会計更新 2026.10.15
ファクタリングの仕訳と勘定科目。手数料と消費税の扱い
ファクタリングで売掛金を売ったら、売掛金を減らし、受け取った額を預金に、差額を「売上債権売却損」などの費用に入れます。売掛金の譲渡は消費税の非課税取引なので、差額に消費税はかからず、売った額は課税売上割合の計算にも入れません。償還請求権がある契約は、会計基準の3つの要件で売却か借入かを判断します。
- 22分読み終わるまで
- 9章見出し
- 17件公的な出典
フファクタリング図鑑編集部(執筆)・公開 2026.10.15

先に結論:売掛金を消し、差額を「売却損」にする。手数料に消費税はかからない
この記事は、ファクタリングを使ったあとに帳簿をつける人に向けたものです。経理の担当者、または自分で記帳している社長や個人事業主が、「どの日に、どの科目で、いくら入れるのか」「消費税と確定申告はどうなるのか」をそのまま写せるように、金額入りの仕訳で説明します。
ファクタリングは、まだ入金されていない売掛金を、期日前にファクタリング会社へ売る取引です。金融庁も、一般的なファクタリングを「事業者が保有している売掛債権等を期日前に一定の手数料を徴収して買い取るサービス」と説明しています。お金を借りたのではなく、資産(売掛金)を手放したので、帳簿の基本は次の3行に集約されます。
- 売った売掛金を帳簿から消す(貸方に売掛金)
- 受け取った額を預金に入れる(借方に普通預金)
- 差額を費用にする(借方に「売上債権売却損」など)
税金の扱いも先にまとめます。
| 論点 | 結論 | 根拠 |
|---|---|---|
| 手数料(売却の差額)の消費税 | かからない(非課税)。仕入税額控除もできない | 消費税法 別表第二第2号・施行令第9条第1項第4号、消費税法基本通達6-3-1(10) |
| 課税売上割合 | 売った売掛金の額は、分母にも分子にも入れない | 消費税法施行令第48条第2項第2号 |
| 法人税 | 売却損は損金になる | 法人税法第22条第3項・第4項 |
| 所得税(個人事業主) | 売却損は必要経費になる | 所得税法第37条 |
| 償還請求権がある契約 | 会計基準の3つの要件で「売却」か「借入」かを分ける | 企業会計基準第10号 第9項 |
以下、勘定科目の選び方、2社間・3社間・償還請求権ありの仕訳、消費税、法人税、個人事業主の確定申告、よくある間違いの順に説明します。2社間と3社間の仕組みそのものは2社間と3社間の違いで扱っているので、ここでは帳簿の付け方に絞ります。
勘定科目の選び方:売却損・支払手数料・支払利息の使い分け
ファクタリングの手数料に、法令で決まった勘定科目名はありません。会社の会計方針で決め、毎回同じ科目を使うことが大切です。よく使われる候補と、向いている場面は次のとおりです。
| 勘定科目 | 向いている場面 | 注意点 |
|---|---|---|
| 売上債権売却損(債権売却損) | 償還請求権がない売却。いちばん実態に合う | 営業外費用に表示するのが一般的 |
| 手形売却損 | 手形割引と同じ科目にまとめたい会社 | 会計基準の設例では手形割引の差額にこの名前を使っている |
| 支払手数料 | 金額が小さく、科目を増やしたくない場合 | 振込手数料や事務手数料と混ざり、資金調達の費用が見えにくくなる |
| 支払利息(または前払利息) | 契約の中身が借入と同じと判断した場合だけ | 売却の取引に使うと、借入があるように見える |
迷ったら「売上債権売却損」をおすすめします。理由は2つあります。1つ目は、1年でファクタリングにいくら払ったかが科目の残高だけで分かることです。2つ目は、金融機関が決算書を見るとき、本業の経費(販売費及び一般管理費)と資金調達の費用(営業外費用)が分かれていると、営業利益を正しく読んでもらえることです。
手数料以外に出てくる科目
| お金の中身 | 科目の例 | 補足 |
|---|---|---|
| 債権譲渡登記の登録免許税 | 租税公課 | 法務省によると1件7,500円(債権5,000個以下) |
| 司法書士への報酬 | 支払手数料 | 役務の対価なので消費税がかかる(課税仕入れ) |
| 契約書に貼った収入印紙 | 租税公課 | 債権譲渡の契約書は第15号文書。契約金額1万円以上で200円 |
| ファクタリング会社への振込手数料 | 支払手数料 | 銀行の手数料なので課税仕入れ |
| 2社間で回収して、まだ送っていないお金 | 預り金(または未払金) | 自社の売上ではない |
| あとから払われる買取代金の残り(留保金) | 未収入金 | 入金時に消す |
登記の費用や印紙代は、手数料と一緒に「売却損」へ入れてしまう例が見られます。しかし、登録免許税と印紙税は税金、司法書士の報酬は消費税のかかる役務の対価で、消費税の区分がそれぞれ違います。分けて入れておくと、消費税の申告で取りこぼしがなくなります。
印紙は、紙の契約書を作ったときにだけ必要です。国税庁の質疑応答事例は、印紙税の対象は課税物件表に掲げる「文書」で、電子署名を付けてメールで送る電磁的記録は文書に含まれず、印紙税はかからないと回答しています。図鑑の86サービスのうち、公式サイトで電子契約に対応すると書いているのは34でした。電子契約なら租税公課(印紙)の行は出てきません。
会計ソフトの税区分
売上債権売却損の税区分は「非課税」または「対象外(不課税)」を選びます。どちらにしても仕入税額控除の対象にはなりません。してはいけないのは「課税仕入 10%」を選ぶことで、これをすると払っていない消費税を差し引くことになります。また、売掛金の売却額そのものを「非課税売上」として登録しないでください。理由は消費税の章で説明します。
2社間ファクタリングの仕訳:売却日・入金日・回収日・送金日
2社間は、売掛先(取引先)に知らせずに売る方式です。売掛先はいつもどおり自社に支払い、自社がそのお金をファクタリング会社へ渡します。このため、仕訳は最低3回になります。次の例で、日付ごとに見ていきます。
- 9月30日:売掛先A社に1,000,000円(税込)を請求。売上はこの時点で計上済み
- 10月5日:その売掛金をファクタリング会社に売る契約を結び、手数料100,000円(10%)を引いた900,000円が当日入金
- 10月31日:A社から自社口座に1,000,000円が入金
- 11月1日:ファクタリング会社へ1,000,000円を送金(振込手数料440円)
| タイミング | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 9/30 売上(もとの取引) | 売掛金 1,000,000 | 売上高 909,091/仮受消費税 90,909 |
| 10/5 売却して入金 | 普通預金 900,000/売上債権売却損 100,000 | 売掛金 1,000,000 |
| 10/31 A社から入金 | 普通預金 1,000,000 | 預り金 1,000,000 |
| 11/1 ファクタリング会社へ送金 | 預り金 1,000,000/支払手数料 440 | 普通預金 1,000,440 |
ポイントは3つです。
- 売上の消費税は9月30日の時点で計上済みです。売掛金を売っても、もとの売上やその消費税は変わりません。売掛金の100万円は税込の額なので、売却で消すのも税込の100万円です。
- 10月31日の入金は売上でも売掛金の回収でもありません。売掛金は10月5日に消えているので、ここで「売掛金」を貸方に入れると売掛金がマイナスになります。ファクタリング会社のお金を一時的に預かっているだけなので、預り金(未払金でもよい)で受けます。
- 預り金は送金した日に消えます。月末や決算日に預り金が残っていれば、送金がまだ済んでいないことを意味します。送金漏れの確認にも使えます。
手数料と登記費用・印紙を差し引いて入金された場合
債権譲渡登記をする契約では、登録免許税などを買取代金から差し引いて入金されることがあります。手数料100,000円、登録免許税7,500円、司法書士の報酬33,000円(税込、例として置いた額)が引かれ、859,500円が入金されたとします。契約書に200円の収入印紙を自社で貼った場合も合わせて示します。
| タイミング | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 売却して入金 | 普通預金 859,500/売上債権売却損 100,000/租税公課 7,500/支払手数料 33,000 | 売掛金 1,000,000 |
| 印紙を貼った | 租税公課 200 | 現金 200 |
入金の明細(精算書)に内訳が書かれていないときは、ファクタリング会社に内訳を出してもらってください。全部を売却損にまとめると、司法書士の報酬にかかった消費税を差し引けなくなります。図鑑に載せている86サービスの公式サイトを見ると、登記を「原則不要」「不要」とする会社が25、「原則必要」が7、「場合による」が9でした(残りは記載なし)。登記がない契約なら、この行は不要です。登記の手続きは債権譲渡登記とはにまとめています。
買取代金の一部があとで払われる場合(留保金)
買取代金の一部を、売掛先からの回収が済んでから払う契約があります。先の例で、900,000円のうち800,000円が契約時、100,000円が回収後に払われるなら、次のようになります。
| タイミング | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 売却時 | 普通預金 800,000/未収入金 100,000/売上債権売却損 100,000 | 売掛金 1,000,000 |
| 残りを受け取った | 普通預金 100,000 | 未収入金 100,000 |
送金額と残りの受取額を相殺して精算する契約なら、送金時に「預り金 1,000,000/未収入金 100,000・普通預金 900,000」と1行にまとめられます。
契約日と入金日がずれる場合
3月30日に契約し、4月2日に入金されるといった場合は、契約日に「未収入金 900,000/売上債権売却損 100,000 | 売掛金 1,000,000」とし、入金日に「普通預金 900,000 | 未収入金 900,000」と振り替えます。売却損は契約日の期の費用です。決算日をまたぐときに、入金日で計上して期がずれないよう注意してください。
3社間ファクタリングの仕訳:自社の記録は売却の1回
3社間は、売掛先に知らせて(または承諾を得て)、売掛先がファクタリング会社へ直接支払う方式です。お金が自社を通らないので、仕訳は売却時の1回で終わります。売掛金1,000,000円を手数料50,000円で売り、950,000円を受け取った例です。
| タイミング | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 売却して入金 | 普通預金 950,000/売上債権売却損 50,000 | 売掛金 1,000,000 |
| 売掛先がファクタリング会社へ支払う | 仕訳なし | 仕訳なし |
3社間でよくある迷いどころは次の2つです。
- 売掛先が間違えて自社に払ってきた。通知を見落とした売掛先が、いつもの口座に振り込むことがあります。このお金はファクタリング会社のものなので、2社間と同じく「普通預金/預り金」で受け、転送した日に預り金を消します。
- 売掛先との残高確認で数字が合わない。売掛先の帳簿では、支払先がファクタリング会社に変わっただけで、買掛金の残高は変わりません。自社の帳簿からは売掛金が消えているので、残高確認書を受け取ったら「○月○日に債権譲渡済み」と書き添えて返すと、監査や確認のやり取りがすみます。
手数料の差のぶん、同じ売掛金でも3社間の売却損は2社間より小さくなることが多いですが、率は会社と取引で変わります。手数料の水準は手数料の相場を見てください。
償還請求権ありの契約:会計基準で「売却」か「借入」かを分ける
償還請求権とは、売掛先が払えなかったとき、ファクタリング会社が自社に代金の支払いを求められる権利です。この権利が付いた契約を「借入と同じ扱いにする」と書く解説を見かけますが、日本の会計基準の考え方はもう少し細かく、次の順で判断します。
手放したと言えるかの3つの要件
会計基準では、売掛金のような金融資産を譲渡したときに帳簿から消してよい(支配が移った)のは、次の3つがすべて満たされた場合だとされています。※1
- 譲受人(ファクタリング会社)の権利が、譲渡人(自社)や自社の債権者から法的に守られていること
- 譲受人が、譲り受けた売掛金の権利を通常の方法で受けられること
- 譲渡人が、売掛金を期日前に買い戻す権利と義務を実質的に持っていないこと
1については、現行の法制のもとでは第三者に対抗できる要件(売掛先への通知・承諾や債権譲渡登記)を満たせば「法的に保全」されているものとして扱う、とされています。※23については、買い戻すことで取引を終えると最初から決めている取引は、売買の契約でも支配が移ったとは認めず、金融取引(借入)として処理するとされています。※3登記も売掛先への通知もしない2社間の契約で1をどう判断するかは、基準に直接の記述がありません。決算書を金融機関や監査に出す会社は、税理士や会計士と確かめてください。
ここで大切なのは、「売掛先が払えないときだけ代金を払う」という償還義務(リコース義務)があるだけでは、ただちに借入にはならない点です。リコース義務を負ったまま債権を譲渡する場合でも、要件を満たせば債権を消し、リコース義務を「新たな負債」として時価で計上するとされています。※4手形の割引も同じ考え方で、割引した手形の二次的な責任を「保証債務」として時価で計上し、手形売却損益を計上するとされています。※5
パターンA:売却として処理し、保証債務を計上する
3つの要件を満たし、償還義務だけが残る場合です。売掛金1,000,000円を手数料100,000円で売り、償還義務の時価を10,000円(売掛金の1%と見積もった例)とします。
| タイミング | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 売却して入金 | 普通預金 900,000/売上債権売却損 100,000 | 売掛金 1,000,000 |
| 同時に償還義務を計上 | 保証債務費用 10,000 | 保証債務 10,000 |
| 売掛先が期日に払った | 保証債務 10,000 | 保証債務取崩益 10,000 |
| (払わず、償還に応じた場合) | 未収入金(売掛先への請求分) 1,000,000 | 普通預金 1,000,000 |
| (同上・保証債務を消す) | 保証債務 10,000 | 保証債務取崩益 10,000 |
償還に応じたあとの未収入金は、売掛先から回収できる見込みに応じて貸倒引当金や貸倒損失を検討します。中小企業では保証債務の時価を見積もるのが難しいことも多いので、計上の有無や注記のしかたは顧問税理士と決めてください。
パターンB:借入(金融取引)として処理する
契約に、期日前に固定の価格で買い戻す約束がある、売掛先の支払いの有無にかかわらず自社が全額を払う、といった定めがあれば、3の要件を満たさず借入として扱います。この場合、売掛金は帳簿に残り、手数料は利息になります。3月25日に契約し、売掛先の支払日が4月30日(36日間)、決算日が3月31日の例です。
| タイミング | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 3/25 資金を受け取った | 普通預金 900,000/前払費用 100,000 | 短期借入金 1,000,000 |
| 3/31 決算(当期分の利息) | 支払利息 19,444 | 前払費用 19,444 |
| 4/1 期首 | 支払利息 80,556 | 前払費用 80,556 |
| 4/30 売掛先から入金 | 普通預金 1,000,000 | 売掛金 1,000,000 |
| 4/30 ファクタリング会社へ返す | 短期借入金 1,000,000 | 普通預金 1,000,000 |
当期分は 100,000円 × 7日 ÷ 36日 ≒ 19,444円で、残りの80,556円が翌期の費用です。売却として処理すれば契約日に100,000円全額が当期の費用になるので、決算をまたぐ契約では利益の額が変わります。
会計だけでなく、法律の面でも注意が必要です。金融庁は、契約書に債権譲渡と書かれていても、経済的に貸付けと同じ働きをするものは貸金業の規制の対象になる可能性があると注意を呼びかけています。図鑑に載せている86サービスのうち、公式サイトで償還請求権がない(ノンリコース)と明記しているのは47でした。残りは書かれていないだけの場合もあるので、契約書の条項で確かめてください。確かめ方は償還請求権とはにあります。
この章の根拠(5件)
- 企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」第9項
- 金融商品会計に関する実務指針 第31項
- 企業会計基準第10号 結論の背景 第58項
- 金融商品会計に関する実務指針 設例2
- 金融商品会計に関する実務指針 第136項
消費税:手数料が非課税になる根拠と、課税売上割合への影響
非課税の根拠
消費税では、有価証券などの譲渡は非課税で、その「有価証券に類するもの」には「貸付金、預金、売掛金その他の金銭債権」が含まれます。※1※2国税庁のタックスアンサーNo.6201も、非課税となる取引に「金銭債権などの譲渡」を挙げています。
ファクタリング会社の側から見ると、売掛金を額面より安く買い取って得る差益は、「利子を対価とする貸付金等」に含まれる「金銭債権の買取又は立替払に係る差益」に当たり、非課税です。※3つまり、手数料と呼ばれていても、売却の差額には消費税が含まれていません。このため、売却損は課税仕入れにならず、仕入税額控除もできません。
「事務手数料」などが別に請求された場合
契約によっては、売却の差額とは別に「事務手数料」「審査料」などの名目で請求されることがあります。名目だけでは課税か非課税かを決められません。ファクタリング会社が出す請求書や精算書で、その項目に10%の消費税額が書かれ、登録番号の入った適格請求書(インボイス)になっているかを確かめ、課税として請求されていれば課税仕入れ、そうでなければ非課税として扱います。判断に迷う場合は税務署か税理士に確かめてください。
課税売上割合の計算から外す
課税売上割合は、売上全体(分母)のうち消費税がかかる売上(分子)の割合です。資産の譲渡等の対価として取得した金銭債権の譲渡は、分母に含めません。※4国税庁のタックスアンサーNo.6405も、「特定の金銭債権の譲渡」に係る売上高は、総売上高にも課税売上高にも含まないと説明しています。自社の売上から生まれた売掛金は、これに当たります。
なお、同じNo.6405は、貸付金など「資産の譲渡等の対価として取得したもの」以外の金銭債権を譲渡した場合は、譲渡対価の5%を分母に加えるとしています。自社の売掛金を売る通常のファクタリングでは、この5%のルールは関係ありません。
間違えると控除が減る:計算例
課税売上高(税抜)が年4,000万円、非課税売上はなし、課税仕入れにかかった消費税が200万円の会社が、1年で合計600万円分の売掛金をファクタリングで売ったとします。
| 正しい処理 | 売却額を非課税売上に入れた場合 | |
|---|---|---|
| 課税売上割合 | 4,000万 ÷ 4,000万 = 100% | 4,000万 ÷ 4,600万 ≒ 86.96% |
| 控除の方法 | 95%以上なので全額控除 | 95%未満なので個別対応方式か一括比例配分方式 |
| 控除できる消費税(一括比例配分方式の場合) | 200万円 | 200万 × 86.96% ≒ 173.9万円 |
| 差 | - | 約26.1万円を払いすぎる |
国税庁のタックスアンサーNo.6401によると、課税売上高が5億円以下で課税売上割合が95%以上なら、課税仕入れの消費税を全額差し引けます。95%を下回ると按分が必要になります。売却額を誤って分母に入れると、この判定を誤るおそれがあります。会計ソフトで売掛金の売却額を「非課税売上」として登録すると、ソフトが自動で分母に足してしまうので注意してください。
簡易課税・免税事業者の場合
簡易課税制度を選んでいる事業者は、国税庁のタックスアンサーNo.6505のとおり、売上の消費税額にみなし仕入率を掛けて控除額を出すので、課税売上割合の計算はそもそも使いません。消費税の免税事業者は消費税の申告がないので、この章の論点はありません。どちらの場合も、売上債権売却損そのものは法人税や所得税の計算で費用になります。
この章の根拠(4件)
- 消費税法 別表第二第2号
- 消費税法施行令第9条第1項第4号
- 消費税法基本通達6-3-1(10)
- 消費税法施行令第48条第2項第2号
法人税:売却損は損金になる。計上する日と決算の確認
法人税では、販売費・一般管理費その他の費用や、資本等取引以外の損失を損金に算入し※1、その額は「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に従って計算します。※2売上債権売却損は、売掛金を売ったことで生じた損失なので、損金になります。特別な届出は要りません。
注意したいのは計上する日です。
- 売却として処理する場合:売掛金を売った日(契約で譲渡の効力が生じた日)の事業年度に、差額の全額を計上します。入金が翌期になっても、売却の日で計上します。
- 借入として処理する場合:手数料は利息なので、期間に応じて按分し、翌期分は前払費用にします(前の章の例)。
どちらの処理でも、法人税の損金になる総額は同じで、変わるのは期ごとの配分です。ただし、処理を途中で変えると期間の比較ができなくなるので、契約の種類ごとに方針を決めておきます。
決算の前に確かめること
- 売掛金の残高を売掛先ごとに突き合わせる。売った売掛金が残っていると、売掛金が実際より多くなり、貸倒引当金の計算もずれます。
- 預り金の残高を確かめる。2社間で回収済み・未送金のものだけが残っているはずです。古い残高があれば送金漏れか、仕訳漏れです。
- 未収入金(留保金)の残高を確かめる。回収が済んでいるのに戻ってこない留保金があれば、ファクタリング会社に精算を求めます。
- 償還請求権のある契約を一覧にする。決算日に売掛先の支払いが済んでいない契約があれば、保証債務や偶発債務の扱いを税理士と確認します。
- 契約書と精算書を保存する。どの売掛金を、いつ、いくらで売ったかが後から分かるように、契約書・精算書・入出金の記録をまとめて保存します。
この章の根拠(2件)
- 法人税法第22条第3項
- 法人税法第22条第4項
個人事業主の帳簿と確定申告
個人事業主も、仕訳の考え方は法人と同じです。事業所得の必要経費は、総収入金額を得るために直接要した費用や、その年の販売費・一般管理費その他の業務について生じた費用の額です。※1事業の売掛金を売って生じた売却損は、この必要経費に入ります。
青色申告決算書のどこに書くか
国税庁の「令和7年分 青色申告決算書(一般用)の書き方」では、経費の欄には「経費帳の各科目の口座から、決算整理後の金額を記入」するとされています。損益計算書の経費欄には、租税公課・支払手数料にあたる欄のほか、「利子割引料」などの科目があらかじめ印刷され、印刷された科目の下に科目名を書き込める空欄があります。
| 帳簿の科目 | 決算書での書き方 |
|---|---|
| 売上債権売却損 | 経費欄の空欄に「債権売却損」などと科目名を書いて記入 |
| 租税公課(登録免許税・印紙) | 印刷された「租税公課」の欄 |
| 支払手数料(司法書士の報酬・振込手数料) | 空欄に「支払手数料」と書くか、少額なら雑費 |
| 支払利息(借入として処理した場合だけ) | 印刷された「利子割引料」の欄 |
「雑費」にまとめることもできますが、金額が大きいと何の費用かが分からなくなります。ファクタリングを何度も使っている年は、科目名を書いて分けておくと、税務署から問い合わせがあったときにも説明しやすくなります。
事業用でない口座に入金されたとき
買取代金が個人の口座に入った場合は、事業から店主にお金が出たのと同じなので「事業主貸」を使います。
| タイミング | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 売却して個人口座に入金 | 事業主貸 900,000/売上債権売却損 100,000 | 売掛金 1,000,000 |
2社間で売掛先の入金も個人口座に入り、そこから送金した場合は、「事業主貸 1,000,000|預り金 1,000,000」(入金時)と「預り金 1,000,000|事業主借 1,000,000」(送金時)の2本になります。仕訳が増えて間違いのもとなので、ファクタリングの入金先も、売掛先からの入金先も、事業用の口座にそろえておくのがおすすめです。
年の途中の売却と確定申告の時期
個人事業主の所得は1月1日から12月31日までで計算します。12月に売った売掛金の売却損は、入金が1月でもその年の必要経費です。逆に、12月に売掛先から入金があって送金が1月になる2社間の取引は、12月31日時点で預り金が残るのが正しい状態です。確定申告の前に、12月の取引を一件ずつ確かめてください。
この章の根拠(1件)
- 所得税法第37条
よくある間違いと、使い続ける前に考えること
| 間違い | 起きること | 正しい処理 |
|---|---|---|
| 入金額だけを「売上」に入れる | 売掛金が残ったまま売上が二重になる | 売掛金を減らし、差額を売却損にする |
| 2社間で売掛先からの入金を「売掛金の回収」にする | 売掛金がマイナスになる。送金時に費用が膨らむ | 預り金で受け、送金時に消す |
| 売却損を「課税仕入 10%」にする | 払っていない消費税を控除し、追徴の原因になる | 非課税または対象外にする |
| 売却額を「非課税売上」で登録する | 課税売上割合が下がり、控除が減る | 課税売上割合の計算から外す |
| 登記費用・司法書士報酬を売却損に混ぜる | 報酬の消費税を控除しそこなう | 租税公課・支払手数料に分ける |
| 売却なのに「支払利息」にする | 借入があるように見え、金融機関の見方が変わる | 売却なら売上債権売却損 |
| 会計ソフトの自動仕訳をそのまま使う | 入金が「売上」や「売掛金の回収」と判定される | 取り込み後に一件ずつ科目を直す |
帳簿に表れる本当のコスト
仕訳を正しく付けると、ファクタリングの費用がいくらだったかがはっきりします。1回の手数料率は小さく見えても、年率に直すと大きくなります。式は「手数料額 ÷ 手取り額 ÷ 入金までの日数 × 365」です。手数料10%で入金まで30日なら、10 ÷ 90 ÷ 30 × 365 で約135%です。毎月100万円の売掛金を10%で売り続ければ、売上債権売却損は1年で120万円になります。計算は手数料と実質年率の計算でも確かめられます。
使わない方がよい場合
- 売上債権売却損が毎月のように出ていて、年間の合計が営業利益の大きな部分を占めている
- 入金のずれではなく、利益そのものが足りない(赤字を埋めるために使っている)
- 契約に期日前の買戻しや、売掛先の支払いに関係なく全額を払う約束があり、実質は高い利息の借入になっている
ファクタリング以外の方法
- 融資:銀行や日本政策金融公庫の融資は、利息を支払利息として計上します。年率で比べると、ファクタリングより費用が低いことが一般的です。違いはファクタリングと融資の違いで説明しています。
- 支払いの延期:仕入先や外注先に支払日を延ばしてもらえれば、手数料はかかりません。
- 税金の猶予:国税庁のタックスアンサーNo.9206のとおり、国税を一度に納めると事業の継続が難しい場合などは、申請により換価の猶予などが認められることがあります。
この記事の仕訳は、一般的な契約を前提にした例です。契約の条項によって処理が変わることがあるので、最終的な判断は顧問税理士と契約書を見ながら決めてください。
出典(17件)公的機関の資料・法令。2026.10.15に確認
- ファクタリングの利用に関する注意喚起(金融庁)www.fsa.go.jp
- 企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」(企業会計基準委員会、2026年6月最終改正)www.asb-j.jp
- 移管指針第9号「金融商品会計に関する実務指針」(企業会計基準委員会)www.asb-j.jp
- 消費税法(別表第二)(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 消費税法施行令(第9条・第48条)(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- No.6201 非課税となる取引(国税庁)www.nta.go.jp
- 消費税法基本通達 第6章第3節 利子を対価とする貸付金等関係(国税庁)www.nta.go.jp
- No.6405 課税売上割合の計算方法(国税庁)www.nta.go.jp
- No.6401 仕入控除税額の計算方法(国税庁)www.nta.go.jp
- No.6505 簡易課税制度(国税庁)www.nta.go.jp
- 法人税法(第22条)(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 所得税法(第37条)(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 令和7年分 青色申告決算書(一般用)の書き方(国税庁)www.nta.go.jp
- No.7141 印紙税額の一覧表(その2)第5号文書から第20号文書まで(国税庁)www.nta.go.jp
- 取引先にメール送信した電磁的記録に関する印紙税の取扱い(国税庁 質疑応答事例)www.nta.go.jp
- (債権譲渡登記等)添付書面・登録免許税(法務省)www.moj.go.jp
- No.9206 国税を期限内に納付できないとき(国税庁)www.nta.go.jp
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