法律更新 2026.10.17
売掛金の時効は何年?2020年改正後の5年と、期限前に止める方法
売掛金の時効は、2020年4月以降の取引なら支払期日から5年です。改正前の契約は旧法の期間で数えます。数え始めと満了日、承認・催告・協議の合意で止める方法を、日付の計算例で説明します。
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フファクタリング図鑑編集部(執筆)・公開 2026.10.17

「1年以上前の請求書が、まだ払われていない」「売掛金は2年で時効と聞いたけれど、もう取れないのか」。期日を過ぎた売掛金を抱えたとき、最初に確かめたいのが時効です。
この記事は、払われていない売掛金がある中小企業の経営者・個人事業主に向けて書いています。時効の期間、2020年の民法改正で変わった点、いつから数えるか、どうすれば止められるかを、条文と日付の計算例で説明します。
この記事を6枚で
1 / 6結論:売掛金の時効は原則5年。2020年4月より前の取引だけは旧法で数える
払われていない売掛金って、いつまで請求できるの?
2020年4月以降の取引なら、支払期日から5年です。改正前の取引は旧法の期間で数えます。承認をもらえば5年の数え直し、内容証明などの催告は6か月の猶予だけです。
売掛金の時効について、まず押さえたいのは次の4つです。
- 期間:2020年4月1日以降の取引で生じた売掛金は、支払期日から5年で時効にかかります。期日を知らないまま過ぎる例外の場面でも、請求できる時から10年が上限です。
- 改正前の取引:2020年3月31日までに契約した取引の代金は、改正前の期間(卸売・小売の商品代金なら2年など)で数えます。2026年の今、その多くはすでに期間を過ぎています。
- 止め方:取引先に債務を認めてもらう(承認)と、そこから5年の数え直しになります。内容証明などでの請求(催告)は6か月の猶予だけで、その間に裁判所の手続きをとります。
- 過ぎたあと:期間を過ぎても、売掛金は自動では消えません。取引先が「時効だから払わない」と主張して(援用して)初めて消えます。
大事なのは「何年か」を覚えることより、売掛金1件ごとに「時効の日まであと何日か」と「どの手で止めるか」を決めておくことです。期日を過ぎた売掛金は、時効の日が近い順に手を打ちます。
この記事は、次の順で説明します。
- 売掛金の時効は何年か:5年と10年の2つの物差し
- 2020年の改正で何が変わったか
- いつから数えて、いつ完成するか
- 時効を止める方法:完成猶予と更新
- 期日を過ぎた売掛金の時効を管理する手順
- 数字で確かめる:6件の台帳で時効の日と残り日数を出す
- 時効の期間が過ぎてしまったら
- 回収が見込めないとき・ほかの方法
- よくある失敗と注意点
売掛金の時効は何年か:「5年」と「10年」の2つの物差し
時効は5年と10年、どっちで考えればいいの?
知った時から5年と、請求できる時から10年の早いほうです。期日を決めた売掛金なら、支払期日から5年と考えれば足ります。判決などで確定すれば、確定から10年になります。
今の民法は、債権の時効を2つの物差しで決めています。どちらか早いほうが来た時に、時効が完成します。※1
| 物差し | 数え始め | 期間 | 売掛金での意味 |
|---|---|---|---|
| 知った時から | 請求できると知った時 | 5年 | 期日を決めた売掛金は、期日が来れば知っているのがふつう。実務ではこちらで数える |
| 請求できる時から | 請求できるようになった時 | 10年 | 請求できることを知らないまま過ぎる、例外の場面の上限 |
法務省の説明資料も、売買代金のような契約上の債権は「知った時」と「請求できる時」が基本的に同じ時点になる例に挙げています。※2ですから、請求書を出して期日を決めている売掛金は、支払期日から5年と考えれば足ります。
取引先が会社でも個人事業主でも、一般の消費者でも、この5年は変わりません。業種による違いも、今はありません。
10年になるのは、判決などで確定したとき
訴訟の判決が確定したときや、支払督促・裁判上の和解・調停で権利が確定したときは、時効は確定の時から10年になります。※3もとが5年の売掛金でも、確定すれば10年に延びます。
ただし、確定の時点でまだ期日が来ていない分(分割払いの先の回の分など)は、10年になりません。※4その分は、それぞれの期日から5年で数えます。
売掛金とは別の決まりがあるもの
代金をでんさい(電子記録債権)で受け取っている場合、でんさいそのものの時効は、請求できる時から3年です。※5手形で受け取った場合も、手形法の別の期間があります。でんさいの仕組みと期日の扱いはでんさい(電子記録債権)とはで説明しています。
この章の根拠(5件)
- 民法166条1項
- 法務省「民法(債権関係)の改正に関する説明資料-重要な実質改正事項-」p.3
- 民法169条1項
- 民法169条2項
- 電子記録債権法23条
2020年の改正で何が変わったか:短期消滅時効と商事時効の廃止
「売掛金の時効は2年」って聞いたことあるけど?
それは卸売・小売の商品代金の旧ルールです。2020年の改正で業種ごとの短い時効は廃止され、一本化されました。ただし2020年3月以前に契約した取引は、改正前の期間で数えます。
改正前の民法には、職業や業種ごとに1〜3年の短い時効がありました(短期消滅時効)。これにあたらない商取引の代金は、商法の5年(商事時効)で数えていました。
2020年の改正で、短期消滅時効も商事時効もすべて廃止され、前の章の「5年と10年」に一本化されました。※1法務省は、どの債権にどの期間が当たるのかが複雑で分かりにくいことを、見直しの理由に挙げています。
| 売掛金の種類 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 卸売・小売の商品の代金 | 2年 | 5年 |
| 注文を受けて物を作る仕事、自分の仕事場で請け負う仕事の代金 | 2年 | 5年 |
| 工事の設計・施工・監理の代金 | 3年(工事が終わった時から) | 5年 |
| 医師・薬剤師の診療・調剤の代金 | 3年 | 5年 |
| 運送賃、旅館・飲食店の代金、自分の労力を提供する人の報酬 | 1年 | 5年 |
| 上のどれにも当たらない商取引の代金 | 5年(商事時効) | 5年 |
表の「改正前」は、改正前の民法にあった定めです。※2よく見る「売掛金の時効は2年」という説明は、卸売・小売の商品代金の旧ルールです。改正前でも業種によって期間は違い、今は使えない数字です。
一方で、改正でも変わらなかった点があります。時効は期間が過ぎただけでは効力がなく、取引先の援用が要ること。取引先が債務を認めれば、そこから数え直しになること。この2つは改正の前後で同じです。用語が「中断」から「更新」に変わっただけで、承認の効き目そのものは同じと考えてかまいません。
どちらで数えるか:分かれ目は「2020年4月1日」と「契約の日」
改正法の施行日は2020年4月1日です。※3施行日より前に生じた売掛金は、改正前の期間で数えます。施行日以後に生じた売掛金でも、もとになった契約が施行日より前なら、改正前の期間です。※4
- 2020年3月に納品し、期日が4月末の代金 → 改正前の期間
- 2020年3月に注文を受け、5月に納品した代金 → 改正前の期間(契約が施行日前)
- 2020年4月以降に注文を受けた代金 → 改正後の5年
2020年3月以前に結んだ取引基本契約のもとで、施行日後に注文を受けた場合は判断が分かれることがあります。注文ごとに売買が成り立つ契約なら、注文の日で考えるのが素直な読み方です。基本契約の中で個々の代金まで決まっているような場合は、弁護士に確かめます。
2026年の今、改正前の売掛金はどうなっているか
改正前の期間は、長いものでも商事時効の5年でした。施行日前に期日が来た売掛金は、2025年3月31日までに5年を過ぎています。契約が施行日前で期日がその後に来たものも、期日がよほど先の取引でない限り、同じです。
つまり、改正前の売掛金は、途中で時効を止めていなければ、2026年10月の時点でほぼすべて期間を過ぎています。ただし、改正前に訴えを起こしたり、相手が承認したりして時効が「中断」していることがあります。その効力は改正前の決まりで扱われ、売掛金がまだ生きていることがあります。※5
改正後の売掛金も、すでに5年を迎え始めています。期日が2020年4月1日の売掛金は、2025年4月1日に5年でした。2026年10月17日の時点では、期日が2021年10月17日より前の売掛金が5年を過ぎています。
この章の根拠(5件)
- 法務省「民法(債権関係)の改正に関する説明資料-重要な実質改正事項-」p.2
- 法務省「民法の一部を改正する法律 新旧対照条文」旧170条〜174条
- 法務省「民法(債権関係)改正法の施行期日について」
- 民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)附則10条1項・4項
- 附則10条2項
いつから数えて、いつ完成するか:起算日と満了日
時効は、いつから数え始めるの?
代金を請求できるようになった時です。期日を決めていれば支払期日からで、請求書の日付や最後に催促した日ではありません。期日が2021年11月30日なら、2026年11月30日が終わると完成します。
時効の数え始め(起算点)は、代金を請求できるようになった時です。売掛金の場合、取引の決め方によって次のようになります。
| 取引の決め方 | 数え始め | 例 |
|---|---|---|
| 支払期日を決めている(末締め翌月末払いなど) | 支払期日 | 10月分の代金で期日が11月30日なら、11月30日から |
| 支払期日を決めていない | 請求できる時(引渡しや仕事の完了) | 期日の約束がない納品なら、納品した時から |
| 分割払い | 回ごとの期日 | 10回払いなら、1回目と10回目で時効の日が違う |
表のとおり、数え始めは請求書の日付でも、最後に催促した日でもありません。期日が契約で決まっていれば、請求書を出し忘れていても、期日から時効は進みます。
支払条件を「請求書の到着から30日」のように決めている場合は、請求書を出すまで期日が来ないと読めます。ただ、出せるのに出さずにおくと争いのもとになります。請求書は、締め日のあと早めに出すのが安全です。
入金が足りないとき、どの請求書に充てるか
同じ取引先に払われていない請求書が何枚もあり、入金が全部には足りないこともあります。どの請求書に充てるかは、まず払う側が指定でき、指定がなければ受け取る側が受け取る時に指定できます。※1どちらも指定しなければ、期日が来ているものを先に、そのうえで払う側に有利なものから充てる決まりです。※2
時効の管理から見ると、期日の古い、時効の近い請求書から充てるのが基本です。入金を受けたら、どの請求書に充てたかを取引先に伝え、台帳にも残します。取引の始めに充てる順番を合意しておけば、その順番に従います。※3
満了日の数え方
期日の当日は数えず、翌日から数えます。※4年で数える期間は暦で数え、5年後の「期日と同じ日付」が終わった時に完成します。※5
たとえば期日が2021年11月30日の売掛金は、2026年11月30日が終わると時効が完成します。月末の期日でも、うるう年の2月29日のような応当日がない場合は、その月の末日で満了します。※6
満了日が日曜日や祝日のときは、その日に取引をしない慣習がある場合に限って翌日に延びます。※7休日の扱いを当てにせず、満了日の前の営業日までに手を打つのが基本です。
この章の根拠(7件)
- 民法488条1項・2項
- 民法488条4項
- 民法490条
- 民法140条
- 民法141条・143条
- 民法143条2項
- 民法142条
時効を止める方法:「完成猶予」と「更新」を使い分ける
時効を止めるには、どうすればいいの?
いちばん効くのは取引先の承認で、そこから新たに5年です。協議の合意は1年、催告は6か月の猶予で、催告は一度きりです。その6か月のうちに支払督促や訴訟を申し立てます。
改正前は「中断」「停止」と呼んでいた仕組みが、改正で2つに整理されました。※1
- 完成猶予:一定の期間、時効が完成しない。時計を一時的に止めるイメージ
- 更新:それまでの期間がリセットされ、ゼロから数え直す。時計を戻すイメージ
売掛金で使う主な手段と、その効き目は次のとおりです。
| 手段 | 効き目 | 得られる期間 |
|---|---|---|
| 取引先の承認(残高確認書への署名、一部の入金、支払いを待ってほしいという申入れなど) | 更新 | その時から新たに5年 |
| 催告(内容証明・書面・メールでの請求) | 完成猶予 | 6か月。猶予中にもう一度送っても延びない |
| 協議を行う旨の合意(書面か電子の記録) | 完成猶予 | 1年(短い期間を決めればその期間)。重ねられるが、本来の完成から通じて5年まで |
| 支払督促・訴訟・調停・裁判所での和解 | 手続き中は完成猶予。権利が確定すれば更新 | 確定から10年 |
| 仮差押え・仮処分 | 完成猶予 | 手続きが終わってから6か月 |
| 強制執行・財産開示など | 完成猶予。終われば更新 | 終わった時から数え直し |
| 取引先の破産・民事再生などの手続きへの参加(債権の届出) | 完成猶予。確定すれば更新 | 手続きによる |
催告(一度きり)協議の合意数え直し(更新)
表の手段は、どれも民法に定めがあります。※2手段によって、得られる時間がまったく違うことがわかります。
いちばん効くのは「承認」
承認は、取引先が債務があると認めることです。法務省の資料は、一部の支払い(一部弁済)を承認の例に挙げています。※3「来月まで待ってほしい」という申入れや、分割払いの約束も、残っている債務を前提にしたものなので承認にあたりえます。
承認は口頭でも効力がありますが、争いになったときに証明できなければ意味がありません。残高確認書や分割払いの合意書に「上記金額の債務があることを認めます」と書いてもらい、日付と署名を残します。承認は相手の協力が要るので、関係がこじれる前に取るのがこつです。
承認の書面に入れる項目は、次のとおりです。
| 項目 | 書き方のポイント |
|---|---|
| 対象の売掛金 | 請求書の番号・支払期日・金額を1件ずつ書く。「一切の債務」のようなまとめ書きは避ける |
| 残高 | 一部入金があれば、差し引いた今の残高 |
| 認める一文 | 「上記の金額を貴社に支払う義務があることを認めます」 |
| 支払いの予定 | 分割なら回数・各回の期日・金額。決まらなければ空欄でも承認にはなる |
| 日付と名前 | 署名した日付。会社なら代表者か、経理の責任者など会社として認められる人の記名と押印 |
表の「日付」は、そのまま新しい時効の数え始めになります。日付のない承認書は、いつから5年なのかがわからなくなります。メールで「残高○円、間違いありません」と返してもらうのも記録になりますが、送り主が会社として認める立場の人かを確かめます。
普段から取引先と残高を確かめ合う方法は売掛金とはの管理の章、催促の文面は請求書の未払いの催促にまとめています。
催告は「一度きりの時間かせぎ」
内容証明で支払いを求めると、届いた時から6か月は時効が完成しません。その6か月の間にもう一度催告しても、猶予は延びません。※4
催告で得た6か月のうちに、支払督促や訴訟を申し立てます。裁判所の手続きに入れば、手続きが続く間は時効が完成せず、確定すれば10年になります。支払督促の申立ての流れは支払督促とは、内容証明の書き方と費用は売掛金の回収の段取りで説明しています。
請求書やメールでの請求も催告にあたりえます。ただ、いつ届いたかを証明しにくいので、時効が近いときは配達の記録が残る内容証明を使います。
話し合いが続くなら「協議を行う旨の合意」
改正で新しくできた手段です。「この売掛金について支払いの協議をする」と書面やメールで合意すると、合意から1年は時効が完成しません。※5猶予中に合意を重ねることもできますが、本来の時効の日から通じて5年が上限です。※6
注意したいのは順番です。催告で猶予されている間に協議の合意をしても、猶予は延びません。協議の合意で猶予されている間の催告も同じです。※7話し合いで解決したいなら、内容証明を送る前に協議の合意を書面で交わします。
保証人がいるとき
取引先(主たる債務者)への請求や、取引先の承認による猶予・更新は、保証人にも効力が及びます。※8反対に、保証人だけが承認しても、取引先本人の時効は止まりません。※9承認は、取引先本人からもらいます。
この章の根拠(9件)
- 法務省「民法(債権関係)の改正に関する説明資料-重要な実質改正事項-」p.9
- 民法147条〜152条・169条
- 法務省 説明資料 p.6
- 民法150条
- 民法151条1項・4項
- 民法151条2項
- 民法151条3項
- 民法457条1項
- 民法153条3項
期日を過ぎた売掛金の時効を管理する6つの手順
時効の管理って、何から始めればいい?
台帳に「時効の日」の列を1つ足すところからです。残りが6か月より長ければ承認をもらい、6か月以内なら内容証明で催告します。分かれ目が6か月なのは、催告の猶予が6か月だからです。
時効の管理は、台帳に「時効の日」の列を1つ足すところから始まります。次の順で進めます。
- 時効の日を計算する:支払期日、最後に承認をもらった日、判決などが確定した日のうち、いちばん新しいものから数えます。承認なら5年、判決なら10年です。
- 改正前の取引かを確かめる:契約が2020年3月31日以前なら、改正前の期間で数え直します。
- 残りが6か月より長い売掛金は、承認をもらう:残高確認書か分割払いの合意書に署名をもらい、時効を数え直しにします。
- 残りが6か月以内の売掛金は、内容証明で催告する:届いた日を控え、その6か月のうちに支払督促か訴訟を申し立てます。
- 話し合いが続いている売掛金は、協議の合意書を交わす:催告より先に、1年の猶予を書面で取ります。
- 記録を残す:承認の書面、入金の記録、やりとりのメールを、時効の日まで(判決があれば確定から10年)保管します。
手順の3と4の分かれ目を6か月にしているのは、催告で得られる猶予が6か月だからです。残りが6か月を切ってから承認を頼んで断られると、催告しか手が残りません。
- 契約は2020年3月31日以前?はい → 改正前の期間で数える。過ぎていれば「期間が過ぎてしまったら」の章へいいえ → 次へ
- 時効の日まで6か月より長い?はい → 承認を書面でもらい、5年数え直すいいえ → 次へ
- 取引先と支払いの話し合いが続いている?はい → 協議の合意を書面で交わす(催告の前に)いいえ → 次へ
- 取引先に預金や売掛金などの財産がありそう?はい → 内容証明で催告し、6か月以内に支払督促・訴訟いいえ → 判決だけ取って10年に延ばすか、貸倒れを検討
数字で確かめる:6件の売掛金台帳で「時効の日」と残り日数を出す
実際に台帳で数えると、どうなるの?
残高500万円・6件の例では、A社は残り44日でした。D社とE社の190万円は改正前の期間ですでに過ぎていました。C社は一部入金で承認があったので、2029年9月10日まで延びています。
卸売業の会社が、払われていない売掛金を6件抱えている例で数えます。基準日は2026年10月17日、残高の合計は500万円です。
| 取引先 | 残高 | 支払期日 | 数える決まり | 時効の日 | 残り |
|---|---|---|---|---|---|
| A社 | 100万円 | 2021年11月30日 | 期日から5年 | 2026年11月30日 | 44日 |
| B社 | 60万円 | 2022年8月31日 | 期日から5年 | 2027年8月31日 | 318日 |
| C社 | 60万円 | 2023年3月31日 | 2024年9月10日に一部入金(承認)、そこから5年 | 2029年9月10日 | 1,059日 |
| D社 | 40万円 | 2020年3月31日 | 改正前の商品代金2年 | 2022年3月31日 | 過ぎている |
| E社 | 150万円 | 2020年5月31日(注文は2020年3月15日) | 契約が施行日前なので改正前の2年 | 2022年5月31日 | 過ぎている |
| F社 | 90万円 | 2021年2月28日 | 2023年7月14日に判決確定、そこから10年 | 2033年7月14日 | 2,462日 |
500万円のうち、D社とE社の190万円はすでに期間を過ぎています。相手が援用すれば取れません。残りの310万円は、まだ間に合います。
E社は、期日が施行日の後でも、注文が施行日の前なので改正前の期間になる例です。仮に改正後の5年で数えても、2025年5月31日で過ぎています。改正前の売掛金がほぼ期間切れになっている、という前の章の話のとおりです。
C社は、2023年3月31日から数えれば2028年3月31日が時効の日でした。一部入金で承認があったので、2029年9月10日まで延びています。一部でも入金があった日は、台帳に残します。
B社は残り318日で、まだ承認をもらう段階です。時効の日の6か月前にあたる2027年2月28日を「承認が取れなければ催告に切り替える日」として、台帳に書いておきます。F社は判決が確定しているので、急ぐのは時効より、差し押さえる財産を探すことです。
A社の44日でできること
いちばん急ぐのは、残り44日のA社です。2026年10月22日に手を打てたとして、使う手ごとに時効の日がどう変わるかを並べます。
- 承認書(残高確認書)をもらう → そこから5年で、2031年10月22日まで数え直し
- 協議の合意を書面で交わす → 2027年10月22日まで猶予。重ねても上限は、本来の時効の日から5年の2031年11月30日
- 内容証明が届く → 2027年4月22日まで猶予。この日までに支払督促か訴訟を申し立てる
- 何もしない → 2026年11月30日が終わると完成
- 何もしない2026年11月30日に完成(残り44日)
- 内容証明で催告2027年4月22日まで猶予。この間に支払督促など
- 協議の合意2027年10月22日まで猶予(1回分)
- 承認書をもらう2031年10月22日まで数え直し
- 協議の合意を重ねる上限は2031年11月30日
今日2029年2031年末
図のとおり、承認と協議の合意は数年単位、催告は半年、何もしなければ1か月半です。100万円を時効で失うと、営業利益率5%の会社なら、取り返すのに2,000万円の売上が要ります。
時効の期間が過ぎてしまったら:援用・完成後の承認・相殺
時効の期間が過ぎたら、もう諦めるしかない?
自動では消えず、取引先が援用して初めて消えます。完成後に取引先が債務を認めると、あとから援用できません。消える前に相殺できる状態だった買掛金があれば、相殺できることもあります。
期間が過ぎても、売掛金は自動では消えません。取引先(や保証人など、消えることに正当な利益がある人)が時効を援用して初めて、裁判所は時効を前提に判断します。※1援用されるまでは請求でき、取引先が自分から払えば、受け取ってかまいません。
援用は、取引先が「時効を援用します」と伝えることで行われます。内容証明で届くことが多く、訴えられた取引先が裁判の中で主張することもあります。この通知が届いた売掛金は、裁判で争っても取り返すのは難しくなります。
完成後に取引先が認めると、援用できなくなる
時効が完成したあとに取引先が債務を認めると、その取引先は、完成を知らなかったとしても、あとから時効を援用できません。最高裁は、完成後の承認は時効の主張と相いれない行為で、相手も援用しないと考えるから、信義則に照らして援用を認めないとしています。※2
期間を過ぎた売掛金でも、まず請求し、分割払いの相談に乗る価値はあります。ただし、時効を隠してだますような言い方や、強く迫って書かせるやり方は避けます。あとで争いになったとき、承認の効力が疑われるもとです。
相手への買掛金があれば、相殺できることがある
時効で消えた売掛金でも、消える前に相手への買掛金と相殺できる状態になっていれば、相殺できます。※3同じ取引先から仕入れもしている会社は、時効の日より前に互いの期日が来ていたかを確かめます。※4
援用されて取れなくなった売掛金は、貸倒れとして処理することを考えます。貸倒損失にできる条件と計上する年は売掛金の回収不能の判断基準で説明しています。
この章の根拠(4件)
- 民法145条
- 最高裁昭和41年4月20日大法廷判決
- 民法508条
- 民法505条1項
時効を止めても回収が見込めないとき:使わない方がよい場合と、ほかの方法
止めても回収できそうにないときは?
残高が小さい、相手の所在がわからないなら、費用をかけて止めることが得にならないこともあります。時効を止めても今月のお金は増えないので、資金繰りは別に手当てします。
時効を止める手のうち、裁判所の手続きには手間と費用がかかります。次のような場合は、費用をかけて止めることが得にならないことがあります。
- 残高が小さく、申立ての手数料や郵送費、手間のほうが大きくなる
- 取引先が事業をやめて所在がわからず、差し押さえる財産も見当たらない
- 取引先が破産の手続きに入った(この場合は債権の届出が時効の猶予にもなる)
取引先が倒産したときの債権の届出と期限は取引先が倒産したらで扱っています。財産がない相手でも、判決を取っておけば時効は10年に延び、あとで財産が見つかったときに差し押さえられます。
時効を気にしなくて済む取引の形にしておく
いちばんよいのは、時効が問題になる前に回収を終えることです。支払期日は「月末締め翌月末払い」のように日付が決まる形で契約に書き、決算のたびに取引先と残高を確かめ合います。残高確認書への署名は承認にもなるので、毎年の確認が続く限り、時効の心配はほぼなくなります。
時効の管理では、今月のお金は増えない
時効を止めるのは、売掛金を「取る権利」を守る手です。今月の支払いに足りないお金を埋めるものではありません。回収を待つ間の資金繰りは、別に手当てします。
期日前の売掛金なら、取引先の早期支払い、売掛金を担保にした融資、ファクタリングで早く現金にする方法があります。比べ方は売掛金を早く現金にする方法にまとめました。期日を過ぎて払われていない売掛金は、回収の見込みが立たないため、ファクタリングでも買い取ってもらいにくい点に注意します。
ファクタリングを使う場合の手取りと実質年率は、手取りと実質年率のシミュレーターで前もって確かめられます。
よくある失敗と注意点
時効で、ありがちな勘違いって何?
請求書を毎月送り続けて安心する、最後に催促した日から数える、内容証明のあとに協議の合意をして延びたと思う、などです。「払います」は、メールか書面で残してもらいます。
- 請求書を毎月送り続けて安心する:請求や督促状は催告で、猶予は最初の6か月だけです。何通送っても、それだけでは時効は延びません。※1
- 「売掛金は2年」と思い込んであきらめる:2020年4月以降の取引なら5年です。逆に、改正前の取引を5年だと思い込むのも誤りです。
- 最後に催促した日から数える:催促は更新になりません。数え始めは期日か、最後に承認をもらった日です。
- 内容証明のあとに協議の合意をして、延びたと思う:催告の猶予中の合意は効きません。※2順番を逆にします。
- 「払います」が口頭だけで、記録がない:電話の約束は証明が難しいので、メールか書面で残してもらいます。
- 保証人だけに承認をもらう:取引先本人の時効は止まりません。
- 取引先の社名変更や合併を台帳に反映しない:承認や催告の相手を取り違えないよう、登記で今の社名と本店を確かめてから送ります。
- 担当者が替わって台帳が引き継がれない:時効の日と、承認をもらった日の書面の置き場所を、台帳の列として残します。
- 分割払いの合意書を作っただけで安心する:合意のあとも、回ごとの期日から時効は進みます。支払いが止まったら、その回の期日から数え直して管理します。
売掛金の時効は、改正で「期日から5年」という分かりやすい形になりました。その分、改正前の取引との境目と、止める手の効き目の違いを押さえておけば、取れるはずのお金を時効で失うことは防げます。
この章の根拠(2件)
- 民法150条2項
- 民法151条3項
出典(7件)公的機関の資料・法令。2026.10.17に確認
- 民法(e-Gov法令検索)第140条〜第145条・第147条〜第153条・第166条・第169条・第457条・第505条・第508条laws.e-gov.go.jp
- 民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)附則第10条(e-Gov法令検索・民法の改正附則)laws.e-gov.go.jp
- 法務省「民法(債権関係)の改正に関する説明資料-重要な実質改正事項-」www.moj.go.jp
- 法務省「民法の一部を改正する法律(債権法改正)新旧対照条文」www.moj.go.jp
- 法務省「民法(債権関係)改正法の施行期日について」www.moj.go.jp
- 電子記録債権法(e-Gov法令検索)第23条laws.e-gov.go.jp
- 最高裁判所大法廷 昭和41年4月20日判決(昭和37年(オ)第1316号)www.courts.go.jp
FAQ
よくある質問
売掛金の時効は何年ですか?
2020年4月1日以降の取引で生じた売掛金は、支払期日から5年です。請求できることを知らないまま過ぎる例外の場面でも、請求できる時から10年が上限です。判決や支払督促で権利が確定すれば、そこから10年になります。2020年3月31日以前に契約した取引の代金は、改正前の期間で数えます。
売掛金の時効は2年ではないのですか?
2年は改正前の決まりで、卸売・小売の商品代金などに当てはまっていました。2020年4月の改正で業種ごとの短い時効は廃止され、5年に統一されています。2020年3月31日以前に契約した取引の代金だけは今も改正前の期間で数えますが、途中で時効を止めていなければ、2026年の時点ではほぼすべて期間を過ぎています。
請求書を送り続ければ時効は止まりますか?
止まりません。請求書や督促状での請求は催告にあたり、届いた時から6か月だけ時効の完成が猶予されます。その間にもう一度送っても延びません。6か月のうちに支払督促や訴訟を申し立てるか、取引先に債務を認めてもらう承認を書面で取ると、時効を止めたり数え直したりできます。
売掛金の時効はいつから数えますか?
支払期日を決めている売掛金は、支払期日から数えます。期日の当日は数えず、5年後の期日と同じ日付が終わった時に完成します。たとえば期日が2021年11月30日なら、2026年11月30日の終わりです。期日を決めていない取引は、納品などで請求できるようになった時から数えます。
一部だけ入金があった場合、時効はどうなりますか?
一部の入金は、取引先が残りの債務を認めた承認にあたり、入金の日から5年の数え直しになります。期日が2023年3月31日の売掛金に2024年9月10日に一部入金があれば、時効の日は2028年3月31日から2029年9月10日に延びます。入金の日と金額は台帳と通帳の記録に残しておきます。
時効が過ぎた売掛金は請求できますか?
請求はできます。時効は取引先が援用して初めて効力が出るので、それまでは売掛金は残っています。取引先が完成後に債務を認めたり一部を払ったりすると、最高裁の判決により、取引先はあとから時効を援用できません。援用されて取れなくなった売掛金は、貸倒れとして処理することを考えます。
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