会計更新 2026.10.18
売掛金とは?わかりやすく。買掛金との違いと、黒字でもお金が減る理由
売掛金とは、商品を納めた・仕事を終えたのに、まだ払ってもらっていない代金です。売上には入りますが、入金までは使えません。買掛金・未収入金との違い、管理の7つの手順、支払条件で寝るお金と黒字でも預金が減る理由を計算例で解説します。
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フファクタリング図鑑編集部(執筆)・公開 2026.10.17

「売掛金」は、商品やサービスを先に渡し、代金はあとで受け取る約束になっているお金のことです。会計の言葉ですが、毎月の資金繰りを左右する、経営者にとって身近な数字のひとつです。この記事では、意味と買掛金などとの違い、管理の手順を押さえたうえで、売掛金が資金繰りにどう効くかを計算例で確かめます。
この記事を7枚で
1 / 7結論:売掛金は「あとで受け取る約束の代金」。売上には入っても、まだ使えるお金ではない
売掛金って、売上とは違うものなの?
売上には入りますが、まだ使えるお金ではありません。納品したのに、まだ払ってもらっていない代金です。月商300万円で「月末締め翌々月末払い」なら、平均で約750万円が入金待ちになります。
売掛金(うりかけきん)は、商品を納めた、または仕事を終えたのに、まだ払ってもらっていない代金です。請求書を出して支払日を待っている間のお金は、売掛金と考えてかまいません。決算書では「流動資産」に入る財産ですが、預金と違って、入金されるまでは支払いに使えません。
最初に押さえておきたいのは、次の3点です。
- 売上は渡した日に立つ:入金を待たず、商品を渡した日・仕事を終えた日に、売上と売掛金を記録します。
- 買掛金はその反対:自社が仕入先や外注先に払う約束の代金が買掛金です。同じ取引でも、売った側では売掛金、買った側では買掛金になります。
- 売掛金が多いほど、お金は寝ている:月商300万円の会社が「月末締め翌々月末払い」で売っていると、平均で約750万円が入金待ちになります。
この記事は、売掛金の意味と生まれる日・消える日、似た言葉との違い、基本の仕訳、管理の7つの手順、資金繰りへの影響の計算、入金が遅れたときの対応、早くお金にしたいときの選び方、よくある失敗の順に進みます。
- 取引の前支払条件を決める締日・支払日・支払方法を注文書や契約書に書く
- 5月10日納品するこの日に売上と売掛金が生まれる
- 5月31日締めて請求書を出す5月分をまとめて請求する
- 6月30日入金されるここで初めて支払いに使えるお金になる
- 6月30日入金を消し込む台帳の売掛金を消す。差額があれば理由を確かめる
売掛金の意味をわかりやすく:いつ生まれて、いつ消えるか
売掛金は、いつ記録すればいいの?
請求や入金の日ではなく、商品を渡した日・仕事を終えた日です。入金・相殺・貸倒れ・譲渡で消えます。個人事業主も、年末に入金されていない請求書は売掛金として残します。
「掛け(かけ)」は、代金をあとで払う約束で取引することです。会社どうしの取引では、そのつど現金で払うのではなく、1か月分をまとめて請求し、決めた日に振り込むのが一般的です。この「あとで受け取る分」が売掛金です。
締日(しめび)は、請求をまとめる区切りの日です。支払いサイトは、締日から支払日までの期間をいいます。「月末締め翌月末払い」なら、5月1日から31日までの売上をまとめて請求し、6月30日に受け取ります。
売掛金が生まれる日:渡した日・終えた日
売上は、商品を引き渡した日、またはサービスを提供した日の事業年度に入れるのが法人税の原則です。※1請求書を出した日や、入金された日ではありません。
たとえば3月決算の会社が3月25日に納品し、代金が4月30日に入るなら、その売上は3月までの期に入ります。決算書には、3月末の時点で売掛金として残ります。何をもって「渡した」とするか(出荷した日か、相手が検品を終えた日か)は業種で分かれるので、顧問の税理士と決めた基準を毎年同じように使います。
売掛金が消える日:入金・相殺・貸倒れ・譲渡
売掛金は、入金されたときに消えます。ほかにも、相手に払う買掛金と差し引く「相殺」、回収をあきらめる「貸倒れ」で消えます。
売掛金そのものを他の会社に売る「譲渡」でも消えます。売掛金は原則として他人に譲ることができ、これを使うのがファクタリングです。※2仕組みの全体はファクタリングとはで説明しています。
フリーランス・個人事業主の場合
個人事業主も考え方は同じです。12月に納品して翌年1月に入金される報酬は、原則として12月の年の売上になります。※3年末に入金されていない請求書は、売掛金として帳簿に残します。
例外として、青色申告の承認を受け、前々年の事業所得などが300万円以下といった小規模事業者の要件を満たし、所定の手続きをした人は、入金した年の収入にする「現金主義」を選べます。※4手続きをしていない人は、入金ベースで申告すると売上の計上漏れになります。
「売掛金」と「売掛債権」「売上債権」
売掛金を相手に請求できる権利を「売掛債権」と呼びます。決算書の分析では、売掛金・受取手形・電子記録債権をまとめて「売上債権」と呼ぶことがあります。言葉は違っても、指しているのは「売上のうち、まだ受け取っていない分」です。
この章の根拠(4件)
- 法人税法22条の2第1項
- 民法466条1項
- 所得税法36条1項
- 所得税法67条1項・所得税法施行令195条
売掛金と買掛金の違い、未収入金・前受金・手形との違い
買掛金とか未収入金とか、似た言葉がややこしい……。
買掛金は同じ取引の反対側で、払う側の負債です。本業以外の代金は未収入金、商品を渡す前に受け取ったお金は前受金です。迷ったら「本業の売上か」で分けます。
売掛金は「受け取る側」、買掛金は「払う側」の言葉です。印刷会社がチラシを納めて代金を待っているとき、印刷会社の帳簿では売掛金、チラシを頼んだ会社の帳簿では買掛金になります。
売掛金あとで受け取る代金
- 立場
- 売った側・仕事をした側
- 決算書
- 流動資産
- 生まれる時
- 商品を渡した・仕事を終えた日
- 消える時
- 入金されたとき
- サイトが長いと
- 手元のお金が減る
買掛金あとで払う代金
- 立場
- 買った側・仕事を頼んだ側
- 決算書
- 流動負債
- 生まれる時
- 商品を受け取った・仕事を受けた日
- 消える時
- 支払ったとき
- サイトが長いと
- 手元にお金が残る
資金繰りでは、売掛金を回収するまでの日数と、買掛金を払うまでの日数の差がポイントです。回収が支払いより遅いほど、その差の分を手元のお金で立て替えることになります。たとえば仕入は月末締め翌月末払いなのに、売上は翌々月末に入る会社は、毎月およそ1か月分の仕入代金を先に払っている状態です。
似た言葉との違い
売掛金と混同しやすい言葉を、何の代金かで並べます。分ける基準は「本業の売上か」「お金と物のどちらが先か」「何で受け取るか」の3つです。
| 言葉 | 何のお金か | 売掛金との違い |
|---|---|---|
| 買掛金 | 仕入や外注の代金で、まだ払っていないもの | 立場が逆。払う側の負債 |
| 未収入金 | 本業以外の取引で、まだ受け取っていない代金(使わなくなった車や機械を売った代金など) | 本業の商品・サービスの売上かどうかで分ける |
| 前受金 | 商品を渡す前に受け取った代金(着手金など) | お金が先、渡すのが後。まだ仕事をしていないので負債になる |
| 受取手形 | 手形で受け取った代金 | 手形という紙で支払日が決まっている |
| 電子記録債権(でんさい) | 電子的に記録された代金の債権 | 記録の上で分割して譲渡したり、割り引いたりできる |
未収入金と迷ったら、「その代金は、事業の中心にある商品・サービスの売上か」で判断します。手形については、2026年1月から中小受託取引適正化法(取適法、旧下請法)の対象となる取引で、手形での支払いが禁止されました。※1でんさいは、記録の上で分割して譲渡や割引ができる点が、請求書の売掛金と違います。※2
売掛金かどうか迷いやすい場面
実際の取引では、どの科目にするか迷う場面がいくつかあります。よく出てくるものを、考え方と一緒に並べます。
- カード決済の売上:お客さんの支払いはその場で済んでいても、カード会社から入金されるまでは自社にお金がありません。カード会社に対する売掛金として記録し、「クレジット売掛金」と分けて管理する会社もあります。
- 着手金を先にもらい、残りを納品後に請求する仕事:着手金は受け取った時点では前受金です。納品した日に売上へ振り替え、残りの請求額が売掛金になります。
- 返品や値引きがあったとき:売上を減らすのと同時に、その額だけ売掛金も減らします。請求書を出し直すか、次の請求で差し引くかを取引先と決めておきます。
- 取引先のために立て替えた送料など:自社の売上ではない立て替えは「立替金」にします。売掛金に混ぜると、売上と回収の数字がずれます。
- 毎月の利用料を月末締めで請求するサービス:サービスを提供した月の分が、その月末の売掛金です。年払いで先にもらった分は前受金で、月ごとに売上へ移します。
この章の根拠(2件)
- 中小企業庁 ミラサポplus「取適法」の解説
- でんさいネット「でんさいとは」
売掛金の仕訳の基本と、決算書のどこに出るか
帳簿には、どう書けばいいの?
納めた日に売掛金/売上、入金の日に普通預金/売掛金の2行が基本です。決算書では流動資産に載ります。入金が請求より少ないときは、差額の理由を確かめてから処理します。
仕訳(しわけ)は、取引を「何が増えて、何が減ったか」の2つの面で記録することです。売掛金の仕訳は、生まれたときと消えたときの2行が基本です。
| 場面 | 借方(左) | 貸方(右) |
|---|---|---|
| 5月10日:30万円の商品を納めた | 売掛金 300,000 | 売上 300,000 |
| 6月30日:30万円が振り込まれた | 普通預金 300,000 | 売掛金 300,000 |
1行目で売掛金が増え、2行目で同じ額が減って0円に戻ります。消費税を含めて記帳する会社は、税込の請求額で売掛金を記録します。
入金額が請求額より少ないときは、差額の理由を確かめてから処理します。振込手数料を引かれた、値引きの約束があった、相手への買掛金と相殺された、などです。理由の分からない差額を放っておくと、あとで消し込めない残高になります。
決算書での位置
貸借対照表(決算日の財産と借金の一覧)では、売掛金は現金・預金の近くの「流動資産」に載ります。1年以内にお金になる予定の財産、という意味です。
銀行やファクタリング会社は、売掛金の額だけでなく、売上に比べて多すぎないかを見ます。回収できない売掛金が残っていると、実際より財産が多く見え、かえって信用を落とします。ファクタリングで売掛金を売ったときの仕訳と消費税の扱いは、ファクタリングの仕訳と勘定科目にまとめています。
売掛金の管理のしかた:取引の前から入金の後までの7つの手順
売掛金の管理って、何をすればいいの?
支払条件を書面にし、掛けで売る上限を決め、納品の記録を残し、締日の後すぐ請求します。台帳に記録して入金を消し込み、月に1回は期日を過ぎたものを洗い出します。
売掛金の管理は、「請求漏れ」「回収漏れ」「回収の遅れ」を防ぐためのものです。小さな会社でも、次の7つを決めておくと、入金が遅れたときにすぐ気づけます。
- 取引を始める前に、支払条件を書面で決める:締日・支払日・支払方法・振込手数料をどちらが持つかを、注文書や基本契約書に書きます。売掛金を他社に譲らない約束(譲渡制限特約)が入っていないかも、ここで確かめます。
- 相手の信用を確かめ、掛けで売る上限を決める:初めての相手は、登記・所在地・事業の内容を確かめます。一度に掛けで売る上限(与信枠)を決め、大口の新しい取引先は最初の数回を小さく始めます。
- 納品・作業完了の記録を残す:納品書・受領書・検収書、作業完了を知らせたメールを残します。入金でもめたとき、仕事が終わっていることを示す材料になります。
- 締日の後すぐに請求書を出す:請求書が締日に間に合わないと、支払いが1か月ずれる会社が多くあります。インボイスの登録事業者は、登録番号などの記載も確かめます。
- 売掛金台帳(得意先元帳)に記録する:取引先ごとに、請求額・支払予定日・入金額・残高を記録します。会計ソフトの補助科目で取引先を分けても同じ役割になります。
- 入金を確かめて消し込む:入金のたびに、どの請求書の分かを突き合わせ、台帳の残高を消します(入金消込)。差額があれば、その場で理由を確かめます。
- 月に1回、期日を過ぎたものを洗い出す:年齢表(請求書を経過日数で分けた表)を作り、期日を過ぎたものから連絡します。決算の前には、主な取引先と残高を確かめ合います(残高確認)。
与信枠は「最大でいくら残るか」から決める
与信枠は、その取引先に対して、払ってもらう前に積み上がってもよい売掛金の上限です。決めるときは、支払条件から「最大でいくら残るか」を先に計算します。
たとえば毎月30万円ずつ納める取引で、月末締め翌月末払いなら、支払日の直前には前月分と当月分の60万円が残っています。翌々月末払いなら90万円です。目安の式は「月の取引額×(支払いサイトの月数+1)」で、これより小さい与信枠では、取引を続けるだけで上限を超えてしまいます。
逆に言えば、この最大の残高が、取引先が払えなくなったときに失うおそれのある金額です。新しい取引先から大口の注文を受けるときは、この額を自社が失っても持ちこたえられるかで、受ける量や支払条件を考えます。
年齢表の例
年齢表は、売掛金を「支払日前」と「期日を過ぎてからの日数」で分けた表です。月末に作ると、どこから手を打つべきかがひと目でわかります。
| 取引先 | 残高 | 支払日前 | 期日超え30日以内 | 31〜90日 | 91日超 |
|---|---|---|---|---|---|
| A社 | 120万円 | 120万円 | − | − | − |
| B社 | 80万円 | 50万円 | 30万円 | − | − |
| C社 | 45万円 | − | − | 45万円 | − |
| D社 | 15万円 | − | − | − | 15万円 |
| 合計 | 260万円 | 170万円 | 30万円 | 45万円 | 15万円 |
この例では、B社の30万円は、まず請求書が届いているかの確認からです。C社の45万円は書面で催促する段階、D社の15万円は時効と貸倒れを意識して、回収の手段を決める段階です。
- 支払条件が書面にある注文書・契約書に締日と支払日が書いてあるか
- 取引先ごとの上限がある掛けで売る上限(与信枠)を決めているか
- 納品・検収の記録がある納品書・受領書・完了のメールを残したか
- 請求書を締日後すぐ出した出し忘れ・遅れがないか
- 入金を台帳と突き合わせたどの請求書の入金かを消し込んだか
- 期日超えを一覧にした年齢表で遅れている先を洗い出したか
- 理由の分からない差額振込手数料・値引き・相殺のどれか確かめずに残している
- 連絡していない期日超え支払日を過ぎたのに、まだ相手に確かめていない
数字で確かめる:売掛金は資金繰りにどう効くか
黒字なのに、預金が増えないのはどうして?
売上が伸びると売掛金も増えるからです。月商300万円なら、翌月末払いで約450万円、翌々月末払いで約750万円が入金待ち。1か月延びると、月商1か月分を自社で立て替えることになります。
売掛金は売上には入っていても、入金までは使えないお金です。どれだけのお金が入金待ちで寝ているかは、支払条件でほぼ決まります。ここでは、月商300万円の会社を例に計算します。
支払条件で変わる「寝ているお金」
前提は、月商300万円で、売上は月の中で平均して立つものとします。月末締めなら、売上が立ってから締日までが平均で約15日です。そこに締日から支払日までの日数を足すと、平均の回収日数になります。売掛金の平均残高は「月商×平均の回収日数÷30」で概算できます。
| 支払条件 | 平均の回収日数 | 売掛金の平均残高 |
|---|---|---|
| 月末締め翌月15日払い | 約30日 | 約300万円 |
| 月末締め翌月末払い | 約45日 | 約450万円 |
| 月末締め翌々月末払い | 約75日 | 約750万円 |
表から分かるのは、支払条件が翌月末払いから翌々月末払いに変わるだけで、入金待ちのお金が約300万円、つまり月商1か月分増えることです。その300万円は、仕入や給料の支払いのために、手元の預金か借入で埋めることになります。
翌月15日払い(約30日)翌月末払い(約45日)翌々月末払い(約75日)
大きな取引先から支払条件の変更を求められたときは、この額を先に計算してから答えます。売掛金が月商の何か月分あるかを見る指標を「売掛金回転期間」と呼び、上の例では翌月末払いで1.5か月分です。
支払条件を延ばしてほしいと言われたとき
取引先から「来月から翌々月末払いにしてほしい」と頼まれることがあります。その場で受ける前に、次の3つを確かめます。
- 寝るお金がいくら増えるか:その取引先の月の売上に、延びる月数を掛けます。月100万円の取引で1か月延びれば、約100万円を自社で立て替えることになります。
- その100万円をどこから出すか:預金で足りるか、借入が要るか。借りるなら利息を、値上げや取引量の条件と比べます。
- 法律の上限に触れないか:取適法の対象となる取引なら、支払期日は受け取った日から60日以内です。延ばす話がこの線を超えていないかを見ます。
受けるときも、全部の取引ではなく一部だけにする、延ばす代わりに単価を見直す、といった形で合意し、変更後の条件を書面に残します。
自社の売掛金が多すぎないかを確かめる
決算書や試算表の売掛金を、月商で割ってみます。結果を、支払条件から出る理論の値(翌月末払いなら1.5か月分)と比べると、回収が予定どおりかがわかります。
たとえば月商300万円で、主な取引先がみな翌月末払いなのに、月末の売掛金が660万円あったとします。660万円÷300万円で2.2か月分になり、理論の1.5か月分より0.7か月分、約210万円多い計算です。この差には、期日を過ぎた売掛金か、もう回収できない売掛金が混じっている可能性が高いので、年齢表で中身を確かめます。
売上が伸びると、黒字でもお金が減る
売掛金は、売上が伸びるほど増えます。売上が増えた月は、仕入や外注費の支払いが先に増え、入金は翌月以降にずれます。そのため、黒字なのに預金が減ることがあります。
前提は、月末締め翌月末払いで、仕入・外注費は売上の60%をその月に払い、家賃や給料などの固定費は毎月100万円です。前の月までは月商300万円だったとします。
| 月 | 売上 | 利益 | 入金(前月の売上) | 出金 | 預金の増減 | 月末の売掛金 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1か月目 | 300 | 20 | 300 | 280 | +20 | 300 |
| 2か月目 | 400 | 60 | 300 | 340 | −40 | 400 |
| 3か月目 | 500 | 100 | 400 | 400 | 0 | 500 |
| 4か月目 | 500 | 100 | 500 | 400 | +100 | 500 |
単位は万円です。4か月の利益は合計280.0万円なのに、預金は80.0万円しか増えていません。差の200万円は、売掛金が300万円から500万円に増えた分です。2か月目は60万円の黒字なのに、預金は40万円減っています。
売上を伸ばす前に、増える売掛金の分のお金をどう用意するかを決めておきます。前受金や着手金をもらう、仕入先の支払条件をそろえる、銀行に早めに運転資金を相談する、などです。支払いに間に合わないときの対処の順番は、資金繰りが苦しいときの対処にまとめています。
入金が遅れたときの遅延損害金は小さい
支払日を過ぎても払われないとき、契約に定めがなければ、遅れた日数分に年3%の遅延損害金を請求できます。年3%は、2026年4月1日から2029年3月31日までの法定利率です。※1
100万円が60日遅れても、100万円×3%×60÷365で約4,900円です。遅れによる損を埋めるほどの額にはならないので、遅延損害金に頼るより、遅れに早く気づく管理の方が効きます。
売掛金回転期間の計算式と中小企業の業種別の目安、長いときの縮め方は売掛金回転期間の記事にまとめています。
この章の根拠(1件)
- 民法404条・412条1項・419条1項、法務省「令和8年4月1日以降の法定利率について」
支払日に入金されないとき:確認・催促・時効・貸倒れ
支払日に入金がなかったら、どうすればいい?
まず自社の請求書や検収の記録を確かめ、担当者に連絡し、書面で催促します。売掛金の時効は5年なので、放っておかないこと。相手が残高を認めると、時効は数え直しになります。
入金が無いと分かったら、まず自社の側に原因がないかを確かめます。請求書が届いていない、宛先や金額が違う、検収が終わっていない、というだけのことも少なくありません。
- 自社の記録を確かめる:請求書を送った日、金額、振込先、検収の記録を見直します。
- 担当者に電話かメールで確かめる:支払予定日を聞き、やりとりを記録に残します。
- 書面で催促する:請求額・支払期限・振込先を書いた督促状を送ります。
- 内容証明郵便で請求する:いつ、どんな内容を送ったかを郵便局が証明します。
- 裁判所の手続きを使う:簡易裁判所の支払督促は書類の審査だけで進み、相手が異議を出すと通常の訴訟に移ります。※1
売掛金の時効は5年
売掛金を請求できる権利は、支払日が来たと知っている場合、その時から5年間請求しないと時効で消えます。※2期日を過ぎた売掛金を年単位で放っておくと、取れるはずのお金が取れなくなります。
時効は、相手が残高を認めたとき(一部の支払いも含みます)に、そこから数え直しになります。※3支払督促や訴訟を起こしたときも、その手続きが終わるまで時効は完成しません。※4残高確認の書面に相手の署名をもらっておくのは、この意味でも役に立ちます。
回収できないときの貸倒れ
取引先が倒産した、長く払わないといった理由で回収できないときは、税務上「貸倒れ」として損金にできる場合があります。法人税の取り扱いでは、継続して取引していた相手との取引を止めてから1年以上たった売掛金は、1円などの備忘価額を残して貸倒れにできます。最後の支払いが取引を止めた後にあれば、そこから数えます。※5
担保がある売掛金や、一度だけの取引の売掛金には、この取り扱いは使えません。どの方法で処理するかは、顧問の税理士と相談します。
回収できなかった分を取り戻すのに必要な売上
税金の上で損金にできても、失ったお金が戻るわけではありません。回収できなかった売掛金を、ほかの売上の利益で埋めるには、思ったより多くの売上が必要です。
| 売上に対する利益の割合 | 100万円の貸倒れを埋める売上 |
|---|---|
| 3% | 約3,333万円 |
| 5% | 2,000万円 |
| 10% | 1,000万円 |
| 20% | 500万円 |
利益の割合が5%の会社なら、100万円の貸倒れは2,000万円分の売上の利益と同じです。管理の手順や与信枠の計算は手間に見えますが、この表と比べると割に合う作業だとわかります。
改正前の取引との違いや、時効の日の数え方と止め方の使い分けは売掛金の時効は何年かで、日付の計算例とあわせて説明しています。
この章の根拠(5件)
- 裁判所「支払督促」
- 民法166条1項1号
- 民法152条1項
- 民法147条1項
- 法人税基本通達9-6-3
売掛金を早くお金にしたいとき:選び方と、ファクタリングを使わない方がよい場合
支払日まで待てないときは、どうするの?
費用の小さい順に、取引先への早払いの相談、条件の見直し、手形の割引、融資と当たります。売掛金を売ると、手数料10%・30日で実質年率は約135%。不足が毎月続くなら、使わない方がよいです。
支払日まで待てないとき、売掛金を早く現金にする方法はいくつかあります。費用の小さい順に検討するのが基本です。ここでは選び方の要点だけを書き、方法ごとの費用の比較は売掛金を早く現金にする方法の比較に任せます。
- 取引先に早く払ってもらえないか相談する:この請求書だけ早く払ってほしい、と頼みます。少しの値引きを求められても、売掛金を売る手数料より小さいことが多くあります。
- 支払条件を見直してもらう:取適法の対象となる取引では、物を受け取った日(役務は提供した日)から60日以内に支払期日を定めることが、委託する側の義務です。※1
- でんさいや手形を受け取っているなら、割り引く:金融機関で支払日前に現金にできます。
- 融資を使う:返済はありますが、年率で比べると売掛金を売るより低いことがほとんどです。違いはファクタリングと融資の違いで比べています。
- 売掛金を売る(ファクタリング):数日で現金になる一方、費用はいちばん高くなりやすい方法です。
ファクタリングを使わない方がよい場合
売掛金を売る費用は、年率に直すと大きく見えます。手数料10%で支払日の30日前に売ると、実質年率(手数料額÷手取り額÷日数×365)は約135%です。手取り額と年率は手取りと実質年率のシミュレーターで確かめられます。
- 不足が毎月続いている:今月売れば来月の入金が減り、同じ穴がまた開きます。支払条件か利益の側を直す方が先です。
- 利益率が手数料より低い取引:売るほど手元に残るお金が減ります。
- 支払日まで数日しかない:同じ手数料でも日数が短いほど年率は上がります。
- 契約に譲渡制限特約がある:特約があっても譲渡そのものは有効ですが、特約を知っていた買い手には、取引先が支払いを断れる場合があります。※2取引先との関係も含めて考えます。
どの方法から当たるべきか迷うときは、資金調達診断で今の状況に合う方法を絞れます。
売掛金を売る前に:図鑑のデータで見る受け付けの範囲
図鑑に載せている197サービス(2026年10月16日時点)の公式サイトの記載を数えると、売れる売掛金には偏りがあります。数は「受け付けると書いている」サービスで、書いていないものは数えていません。
- 支払う側(売掛先)が個人でもよいか:個人や一般の消費者が払う売掛金も受け付けると書いているのは、197サービス中11だけです。会社や官公庁が払う売掛金が前提と考えます。
- 売る側:個人事業主も受け付けると書いているのは117、法人を受け付けると書いているのは146です。
- 金額の下限:買い取る下限を公表している97サービスのうち、10万円以下から受け付けるのは36、10万円超〜30万円は36、50万円以上からは25です。1万円から受け付けるところも9あります。
- 請求書を出す前:注文書の段階でも受け付けると書いているのは22です。
買い手は、売る人よりも「売掛先が期日に払うか」を重く見ます。どんな点が見られるかはファクタリングの審査で見られることで確かめられます。
この章の根拠(2件)
- 公正取引委員会「委託事業者の義務」
- 民法466条2項・3項
売掛金でよくある失敗と注意点
売掛金で、ありがちな失敗って何?
入金されたら売上にしている、請求書を出し忘れる、支払条件を口約束にしている、売上が1社に集中している、などです。約束を書面にし、入金を毎月確かめることがいちばんの対策です。
売掛金の失敗は、記帳のミスより、記録と確認の抜けから起きます。よく見る8つを挙げます。
- 入金されたら売上にしている:納品した期と入金の期がずれると、決算や確定申告で売上が漏れます。年末・期末の未入金の請求書は売掛金として残します。
- 請求書を出し忘れる・遅れる:締日に間に合わないと支払いが1か月ずれ、そのまま資金不足になります。
- 支払条件を口約束にしている:入金が遅れたとき、いつ払う約束だったかを示せません。注文書か契約書に書きます。
- 入金の差額を放っておく:振込手数料や値引きの差額を消し込まずにいると、台帳と預金が合わなくなります。
- 売上が1社に集中している:その会社の支払いが遅れると、そのまま自社の資金不足になります。与信の上限と、予備のお金を用意しておきます。
- 回収できない売掛金を残し続ける:決算書の売掛金が実態より大きく見え、融資の審査でかえって不利になります。
- 契約書の譲渡制限特約を読んでいない:売掛金を売りたいときや、担保にしたいときに、思わぬ制約になります。
- 事業の入金を個人の口座で受けている:生活費の出入りと混ざり、どの請求書の入金かを追えなくなります。
売掛金は「あとで受け取る約束」なので、約束の中身を書面にし、入金を毎月確かめることがいちばんの対策です。そのうえで、支払条件の長さが自社の資金繰りにどれだけ効いているかを、上の計算で一度確かめておきます。
出典(10件)公的機関の資料・法令。2026.10.18に確認
- 民法(第147条・第152条・第166条・第404条・第412条・第419条・第466条)(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 令和8年4月1日以降の法定利率について(法務省)www.moj.go.jp
- 法人税法(第22条の2)(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 所得税法(第36条・第67条)(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 所得税法施行令(第195条)(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 法人税基本通達 第9章第6節第1款 金銭債権の貸倒れ(9-6-3)(国税庁)www.nta.go.jp
- 支払督促(裁判所)www.courts.go.jp
- 委託事業者の義務(公正取引委員会)www.jftc.go.jp
- 【2026年1月1日施行】受注者を守る法!手形払い禁止など『取適法』がもたらす変化(中小企業庁 ミラサポplus)mirasapo-plus.go.jp
- でんさいとは(でんさいネット)www.densai.net
FAQ
よくある質問
売掛金とは簡単に言うと何ですか?
商品を納めた、または仕事を終えたのに、まだ払ってもらっていない代金のことです。請求書を出して支払日を待っている間のお金が売掛金にあたり、売上は入金の日ではなく渡した日に立ちます。決算書では流動資産に入りますが、預金と違って、入金されるまでは支払いに使えません。
売掛金と買掛金の違いは何ですか?
売掛金は売った側があとで受け取る代金で、買掛金は買った側があとで払う代金です。同じ取引でも、売った会社の帳簿では売掛金、買った会社の帳簿では買掛金になります。売掛金は流動資産、買掛金は流動負債で、回収と支払いの日数の差が資金繰りに効きます。
売掛金と未収入金はどう使い分けますか?
本業の商品やサービスの売上で、まだ受け取っていない代金は売掛金です。使わなくなった車や機械を売った代金など、本業以外の取引で受け取っていない代金は未収入金にします。迷ったら、その代金が事業の中心にある商品・サービスの売上かどうかで判断します。
売掛金は何年で時効になりますか?
支払日が来たと知っている場合、その時から5年間請求しないと時効で消えます(民法166条1項)。相手が残高を認めたり一部を払ったりすると、そこから数え直しになり、支払督促や訴訟を起こすと手続きが終わるまで時効は完成しません。期日を過ぎた売掛金は年単位で放っておかないことが大切です。
個人事業主の売掛金は、入金が翌年でもその年の売上になりますか?
原則として、12月に納品して翌年1月に入金される報酬は、納品した12月の年の売上です。ただし、青色申告の承認を受け、前々年の所得が300万円以下などの小規模事業者の要件を満たし、所定の手続きをした人は、入金した年の収入にする現金主義を選べます。
売掛金は売ることができますか?
売掛金は原則として他人に譲ることができ、売掛金を買い取ってもらう取引がファクタリングです。図鑑に載せている197サービス(2026年10月16日時点)のうち、個人や一般の消費者が払う売掛金も受け付けると書いているのは11だけで、会社や官公庁が払う売掛金が前提です。手数料10%・30日前だと実質年率は約135%になるため、早期支払いの相談や融資と比べてから使います。
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