契約更新 2026.10.18
手形の不渡りとは?2回で取引停止になる仕組みと、受け取った側の対応
不渡りとは、手形が満期に払われず返ってくることです。資金不足などで6か月以内に2回出すと取引停止処分になり、2年間銀行と取引できません。0号・1号・2号の違い、受け取った側の手順と回収の期限、資金の手当てを解説します。
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フファクタリング図鑑編集部(執筆)・公開 2026.10.17

取引銀行から「お預かりした手形が不渡りになりました」と連絡が来た。あるいは、取引先から「次の手形を落とせないかもしれない」と打ち明けられた。この記事は、そんな経営者・個人事業主に向けて、不渡りの仕組みと処分、受け取った側がやること、入らなくなったお金の手当てを順に説明します。
紙の手形は、2027年3月31日で電子交換所での交換が終わります。それに合わせて、不渡りの処分の決まりも変わります。今の時期ならではの注意点も、あわせて書きます。
この記事を7枚で
1 / 7結論:不渡りとは、手形が満期に払われずに返ってくること
手形の不渡りって、結局どういうことなの?
満期に取り立てた手形のお金が相手の口座から落ちず、理由を書いた付箋つきで戻ってくることです。お金が足りずに6か月以内に2回出すと取引停止処分になり、2年間銀行と取引できません。
不渡りとは、満期に取り立てに回した手形のお金が、相手の当座預金から落ちず、手形が戻ってくることです。戻る手形には、落ちなかった理由を書いた付箋が貼られています。※1
お金が足りずに落ちたのなら、手形を出した会社の名前は、まず銀行だけが見る「不渡報告」に載ります。半年のうちにもう一度落とすと「取引停止処分」となり、2年間は口座を使った支払いも新しい借入れもできなくなります。※2手形で事業を回す会社にとって、取引停止処分は事業を続けるのが難しくなるほど重い処分です。
受け取った側は、不渡りになっても代金をあきらめる必要はありません。手形を出した相手には満期から3年、裏書人には原則1年、支払いを求められます。ただし、入るはずのお金が入らない穴は今すぐ埋める必要があるので、回収と資金の手当てを同時に進めます。
この記事で答える問いは次のとおりです。
- 不渡りの3つの区分(0号・1号・2号)と、それぞれで起きること
- 不渡り2回で取引停止処分になる数え方と、自社が1回目を出したときにやること
- 2027年4月から不渡りの処分の決まりがなくなること
- 受け取った手形が不渡りになったときの手順
- 回収の方法(話し合い・内容証明・手形訴訟・仮差押え)と期限
- 数字で見る不渡りと取引停止処分
- 入らなくなったお金の手当てと、ファクタリングを使わない方がよい場合
- よくある失敗と注意点
この章の根拠(2件)
- 電子交換所規則33条1項・2項
- 電子交換所規則39条2項・41条・42条
不渡りの3つの区分:0号・1号・2号で、振出人に起きることが違う
戻ってきた付箋を見て、何がわかるの?
不渡りの区分です。資金不足や口座がない1号は、相手に払う力がないしるし。2号は契約不履行など、0号は形式不備や期日未到来などで、0号の場合は相手への処分はありません。
電子交換所の決まりでは、不渡りの理由を3つに分けています。区分によって、相手が処分の対象になるかどうかが変わります。受け取った側も、付箋の理由を見れば、相手の状態と次の打ち手の見当がつきます。※1
| 区分 | 主な理由(付箋に書かれる言葉) | 出した側への扱い |
|---|---|---|
| 0号不渡 | 形式不備、裏書不備、期日未到来、呈示期間経過後、破産手続開始決定などの法的手続き、依頼返却、振出期限超過または交換廃止後の手形 | 不渡情報の登録なし。処分の対象にならない |
| 第1号不渡 | 資金不足(当座預金はあるが、お金が足りない)、取引なし(当座預金がない) | 不渡情報が登録され、不渡報告に載る。異議申立はできない |
| 第2号不渡 | 契約不履行、詐取、紛失、盗難、印鑑相違、偽造、変造など | 不渡情報が登録される。異議申立をすれば不渡報告に載らない |
表のとおり、受け取った側にとっていちばん重いのは第1号不渡です。相手にお金がないか、当座預金そのものがないことを示すからです。理由が重なるときは、0号が最優先で、次に第1号が優先します。※2
第2号不渡と「異議申立」
第2号不渡は、「品物が届いていないので払わない」(契約不履行)のように、支払う力とは別の理由で払わない場合です。支払う側の銀行は、交換日の翌々営業日の午後3時までに、電子交換所へ異議申立ができます。※3
異議申立をするには、支払う側が手形の額と同じお金(異議申立預託金)を銀行に預ける必要があります。偽造・変造が理由のときだけ、預託金を免除してもらう道があります。※4異議申立が出ると、その不渡りでは不渡報告に載りません。※5
受け取った側から見ると、預託金が積まれたことは「相手は払うお金を持っている」という一つのしるしです。預託金は、裁判で支払う義務がないと決まったときや、異議申立から2年がたったときなどに相手へ返されます。※6そのため、話し合いや裁判で白黒をつける必要があります。
0号不渡は「処分がない」だけで、払われたわけではない
0号不渡は、手形の書き方や差し出し方に問題がある場合などです。出した側は処分を受けませんが、受け取った側にお金が入らない点は同じです。期日未到来や形式不備なら、直して差し出し直せる場合があります。
2026年3月31日からは、0号の理由に「振出期限超過又は交換廃止後の手形等」が加わりました。銀行ごとの期限を過ぎてから出された手形は、口座にお金があっても0号として戻ります。※7
- 「資金不足」「取引なし」と書かれている?はい → 1号。相手は払う力がない。名前が一覧に載り、言い分を申し立てる道もないいいえ → 次へ
- 「契約不履行」「詐取」「紛失」「偽造」などと書かれている?はい → 2号。相手は払う力とは別の理由で拒んでいる。同じ額を預ければ一覧に載らずに済むいいえ → 次へ
- 「形式不備」「期日未到来」「呈示期間経過後」「振出期限超過」などと書かれている?はい → 0号。相手に処分はない。直して出し直せるか、話し合いで払ってもらういいえ → 取引銀行に意味を聞く
この章の根拠(7件)
- 電子交換所規則施行細則33条1項
- 電子交換所規則施行細則33条2項
- 電子交換所規則45条1項
- 電子交換所規則45条2項
- 電子交換所規則41条1号
- 電子交換所規則46条1項
- 電子交換所規則施行細則33条1項1号③・附則(2026年3月改正)
不渡り2回で取引停止処分:6か月の数え方と、2年間の制限
「不渡り2回で終わり」って、本当なの?
1回目が不渡報告に載り、そこから6か月以内に2回目を出すと取引停止処分です。2年間、当座の口座も新しい借入れも使えません。0号は数えず、同じ交換日の分は何枚でも1回です。
「不渡りを2回出すと終わり」とよく言われます。正確には、不渡報告に載った会社が、1回目の手形の交換日から6か月後の応当日の前日までを交換日とする手形で、2回目の不渡情報登録を受けると、取引停止処分になります。※1
2回目に数えるのは、第1号不渡と、異議申立のない第2号不渡です。0号不渡は数えません。また、同じ会社の不渡りが同じ交換日に何枚あっても、1回として数えます。※2
日付で追う:満期が2026年11月20日の手形の場合
満期の11月20日(金曜日)に交換に回った手形が資金不足で落ちたとします。11月23日は祝日なので、日付は次のように進みます。
| 日付 | 起きること | 根拠 |
|---|---|---|
| 11月20日(金) | 交換日。この日に相手の口座から引き落とされるはずだった | 満期の日 |
| 11月24日(火)午前11時まで | 相手の銀行が手形を返し(不渡返還)、不渡りの情報を登録する | 交換日の翌営業日 |
| 11月25日(水)午後3時まで | 第2号不渡なら、異議申立の締切 | 交換日の翌々営業日 |
| 11月26日(木) | 不渡報告に載り、参加する銀行に知らされる | 交換日から4営業日目 |
※3ふつうなら、ここから2027年5月19日までの交換日の手形で2回目を出すと、取引停止処分です。ただし後で説明するとおり、取引停止処分の決まりは2027年4月1日に削られます。
取引停止処分を受けるとできなくなること
処分を受けた会社は、その日から2年のあいだ、交換に加わる銀行で当座の口座を持てず、新しくお金を借りることもできません。今ある貸付けを守るための貸出だけは例外です。※4口座がなければ手形・小切手は出せないので、手形で仕入れ代金を払ってきた会社ほど、仕入れそのものが止まります。
受け取った側にとっては、取引先の取引停止処分は「倒産」の一つの形として扱われます。経営セーフティ共済の共済金の貸付や、税金の上での貸倒引当金で、取引停止処分が起点になります(後の章で説明します)。※5
自社が1回目の不渡りを出してしまったら
自社が手形を出した側で、1回目を出してしまった場合です。まず、残っている手形の満期と額を全部書き出し、6か月の間に落とさずに済むかを確かめます。足りないなら、満期の前に受取人へ事情を話し、支払いの方法や時期を相談します。
1回目の不渡りでも、取引銀行には知られます。信用保証協会の保証でも、1回目から6か月たっていない会社は対象外とされる例があります(信用保証協会の保証付き融資で、使えない場合の一覧を載せています)。支払いの順番と打つ手は、資金繰りが苦しい・支払いに間に合わないときの対処で整理しています。
この章の根拠(5件)
- 電子交換所規則42条1項
- 電子交換所規則施行細則32条5項
- 電子交換所規則33条1項・40条1項・41条・45条1項
- 電子交換所規則39条2項
- 中小企業倒産防止共済法2条2項2号
2027年4月から、不渡りの処分の決まりがなくなる
不渡りの決まりが変わるって聞いたけど?
2026年3月の規則改正で、取引停止処分の章は2027年4月1日に削られます。処分という歯止めがなくなるので、満期が先の手形は振込に替えてもらうなどの相談を早めに始めると安全です。
2026年3月に、電子交換所の規則と細則が改正されました。紙の手形の交換が終わるのに合わせて、不渡りの処分にかかわる決まりを順に外していく内容です。※1
| 実施の日 | 改正の中身 | 受け取った側にとっての意味 |
|---|---|---|
| 2026年3月31日 | 0号の理由に「振出期限超過又は交換廃止後の手形等」を加える | 期限後の日付の手形は、相手に処分がないまま返ってくる |
| 2027年3月30日・31日 | 不渡りの情報を登録する義務の定めを削る | この日からの不渡りは、不渡報告に載らなくなる |
| 2027年4月1日 | 規則の目的から「信用取引の秩序維持」を外し、取引停止処分の章(39条〜51条)を削る。交換に付すことも原則できなくなる | 「6か月に2回で2年間」という処分そのものがなくなる |
表の最後の行は、受け取った側にとって大きな変化です。これまで、資金が苦しい会社でも「2回目だけは避けよう」と手形の支払いを優先してきました。処分という歯止めがなくなると、手形が後回しにされるおそれがあります。
満期が2027年4月より後の手形が手元にあるなら、満期を待たずに、銀行振込に替えてもらう・支払日を早めてもらうといった相談を始めておくと安全です。交換の終わりと取立ての受付の時期は手形とはで説明しています。すでに処分を受けている会社の、4月以降の扱いは公表資料では確かめられませんでした。気になる場合は取引銀行に聞いてください。
手形の代わりに広がっているでんさい(電子記録債権)にも、期日に払えない「支払不能」が6か月に2回で取引停止処分になる仕組みがあり、こちらは続きます。でんさいの決まりはでんさいとはで説明しています。
この章の根拠(1件)
- 「電子交換所規則」「電子交換所規則施行細則」新旧対照表・附則(2026年3月改正)
受け取った手形が不渡りになったときにやること
もらった手形が落ちたら、まず何をすればいい?
手形と付箋を受け取り、相手に払える時期を聞き、4取引日以内に裏書人へ知らせます。割り引いていた手形なら、銀行への買戻しの資金を用意します。手形の原本は書き込まずに保管します。
不渡りの連絡を受けたら、最初の数日でやることが決まっています。期限のあるものから順に片づけます。
- 当日〜翌営業日戻った手形と付箋を受け取る取立てを頼んだ銀行が知らせてくれる。理由と日付を書き留める
- すぐ相手に事情と払える時期を聞く電話で聞いたことも、メールにして残す
- 4取引日以内裏書人に、払われなかったことを知らせる裏書で受け取った手形なら、前の持ち主にも請求できる
- 数日以内割り引いた手形なら、買戻しの資金を用意する銀行から手形の額を払い戻すよう求められる
- 1〜2週間回収の方法を決め、足りないお金の手当てをする話し合い・内容証明・手形訴訟・仮差押え。並行して資金繰りを見直す
1. 返ってきた手形と付箋を受け取る
取立てを頼んでいた取引銀行から連絡が来て、手形が返されます。付箋の理由で、前の章の区分のどれかがわかります。手形の原本は、裁判で請求するときにも使うので、折ったり書き込んだりせず保管します。
2. 相手に連絡し、事情と払う日を聞く
資金不足の不渡りなら、相手はお金が足りていません。いつ・いくら払えるのか、ほかの債権者がどれくらいいるのかを聞きます。口頭の約束は、日付と額を書いた書面やメールで残します。分けて払うと言われたら、1回目の入金を確かめてから次の話に進みます。
付箋に「契約不履行」と書かれていたら、相手は取引の中身に不満があると主張しています。納品書や受領書など、約束どおり納めたことを示す書類をそろえます。
3. 裏書人に、払われなかったことを知らせる
ほかの会社から裏書で受け取った手形なら、前の持ち主(裏書人)にも手形の額を払うよう求められます。裏書人は、反対の文言がない限り、支払いを保証する立場にあるからです。これを遡求(そきゅう)といいます。※1
支払いを拒まれたことは、原則として4取引日以内に裏書人に知らせます。知らせが遅れても権利は失いませんが、遅れで裏書人に損害が出れば、その賠償を求められることがあります。※2
4. 割り引いた手形なら、買戻しの資金を用意する
満期の前に銀行で割り引いていた手形が落ちると、銀行から手形の額を払い戻す(買い戻す)よう求められます。割引のときに自社が裏書をしているので、自社が裏書人として責任を負うからです。※3割引で受け取ったお金はもう使っていることが多いので、ここがいちばん資金繰りに響きます。
5. 回収の方法を決め、足りないお金の手当てをする
相手の返事と、手元の資金の残りを見て、回収の方法を決めます。同時に、入らなかった額の穴を埋める段取りを始めます。回収の方法は次の章、お金の手当ては「入らなくなったお金の手当て」の章で説明します。
買戻しを求められる場面(満期前の倒産なども含む)と割引料の計算は手形割引の買戻しの決まりにまとめています。
この章の根拠(3件)
- 手形法15条1項・43条・77条1項
- 手形法45条1項・6項
- 手形法15条1項・77条1項
回収の方法と期限:話し合い・内容証明・手形訴訟・仮差押え
お金を回収するには、どんな方法があるの?
話し合い、内容証明、手形訴訟、仮差押えです。請求の期限は振出人3年・裏書人1年。手形訴訟は証拠が書類に限られ、原則として最初の期日で審理を終える速い裁判です。
手形は、払うと約束した証券なので、ふつうの売掛金より請求しやすい面があります。いちばん大きいのは、裁判で手形訴訟という速い手続きを使えることです。
| 方法 | 中身 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 話し合い | 払う日と額を決め、書面にする。分割なら最初の入金を確かめる | 相手に払う意思があり、少しずつなら払えそうなとき |
| 内容証明郵便 | いつ、何を請求したかを郵便局が証明する手紙で請求する | 連絡しても返事がない・のらりくらりとかわされるとき |
| 手形訴訟 | 証拠を書類に限り、原則として最初の期日で審理を終える裁判 | 手形の原本があり、相手の言い分が「払えない」だけのとき |
| 仮差押え | 裁判の前に、相手の預金や売掛金を動かせないようにする | 相手が財産を隠したり、ほかの債権者に先に払ったりしそうなとき |
話し合いで決まったら、書面に入れること
相手が「分けてなら払える」と言うときは、口約束で終わらせず、合意書にします。後で裁判になっても、合意書が何よりの証拠になります。入れておきたいのは次の項目です。
- 払う額の合計と、その内訳(手形の額・利息・費用)
- 払う日と1回ごとの額、振込先
- 1回でも遅れたら、残りを一度に払ってもらうという決まり
- 不渡りになった手形を返す時期(全額を受け取ってから返す)
- 代表者などが連帯保証人になるかどうか
相手が約束を守るか不安なら、公証役場で、払わないときはすぐに強制執行できる旨の文言を入れた公正証書にする方法もあります。※1費用はかかりますが、裁判をせずに差押えへ進めます。
内容証明郵便に書くこと
電話やメールで返事がないときは、内容証明郵便で請求します。いつ、どんな請求をしたかが記録に残り、相手に本気であることが伝わります。書くことは次のとおりです。
- どの手形か(額・満期・支払場所・手形番号)
- いつ不渡りになったか(交換日と付箋の理由)
- 請求する額(手形の額と、満期から払う日までの年3%の利息)
- 払ってほしい期限(届いてから7日以内など)と振込先
- 期限までに払われないときは、手形訴訟などの法的な手続きに進むこと
裏書人にも同じ内容を送れば、払われなかったことを知らせた記録にもなります。
手形訴訟が速い理由
手形訴訟は、手形の額とその利息を請求するための特別な裁判です。訴状に「手形訴訟で」と書いて起こします。※2証拠は原則として書類だけで、相手は反訴もできません。※3
やむを得ない事情がない限り、最初の口頭弁論の期日で審理を終えるのが原則です。請求を認める判決には、裁判所の判断で仮執行宣言が付き、判決が確定する前でも差押えに進めます。※4相手は判決から2週間以内に異議を出せ、その場合はふつうの裁判で審理し直します。※5
手形訴訟を起こすときの準備
訴えは、相手の住所の裁判所のほか、手形に書かれた支払地の裁判所にも起こせます。※6請求する額が140万円以下なら簡易裁判所、それを超えるなら地方裁判所です。※7
訴状には手形の表と裏の写しを付け、原本は期日に持って行きます。相手が「品物に問題があった」などと争い、書類だけでは決着がつかないときは、原告は相手の承諾なしに、ふつうの裁判に切り替えられます。※8裁判所に納める手数料(印紙)や郵便切手の額は、請求額によって変わるので、訴える裁判所の窓口で確かめます。
手形がなく、売掛金として請求する場合は、支払督促や少額訴訟(60万円以下)も選べます。それぞれの使い分けは支払督促の手続きで説明しています。
請求できる額
請求できるのは、手形の額に、満期から後の法定利率による利息と、通知などにかかった費用を足した額です。※9法定利率は2026年4月から2029年3月までも年3%です。※10
たとえば300万円の手形が、満期から60日後に払われたとします。利息は300万円×3%×60日÷365日で、約1万4,795円です。合わせて約301万4,795円を求められます。裏書人が代わりに払った場合、その裏書人は、払った額と利息をさらに前の人へ請求できます。※11
請求できる期限(時効)
| 請求する相手 | 期限 | 数え始め |
|---|---|---|
| 約束手形の振出人 | 3年 | 満期の日 |
| 裏書人(自分の前の持ち主) | 1年 | 拒絶証書の日付(拒絶証書不要の文言があれば満期の日) |
| 代わりに払った裏書人から、さらに前の人へ | 6か月 | 手形を受け戻した日、または訴えられた日 |
※12いちばん短いのは裏書人への1年です。手形を出した相手とだけ話し合っているうちに、裏書人への期限が過ぎてしまうことがあるので、裏書人への請求は早めに始めます。手形の権利とは別に、もとの売掛金(原因債権)も、ふつうは5年で時効になります。※13
相手が財産を動かしそうなときは、裁判の前に仮差押えを申し立てます。強制執行ができなくなるおそれがあることを示す必要があり、ふつうは担保(保証金)を求められます。※14回収が難しそうなら、早めに弁護士に相談します。
この章の根拠(14件)
- 民事執行法22条5号
- 民事訴訟法350条
- 民事訴訟法351条・352条1項
- 民事訴訟規則214条・民事訴訟法259条2項(大阪地方裁判所「手形・小切手訴訟の手続の概要」)
- 民事訴訟法357条・361条
- 民事訴訟法5条2号
- 裁判所法33条1項1号
- 民事訴訟法353条1項
- 手形法48条1項・77条1項
- 民法404条(法務省「令和8年4月1日以降の法定利率について」)
- 手形法49条
- 手形法70条・77条1項8号・78条1項
- 民法166条1項1号
- 民事保全法14条1項・20条1項
数字で見る不渡り:1回目の約半分の件数が、取引停止処分に至っている
1回不渡りを出した会社は、その後どうなりがち?
取引停止報告の件数は、毎年、不渡報告の46〜49%です。2025年度は不渡報告855件に対し、取引停止報告395件でした。1件あたりの額も2025年度で208万円と大きめです。
月ごとの電子交換所の統計(全国銀行協会)を年度で足し、1回目で一覧に載った件数(不渡報告)と、2回目で処分になった件数(取引停止報告)を並べました。小切手の分も含みます。※1
不渡報告取引停止報告(不渡報告の46〜49%)
この数字から読み取れることは3つあります。1つめは、取引停止報告の件数が、毎年、不渡報告の46〜49%にあたることです。同じ会社を追いかけた数字ではありませんが、1回目を出した会社のうち、かなりの割合が6か月以内に2回目を出していると考えられます。
2つめは、1件あたりの額が大きいことです。資金不足などで落ちた手形・小切手の金額は、2023年度が88.0億円で1件あたり232万円、2025年度が63.9億円で1件あたり208万円でした。
中小企業にとって、1枚の手形が落ちるだけで、1か月分の給与や仕入れの支払いに響く額です。
3つめは、第2号不渡(契約不履行など)は2025年度で26件と、不渡り全体の0.8%しかないことです。返ってきた手形のほとんどは「お金が足りない」ことによる不渡りだと言えます。
直近の2026年4〜8月で見ると、不渡報告は228件、取引停止報告は102件でした。前の年の同じ時期(376件・171件)の約6割です。手形の流通が減った分、件数も減っています。ただし前の章のとおり、2027年4月以降は不渡報告そのものがなくなるので、この件数で相手の危なさを測ることもできなくなります。
この章の根拠(1件)
- 全国銀行協会の月次統計(tegata.xlsx)
入らなくなったお金の手当て:使える方法と、ファクタリングを使わない方がよい場合
入るはずのお金が入らない穴は、どう埋めればいい?
相手が取引停止処分なら経営セーフティ共済の貸付、倒産なら公庫の資金も使えます。ファクタリングは早い一方、手数料10%・30日で実質年率約135%なので、短いつなぎに限ります。
回収には時間がかかります。その間の支払いを止めないために、入らなかった額をどう埋めるかを決めます。取引先の状態によって、使える公的な制度が変わります。
まず、穴の大きさを出す
最初に、不渡りで自社から出ていくお金と、入らなくなるお金を分けて書き出します。同じ300万円の手形でも、割り引いていたかどうかで、手元の現金への響き方が変わります。
| 手形の扱い | 不渡りで起きること | 手元の現金への響き方 |
|---|---|---|
| 満期まで持っていた | 入るはずの300万円が入らない | 予定していた支払いに300万円足りなくなる |
| 銀行で割り引いていた | 銀行に300万円を払い戻す | すでに使ったお金を、今ある現金から返す |
| 自社の支払いに裏書で回していた | 渡した先から300万円を求められる | 支払先との関係にも響く |
次に、これから1〜2か月の給与・仕入れ・税金・借入れの返済の日付と額を並べ、どこで足りなくなるかを確かめます。足りなくなる日と額がわかれば、間に合う方法が絞れます。
| 方法 | 使える条件 | 中身・注意点 |
|---|---|---|
| 経営セーフティ共済の共済金の貸付 | 加入していて、取引先が取引停止処分を受けた(1回目の不渡りだけでは対象外) | 無担保・無利子。回収できない額と掛金の10倍の、小さい方まで(上限8,000万円)。倒産から6か月以内に手続きする |
| 日本政策金融公庫の取引企業倒産対応資金 | 倒産した取引先に50万円以上の売掛金などがある、または取引依存度が20%以上 | 国民生活事業は別枠3,000万円、中小企業事業は1億5千万円まで。返済10年以内(据置3年以内) |
| 支払先との相談・税金や社会保険料の猶予 | 自社の支払いの期日が近い | 費用がかからない。早く相談するほど選べる手が多い |
| ほかの取引先の売掛金のファクタリング | 不渡りを出していない取引先への請求書がある | 早いが手数料が高い。短い期間のつなぎに限る |
※1※2※3共済金の貸付は、取引停止処分の日が「倒産の日」になります。加入から6か月以上たっていることなど、条件と借りられる額の計算は経営セーフティ共済の共済金の貸付で説明しています。2027年4月に取引停止処分の決まりがなくなった後の扱いは、中小機構に確かめてください。
公庫の資金は、対象になる倒産を原則として申込みの前1年以内のものとしています。どの状態を「倒産」とみるかは窓口に確かめます。税金・社会保険料の猶予や支払先との交渉のしかたは、前の章で挙げた資金繰りの記事で整理しています。
ファクタリングでつなぐなら:数字で確かめること
不渡りになった手形を買い取ってもらうことは、まず期待できません。つなぎに使えるのは、ほかの取引先に出している請求書の売掛金です。図鑑に載せている197サービス(2026年10月16日時点)のうち、最短の入金を当日中としているのは145サービスでした。
ただし費用は高めです。手数料10%・入金から売掛金の支払日まで30日なら、実質年率は10÷90÷30×365で約135%になります。手取りと年率は手取りと実質年率の計算で確かめられます。
不渡りを経験した後は、売掛先が払わなかったときに自社が買い戻す義務(償還請求権)の有無も大事です。同じ197サービスのうち、償還請求権なしと明記しているのは100サービスでした。契約書での確かめ方は償還請求権とはで説明しています。
ファクタリングを使わない方がよい場合
- 足りないのが一度きりでなく、毎月続く:1件の不渡りで毎月の収支が赤字になったなら、手数料で傷が広がります。支払先との相談や借入れの見直しを先にします。
- 公庫や共済で、数週間待てば借りられる見込みがある
- 同じ売掛金をすでに銀行の担保やほかの会社への譲渡に使っている
- 手形を割り引いた銀行への買戻しが、売掛金の額より大きい
この章の根拠(3件)
- 中小企業倒産防止共済法2条2項・9条2項・同法施行令
- 中小企業基盤整備機構「共済金貸付」
- 日本政策金融公庫「取引企業倒産対応資金」
よくある失敗と注意点
不渡りのとき、やってしまいがちな失敗は?
呈示期間を過ぎてから差し出す、期日の延長を何度も受け入れる、裏書人への請求を後回しにする、手形の原本をなくす、などです。不渡手形としての会計の処理も忘れないようにします。
1. 呈示期間を過ぎてから手形を差し出す
手形を差し出せるのは、満期の日と、その次の2取引日までです。※1これを過ぎると「呈示期間経過後」の0号不渡で返り、裏書人に請求する権利を失うことがあります。※2取立ては満期の前に余裕を持って頼みます。
2. 期日の延長(ジャンプ)を何度も受け入れる
「今回の分を先の日付の手形に差し替えてほしい」という頼みは、1回なら一時的な事情かもしれません。繰り返されるなら、相手は処分を避けるために時間を稼いでいる可能性があります。応じる場合でも、新しい注文の量を絞り、以後は銀行振込での支払いに改めてもらいます。
3. 裏書人への請求を後回しにする
相手との話し合いを続けているうちに、裏書人への1年の期限が近づくことがあります。相手から払われる見込みが立たないなら、早めに裏書人にも請求します。
4. 返ってきた手形の原本をなくす・書き込む
手形訴訟では、手形の原本が何よりの証拠です。返ってきた手形に、メモを書き込んだり、穴を開けて綴じたりしないようにします。全額を受け取るまでは相手に返さず、受け取ったら引き換えに返します。
5. 会計と税金の処理を忘れる
不渡りになった手形は、受取手形と分けて「不渡手形」として管理するのが一般的です。取引先が取引停止処分を受けた場合、中小法人などは、その債権の50%を貸倒引当金に入れて損金にできる場合があります。※3扱いは税理士に確かめてください。
仕訳の例です。持っていた300万円の手形が落ちたら「不渡手形 300万円/受取手形 300万円」とします。割り引いていた手形を買い戻したら「不渡手形 300万円/当座預金 300万円」です。回収できたときに不渡手形を減らし、回収できないと決まったときに貸倒れとして処理します。
この章の根拠(3件)
- 手形法38条1項・77条1項3号
- 手形法53条1項
- 法人税法施行令96条1項3号ホ・法人税法施行規則25条の3
出典(22件)公的機関の資料・法令。2026.10.18に確認
- 電子交換所規則(全国銀行協会)www.zenginkyo.or.jp
- 電子交換所規則施行細則(全国銀行協会)www.zenginkyo.or.jp
- 「電子交換所規則」新旧対照表(2026年3月改正、全国銀行協会)www.zenginkyo.or.jp
- 「電子交換所規則施行細則」新旧対照表(2026年3月改正、全国銀行協会)www.zenginkyo.or.jp
- 電子交換所における手形交換高などの統計(全国銀行協会)www.zenginkyo.or.jp
- 紙の手形・小切手利用廃止へ(全国銀行協会)www.zenginkyo.or.jp
- 電子交換所の交換廃止時期の決定および手形・小切手交換廃止時期の明確化について(全国銀行協会、2026年6月18日)www.zenginkyo.or.jp
- 手形法(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 民事訴訟法(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 手形・小切手訴訟の手続の概要(大阪地方裁判所)www.courts.go.jp
- 民事保全法(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 民法(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 令和8年4月1日以降の法定利率について(法務省)www.moj.go.jp
- 中小企業倒産防止共済法(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 取引企業倒産対応資金(国民生活事業、日本政策金融公庫)www.jfc.go.jp
- 取引企業倒産対応資金(中小企業事業、日本政策金融公庫)www.jfc.go.jp
- 民事執行法(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 中小企業倒産防止共済法施行令(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 共済金貸付(中小企業基盤整備機構)kyosai-web.smrj.go.jp
- 裁判所法(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 法人税法施行令(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 法人税法施行規則(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
FAQ
よくある質問
不渡りとは簡単に言うと何ですか?
取り立てに回した手形のお金が相手の当座預金から落ちず、落ちなかった理由を書いた付箋つきで手形が戻ってくることです。理由は0号・1号・2号に分かれます。資金不足や口座がないことによる1号では、相手の名前が銀行だけが見る一覧(不渡報告)に載ります。受け取った側には、その分のお金が入りません。
不渡りを2回出すとどうなりますか?
1回目の交換日から数えて6か月の間に、2回目の1号の不渡り(または申立てのない2号)を出すと、取引停止処分になります。その日から2年、交換に加わる銀行で当座の口座を持てず、新しい借入れもできません。同じ日に何枚落ちても1回と数え、0号は数えません。この処分の決まりは2027年4月1日に規則から削られます。
不渡りは1回だけなら大丈夫ですか?
処分は2回目からですが、1回目でも不渡報告に載り、参加する銀行に知られます。信用保証協会の保証でも、1回目から6か月たっていない会社は対象外とされる例があります。統計では、取引停止報告の件数は毎年、不渡報告の46〜49%にあたり、1回目を出した会社のかなりの割合が2回目に至っていると考えられます。
受け取った手形が不渡りになったら、お金は取り戻せますか?
振出人には満期から3年、裏書人には原則1年、手形の額と満期以後の年3%の利息を請求できます。話し合いで決まらなければ、証拠を書類に限り原則1回の期日で審理する手形訴訟が使えます。相手が財産を動かしそうなら、裁判の前に仮差押えも考えます。割り引いた手形なら、まず銀行への買戻しの資金を用意します。
割り引いた手形が不渡りになったらどうなりますか?
割引のときに自社が裏書をしているので、銀行から手形の額を払い戻す(買い戻す)よう求められます。割引で受け取ったお金はすでに使っていることが多く、今ある現金から返すことになるため、資金繰りへの響きがいちばん大きい場面です。買い戻した後は、自社が手形を出した相手に、手形の額と満期以後の年3%の利息を請求します。
不渡りになった手形は、何年まで請求できますか?
手形を出した相手(約束手形の振出人)には満期の日から3年、裏書人には原則として1年です。裏書人が代わりに払った場合、その裏書人がさらに前の人へ請求できるのは6か月です。手形の権利とは別に、もとの売掛金もふつうは5年で時効になります。いちばん短い裏書人への1年を過ぎないよう、早めに請求を始めます。
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