契約更新 2026.10.17
手形割引とは?割引料の計算と買戻しの責任、ファクタリングとの違い
手形割引とは、満期前の手形を銀行などに渡し、割引料を引いた額を受け取ることです。不渡りなら手形の金額で買い戻します。割引料の計算例と早見表、ファクタリングとの違いをまとめました。
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フファクタリング図鑑編集部(執筆)・公開 2026.10.17

取引先から受け取った約束手形を、満期の前に現金にしたい。そんな経営者に向けて、手形割引の仕組みと割引料の計算、手形が落ちなかったときに負う買戻しの責任をまとめた記事です。
売掛金を売るファクタリングとは、費用の示し方も、後に残る責任も違います。両方を同じ物差しで比べる方法と、2027年3月31日に紙の手形の交換が終わることで何が変わるかも書きました。
この記事を7枚で
1 / 7結論:手形割引は、満期前の手形を金融機関に買ってもらう取引。落ちなければ買い戻す
手形割引って、どういう取引なの?
受け取った手形を満期の前に銀行や信用金庫に渡し、割引料を引いた額を受け取る取引です。ただし渡したら終わりではなく、手形が満期に落ちなければ、割り引いた会社が手形の金額で買い戻します。
手形割引とは、受け取った手形を満期の前に銀行や信用金庫に渡し、満期までの日数分の割引料を引いた額を受け取ることです。手形は売買の形で金融機関のものになります。※1
ただし、渡したら終わりではありません。手形が満期に落ちなければ、割り引いた会社が手形の金額で買い戻します。手形を手放しても、満期に払われるまで責任は残ります。
この記事の要点は次の4つです。
- 割引料は「手形の金額×割引率×満期までの日数÷365」で出します。割引率は1年あたりの率で、60日なら1年分の6分の1ほどです。
- 不渡りのほか、振出人や自社の倒産などが起きると、満期の前でも買戻しを求められます。金融機関と結ぶ取引約定書に、その決まりがあります。
- ファクタリングは売掛金を売る取引で、手数料は1回あたりの率です。売った側が買い戻す約束のある契約は、貸付けとされるおそれがあります。
- 国内銀行の割引手形の残高は、1994年3月末の19兆6,055億円から、2026年8月末の3,314億円まで減りました。紙の手形の交換は2027年3月31日で終わります。
章の順番は、仕組み→割引料の計算→買戻し→ファクタリングとの違い→数字で見る今の手形割引→選び方→使わない方がよい場合→よくある失敗です。手形そのものの見方は手形とは(約束手形の仕組みと期日)で説明しています。
割り引くとき
満期の日
手形が落ちなかったとき
この章の根拠(1件)
- 京都中央信用金庫「信用金庫取引約定書の解説書」第6条
手形割引の仕組み:誰に何を渡し、いつお金が動くか
銀行に手形を持っていけば、すぐ割り引いてもらえる?
先に取引約定書を結ぶ必要があり、決算書なども見られます。審査でいちばん重く見られるのは、振出人が満期に払えるかです。取引の裏付けのない融通手形は、割り引かないのが普通です。
手形割引には、手形を切った取引先(振出人)、手形を持っている自社、割り引く金融機関の3者が出てきます。お金は次の順に動きます。
- 申し込む:取引のある銀行や信用金庫に手形を持ち込みます。手形の裏面には、指示どおりに自社の記名と押印(裏書)をします。
- 審査を受ける:金融機関が、振出人が満期に払えるか、自社との取引の状況はどうかを見て、割り引くかを決めます。
- 入金される:割引料を計算し、手形の金額から引いた額が自社の口座に入ります。
- 満期に取り立てる:金融機関が、振出人の銀行に手形の支払いを求めます。
- 終わるか、買い戻すか:落ちれば取引は終わりです。落ちなければ、自社が手形の金額で買い戻します。
手順1の裏書には、法律上の意味があります。裏書した人は、後の持ち主に対して、手形が払われることを担保する責任を負います。※1割引で金融機関に渡すときも、この責任がついて回ります。
割引の前に、金融機関との取引の約束が要る
手形割引は、初めて訪ねた金融機関ですぐに受けられる取引ではありません。多くの金融機関は、借入れや手形割引に共通する決まりとして、銀行取引約定書(信用金庫なら信用金庫取引約定書)を先に結びます。※2
約定書には、割引料の決め方、買戻しの条件、預金との相殺などが書かれています。割引料の割合や払い方は、別に金融機関と合意して決めるとされています。※3口座を作るだけでは足りず、融資と同じように会社の決算書なども見られると考えておきます。
申し込む前にそろえておくもの
必要な書類は金融機関ごとに違いますが、次のものを手元に置いておくと話が早く進みます。
- 手形の原本と、届け出ている印鑑
- その手形のもとになった取引がわかる書類(注文書・納品書・請求書の控えなど)
- 直近の決算書と、今の資金繰りがわかる表
- 振出人との取引の年数や、これまでの支払いの様子を説明できるメモ
取引の書類は、その手形が商業手形であることを示す材料になります。振出人との付き合いの長さや、支払いが遅れたことがないかも、割引の判断に使われる情報です。
金融機関が見るのは、振出人が払えるか
割引の判断でいちばん重く見られるのは、手形を切った振出人が満期に払えるかです。満期にお金を出すのは振出人だからです。そのうえで、落ちたときに買い戻す力が自社にあるかも見られます。
実際の商品やサービスの売り買いから生まれた手形を、商業手形と呼びます。取引の裏付けがなく、お金を作るためだけに互いに切り合う手形は融通手形と呼ばれ、金融機関は割引を受けないのが普通です。融通手形は、相手が倒れると自社も一緒に倒れる危ない形です。
でんさいも、同じ形で割り引ける
紙の手形の代わりに広がった電子記録債権(でんさい)も、金融機関に割り引いてもらえます。約定書でも、割り引いた電子記録債権の買戻しは、手形と同じ条に書かれています。※4でんさいの使い方と始め方はでんさいとは(手形との違いと使い方)にまとめています。
この章の根拠(4件)
- 手形法15条1項・77条1項1号
- 京都中央信用金庫「信用金庫取引約定書の解説書」第1条
- 京都中央信用金庫「信用金庫取引約定書の解説書」第3条1項
- 京都中央信用金庫「信用金庫取引約定書の解説書」第6条
割引料の計算:式と、300万円の手形の計算例
割引料って、どうやって計算するの?
手形の金額×割引率(年)×満期までの日数÷365です。300万円・年3%なら、60日前の割引で14,795円、手取りは2,985,205円。90日前なら22,192円、30日前なら7,397円です。
割引料は、満期までの利息にあたる額です。次の式で出します。
割引料=手形の金額×割引率(年)×満期までの日数÷365
受け取れる額(手取り)は、手形の金額から割引料を引いた残りです。割引率は1年あたりの率なので、日数で割り戻して使います。
計算例:300万円・満期まで60日・割引率年3%
代金として300万円の約束手形を受け取り、満期まで60日ある日に割り引くとします。割引率は仮に年3%と置きます。実際の率は、振出人の信用や取引の状況を見て金融機関が決めます。
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 割引料 | 300万円×3%×60÷365 | 14,795円 |
| 手取り | 300万円−14,795円 | 2,985,205円 |
| 手形の金額に対する割合 | 14,795円÷300万円 | 約0.49% |
年3%と聞くと大きく感じても、60日分なら手形の金額の0.5%に届きません。割引料の1円未満の扱いは金融機関によるので、ここでは四捨五入しました。
早見表:割引料は手形の金額の何%になるか
割引率が同じでも、満期までの日数が長いほど割引料は増えます。次の表は、割引料が手形の金額の何%になるかを、割引率と日数で並べたものです。
| 割引率 | 30日 | 60日 | 90日 | 120日 |
|---|---|---|---|---|
| 年2% | 0.16% | 0.33% | 0.49% | 0.66% |
| 年3% | 0.25% | 0.49% | 0.74% | 0.99% |
| 年5% | 0.41% | 0.82% | 1.23% | 1.64% |
| 年10% | 0.82% | 1.64% | 2.47% | 3.29% |
| 年15% | 1.23% | 2.47% | 3.70% | 4.93% |
たとえば年10%で90日なら2.47%で、300万円の手形なら約7.4万円です。率だけで比べず、日数を掛けた額で比べます。
いつ割り引くかで、費用が変わる
同じ300万円・年3%でも、満期の90日前に割り引けば割引料は22,192円、30日前なら7,397円です。お金が要る日が満期の直前なら、急いで早く割り引くほど損になります。
手形が何枚もあるときは、全部をまとめて割り引く必要はありません。足りない額だけ、満期が近い手形から割り引くと、割引料も買戻しの心配も小さく抑えられます。
日数の数え方と、割引料のほかに確かめること
満期までの日数に、割り引く日と満期の日の両方を入れるのか、片方だけなのかは、金融機関の決め方によります。満期が休日にあたるときは、次の取引日まで支払いを求められません。※1
割引料のほかに、取立ての手数料がかかるか、日数が短いときの最低額があるかも聞いておきます。申し込む前に、条件を書いた書面か計算書の見本をもらうと、ほかの方法と比べやすくなります。
割引率は額面に掛かる:手取りに対する年率は少し高い
割引料は、手形の金額(額面)に割引率を掛けて出します。実際に使えるお金は額面より少ないので、手取りに対する年率は、割引率より少し高くなります。
300万円・60日・年3%の例では、14,795円÷2,985,205円÷60日×365=約3.01%です。率が低ければ差はわずかですが、年15%なら手取りに対して約15.4%になります。
この章の根拠(1件)
- 手形法72条1項・77条1項9号
買戻しと遡求:手形が落ちなかったとき、割り引いた会社が払う
割り引いた手形が落ちたら、どうなるの?
割り引いた会社が手形の金額で買い戻します。払った割引料は戻りません。自社に支払の停止や倒産の申立てなどが起きると、振出人が健全でも、割り引いた手形のすべてを満期前に買い戻すことになります。
手形割引でいちばん大事なのが、この章です。割引で受け取ったお金は、手形が満期に払われて初めて、自社のお金として確定します。
責任の根拠は2つ:手形法の遡求と、約定書の買戻し
1つめは手形法の遡求(そきゅう:払われなかったとき、前の持ち主にさかのぼって支払いを求めること)です。満期に払われないと、手形の持ち主は、裏書した人に支払いを求められます。※1求められる額は、手形の金額に、満期からの利息と費用を足した額です。※2
2つめは、取引約定書の買戻しです。決まった出来事が起きたら、割り引いた会社が手形の金額で買い戻すと書かれています。※3裁判例でも、買戻しを求める権利は、手形法とは別の約束から生まれるものとされています。※4
買戻しを求められるのは、いつか
京都中央信用金庫の約定書の解説書では、次の場合に買戻しになるとしています。満期を待たずに買戻しになる場合がある点が大事です。
| 起きること | 買い戻す手形 | いつ |
|---|---|---|
| 振出人が満期に払わなかった(不渡り) | その振出人の手形 | 満期の後 |
| 振出人に支払の停止、破産などの申立て、取引停止処分などが起きた | その振出人の手形 | 満期の前でも、すぐに |
| 自社に支払の停止、倒産の手続きの申立て、取引停止処分、預金の差押えなどが起きた | 割り引いた手形のすべて | 通知がなくても、すぐに |
| 自社に返済の遅れなど、債権を守る必要がある事情が起きた | 割り引いた手形のすべて | 金融機関から書面で通知されたとき |
自社の側に問題が起きると、振出人が健全でも、割り引いた手形をまとめて買い戻すことになります。※5割り引いている手形が多い会社ほど、一度に大きな額を求められます。
計算例:300万円を割り引いた後、不渡りになったら
先の例で、満期に手形が落ちなかったとします。自社は60日前に2,985,205円を受け取っていて、今度は300万円を払って手形を買い戻します。
払った割引料14,795円は戻らず、300万円の代金は、自社が振出人から取り立て直すことになります。買戻しの代金は、金融機関が自社の預金と相殺して回収することもできます。※6
預金が前触れなく減ることもあるので、資金繰り表には「落ちなかったら300万円出ていく」と見込んでおきます。満期の前に買い戻すとき、残りの日数分の割引料が戻るかは、金融機関との取り決めによります。※7
割り引いた手形は、台帳で満期まで見張る
割り引いた手形は手元から消えるので、満期を忘れがちです。次のような台帳を1枚作り、満期が過ぎて落ちたことを確かめた行から消していきます。
| 振出人 | 手形の金額 | 満期 | 割り引いた日 | 割引料 | 状態 |
|---|---|---|---|---|---|
| A社 | 300万円 | 割引の60日後 | 割引の日 | 14,795円 | 満期待ち |
台帳の「満期待ち」の合計が、今の買戻しの責任の大きさです。この額が手元の預金を大きく超えているなら、新しい割引は控えめにします。
買い戻した後の請求と期限
買い戻した手形は、自社の手元に戻ります。振出人への請求権は、満期から3年で時効になります。※8
自社より前に裏書した人がいれば、その人にも請求できます。ただし、手形を受け戻した日から6か月で時効になるので、急ぎます。※9回収の手順は手形の不渡りとは(受け取った側の対応)にまとめています。
この章の根拠(9件)
- 手形法43条・77条1項4号
- 手形法48条1項・77条1項4号
- 京都中央信用金庫「信用金庫取引約定書の解説書」第6条
- 大阪高裁昭和38年4月11日判決
- 京都中央信用金庫「信用金庫取引約定書の解説書」第5条・第6条
- 京都中央信用金庫「信用金庫取引約定書の解説書」第7条1項
- 京都中央信用金庫「信用金庫取引約定書の解説書」第3条1項
- 手形法70条1項・78条1項
- 手形法70条3項・77条1項8号
ファクタリングとの違い:売るものも、後に残る責任も違う
手形割引とファクタリングって、何が違うの?
売るものと、後に残る責任です。手形割引は落ちたら自社が買い戻しますが、償還請求権のないファクタリングなら払いません。費用も、割引率は1年あたり、手数料は1回あたりの率で、物差しが違います。
ファクタリングは、売掛金をファクタリング会社に売って、期日の前に現金にする取引です。金融庁は、法的には債権の売買(債権譲渡)契約だと説明しています。※1手形割引と似ていますが、次の点が違います。
| 比べる点 | 手形割引 | ファクタリング |
|---|---|---|
| 売るもの | 受け取った手形 | 請求書の売掛金(手形で受け取る前のもの) |
| 相手 | 銀行・信用金庫など | ファクタリング会社 |
| 費用の示し方 | 割引率(1年あたり)×日数 | 手数料(1回あたりの率) |
| 落ちなかったとき | 割り引いた会社が手形の金額で買い戻す | 償還請求権なしの契約なら、売った会社は払わない |
| 審査で見る相手 | 振出人と、割り引く会社 | 主に売掛先 |
| 先に要るもの | 金融機関との取引約定書 | 請求書・通帳など(会社ごとに違う) |
| 法律の扱い | 貸付けの一つに数えられる | 債権の売買。買い戻す約束があると貸付けとされるおそれ |
いちばん大きな違いは、落ちなかったときの責任です。手形割引は自社に責任が残り、償還請求権(売掛先が払わなかったときに、利用者が買い戻す義務)のないファクタリングは残りません。
手形割引受け取った手形を売る
- 相手
- 銀行・信用金庫など
- 費用
- 割引率(年)×日数
- 落ちなかったら
- 手形の金額で買い戻す
- 審査で見る相手
- 振出人と自社
- 先に要るもの
- 取引約定書
ファクタリング手形になる前の売掛金を売る
- 相手
- ファクタリング会社
- 費用
- 手数料(1回あたりの率)
- 落ちなかったら
- 償還請求権なしなら払わない
- 審査で見る相手
- 主に売掛先
- 先に要るもの
- 請求書・通帳など
取引先に知られるか
手形割引では、割り引いたことを振出人に知らせる手続きはありません。満期には、割り引いた金融機関が取り立てるだけです。ファクタリングは、取引先に知らせない2社間と、取引先の承諾を得る3社間で、知られ方が変わります。
手形割引は、法律では貸付けの一つ
貸金業法は、手形の割引によるお金の受け渡しを貸付けに含めています。銀行のように別の法律で認められた者を除き、業として行うには貸金業の登録が要ります。※2
出資法でも、手形の割引は金銭の貸付けとみなされます。業として行う貸付けで年20%を超える利息の契約をすると、処罰の対象です。※3上限と比べるときは、割引料も名前にかかわらず利息とみなし、天引きした後の手取りを元本として年率を出します。※4
買い戻す約束があるファクタリングは要注意
金融庁は、売った会社が債権を買い戻すことになっている契約など、貸付けと同じ働きをするものは貸金業にあたるおそれがあると注意しています。※1手形割引の買戻しつきの形を、ファクタリングの名前で持ち込む業者がいるからです。
契約書で買戻しの条項を見つける方法は償還請求権とは(買い戻す義務の見分け方)ににまとめています。
帳簿の上では、どちらも債権の譲渡
中小企業の会計に関する指針では、手形の割引も、金融機関などによる金銭債権の買取りも、金銭債権の譲渡にあたるとしています。手形割引では、割引料を手形売却損(指針では手形譲渡損)として計上します。※5
割り引いた手形の残高(受取手形割引高)は、満期まで買戻しの責任が残るので、決算書に注記するのが望ましいとされています。※6仕訳の書き方はファクタリングの仕訳・勘定科目で説明しています。
費用は同じ物差しにそろえて比べる
割引率は1年あたり、ファクタリングの手数料は1回あたりの率です。手数料3%・60日を手取り基準の年率に直すと、3÷97÷60×365=約19%です。逆に、年3%・60日の割引と同じ費用になる手数料は、約0.49%です。
300万円・60日で比べると、年3%の割引は14,795円、手数料3%のファクタリングは9万円です。償還請求権のないファクタリングは、売掛先が払わないときの損を会社側が持つので、そのぶんも値段に入っていると考えられます。
式の考え方は手数料の計算と実質年率で説明しています。手取りと年率は手取りと実質年率のシミュレーターで計算できます。
この章の根拠(6件)
- 金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」
- 貸金業法2条1項・3条1項
- 出資法5条2項・7条
- 出資法5条の4第2項・4項
- 中小企業の会計に関する指針14項
- 中小企業の会計に関する指針15項(4)
数字で見る手形割引の今:日銀の統計と、図鑑のデータ
今でも手形割引って、よく使われてるの?
国内銀行の割引手形の残高は、1994年3月末の19兆6,055億円から2026年8月末の3,314億円へ、約59分の1に減りました。紙の手形の交換も2027年3月31日で終わります。
国内銀行の割引手形は、30年余りで約59分の1に
日本銀行の統計では、国内銀行(銀行勘定)の割引手形の残高は、1994年3月末に19兆6,055億円ありました。2026年8月末は3,314億円で、約59分の1です。※1
| 月末 | 割引手形の残高 | 貸出金に占める割合 |
|---|---|---|
| 1994年3月 | 19兆6,055億円 | 4.11% |
| 2000年3月 | 10兆6,900億円 | 2.31% |
| 2005年3月 | 5兆1,607億円 | 1.28% |
| 2010年3月 | 2兆3,440億円 | 0.55% |
| 2015年3月 | 1兆8,458億円 | 0.40% |
| 2020年3月 | 1兆1,685億円 | 0.22% |
| 2025年3月 | 5,353億円 | 0.08% |
| 2026年8月 | 3,314億円 | 0.05% |
この間に貸出金全体は増えたので、割引手形の割合は4.11%から0.05%まで下がりました。2025年3月末からの1年5か月でも、残高は約6割(61.9%)に減っています。2026年8月末の3,314億円のうち、商業手形は2,907億円(87.7%)でした。
過去の月末いちばん新しい月末(2026年8月)
減った分は、企業が手形をやめて振込やでんさいに替えた流れと重なります。手形割引を受け付ける窓口が細っていく前提で、資金繰りを組み直す時期に来ています。
2027年3月31日で、紙の手形の交換が終わる
全国銀行協会は、電子交換所での手形・小切手の交換を2027年3月31日で終えると決めました。4月1日からすぐに使えなくなるわけではありませんが、決済は金融機関どうしの郵送などになり、扱うかは各金融機関の判断です。※2
満期が2027年4月以降の手形は、割り引いてもらえるかを、まず取引先の金融機関に聞きます。手元の手形の片づけ方は手形廃止はいつ?(受注側・発注側の切替え手順)で説明しています。
図鑑のデータ:ファクタリングは売掛金の段階で使う
図鑑に載せている197サービス(2026年10月16日時点)のうち、2社間(取引先に知らせない形)で使えると書くのは146、個人事業主が使えると書くのは117でした。入金までの最短を24時間以内と書くのは152サービスです。
一方、受け取った手形そのものを必要書類に挙げるのは1サービスだけです。手形で払われる取引では、手形を受け取る前の売掛金の段階で、ファクタリングを考えるのが現実的です。
この章の根拠(2件)
- 日本銀行「民間金融機関の資産・負債」
- 全国銀行協会(2026年6月18日)
手形割引とファクタリング、どちらを使うか:4つの問いで決める
手形割引とファクタリング、どっちを使えばいい?
受け取った手形か、満期は2027年3月31日までか、約定書があり振出人に不安はないか、買い戻すお金を出せるか、の4つで決めます。どこかで「いいえ」なら、ほかの方法を比べます。
手元にあるものと、満期の日付、金融機関との取引、買い戻す力の4つで、使える方法はほぼ決まります。次の問いを上から順にたどります。
- 手元にあるのは、もう受け取った手形か?はい → 次の問いへいいえ(まだ売掛金) → ファクタリングや支払日の前倒しの相談を比べる
- 手形の満期は2027年3月31日までか?はい → 次の問いへいいえ → 割引より先に、振込での払い直しを相談する
- 取引銀行と約定書を結んでいて、振出人の信用に不安はないか?はい → 手形割引を申し込む。費用は低く収まりやすいいいえ → 次の問いへ
- 落ちたときに、手形の金額を買い戻すお金を用意できるか?はい → ほかの金融機関にも割引を相談するいいえ → 割引は避け、満期まで待つか借入れでつなぐ
手形割引が向いている場面
受け取った手形の満期が2027年3月31日までで、振出人に不安がなく、取引銀行と約定書を結んでいる場合です。費用は年あたりの率に日数を掛けた額なので、満期が近いほど安く済みます。
割引で入るお金は、満期に落ちるまで仮のものです。買い戻す300万円を出せる余力があるかを、割り引く前に確かめます。
計算で比べる:200万円を45日早く使いたい場合
満期まで45日の手形200万円を、割引率年5%で割り引くと、割引料は200万円×5%×45÷365=12,329円です。同じ200万円の売掛金を、手数料5%・45日のファクタリングで売ると、手数料は10万円で、実質年率は約43%になります。
差は約8.8万円です。この差を払ってでもファクタリングを選ぶ理由は、割引を断られた、買戻しの責任を負えない、手形になる前に現金が要る、のどれかが主です。
ファクタリングが向いている場面
まだ手形を受け取っておらず、請求書の売掛金の段階にある場合です。金融機関との取引がない、決算が赤字で割引を断られた、という会社でも使える余地があります。
費用は割引より高くなりやすいので、使うのは「入金を待てない月だけ」にとどめます。償還請求権のない契約を選べば、売掛先が払わなかったときの責任を自社に残しません。
手形割引を使わない方がよい場合と、ほかの方法
手形割引を使わないほうがいいのは、どんなとき?
振出人の信用に不安がある、毎月の運転資金がいつも足りない、取適法の対象の取引で手形を渡された、満期が2027年4月以降、といった場合です。振込への切替えや借入れなどを先に考えます。
手形割引は、使える会社にとっては費用の低い方法です。それでも、次の場合は割引の前に別の手を考えます。
1. 振出人の信用に不安があるとき
振出人が支払いを遅らせている、手形の書き換えを頼まれた、といった兆しがあるときです。割引しても、落ちれば買い戻すので、損を先に延ばすだけになります。早めに振出人と話し、振込での支払いや担保を相談します。
2. 毎月の運転資金がいつも足りないとき
毎月の手形を割り引いて給与や仕入れを払う形は、割引料が毎月かかり続けます。そのうえ、どこか1枚が落ちれば、資金繰りが一気に崩れます。足りない状態が続くなら、日本政策金融公庫や、信用保証協会の保証つきの借入れを相談します。
3. 取適法の対象の取引で、手形を渡されたとき
2026年1月からの取適法(中小受託取引適正化法)では、対象の取引の代金を手形で払うことが、支払いの遅れと同じ違反になります。※1割引料を自社で払って割り引く前に、発注者に振込での支払いを求めます。
4. 満期が2027年4月以降のとき
交換の仕組みが終わった後の手形は、取り立ててもらえるかも金融機関しだいです。割引を探すより、振出人に手形を返して振込で払い直してもらう相談が先です。
手形割引のほかに取れる方法
| 方法 | 向いている場面 | 気をつけること |
|---|---|---|
| 手形のサイトを縮めてもらう・振込に替えてもらう | 取引が続き、話し合える相手 | 次の取引から効く。手元の手形には効かない |
| でんさいの割引・分割 | 取引先がでんさいで払える | 割引の可否と率は金融機関が決める |
| 金融機関からの短い借入れ | 決算に大きな問題がない | 審査に日数がかかる。早めに相談する |
| 売掛金のファクタリング | 手形になる前の売掛金がある | 手数料を年率に直して比べる |
| 満期まで待つ | 手元のお金で満期まで回せる | 費用はかからない。落ちたときに備えて回収の準備だけしておく |
どの方法でも、まず「いつ、いくら足りないか」を資金繰り表で出します。足りない額と日数がわかれば、割引か、借入れか、待つかを費用の額で比べられます。
この章の根拠(1件)
- 取適法5条1項2号
よくある失敗と注意点
手形割引で、やってしまいがちな失敗は?
割引で入ったお金を確定した売上と思い込む、割引率と手数料率を取り違える、などです。300万円・60日なら年3%の割引は14,795円、手数料3%は9万円。金額か年率にそろえて比べます。
1. 割引で入ったお金を、確定した売上と思い込む
割引で入ったお金は、満期に落ちるまで買戻しの責任がついています。手形が落ちないと、300万円の手形なら300万円を一度に返すことになります。割り引いた手形は台帳に満期を書き、満期の週は預金に余裕を持たせます。
2. 割引率と手数料率を取り違える
「年3%」と「手数料3%」は、同じ3%でも別物です。300万円・60日なら、前者は14,795円、後者は9万円で、6倍ほど違います。見積もりを比べるときは、どちらも金額か年率にそろえます。
3. 金融機関でない「手形割引」の業者に頼む
銀行や信用金庫で断られた後に、手形を割り引くと広告する業者を探す人がいます。業として手形を割り引くには貸金業の登録が要り、年20%を超える割引料は出資法の上限を超えます。申し込む前に、登録番号と、割引料を手取りに対する年率にした値を確かめます。
4. 融通手形に手を出す
取引の裏付けのない手形を互いに切り合い、それを割り引いてお金を作る形です。相手が1回でも払えなくなると、自社も買戻しと自分の手形の決済に同時に追われます。資金繰りに困っても、この形は選びません。
5. 満期の日付と、交換の終わりを見落とす
満期が2027年4月以降の手形は、割引も取立ても受けてもらえないおそれがあります。受け取った日に満期を確かめ、4月以降なら、すぐに振込への切替えを相談します。
6. 割り引いた手形の注記と、残高の管理を忘れる
割り引いた手形は帳簿から消えますが、責任は満期まで残ります。決算書に受取手形割引高を書いておくと、金融機関に説明しやすくなります。残高が大きいときは、取引先ごとに偏りがないかも見ておきます。
出典(10件)公的機関の資料・法令。2026.10.17に確認
- 手形法(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 貸金業法(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 信用金庫取引約定書の解説書(京都中央信用金庫)www.chushin.co.jp
- 大阪高等裁判所 昭和38年4月11日判決(否認権行使事件、裁判所)www.courts.go.jp
- ファクタリングの利用に関する注意喚起(金融庁)www.fsa.go.jp
- 時系列統計データ検索サイト「民間金融機関の資産・負債」国内銀行の資産・負債等(銀行勘定)(日本銀行)www.stat-search.boj.or.jp
- 電子交換所の交換廃止時期の決定および手形・小切手交換廃止時期の明確化について(全国銀行協会、2026年6月18日)www.zenginkyo.or.jp
- 中小企業の会計に関する指針(日本商工会議所)archive.jcci.or.jp
FAQ
よくある質問
手形割引とは何ですか?
受け取った手形を満期の前に銀行や信用金庫に渡し、満期までの日数分の割引料を引いた額を受け取ることです。手形は売買の形で金融機関に移ります。ただし満期に手形が落ちなければ、割り引いた会社が手形の金額で買い戻します。満期に払われるまで責任は残ります。
手形割引の割引料はどう計算しますか?
割引料は「手形の金額×割引率(年)×満期までの日数÷365」で出します。300万円の手形を満期の60日前に年3%で割り引くと、割引料は14,795円、手取りは2,985,205円です。日数の数え方や端数の扱い、取立ての手数料の有無は金融機関ごとに違うので、申し込む前に確かめます。
手形割引とファクタリングの違いは何ですか?
手形割引は受け取った手形を金融機関に売り、ファクタリングは手形になる前の売掛金をファクタリング会社に売ります。手形割引は落ちなかったときに自社が買い戻しますが、償還請求権のないファクタリングなら払いません。費用は割引が年あたりの率、ファクタリングが1回あたりの率です。
割り引いた手形が不渡りになったらどうなりますか?
割り引いた会社が、手形の金額で金融機関から買い戻します。払った割引料は戻りません。振出人の倒産や自社の取引停止処分などが起きたときは、満期の前でも買戻しを求められます。買戻しの代金は、金融機関が預金と相殺して回収することもあります。その後の振出人への請求は、自社で進めます。
手形割引は銀行以外でもできますか?
業として手形を割り引くには貸金業の登録が要ります。手形の割引は法律上、貸付けの一つに数えられるからです。業として行う貸付けで年20%を超える利息の契約は、出資法で処罰の対象になります。銀行以外に頼むときは、登録番号と、割引料を手取りに対する年率にした値を確かめます。
2027年4月以降も手形割引はできますか?
紙の手形の交換は2027年3月31日で終わります。4月1日からすぐに手形が使えなくなるわけではありませんが、決済は金融機関どうしの郵送などになり、扱うかは各金融機関の判断です。満期が4月以降の手形は、割引を探すより先に、振込での払い直しを振出人に相談します。
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