由・費用・誰に見られるか

結論

債権譲渡登記は、法人が売掛金などを譲渡したことを国の登記に記録し、取引先以外の第三者に「この債権は譲り受けた」と主張できるようにする制度です。取引先に知らせない2社間ファクタリングで、二重譲渡や差押えに備えて求められます。登録免許税は債権5,000個以下なら1件7,500円、概要は誰でも証明書で確かめられ、個人事業主は使えません。

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  • 10章見出し
  • 13件公的な出典

フファクタリング図鑑編集部(執筆)・公開 2026.10.15

債権譲渡登記とは。ファクタリングで求められる理由・費用・誰に見られるか
01

先に結論:登記を求められたら、まず「費用・見える範囲・消し方」を聞く

ファクタリング会社から「債権譲渡登記をさせてください」と言われた。あるいは「登記なしでもできますが、そのぶん条件が変わります」と持ちかけられた。この記事は、そんな場面で手を止めた法人の経営者に向けて書いています。知りたいのは、登記とは何か、いくらかかるか、誰に見られるか、そして合意してよいか、の4つだと思います。

短く答えると次のとおりです。

  • 何か:法人が売掛金などの金銭債権を譲渡したことを、東京法務局の「債権譲渡登記ファイル」に記録する国の制度です。根拠は「動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律」(以下、特例法)です。
  • なぜ求められるか:取引先に知らせない2社間の取引でも、ファクタリング会社が「この売掛金は自分が先に買った」と、ほかの買い手や差押えをした債権者に主張できるようにするためです。
  • いくらか:国に納める登録免許税は、債権が5,000個以下なら1件7,500円です。証明書の手数料や、司法書士に頼む場合の報酬が別にかかります。報酬の額は事務所によって違います。
  • 誰が見られるか:登記の概要(どの会社が、誰に、いつ譲渡の登記をしたか)は誰でも証明書で確かめられます。取引先の名前まで載った証明書は、当事者や利害関係人などに限られます。
  • 合意してよいか:登記そのものは合法で一般的な手続きです。判断の分かれ目は、費用を誰が負担するか、取引が終わったら抹消するか、どんな場合に取引先へ通知するか、の3点が契約書に書いてあるかどうかです。

ファクタリング図鑑に載せている86サービスのうち、公式サイトで登記を「原則必要」とするのは7、「場合による」は9、「原則不要」「不要」は合わせて25、残りの45は登記について何も書いていませんでした(2026年10月15日時点)。「登記なし」にすると手数料が上がるという傾向は、公表されている手数料の幅からは読み取れませんでした。数字の詳細は後半で示します。

02

債権譲渡登記とは:何が記録されるのか

債権譲渡登記は、法人がする金銭債権の譲渡について、債務者(売掛金を払う取引先)以外の第三者に対する対抗要件(権利を主張するための条件)を備えるための制度です。法務省によると、法人の資金調達の方法が多様になったことを背景に民法の特例として作られ、平成10年10月から運用されています。平成17年10月からは、債務者がまだ決まっていない将来の債権も登記できるようになりました。

登記の事務は、東京法務局民事行政部債権登録課(東京都中野区)が全国分をまとめて扱います。会社の本店がどこにあっても、登記をする先はここです。

登記に書き込まれる項目

債権譲渡登記で記録する事項は、法律で決まっています。※1読みやすく並べると次のようになります。

記録される項目 ファクタリングでいうと
譲渡人の商号と本店 売掛金を売った自社の名前と所在地
譲受人の氏名・住所(法人なら商号と本店) ファクタリング会社の名前と所在地
登記原因とその日付 「売買」など、譲渡の理由と日付
譲渡した債権の総額 すでに発生した債権だけを譲渡する場合の合計額
債権を特定するための事項 取引先(債務者)、債権の種類、発生日、金額など
存続期間 登記の効力を保つ期間
登記番号・登記の年月日 登記所がつける番号と日付

法務省のQ&Aによると、債権は原債権者、債務者、債権の種類、発生原因、発生年月日、債権額などで特定します。また、債権譲渡登記では年月日に加えて登記の時刻も記録されるため、いつ登記されたかがはっきりします。これが、後で説明する「どちらが先か」の争いで意味を持ちます。

登記が証明しないこと

登記の申請には、債権が本当にあることや、本当に譲渡したことを示す書面の添付は求められていません。そのため法務省は、登記は債権の存在や譲渡の有効性まで証明するものではないとしています。逆にいえば、「登記したから取引は安全だ」とも「登記したから債権が確定した」とも言えません。登記は、あくまで順番を争う場面で効く仕組みです。

もう一つ、法務省のQ&Aによると、登記が終わった後に債権の中身や会社名・本店が変わっても、変更や更正の登記はできません。債権の中身を直すなら、改めて登記を申請することになります。登記の内容に誤りがないか、申請前に下書きを見せてもらうと安心です。

この章の根拠(1件)
  1. 動産・債権譲渡特例法8条2項
03

なぜ求められるのか:取引先への通知と登記の違い

売掛金を誰かに譲ったとき、その事実を「誰に対して」主張できるかは、相手によって二つに分かれます。一つは取引先(債務者)、もう一つはそれ以外の人(同じ売掛金を買ったほかの会社、売掛金を差し押さえた債権者、破産管財人など)です。法律の言葉では、前者を債務者対抗要件、後者を第三者対抗要件と呼びます。

方法 取引先への主張 取引先以外への主張 取引先が知るか
民法:取引先への通知か、取引先の承諾(467条1項) できる 確定日付のある証書(内容証明郵便など)で行えばできる(同条2項) 知る
特例法:債権譲渡登記(4条1項) 登記だけではできない できる(確定日付のある通知があったとみなされ、登記の日付が確定日付になる) 登記の段階では知らされない
特例法:登記+登記事項証明書を渡しての通知、または取引先の承諾(4条2項) できる できる 知る

法務省は、民法の方法では第三者への対抗要件を備えるにも取引先を関わらせる必要があるのに対し、登記では第三者向けと取引先向けを切り離し、取引先を関わらせずに譲渡人と譲受人の共同申請だけで第三者への対抗要件を備えられる、と説明しています。取引先に知らせないことが前提の2社間ファクタリングと相性がよいのは、この点です。2社間と3社間の仕組みそのものは2社間と3社間の違いにまとめています。

二重譲渡になったらどうなるか

ファクタリング会社が登記を気にする理由を、時系列の例で見てみます。

  1. 4月1日:A社が、取引先X社への売掛金300万円をファクタリング会社Bに売る。登記はしない。
  2. 4月3日:資金に困ったA社が、同じ売掛金を別の会社Cにも売り、Cは同じ日に債権譲渡登記をする。
  3. 4月10日:BとCが、どちらがこの売掛金の持ち主かで争う。

先に買ったのはBですが、取引先以外への対抗要件を先に備えたのはCです。法務省のQ&Aによると、登記による対抗要件と民法による対抗要件の優劣は、備えた時の先後で決まります。登記同士なら登記の日時、登記と民法の通知が競合したなら登記の日時と通知が届いた日時を比べます。この例ではCが優先し、Bは代金を払ったのに回収できなくなるおそれがあります。売掛金が差し押さえられた場合も同じ構図です。

ファクタリング会社が「入金の前に登記を済ませたい」と言うのは、この空白の時間をなくしたいからです。売る側にとっても、登記があれば「同じ売掛金を別の会社にも売った」と疑われにくくなる面があります。

取引先には登記だけでは主張できない

取引先に対して譲渡を主張するには、譲渡人か譲受人が取引先に登記事項証明書を渡して通知するか、取引先が承諾する必要があります。※1法務省のQ&Aも、それまでは取引先はファクタリング会社への支払いを拒み、元の債権者(自社)を債権者として扱えばよいとしています。2社間の取引で代金の引渡しが滞ったときなどに、ファクタリング会社がこの通知を使うことがあります。どんな場合に取引先が気づくかは取引先に知られるかで詳しく扱っています。

この章の根拠(1件)
  1. 動産・債権譲渡特例法4条2項
04

個人事業主は使えない。法人でも確かめたいこと

この登記の対象は、「法人が債権を譲渡した場合」に限られています。※1法務省も、登記できる債権の譲渡人は法人のみと明記しています。個人事業主やフリーランスが売掛金を売る場合、この登記は使えません。

そのため、個人事業主が「登記が必要です」と言われたなら、その説明は制度と合っていません。どの登記のことを言っているのか、何のための手続きなのかを聞き返してください。個人事業主がファクタリング会社に第三者への対抗要件を備えさせるには、民法の方法(確定日付のある通知か承諾)しかなく、それは取引先に知らせることを意味します。2社間で取引先に知らせない場合、ファクタリング会社は対抗要件のない状態で買い取ることになり、そのリスクが条件に反映されることがあります。

図鑑のデータでも、登記を「原則必要」とする7サービスのうち5サービスは個人事業主も対象にしています。個人事業主にはこの登記ができないので、「原則必要」は法人の申込みを前提にした説明と読むのが自然です。個人で申し込む場合は、登記の代わりに何を求められるのかを確かめてください。

法人であっても、譲渡人として登記できるのは、売掛金を売る自社が法人である場合です。株式会社のほか、合同会社や一般社団法人なども法人です。申請には、自社の代表者の資格を証する書面と、登記所が作った代表者の印鑑証明書(いずれも作成後3か月以内)が必要になります。登記の申請は自社とファクタリング会社の共同で行うので、委任状に押す実印と印鑑証明書を求められるのはこのためです。

この章の根拠(1件)
  1. 動産・債権譲渡特例法4条1項
05

費用はいくらか:登録免許税・証明書・司法書士

登録免許税(登記をするときに国に納める税金)の額は、法律で決まっています。※1債権の譲渡の登記は本来1件15,000円ですが、軽減の特例により、債権の個数が5,000個以下なら1件7,500円に軽くなっています。※2法務省の案内も同じ額を示しています。

登記の種類 登録免許税法の額 実際に納める額
債権譲渡登記(債権5,000個以下) 1件15,000円 1件7,500円(租税特別措置法による軽減)
債権譲渡登記(債権5,000個超) 1件15,000円 1件15,000円
延長登記(存続期間を延ばす) 1件7,500円 1件3,000円(同上)
抹消登記・一部抹消登記 1件1,000円 1件1,000円

「1件」は申請の件数です。ふつうのファクタリングで売る請求書は数枚から数十枚なので、5,000個を超えることはまずありません。納付は収入印紙などで行い、オンライン申請なら電子納付もできます。

証明書の手数料

取引先へ通知するときや、登記の内容を確かめるときには証明書を取ります。法務省が示す手数料は次のとおりです。

証明書 窓口・郵送で請求 オンラインで請求
登記事項証明書(個別事項証明:債権1個ごと) 債権1個につき500円 1通450円(郵送で受け取る場合は500円)
登記事項証明書(一括証明:債権2個以上) 500円+1個を超える債権1個ごとに200円(2個なら700円、5個なら1,300円) 450円+同じ加算(郵送受取は500円+加算)
登記事項概要証明書 1通300円 1通250円(郵送受取は300円)
概要記録事項証明書 1通300円(50枚を超えると加算) オンライン請求あり

司法書士の報酬と、そのほかの実費

申請には、登記申請書と添付書面に加えて、決まった形式(XML)の申請データが必要です。このため、ファクタリング会社が提携する司法書士に任せることが多くなります。報酬は事務所や案件によって違い、公的な基準はありません。見積もりの段階で、報酬を含めた総額を書面で示してもらってください。

このほか、譲渡人の代表者の資格証明書(登記事項証明書)と印鑑証明書を取る費用、郵送で申請するなら書留の費用がかかります。

少額の売掛金ほど、実費の重みが増す

国に納める額だけで、登録免許税7,500円と、取引先への通知に備えた登記事項証明書1通500円の、合わせて8,000円です。これを、2社間で手数料率8%、入金から30日後に取引先が払う取引に上乗せした場合を計算しました。このサイトでは実質年率を「手数料額 ÷ 手取り額 ÷ 日数 × 365」で計算します。登記の実費がないときは、8÷92÷30×365で年率は約106%です。

売掛金の額 実費8,000円の額面に対する割合 実費なしの年率 実費を差し引かれた場合の年率
20万円 4.0% 105.8% 165.9%
50万円 1.6% 105.8% 129.2%
100万円 0.8% 105.8% 117.4%
300万円 0.27% 105.8% 109.6%
1,000万円 0.08% 105.8% 106.9%

たとえば100万円なら、差し引かれるのは手数料80,000円と実費8,000円の計88,000円、手取りは912,000円で、88,000÷912,000÷30×365から年率は117.4%になります。司法書士の報酬まで差し引かれれば、さらに上がります。20万円の請求書1枚のために登記をするなら、実費だけで額面の4%が消えます。自分の数字で確かめるときは手数料と実質年率の計算に、手取りの額を入れてください。

実費を誰が払うかは会社によって違います。図鑑で調べた中にも、手数料のページでは「買取手数料以外の費用はかからない」としながら、別のページでは登記費用などを実費で負担するよう書いている会社がありました。「手数料以外にかかるものはありますか」と、登記費用を名指しして聞くのが確実です。

この章の根拠(2件)
  1. 登録免許税法別表第一
  2. 租税特別措置法84条の6
06

誰が何を見られるか:3つの証明書

債権譲渡登記の内容は、3種類の証明書で公開されます。取引先の名前など個々の債権が分かる情報は、取引先のプライバシーや自社の営業秘密に関わるため、取れる人が限られています。※1※2一方、概要は誰でも取れます。

登記事項証明書 登記事項概要証明書 概要記録事項証明書
載っていること 個々の債権を含む全部 債務者名など債権を特定する事項を除いたもの。登記原因、存続期間、債権の総額は載る 譲渡人ごとの概要。登記原因、存続期間、債権の総額は載らない
請求できる人 当事者、債務者、利害関係人など(下の一覧) 誰でも 誰でも
請求先 債権譲渡登記所(東京法務局) 債権譲渡登記所 全国の商業登記所・不動産登記所、法務局証明サービスセンター
いつから出るか 登記が終わればすぐ 登記が終わればすぐ 自社の本店を管轄する登記所での処理が終わってから
インターネットで見られるか 見られない 見られない 登記情報提供サービスで見られる

登記事項証明書を取れる人

取引先の名前まで載った登記事項証明書を請求できるのは、法務省の案内では次の人に限られます。

  • 譲渡人と譲受人(自社とファクタリング会社)
  • 譲渡された債権の債務者(取引先)や、その債権の取得者
  • その債権を差し押さえた・仮差押えをした債権者、その債権に質権を持つ人
  • これらの人の財産を管理・処分する権限を持つ人(破産管財人など)
  • 譲渡人の使用人(自社の従業員)

請求には印鑑証明書などのほか、立場を示す書面(差押決定書の謄本、社員証の写しなど)が必要です。つまり、取引先が自分の名前の載った証明書を取ることはできますが、関係のない会社や個人が取引先名まで調べることはできません。

金融機関は「ないこと証明」を見ることがある

法務省のQ&Aは、債権を譲り受けようとする人が、先に登記された譲渡がないかを確かめる方法として、まず相手の会社の概要記録事項証明書を取り、記録がなければ「ないこと証明」で確かめる流れを示しています。記録があれば、相手に登記事項証明書を見せてもらうなどして中身を確かめることが考えられる、としています。

売掛金を担保にした融資や、別のファクタリング会社との取引を考えるとき、相手がこの手順で調べれば、以前の登記が見つかります。特に、債務者が決まっていない将来の債権まで含めて広く登記されていると、新しい相手は「その売掛金はもう譲渡済みではないか」と判断に迷います。登記する債権の範囲が、今回売る請求書だけに絞られているかは確かめておきたい点です。

この章の根拠(2件)
  1. 動産・債権譲渡特例法11条
  2. 法務省Q&A
07

登記はいつまで残るか:存続期間・延長・抹消

債権譲渡登記には存続期間を定めます。譲渡した債権の債務者がすべて特定している場合は50年、それ以外(債務者が決まっていない将来の債権を含む場合など)は10年を超えることができません。※1これを超えて定めるには特別の事由が必要で、それを証する書面を添付します。上限が長いので、ファクタリング会社が何年で申請するかを聞いておくと、登記がいつまで公開され続けるかの目安になります。

存続期間は延長登記で延ばせます。※2延長も譲渡人と譲受人が共同で申請し、上限を超える延長はできません。

抹消できる場合と、その手続き

譲渡人と譲受人が抹消登記を申請できるのは、次の3つの場合です。※3

  1. 債権の譲渡が効力を生じないこと
  2. 債権の譲渡が取消し、解除などで効力を失ったこと
  3. 譲渡した債権が消滅したこと

ファクタリングでいえば、取引先が期日に代金を払い、それがファクタリング会社に渡って売掛金が消えれば、3つ目に当たります。契約が流れた場合は1つ目か2つ目です。法務省のQ&Aは、譲渡した債権を誤って登記した場合も、抹消の申請ができると考えられるとしています。

注意したいのは、抹消も共同申請だという点です。法務省の案内では、抹消登記の添付書面に譲受人(ファクタリング会社)の印鑑証明書が含まれています。つまり、取引が終わった後でも、ファクタリング会社の協力がなければ自社だけで抹消するのは難しくなります。抹消をするのか、いつまでにするのか、登録免許税1,000円と報酬を誰が持つのかを、契約の時点で書面にしておく理由はここにあります。

また、抹消登記は、元の登記の記録に「抹消する旨」や登記原因・日付などを書き加える方法で行われます。※4消したからといって、登記をした事実がはじめから無かったことになるわけではない、と考えておくのが無難です。

この章の根拠(4件)
  1. 動産・債権譲渡特例法8条3項
  2. 動産・債権譲渡特例法9条
  3. 動産・債権譲渡特例法10条1項
  4. 動産・債権譲渡特例法10条2項
08

図鑑86サービスの登記の扱い

ファクタリング図鑑に載せている86サービスについて、公式サイトの債権譲渡登記の書き方を分類しました(2026年10月15日時点、各社の公式サイトの表記による)。

公式サイトの表記 サービス数 割合 うち2社間だけを扱う うち個人事業主も対象
原則必要 7 8.1% 0 5
場合による 9 10.5% 2 5
原則不要 17 19.8% 10 13
不要 8 9.3% 5 6
記載なし 45 52.3% 9 28
合計 86 100% 26 57

読み取れることは3つあります。

  • 半分以上は何も書いていない。86サービス中45(52.3%)は、登記が要るかどうかに触れていません。申し込んでから初めて聞かされる人が多いのは、このためです。
  • 「要らない」と書く会社は2社間専門が多い。「原則不要」「不要」の25サービスのうち15(60%)は2社間だけを扱います。一方、「原則必要」の7サービスはすべて2社間と3社間の両方を扱っています。
  • 「必要」と明記する会社は少数派。「原則必要」と「場合による」を合わせても16(18.6%)です。

「登記なし」は手数料が高いのか

公表されている2社間の手数料の幅で比べました。上限を公表しているサービスだけを見ると、上限の中央値は、登記を「原則必要」「場合による」とする側(7サービス)で14.9%、「原則不要」「不要」とする側(17サービス)で10%でした。下限の中央値はどちらも2%です。

つまり、公表値の上では「登記なしの会社ほど手数料が高い」という傾向は見られませんでした。ただし、これは各社が広告に出している幅で、実際に示される率ではありません。数も少なく、同じ会社の中で「登記あり」と「登記なし」で率が変わるかどうかは、このデータでは分かりません。登記なしを選ぶと率が上がると言われたら、両方の条件を書面で出してもらい、手取りで比べるのが確実です。

サイトの表記と契約書が食い違うことがある

調べる中で、表記が一致しない例が3つありました。

  • よくある質問では「原則必要(留保も可)」、別ページの比較表では「なし」と書いているサービス
  • サイトでは「不要」としながら、公開している利用規約(PDF)には登記や通知を求めうる条項があるサービス
  • 手数料のページでは手数料以外の費用はないとし、別のページでは登記費用などを実費負担とするサービス

サイトの「登記不要」は入り口の説明にすぎません。最後に効くのは契約書です。各社の表記は会社一覧の条件で絞り込めますが、申し込む前に契約書の条項で確かめてください。

09

「登記なし」「登記留保」を持ちかけられたとき

「登記なし」には二通りの意味があります。一つは、最初から登記をしない取引。もう一つは「登記留保」と呼ばれるもので、登記に必要な書類(委任状や印鑑証明書など)をあらかじめ預かっておき、支払いが滞ったときなどに会社の判断で登記をする、という形です。後者では、契約の時点で登記がなくても、条件しだいで後から登記されます。どちらなのかを、まず確かめてください。

金融庁が紹介する裁判例には、対抗要件を備えるのは猶予されていたものの、ファクタリング会社の判断で備えることができたことなどを考え合わせて、ファクタリングを債権の売買と認めたものがあります。※1登記を後回しにする約束そのものが、ただちに問題になるわけではありません。

登記なしで変わること

視点 登記をする 登記をしない
ファクタリング会社の立場 二重譲渡や差押えに備えられる 先に登記や通知をされると負けるおそれを抱える
自社の費用 登録免許税・証明書・報酬などがかかることがある 登記の実費はかからない
公開されるか 概要は誰でも確かめられる 登記による公開はない
後で起こりうること 抹消の手続きが要る 留保なら、条件に当たると後から登記されうる

登記なしで会社が抱えるリスクは、手数料や買取額、審査に反映されることがあります。ただ、前の節で見たとおり、公表値からは「登記なしの会社ほど高い」とは言えません。比べるときは、登記ありの条件(手数料+登記の実費)と登記なしの条件(手数料)を、同じ請求書・同じ日数で実質年率にして並べてください。差が実費程度なら、登記の公開を避ける価値と比べて選べます。差が大きいなら、その理由を聞いてください。

「知られたくない」につけ込む誘いに注意

「登記なしなら誰にも分からない」と強調し、極端に高い手数料や、取引先が払えなかったときの買い戻しを求める業者には気をつけてください。金融庁は、売主が集金できなかったときに債権を買い戻すことになっている取引などは貸金業に当たるおそれがあるとしています。買い戻しの有無は償還請求権とはで確かめ方を説明しています。

この章の根拠(1件)
  1. 東京地裁令和2年9月18日判決
10

合意する前のチェックリストと、ほかの方法

登記を求められたら、契約書に署名する前に次の点を確かめてください。口頭の説明ではなく、契約書や見積書の文言で確かめるのが大事です。

  1. 登記をする時期はいつか(入金の前か、留保して必要なときだけか)
  2. 登記する債権の範囲は、今回売る請求書だけか(将来の債権まで広く入っていないか)
  3. 存続期間を何年にするか
  4. 登録免許税、証明書代、司法書士の報酬を誰が払うか。買取代金から差し引くなら、いくらか
  5. 取引が終わったら抹消するか。抹消はいつまでに、誰の費用でするか
  6. どんな場合に、取引先へ登記事項証明書付きの通知をするか
  7. 登記留保なら、どんな条件で登記に切り替えるか。預ける書類は何か
  8. 登記ありと登記なしで条件が違うなら、両方を書面で出してもらったか
  9. 取引先が払えなかったときに、自社が買い戻すことになっていないか
  10. 申請データの下書き(債権の特定の仕方、金額)を事前に見せてもらえるか

契約書のほかの確かめどころは契約書で確かめる箇所にまとめています。

使わない方がよい場合

  • 近いうちに銀行の融資や売掛金担保の借入れを申し込む予定がある:概要は誰でも確かめられるので、審査で質問される可能性があります。先に融資の相談をしてみる手があります。
  • 売掛金が少額:登記の実費だけで額面の数%になることがあり、実質の負担が重くなります。
  • 毎月のように使うことになりそう:そのたびに登記と抹消の費用がかかります。金融庁も、高額な手数料はかえって資金繰りを悪化させ、多重債務に陥る危険があると注意しています。

ほかの方法

取引先に相談できる関係なら、承諾をもらう3社間ファクタリングでは、取引先の承諾で対抗要件を備えられるので、登記を求める理由は小さくなります。手数料も2社間より低くなりやすいとされます。支払期日の前倒しを取引先に相談する、支払い先に期日の延期を相談する、銀行や日本政策金融公庫の融資を検討する、といった方法もあります(違いは融資との違い)。税金の支払いが重なっているなら、国税庁は、一度に納めることが難しい場合に税務署へ申請して換価の猶予や納税の猶予が認められる場合があると案内しています。

出典(13件)公的機関の資料・法令。2026.10.15に確認
  1. 法務省:債権譲渡登記制度の概要www.moj.go.jp
  2. 法務省:第1 債権譲渡登記制度とは?www.moj.go.jp
  3. 法務省:(債権譲渡登記等)添付書面・登録免許税www.moj.go.jp
  4. 法務省:第2 登記申請の手続www.moj.go.jp
  5. 法務省:第3 証明書交付請求の手続www.moj.go.jp
  6. 法務省:(債権譲渡登記等)オンライン証明書交付請求手続www.moj.go.jp
  7. 法務省:(債権譲渡登記)Q&Awww.moj.go.jp
  8. 動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律|e-Gov法令検索laws.e-gov.go.jp
  9. 民法|e-Gov法令検索laws.e-gov.go.jp
  10. 登録免許税法|e-Gov法令検索laws.e-gov.go.jp
  11. 租税特別措置法|e-Gov法令検索laws.e-gov.go.jp
  12. ファクタリングの利用に関する注意喚起:金融庁www.fsa.go.jp
  13. No.9206 国税を期限内に納付できないとき|国税庁www.nta.go.jp

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