契約更新 2026.10.15
注文書ファクタリングとは。請求書の前に資金化する仕組みと注意点
注文書ファクタリングは、仕事を受けた段階の注文書(発注書)をもとに、まだ請求していない将来の代金を買い取ってもらう方法です。法律上は発生前の債権も譲渡できますが、注文の取り消しや未完成で代金が生まれないリスクがあるため、通常のファクタリングより条件が厳しくなりやすい取引です。前払いの交渉や融資と比べてから決めましょう。
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- 7章見出し
- 5件公的な出典
フファクタリング図鑑編集部(執筆)・公開 2026.10.15

注文書ファクタリングの仕組み
ふつうのファクタリングは、納品や作業が終わり、請求書を出したあとの売掛金を売る取引です。これに対して注文書ファクタリングは、仕事を受けた段階で受け取る注文書(発注書)をもとに、まだ請求していない「これから受け取る代金」を売る取引です。
材料費や外注費、人件費を先に払わなければならない仕事では、作業の途中でお金が足りなくなることがあります。請求書の段階まで待てないときに、注文書の段階で資金化しようというのが、この方法の考え方です。
| 比べる点 | 請求書のファクタリング | 注文書ファクタリング |
|---|---|---|
| 売るもの | すでに発生した売掛金 | これから発生する代金(将来の債権) |
| 資金化できる時期 | 納品・請求のあと | 受注した直後から |
| 代金が生まれないリスク | 小さい(仕事は終わっている) | 大きい(仕事が終わらない、取り消される) |
| 主な書類 | 請求書、取引の実績 | 注文書・注文請書、契約書、工程や見積もりの資料 |
| 入金までの期間 | 比較的短い | 作業期間の分だけ長くなりやすい |
使われることが多いのは、受注から入金までの期間が長く、途中で大きな支払いが先に出ていく仕事です。たとえば、工事の材料費や職人への支払いが先に必要な建設業、外注費が先に出るシステム開発、材料を仕入れてから加工する製造の受託などです。反対に、受注から入金までが短い仕事なら、請求書の段階まで待つ方が有利なことが多いでしょう。
注文書ファクタリングは、まだ仕事が終わっていない分、ファクタリング会社にとってのリスクが大きくなります。このため、扱う会社が限られ、条件も厳しくなりやすい取引です。
法律上は「将来の債権の譲渡」
まだ発生していない代金を売ることができるのか、と疑問に思うかもしれません。法律は、これを認めています。
- 発生前でも売れる:債権の譲渡は、その時点で債権が実際に発生していなくてもできる。※1
- 発生したら買い手のもの:譲渡のときに発生していなかった債権は、発生したときに買った側が当然に取得する。※2
- 通知か承諾が必要:まだ発生していない債権の譲渡も、売掛先への通知か売掛先の承諾がなければ、売掛先やほかの第三者に主張できない。※3
注意したいのは、「譲渡制限特約」です。これは、取引先との契約で「代金を受け取る権利を他人に譲ってはいけない」と決めておく条項です。この特約があっても、譲渡そのものは有効です。※4ただし、特約を知っていた(または重い不注意で知らなかった)買い手に対しては、売掛先は支払いを拒んだり、元の取引先(自社)に払ったことを理由にできます。※5
さらに、将来の債権を譲ったあと、通知や承諾をする前に譲渡制限特約が結ばれた場合は、買い手は特約を知っていたものとみなされます。※6注文書の段階で売るときは、その後に交わす正式な契約書に譲渡制限の条項が入らないかも確かめておく必要があります。
この章の根拠(6件)
- 民法466条の6第1項
- 民法466条の6第2項
- 民法467条
- 民法466条2項
- 民法466条3項
- 民法466条の6第3項
通常より慎重に見られる理由
注文書ファクタリングでは、次のようなことが起きると、売ったはずの代金が生まれなかったり、少なくなったりします。
- 注文が取り消される:請負(仕事を完成させて報酬を受け取る契約)では、仕事が完成する前なら、注文者は損害を賠償していつでも契約を解除できます。※1
- 仕事が終わらない:人手不足、資材の遅れ、自社の資金切れなどで完成できなければ、代金は発生しません。
- 金額が変わる:仕様の変更、追加・減額、やり直しで、請求額が注文書と違ってくることがあります。
- 支払いが遅れる:検収(取引先が仕事の中身を確かめること)が遅れると、入金日も後ろにずれます。
ファクタリング会社はこうしたリスクを見込むため、請求書の段階で売るよりも、買取の割合が低くなったり、手数料が高くなったりしやすいと考えておきましょう。
この章の根拠(1件)
- 民法641条
使う前に確かめること
注文書の中身
金額、納期、支払期日、支払い方法、検収の方法が書かれているかを確かめます。中小受託取引適正化法(取適法。2026年1月に下請法から名前が変わった法律)の対象になる取引では、委託する側は発注のときに、発注の内容を書面または電子メールなどで直ちに示す義務があります。建設工事の請負契約も、工事の内容、請負代金の額、前払いや出来高払いの定め、完成後の支払いの時期と方法などを書面にして交わすことになっています。※1
契約で、代金が生まれなかったときの扱い
注文が取り消されたり、仕事が完成しなかったりしたときに、自社が何を負担するのかを契約書で確かめます。「買い戻す」「全額を返還する」「違約金を払う」といった条項があれば、実質的には借入に近い取引です。金融庁は、契約書の名目が債権譲渡でも、経済的に貸付けと同じ働きをするものは貸金業の規制の対象になる可能性があると注意を呼びかけています。確かめ方は償還請求権とはにまとめています。
取引先に知らせるかどうか
取引先の承諾を得て進める3社間の形なら、譲渡制限特約や二重譲渡の心配が減り、条件もよくなりやすいと言えます。一方、取引先に知らせない2社間の形は、取引先との関係を気にせずに済む反面、ファクタリング会社のリスクが大きくなります。違いは2社間と3社間の違いを参考にしてください。
入金までの日数と実質年率
注文書の段階で売ると、入金までの日数が長くなります。実質年率は「手数料額 ÷ 手取り額 ÷ 入金までの日数 × 365」で計算します。手数料10%で入金まで90日なら、10 ÷ 90 ÷ 90 × 365 で約45%です。日数が長いと年率は下がって見えますが、手数料の額そのものは変わりません。金額で比べることも忘れないでください。
この章の根拠(1件)
- 建設業法19条
申込みから入金・精算までの流れ
注文書ファクタリングは、売ったあとも自社が仕事を進め、完成させて初めて代金が入ります。流れの例は次のとおりです。会社によって順番や書類は違います。
- 受注:取引先から注文書を受け取り、注文請書(受注したことを示す書面)を返す。
- 申込み・書類の提出:注文書、注文請書、取引先との基本契約書、見積書、工程表、過去の取引の入金記録などを出す。
- 審査:取引先の信用に加え、自社がその仕事を完成できるかどうか(実績、人員、資材の手配)も見られる。
- 契約・入金:債権譲渡の契約を結び、手数料を差し引いた代金を受け取る。債権譲渡登記を求められることもある。
- 作業・納品:受け取ったお金で材料費や外注費を払い、仕事を進める。
- 請求・回収・精算:完成後に取引先へ請求し、代金が入ったらファクタリング会社へ渡す(3社間なら取引先が直接払う)。
注意したいのは、手順4から手順6までの間が長いことです。その間に別の資金不足が起きると、同じ仕事の代金をもとに二重に資金化したくなるかもしれません。同じ債権を二つの会社に売ることは重大な契約違反で、取引先や両方の会社を巻き込むトラブルになります。受け取ったお金の使いみちは、申込みの前に決めておきましょう。
また、作業の途中で金額の変更や工期の延長が決まったら、ファクタリング会社にすぐ伝えます。黙っていると、契約違反として残りの代金の支払いを止められたり、違約金を求められたりする場合があります。
使わない方がよい場合
- 完成できるか不安がある仕事:人手や資材の見通しが立っていない仕事を担保に資金化すると、完成できなかったときに返済だけが残るおそれがあります。
- 取引先との契約に譲渡制限の条項がある:後で取引先とのトラブルになりやすく、条件も悪くなりがちです。
- 「買戻し」や「全額返還」の条項がある:実質的に高い利息の借入です。融資を先に検討しましょう。
- 毎回の受注で使うことが前提になっている:手数料が利益を削り続けます。資金繰りの仕組みそのものを見直す時期です。
注文書ファクタリング以外の方法
- 前払い・着手金・出来高払いの交渉:受注のときに、代金の一部を先に払ってもらえないか相談します。元請負人が発注者から前払金を受け取ったときは、下請負人にも着手に必要な費用を前払金として払うよう適切に配慮しなければならない、とされています。※1
- 支払期日の確認:取適法の対象となる取引では、委託する側は、物を受け取った日(役務の場合は提供した日)から60日以内のできる限り短い期間で支払期日を定める義務があります。2026年1月からは手形での支払いも禁止されました。支払いが長すぎる場合は、まず条件そのものを相談しましょう。
- 融資:受注の見込みがある運転資金なら、銀行や日本政策金融公庫の融資が使えることがあります。審査に時間がかかるため、受注が決まった時点で相談を始めるのが現実的です。
- 仕事が終わってからのファクタリング:完成・請求まで待てるなら、請求書の段階で売る方がリスクが小さく、条件もよくなりやすい方法です。
どの方法が合うかは、必要な金額と日数で変わります。資金調達診断で整理してから選ぶと、無理のない手段を選びやすくなります。建設業の資金繰りについては建設業向けのページも参考にしてください。
この章の根拠(1件)
- 建設業法24条の3第3項
出典(5件)公的機関の資料・法令。2026.10.15に確認
- 民法(第466条・第466条の6・第467条・第641条)(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 建設業法(第19条・第24条の3)(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 委託事業者の義務(公正取引委員会)www.jftc.go.jp
- 【2026年1月1日施行】受注者を守る法!手形払い禁止など『取適法』がもたらす変化(中小企業庁 ミラサポplus)mirasapo-plus.go.jp
- ファクタリングの利用に関する注意喚起(金融庁)www.fsa.go.jp
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