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法律更新 2026.10.15

償還請求権とは。ノンリコースかどうかを契約書で確かめる

結論

償還請求権とは、売掛先が代金を払えなかったときに、ファクタリング会社が利用者に代わりの支払いや買戻しを求める権利です。これがない契約を「ノンリコース」と呼びます。ただし契約書にノンリコースと書いてあるだけでは足りず、買戻しの義務や表明保証の条項など、実態として利用者に返済の負担が残っていないかを確かめる必要があります。

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  • 6章見出し
  • 7件公的な出典

フファクタリング図鑑編集部(執筆)・公開 2026.10.15

償還請求権とは。ノンリコースかどうかを契約書で確かめる
01

償還請求権とは何か

ファクタリングは、売掛金(取引先からまだ受け取っていない代金)をファクタリング会社に売って、期日より前に現金を受け取る取引です。金融庁は、ファクタリングを「法的には債権の売買(債権譲渡)契約」と説明しています。

売った後に売掛先が倒産したり、支払いが遅れたりすると、代金が回収できません。このとき、その損を誰が負うかを決めるのが償還請求権の有無です。

区分 売掛先が払えなかったとき 損を負う人
償還請求権あり(リコース) ファクタリング会社が利用者に、代わりの支払いや債権の買戻しを求められる 利用者
償還請求権なし(ノンリコース) ファクタリング会社は利用者に支払いを求めない ファクタリング会社

金融庁の注意喚起では、ノンリコースを「売却した売掛債権等が返済不能になっても売却した事業者に返済義務は生じないこと」と説明しています。売掛先の不払いのリスク(危険)がファクタリング会社に移っていることが、債権の売買といえるための大事な目印になります。

償還請求権の有無は、2社間か3社間かとは別の話です。2社間(売掛先に知らせず、利用者が代金を回収して業者に送る形)でも3社間(売掛先が業者に直接払う形)でも、契約の中身しだいでリコースにもノンリコースにもなりえます。2社間と3社間の違いは2社間と3社間の違いをご覧ください。

02

なぜ償還請求権の有無が大事なのか

理由は、償還請求権がある取引は、経済的には「売掛金を担保にしたお金の貸し借り」と変わらなくなるからです。

金融庁は、契約書に「債権譲渡契約(売買契約)」と書かれていても、経済的に貸付けと同じ働きをするものは貸金業に当たるおそれがあるとしています。例として、回収(集金)を利用者に任せていて、集金できなかったときに次のように決めている契約を挙げています。

  • 利用者(売主)が債権を買い戻すことになっている
  • 利用者が自分の資金でファクタリング会社に支払わなければならない

金融庁のリーフレットでも、被害が疑われる例として「回収できなかった場合に、売主による債権の買戻しや買主(買取業者)による償還請求が行われることになっている」ものを挙げています。

貸金業を営むには財務局または都道府県の登録が必要で、登録なしに営むことは法律で禁じられています。※1※2違反すると10年以下の拘禁刑または3,000万円以下の罰金(または両方)の対象です。※3また、業として貸付けをする場合、年20%を超える利息の契約は処罰の対象となり、年109.5%を超えればさらに重い刑となるうえ契約自体も無効です。※4※5※6償還請求権のある「ファクタリング」は、こうした規制を逃れる手段に使われるおそれがあるため、利用者にとっても大きな問題になります。

この章の根拠(6件)
  1. 貸金業法3条
  2. 貸金業法11条
  3. 貸金業法47条
  4. 出資法5条2項
  5. 出資法5条3項
  6. 貸金業法42条
03

「ノンリコース」と書いてあれば安心、ではない

金融庁は、貸金業に当たるかどうかは、契約書にノンリコースの規定があるかといった形式だけでなく、経済的な側面や実態で判断されると注意しています。

金融庁のページでは、ファクタリングが貸付けに当たると判断された裁判例も紹介されています。その中には、ノンリコースと書かれていても実態で判断されたものがあります。

  • 売主は売掛先の支払い能力を保証しないと書かれていたが、債権の性質や支払日までの期間の短さから、売掛先が払わない可能性はきわめて低く、貸付けに当たるとされた事案※1
  • ノンリコースの規定はあったが、売掛先に支払いを拒む理由がないこと、支払停止の状態にないことなどを売主が表明保証(「間違いない」と約束すること)する形になっており、売主に債務の保証を求めるのと同じだとして、金銭の貸し借りに当たるとされた事案※2
  • 取引先に知られると事業が続けられなくなるため、売主が何としても期限までに買い戻すしかない状況を業者も知っていたなどとして、公序良俗に反し無効とされた事案※3

一方で、ファクタリング会社が償還請求権を持たず、売主も買戻しを予定しておらず、不払いのリスクが実際に業者に移っていたことなどを総合して、貸金業の規制は及ばないとされた事案もあります。※4※5これらの事案では、手数料が担保目的をうかがわせるほど大きくないことも考慮されています。

つまり、見られているのは「誰が本当に不払いのリスクを負っているか」です。契約書の一文だけでなく、他の条項や実際の運用まで合わせて確かめることが大切です。

この章の根拠(5件)
  1. 名古屋地裁 令和3年7月16日判決
  2. 東京地裁 令和4年3月4日判決
  3. 札幌高裁 令和4年7月7日判決
  4. 東京地裁 令和2年9月18日判決
  5. 東京高裁 令和4年6月15日判決
04

契約書で確かめる条項

契約前に、次の条項を探して読んでください。わからない言葉があれば、その場で説明を求め、答えを書面やメールで残しておくと安心です。

条項 確かめること 注意したい書き方
契約の種類 「売買」「債権譲渡」と明記されているか 売買と書かれていない(金融庁リーフレットが被害の疑い例に挙げている)
償還請求・買戻し 売掛先が払わないとき、利用者に支払いや買戻しの義務があるか 「買い戻す」「償還する」「不足額を支払う」
表明保証 何を約束させられ、違反したらどうなるか 売掛先の支払い能力や期日に確実に払われることまで保証させる
違約金・損害金 金額や計算方法、発生する場面 不払い時に債権額以上を払わせる
回収の委託(2社間) 入金後いつまでに送るか、遅れたらどうなるか 回収できなくても自己資金で払う義務がある
手数料と買取額 債権額・買取額・手数料・その他の費用の内訳 買取額が債権額に比べて著しく低い

気になる条項があれば、削除や書き換えを求めてかまいません。応じてもらえないときは、その理由を聞いたうえで、ほかの会社の契約書と見比べるのが確実です。見積りの段階で契約書のひな形を見せてもらえるかを聞いておくと、比べる時間をとれます。

手数料は、1回の率だけでなく実質年率でも確かめましょう。式は「手数料額 ÷ 手取り額 ÷ 入金までの日数 × 365」です。たとえば手数料10%・入金まで30日なら、10 ÷ 90 ÷ 30 × 365 = 約135%です。計算は手数料と実質年率の計算でもできます。条項ごとの読み方は契約書で確かめる箇所で詳しく説明しています。

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ノンリコースでも利用者が責任を負う場面

ノンリコースは「売掛先の支払い能力の不足による損」を業者が負うという意味です。利用者側の事情で回収できない場合まで、業者が負うわけではありません。一般には、次のような場面で利用者が責任を問われうるので、契約書でどう定められているかを確認してください。

  • 債権がそもそも存在しない・金額が違う:架空の請求書や水増しは論外で、詐欺に問われるおそれもあります。
  • 同じ売掛金を二重に売った:別の会社にも譲渡していた場合です。
  • 売掛先から相殺される:売掛先は、譲渡を主張できるようになる前(対抗要件具備時より前)に取得した利用者への債権で相殺できます。※1売掛先に買掛金や貸付金などがある場合は事前に伝えましょう。
  • 2社間で、入金されたお金を送らなかった:回収を任されたお金を期日までに送らないのは、契約違反です。

こうした責任は「利用者が約束した事実が正しいこと」についてのものです。売掛先の支払い能力そのものを保証させる条項は、先の裁判例のように貸付けと評価される一因になりえます。

この章の根拠(1件)
  1. 民法469条
06

使わない方がよい場合と、ほかの方法

次のような場合は、ファクタリングを使わない方がよいか、少なくとも契約を急がない方がよいでしょう。

  • 契約書に買戻しや償還請求の定めがあり、削除や説明を求めても応じてもらえない
  • 契約書の控えをもらえない、または内容を読む時間を与えられない
  • 実質年率で見ると、手数料が毎月の利益で払える水準を大きく超える
  • 毎月のように使わないと資金が回らない(金融庁は、高額な手数料でかえって資金繰りが悪化し、多重債務に陥る危険を指摘しています)

ほかの方法も並べて比べてください。

  • 融資:融資の利息は法律で上限が決まっており、元本100万円以上なら年15%までです。※1実質年率で比べると負担が軽くなりやすい一方、審査や入金までに時間がかかることがあります。違いはファクタリングと融資の違いで整理しています。
  • 支払いの延期の相談:仕入先や外注先に、支払日を少し延ばせないか早めに相談する方法です。
  • 納税の猶予:国税を一度に納めると事業の継続が難しくなるおそれがある場合などは、税務署に申請して換価(差押財産の売却)の猶予や納税の猶予を受けられる場合があります。

契約内容に少しでも不安があれば、弁護士に相談するよう金融庁も呼びかけています。一般的な相談は、金融庁 金融サービス利用者相談室(0570-016811)でも受け付けています。

この章の根拠(1件)
  1. 利息制限法1条
出典(7件)公的機関の資料・法令。2026.10.15に確認
  1. ファクタリングの利用に関する注意喚起:金融庁www.fsa.go.jp
  2. その資金調達 大丈夫ですか?(金融庁 ファクタリング注意喚起リーフレット 表面)www.fsa.go.jp
  3. 貸金業法(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
  4. 出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
  5. 利息制限法(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
  6. 民法(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
  7. 猶予の申請の手引(国税庁)www.nta.go.jp

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