資金繰り更新 2026.10.17
黒字倒産とは?利益が出ていても倒産する5つの原因と10の前兆・防ぎ方
黒字倒産とは、決算は黒字なのに支払いの日に預金が足りず、事業を続けられなくなることです。売上の急増・回収の遅れ・在庫・返済・納税の5つの原因、受注が増えた会社の計算例、自社で確かめる10の前兆と防ぎ方を解説します。
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フファクタリング図鑑編集部(執筆)・公開 2026.10.17

この記事は、決算は黒字なのに預金が減り続けている方や、大きな受注が入って支払いが心配な中小企業の経営者・個人事業主に向けて書いています。黒字倒産の意味と「倒産」が何を指すか、5つの原因、受注が増えた会社が5か月目に給与を払えなくなる計算例、自社で確かめられる10の前兆と防ぎ方を説明します。
この記事を6枚で
1 / 6結論:黒字倒産は「利益があっても、払う日に払うお金がない」ことで起きる
利益が出ているのに、会社が倒れることってあるの?
あります。会社が続くかを決めるのは、利益ではなく支払いの日に使えるお金があるかです。破産の原因は支払不能で、黒字かどうかは問われません。前兆は決算書より先に通帳に出ます。
黒字倒産とは、損益計算書では利益が出ているのに、支払いの日に預金が足りず、事業を続けられなくなることです。手形やでんさいの期日に払えない、給与や仕入代金が払えない、といった形で表に出ます。会社が続くかどうかを決めるのは、利益ではなく支払いの日に使えるお金があるかです。
要点は次の3つです。
- 破産の手続きを始める原因は「支払不能」で、黒字かどうかは問われません。期日に払えない状態が続けば、黒字の会社にも当てはまります。
- 原因は、売上の急増、売掛金の回収の遅れや取引先の倒産、在庫の積み上がり、設備投資と借入の返済、納税などのまとまった支払いの5つにほぼまとまります。
- 前兆は、決算書より先に通帳と資金繰り表に出ます。3か月先の残高を毎月出していれば、多くの場合は手を打つ時間があります。
この先は、「倒産」が指すものと黒字でも倒産する理由(2章・3章)、5つの原因(4章)、計算例(5章)、10の前兆(6章)、防ぐ方法(7章)、足りないとわかったときの手(8章)、よくある失敗(9章)の順に説明します。
損益計算書で見る利益の物差し
- 5月の売上
- 2,500万円
- 5月の利益
- 400万円
- 1〜5月の利益の累計
- 1,000万円
- 判断
- 黒字で、伸びている
通帳で見るお金の物差し
- 4月末の預金
- 100万円
- 5月25日の給与など
- 350万円
- 25日の時点の残高
- 250万円足りない
- 判断
- 給与が払えない
黒字倒産とは:「倒産」が指すものと、黒字でも倒産と言われる場面
そもそも「倒産」って、どういう状態のこと?
法律の言葉ではなく、払えなくなって事業を続けられない状態を広く指します。手形・でんさいは6か月以内に2回払えないと取引停止処分になり、2年間、銀行から借りられなくなります。
「倒産」は法律で決まった言葉ではありません。会社が借金や代金を払えなくなり、事業を続けられなくなった状態を広く指します。報道や信用調査では、主に次の場面を倒産として扱います。
| 場面 | 何が起きるか | 黒字でも起きるか |
|---|---|---|
| 手形・小切手の取引停止処分 | 不渡り(期日に払えないこと)から6か月以内に2回目を出すと処分。2年間、銀行と当座預金・貸出の取引ができない | 起きる。期日の日に預金が足りなければ不渡り |
| でんさいの取引停止処分 | 6か月以内に2回払えないと処分。2年間、払う側としての利用と、参加金融機関からの借入ができない | 起きる |
| 破産手続の申立て | 裁判所が会社の財産をお金に換えて分け、会社はなくなる。会社だけでなく、お金を払ってもらう側も申し立てられる | 起きる。黒字かどうかは問われない |
| 民事再生手続の申立て | 事業を続けながら、裁判所の手続きで借金を減らしたり返し方を変えたりする | 起きる |
| 裁判所を使わない整理・事業の停止 | 金融機関や取引先と話し合って整理する、または事業を止める | 起きる |
どの場面も、きっかけは「払えない」ことです。決算書が黒字でも、表の5つのどれかに進めば倒産と呼ばれます。
手形・でんさいは、期日に1日足りないだけで処分に近づく
手形は、期日に資金不足で払えないと不渡りとして登録され、金融機関に知らされます。そこから6か月以内に2回目を出すと取引停止処分になり、銀行は2年間、その会社と当座預金や貸出の取引ができません。※1
でんさい(電子記録債権)にも同じような決まりがあり、6か月以内に2回払えないと、2年間、払う側としてでんさいを使えず、参加している金融機関からの借入もできなくなります。※2銀行から借りられなくなれば、黒字の会社でも事業を続けるのはほぼ無理です。
黒字でも「支払不能」になる
破産法は、支払不能を「支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態」と定めています。※3支払不能は破産手続を始める原因で、支払いを止めたときは支払不能と推定されます。※4
法人では、これに加えて債務超過(借金が財産より多い状態)も破産の原因です。※5つまり、黒字で財産が借金より多い会社でも、期日に払えない状態が続けば、破産の原因はそろいます。申立ては会社自身だけでなく、お金を払ってもらう側の債権者もできます。※6
「黒字なのに倒産」という言い方は、会計の物差しと法律の物差しの差を表しています。決算書は1年のもうけを見ますが、法律が見るのは期日に払えるかどうかです。
民事再生は「まだ払えるうち」に使える
民事再生は、破産の原因が生じるおそれがあるときや、事業を続けるのに大きな支障を出さなければ期日の借金を払えないときに、会社自身が申し立てられます。※7黒字の会社は事業そのものに値打ちがあります。お金が尽きる前に弁護士に相談すれば、選べる道が多く残ります。
黒字倒産の件数を数えた国の統計は無い
倒産の件数は民間の信用調査会社が集計していますが、倒産した会社を「黒字か赤字か」で分けた国の統計はありません。民間の集計でも、どの決算の、どの利益で黒字とするかの決め方は会社ごとに違います。この記事では割合の数字は使わず、仕組みと計算で説明します。
この章の根拠(7件)
- 電子交換所規則39条2項・41条・42条
- でんさいネット「取引停止処分とは」
- 破産法2条11項
- 破産法15条1項・2項
- 破産法16条1項
- 破産法18条1項
- 民事再生法21条1項
なぜ黒字でもお金が尽きるのか:利益は「残高」ではない
黒字なのに、なぜお金がなくなるの?
利益は計算上のもうけで、残高は実際の出入りの差だからです。売掛金や在庫、返済、税金の時期でずれます。そのずれを埋めるお金がないまま、給与日などの動かせない期日が来ると倒産につながります。
利益は、売上から費用を引いた計算上のもうけです。お金の残高は、実際に入った額と出た額の差です。この2つは、入金と支払いの時期がずれる分だけ違ってきます。
ずれの主な原因は、売掛金、在庫、設備の購入と減価償却、借入の元金の返済、税金の時期などです。原因ごとの説明と、1年の利益から預金の増減をたどる表は、資金繰りとは(黒字でもお金が足りなくなる理由)にまとめています。この記事では、そのずれが倒産まで進む筋書きを見ます。
倒産まで進むのは、ずれが「動かせない期日」とぶつかったとき
ずれがあるだけでは倒産しません。手元のお金や借入の枠でずれを埋められているうちは、外からは何も見えません。倒産につながるのは、次の3つが重なったときです。
- ずれが大きくなる:売上の急増、回収の遅れ、大きな設備の購入など
- 埋めるお金が無い:預金が薄い、借入の枠を使い切っている
- 動かせない期日が来る:手形・でんさいの期日、給与日、返済日、税金の納期限
1つ目は商売の結果なので、すぐには変えにくいものです。自社で動かせるのは2つ目と3つ目です。ずれが大きくなるとわかった時点で借入を相談できるか、期日を前もって相談できるかで、同じ黒字の会社でも結果が分かれます。
期日の重さは、支払いによって違う
期日には、前もって相談すればずらせるものと、ずらすと取り返しがつかないものがあります。足りないときに守る順番を決めるため、重さを比べておきます。
| 支払い | 遅れるとどうなるか | 相談の余地 |
|---|---|---|
| 手形・でんさい | 1回目で記録が残り、6か月以内の2回目で取引停止処分 | 期日を過ぎると、ほとんど無い |
| 給与 | 従業員の生活に直結し、人が離れる。毎月決まった日に全額を払う決まりがある | ほとんど無い |
| 借入の返済 | 延滞になると、追加の借入が難しくなる | 期日の前なら、返済条件の変更を相談できる |
| 税金・社会保険料 | 延滞税・延滞金がかかり、放っておくと差押えに進む | 猶予の制度がある |
| 仕入・外注の代金 | 信用を失い、次から前払いを求められることがある | 期日の前なら、日をずらせることがある |
給与は、通貨で、全額を、毎月1回以上、決まった日に払うと法律で決まっています。※1黒字倒産の多くは、表の上の2つ、つまり手形・でんさいの期日か給与日までに手当てが間に合わなかったときに起きます。
この章の根拠(1件)
- 労働基準法24条
黒字倒産の5つの原因:倒産までの筋書きと、早めに出るサイン
黒字倒産の原因には、どんなものがあるの?
売上の急増、回収の遅れや取引先の倒産、在庫の積み上がり、設備投資と借入の返済、納税などの5つです。1つだけより、2つ以上が同じ時期に重なったときに危なくなります。
黒字倒産の原因は、次の5つにほぼまとまります。1つだけで倒れることは少なく、2つ以上が同じ時期に重なったときに危なくなります。自社に近いものから読んでください。
原因1:売上の急増(受注が増えるほど立て替えが増える)
大口の受注や新しい取引先で売上が伸びると、材料費・外注費・人件費は先に増え、代金は後から入ります。もうかる仕事ほど断りにくく、「利益が出ているから大丈夫」と考えやすいため、黒字倒産のいちばん典型的な筋書きです。
5章の計算例の条件(代金は60日後に入り、売上の70%にあたる材料・外注費を30日後に払う)では、立て替える額は月商の1.3か月分です。月商が1,000万円増えると、立て替えは1,300万円増えます。増える立て替えの出し方は運転資金の計算方法(増加運転資金)で説明しています。
早めに出るサイン:売上と売掛金が同時に増え、預金が減る。人を増やした月から固定費が上がる。
原因2:売掛金の回収の遅れと、取引先の倒産
取引先の支払いが遅れたり、取引先が倒産して売掛金が回収できなくなったりすると、入るはずのお金が入りません。こちらの支払いの期日は変わらないので、その分がそのまま不足になります。取引先の倒産をきっかけに自社も倒れることを「連鎖倒産」と言います。
失った売掛金を利益で取り戻すのは大変です。営業利益率5%の会社が600万円の売掛金を回収できなくなると、取り戻すには1億2,000万円の売上が要ります。月商1,000万円の会社なら、1年分の売上です。
取引先の倒産に備えて、掛金を積み立てておくと無利子・無担保で借りられる国の共済があります。仕組みと借りられる額は経営セーフティ共済(倒産防止共済)で説明しています。
早めに出るサイン:1社への売上が大きい。売掛金の残高が、取引条件から考えられる額より多い。
原因3:在庫の積み上がり
仕入れた商品や材料は、代金を払った時点ではまだ費用になりません。売れたときに初めて費用になります。売れ残りが増えても利益は減らず、預金だけが減ります。まとめ買いの値引きや、品切れを恐れた多めの仕入れで起きやすい原因です。
売れない在庫も、評価を下げる処理をするまでは帳簿の上で財産のままです。黒字の決算書の中に、お金に戻らない在庫が入っていることがあります。
早めに出るサイン:在庫が売上より速く増える。同じ品が何か月も倉庫に残る。
原因4:設備投資と借入の返済
機械・車両・店舗を買うと、代金はまとめて払うのに、費用は何年かに分けて計上します(減価償却)。設備を手持ちのお金や返済期間の短い借入で買うと、利益は減らないのに預金が大きく減ります。
借入の元金の返済は費用になりません。返済の元手になるのは「税引き後の利益+減価償却費」です。税引き後の利益300万円、減価償却費150万円の会社が、元金を月50万円(年600万円)返していると、毎年150万円ずつ預金が減ります。利益が出ているのに、年を追うごとに苦しくなる型です。
早めに出るサイン:元金の返済額が、税引き後の利益と減価償却費の合計を上回る。返済のために新しく借りている。
原因5:納税・賞与など、まとまった支払いの時期
利益が大きく出た年は、事業年度が終わった日の翌日から2か月以内に法人税を納めます。※1これに消費税、賞与、年に1回の保険料などが同じ月に重なると、その月だけ大きく足りなくなります。
前もってわかっている支払いなので、資金繰り表に書いておけば防げます。逆に、資金繰り表の無い会社では、決算が良かった年の翌年に、急に苦しくなります。
早めに出るサイン:決算の2〜3か月前になっても、納税の額を出していない。賞与の月の残高を見ていない。
この章の根拠(1件)
- 法人税法74条1項・77条
数字で確かめる:受注が増えた会社が、黒字のまま5か月目に給与を払えなくなる計算
受注が増えるのは、いいことじゃないの?
計算例では、月商が1,000万円から2,500万円に伸び、5月までに利益1,000万円を出した会社が、5月25日の給与で250万円足りなくなりました。売掛金が利益より速く増えるからです。
原因1の「売上の急増」を、1つの会社の数字で月ごとに追ってみます。毎月黒字で、利益も伸びている会社です。前提は次のとおりです(金額は万円)。
- 1〜2月の月商は1,000万円。大口の受注で、3月は1,500万円、4月は2,000万円、5月から2,500万円に増える。
- 代金は、売上の2か月後の月末に入る(60日)。材料・外注費は売上の70%で、翌月末に払う(30日)。
- 人件費・家賃などの固定費は月250万円。人を増やして4月は300万円、5月からは350万円。毎月25日に払う。
- 借入の元金の返済は毎月50万円。1月の初めの預金は500万円。税金と減価償却は、この例では入れない。
利益は「売上×30%−固定費」で、元金の返済は費用に入りません。入金は2か月前の売上、支払いは前の月の材料・外注費と、その月の固定費と返済です。
| 月 | 売上 | その月の利益 | 利益の累計 | 入金 | 支払い | 月末の預金 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1月 | 1,000 | 50 | 50 | 1,000 | 1,000 | 500 |
| 2月 | 1,000 | 50 | 100 | 1,000 | 1,000 | 500 |
| 3月 | 1,500 | 200 | 300 | 1,000 | 1,000 | 500 |
| 4月 | 2,000 | 300 | 600 | 1,000 | 1,400 | 100 |
| 5月 | 2,500 | 400 | 1,000 | 1,500 | 1,800 | −200 |
| 6月 | 2,500 | 400 | 1,400 | 2,000 | 2,150 | −350 |
| 7月 | 2,500 | 400 | 1,800 | 2,500 | 2,150 | 0 |
| 8月 | 2,500 | 400 | 2,200 | 2,500 | 2,150 | 350 |
毎月黒字で、5月までの利益の累計は1,000万円です。それなのに預金は4月末に100万円まで減ります。5月25日に給与など350万円を払おうとすると、250万円足りません。表で月末の預金がマイナスの月は、実際には何かを払えていない、という意味です。手を打たなければ、この会社は5月の給与日に止まります。
何がお金を吸い込んだのか
1月末と7月末を比べます。売掛金は2,000万円から5,000万円へ3,000万円増え、材料・外注費の未払い(買掛金)は700万円から1,750万円へ1,050万円増えました。差し引き1,950万円を、新たに自社で立て替えるようになったわけです。
同じ期間の利益の累計は1,800万円で、元金の返済は350万円です。利益1,800万円から、立て替えの増加1,950万円と返済350万円を引くと、500万円の減少になります。1月初めの預金500万円が、7月末にちょうど0になった理由です。
売掛金の残高利益の累計
図のとおり、利益は月を追って積み上がっていますが、売掛金はそれより速く、大きく増えています。利益が出ていることと、払うお金があることは別だとわかります。
不足はいくらで、いつ終わるのか
いちばん足りなくなるのは7月25日です。6月末の不足350万円に、給与など350万円が重なり、700万円足りません。8月末には預金が350万円に戻り、その後は毎月350万円(利益400万円−返済50万円)ずつ増えていきます。
つまり、この会社に要るのは、5月から7月の山を越えるための約700万円と、少しの余裕です。受注が決まった3月の時点でこの表を作り、銀行に増加運転資金を相談していれば、乗り切れる不足でした。黒字倒産の多くは、このような「越えれば戻る山」で起きます。
月末の残高だけでは、谷を見落とす
この例では、5月の月末の不足は200万円ですが、25日の時点では250万円足りません。入金が月末に来て、給与が25日に出ていくからです。月末の残高だけを見ていると、本当にいちばん苦しい日を見落とします。給与日や手形・でんさいの期日など、大きな支払いの日の残高も出しておきます。
自社で同じ計算をする手順
- これから6か月の売上の見込みを、月ごとに書く。
- それぞれの売上がいつ入金されるかを、取引先ごとの支払条件で書く。
- 材料・外注費がいつ出ていくかを、仕入先ごとの支払条件で書く。
- 給与・家賃・返済・税金を、払う日に書く。
- 月末と、給与日・期日の残高を出し、いちばん少ない日と額に印をつける。
表の形と書き方は資金繰り表の作り方にあります。いちばん少ない額がマイナスなら、その日の2〜3か月前には手を打ち始めます。
黒字倒産の前兆:自社で確かめる10のサイン
うちが危ないかどうか、どこを見ればわかる?
売掛金や在庫が売上より速く増える、預金が下がり続ける、給与日の前に毎月お金を集めている、などの10のサインです。3つ以上重なるなら、3か月先の資金繰り表でいちばん少ない日を出します。
前兆は、決算書より先に、通帳・試算表・資金繰り表に出ます。決算書は年に1回しか作らないので、数字に出るころには手遅れのことがあります。ここでは取引先ではなく、自社が危なくなっていないかを確かめるサインを挙げます。
- 売掛金が売上より速く増えている試算表の売掛金を月商で割り、前の年と比べる
- 在庫が売上より速く増えている同じ品が何か月も残っていないか
- 預金の残高が、月を追うごとに下がっている毎月の同じ日(給与日の前など)の残高を並べる
- 当座貸越などの借入の枠を、いつも使い切っている枠の残りが給与1回分より少なくないか
- 元金の返済が「税引き後の利益+減価償却費」より多い決算書と返済予定表で比べる
- 仕入先・外注先に支払日をずらしてもらうことが増えた直近3か月で何回あったか
- 税金・社会保険料を期限に払えず、分けて払っている督促状や猶予の申請が来ていないか
- 給与日の前に、毎月どこかからお金を集めている社長個人のお金を入れていないか
- 返済のための借入を申し込んでいる借りる理由が「返済」になっていないか
- 3か月先の資金繰り表が無い、作るとマイナスの月がある給与日・期日の残高まで出したか
1つ当てはまるだけで危ない、というものではありません。ただ、3つ以上が同時に当てはまるときや、同じサインが何か月も続くときは、お金の流れが利益とずれたまま広がっています。まず3か月先の資金繰り表を作り、いちばん少ない日の残高を出します。
4つの数字で確かめる
サインのいくつかは、決算書や試算表の数字で確かめられます。毎月の試算表があれば、次の4つを出して並べておきます。
| 数字 | 出し方 | 見方 |
|---|---|---|
| 売上債権回転期間 | 売掛金・受取手形・でんさいの残高÷月商 | 前の年や取引条件より延びていたら、回収の遅れか、支払いの遅い取引先が増えた |
| 在庫の回転期間 | 在庫の残高÷月商 | 売上が増えていないのに延びていたら、売れない在庫が増えた |
| 手元のお金 | 現金・預金÷月商 | 月を追って下がり続けていないか |
| 返済の重さ | 年間の元金返済÷(税引き後の利益+減価償却費) | 1を超えると、返済で預金が毎年減る |
どれも、1回の値より毎月・毎年の動きを見ます。中小企業の手元のお金が業種ごとに月商の何か月分あるかは、資金繰りとはの「数字で確かめる」の章に統計から出した目安があります。
注意したいのは、売上の急増による黒字倒産は、回転期間では見えにくいことです。5章の会社は、売上債権回転期間がずっと2か月で変わりません。売掛金が増えたのは売上が増えたからで、回転期間だけ見ていると「問題なし」に見えます。売上が急に伸びるときは、回転期間ではなく、先の残高を資金繰り表で見るのが確実です。
黒字倒産を防ぐ方法:平時にやっておく6つのこと
黒字倒産を防ぐには、普段から何をすればいい?
3か月先までの資金繰り表を毎月作り直すことが土台です。大きな受注の前に立て替えの額を出して借入を相談し、入金と支払いの条件をそろえ、返済を返す元手の範囲に収めます。
黒字倒産は、足りなくなってから慌てても打てる手が少なくなります。平時に次の6つをやっておくと、5つの原因のどれが来ても、手を打つ時間を作れます。
1. 3か月先までの資金繰り表を、毎月作り直す
月末の残高だけでなく、給与日と手形・でんさいの期日の残高まで出します。実績が出たら予定を書き直し、ずれの理由を一言書いておきます。これだけで、5つの原因のほとんどは数か月前に見えます。
2. 大きな受注の前に、立て替えの額を出して借入を相談する
5章の会社なら、3月に受注が決まった時点で「5月から7月に最大700万円足りない」と出せます。銀行は、何に使い、いつ、何で返すのかが見える借入を検討しやすいものです。受注の書類と資金繰り表を持って、足りなくなる2〜3か月前に相談します。取引先に着手金や前払いを頼めないかも、受注の前に話します。
3. 入金を早め、支払いの条件をそろえる
代金が入るまでの日数(入金サイト)が、払うまでの日数(支払いサイト)より長いほど、立て替えは大きくなります。新しい取引を始めるときに条件を確かめ、長すぎる場合は交渉します。交渉の仕方と計算は支払いサイトとは(短くしてもらう交渉)で説明しています。取引の内容によっては、法律で支払期日の上限が決まっているものもあります(売掛金を早く現金にする方法で扱っています)。
4. 設備は、使う年数に合った借入やリースで手当てする
何年も使う設備を、手持ちのお金や1〜2年の短い借入で買うと、原因4の型になります。設備の代金は、使う年数に近い期間の借入やリースで払い、毎月の返済が設備から生まれる利益の範囲に収まるようにします。在庫も、まとめ買いの値引きより、残ったときのお金の重さで量を決めます。
5. 返済を「返す元手」の範囲に収める
6章の「返済の重さ」が1を超えているなら、苦しくなる前に金融機関に返済期間の見直しや借り換えを相談します。延滞が起きる前に相談するのと、起きてから相談するのとでは、選べる手が大きく違います。
6. 取引先の偏りと倒産に備える
1社への売上が大きいほど、その会社の支払いの遅れや倒産がそのまま自社に響きます。取引先ごとに売掛金の上限を決め、上限を超える取引は支払条件を短くするか、前払いを相談します。取引先の倒産に備える共済に入っておくのも、この備えの1つです。
足りないとわかったとき:守る順番と、ファクタリングを使わない方がよい場合
お金が足りないとわかったら、どうすればいい?
まず手形・でんさいの期日と給与を守り、ほかの支払いは期日の前に相談してずらします。2週間以上あるなら銀行や公庫に相談します。毎月足りない会社がファクタリングを使い続けるのは避けます。
資金繰り表で不足が見えたら、まず期日の重いもの、つまり手形・でんさいの期日と給与を守ると決めます。そのほかの支払いは、期日の前に相談してずらします。支払先への相談、税金・社会保険料の猶予、返済条件の変更、公的融資を当たる順番は資金繰りが苦しいときの対処の順番で詳しく説明しています。
- 不足は、決まった売掛金の入金で埋まる一時的なものか?はい → Q2へいいえ → 毎月足りない型。利益と返済の立て直しを専門家と相談するのが先
- 足りなくなる日まで、2週間以上あるか?はい → 資金繰り表を持って、銀行・公庫に借入を相談するいいえ → Q3へ
- 足りないのは、手形・でんさいの期日や給与か?はい → 売掛金の売却などで、その期日の分だけ埋めるいいえ → 支払先に、支払日を相談する
ファクタリングが合う場面
5章の会社のように、売上の伸びで立て替えが一時的に増え、決まった売掛金の入金で戻る不足には、売掛金を期日前に売って現金にするファクタリングが合うことがあります。売掛金の売買なので、借入と違って毎月の返済の予定は増えません。
費用は年率に直して比べます。売掛金1,000万円を手数料5%で60日早く現金にすると、手数料は50万円、手取りは950万円で、実質年率は約32%です。年率の出し方は手数料の計算と実質年率で、自社の条件は手取りと実質年率のシミュレーターで計算できます。借入が間に合う時間があるなら、ふつうは借入の方が安く済みます。
使わない方がよい場合
- 毎月足りない:赤字や返済の重さで足りない会社が使い続けると、手数料で利益が削られます。毎月1,000万円の売掛金を手数料5%で売り続けると、手数料は年600万円です。
- 足りなくなる日まで時間がある:2週間以上あるなら、まず銀行や公庫に借入を相談します。
- 売掛金がすでにほかで使われている:担保に入れている、すでに売った売掛金は、もう一度売れません。
- 条件が貸付けに近い:金融庁は、買取の代金が債権の額に比べて著しく低い場合や、売った側が買い戻す義務を負う場合などは、ファクタリングを装った貸付けのおそれがあると注意しています。※1
どの手を使えばよいか迷うときは、資金調達診断で、急ぎの度合いと金額から候補を絞れます。
埋まらないときは、払えなくなる前に専門家へ
手を尽くしても埋まらない不足が見えたら、手形・でんさいの期日や給与日の前に、弁護士や公的な相談窓口に相談します。2章で見たとおり、民事再生のような手続きは、払えなくなる前の段階から使えます。黒字の会社ほど、事業を残す道を選びやすいからです。
この章の根拠(1件)
- 金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」
黒字倒産でよくある失敗と注意点
黒字倒産で、やりがちな失敗って何?
決算書の利益だけを見て安心する、受注を決めてからお金のことを考える、税金を後回しにする、などです。社長が一人で抱え込まず、資金繰り表を見せて早めに相談するほど使える手が増えます。
決算書の利益だけを見て安心する
黒字の決算書は、去年1年のもうけを示すだけです。来月の給与を払えるかは、預金と資金繰り表でしかわかりません。経営者が毎月見る数字を、利益に加えて「3か月先のいちばん少ない残高」にしておくと、見落としが減ります。
受注を決めてから、お金のことを考える
大きな受注ほど、決めた後では条件を変えにくくなります。見積りの段階で、入金の日と支払いの日を並べ、立て替えの最大額を出しておきます。足りないなら、着手金・前払い・分割での請求を受注の条件に入れて交渉します。
返済のために借り、高い調達を重ねる
返済の元手が足りないまま、返済のために新しく借りると、翌月から返済がさらに増えます。手数料の高い調達を重ねると、そのたびに利益が削られます。返済が重いなら、借りる前に返済条件の見直しを相談するのが先です。
税金・社会保険料を後回しにする
税金や社会保険料は、取引先より後回しにしやすい支払いです。しかし延滞税・延滞金がかかり、放っておくと売掛金や預金の差押えに進みます。差押えられれば、取引先にも知られます。払えないとわかった時点で、猶予を相談します。
手形・でんさいの1回目を軽く見る
手形は1回目の不渡りでも、不渡報告に載って金融機関に知らされます。※16か月以内の2回目で取引停止処分です。期日の前に預金を確かめ、足りないとわかったら、期日の前に受け取った相手と話します。期日を過ぎてからでは、打てる手がほとんど残りません。
社長が一人で抱え込む
黒字倒産は、数字の上では順調に見えるため、周りに相談しにくいものです。顧問の税理士、取引のある金融機関、商工会議所などの窓口に、資金繰り表を見せて早めに話すほど、使える手が増えます。
この章の根拠(1件)
- 電子交換所規則41条
出典(7件)公的機関の資料・法令。2026.10.17に確認
- 破産法(e-Gov法令検索)第2条・第15条・第16条・第18条laws.e-gov.go.jp
- 民事再生法(e-Gov法令検索)第21条laws.e-gov.go.jp
- 電子交換所規則(全国銀行協会)第39条〜第42条www.zenginkyo.or.jp
- でんさいネット:よくあるご質問(取引停止処分とは)www.densai.net
- 労働基準法(e-Gov法令検索)第24条laws.e-gov.go.jp
- 法人税法(e-Gov法令検索)第74条・第77条laws.e-gov.go.jp
- ファクタリングの利用に関する注意喚起(金融庁)www.fsa.go.jp
FAQ
よくある質問
黒字倒産とは簡単に言うと何ですか?
黒字倒産は、決算書では利益が出ているのに、支払いの日に預金が足りず、事業を続けられなくなることです。利益は計算上のもうけで、売掛金の入金が後になる、在庫や設備にお金を使う、借入を返すといった理由で、預金とずれます。会社が続くかを決めるのは利益ではなく、払う日に払えるお金があるかです。
黒字倒産の原因で多いのは何ですか?
原因は、売上の急増による立て替えの増加、売掛金の回収の遅れや取引先の倒産、在庫の積み上がり、設備投資と借入の返済、納税や賞与などのまとまった支払いの5つにほぼまとまります。中でも、大口の受注で材料費や外注費が先に出て、代金が後から入る売上の急増は、利益が増えているため気づきにくい典型的な原因です。
黒字倒産の前兆にはどんなものがありますか?
売掛金や在庫が売上より速く増える、預金が月を追って減る、借入の枠をいつも使い切っている、元金の返済が税引き後の利益と減価償却費の合計より多い、支払日をずらしてもらうことが増えた、税金や社会保険料を分けて払っている、などです。3つ以上が同時に当てはまるときは、3か月先の資金繰り表を作って、いちばん少ない日の残高を確かめます。
黒字なのに破産することはありますか?
あります。破産法では、期日の来た借金を一般的かつ継続的に払えない「支払不能」が破産手続を始める原因で、黒字かどうかは問われません。法人は債務超過も原因になります。申立ては会社だけでなく債権者もできます。民事再生は破産の原因が生じるおそれがある段階から申し立てられるので、払えなくなる前に弁護士に相談します。
黒字倒産を防ぐにはどうすればいいですか?
3か月先までの資金繰り表を毎月作り、月末だけでなく給与日や手形・でんさいの期日の残高まで出します。大きな受注の前には立て替えの最大額を出し、足りなくなる2〜3か月前に銀行に相談します。入金と支払いの条件をそろえ、設備は使う年数に合った借入で買い、元金の返済を税引き後の利益と減価償却費の範囲に収めます。
黒字倒産しそうなときにファクタリングは使えますか?
売上の伸びで立て替えが一時的に増え、決まった売掛金の入金で戻る不足なら、期日の分だけ使う手はあります。売掛金1,000万円を手数料5%で60日早めると手数料は50万円で、実質年率は約32%です。毎月足りない会社が使い続けると費用で利益が削られるので、その場合は返済条件の見直しや専門家への相談が先です。
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