契約更新 2026.10.17
手形の裏書とは?書き方と記入例、裏書譲渡の責任と受け取る前の8つの確認点
手形の裏書とは、手形の裏面に署名して代金を受け取る権利を次の人に渡すことです。渡した後も、振出人が払わなければ代わりに払う責任が残ります。書き方の記入例と、不渡りのときの期限・金額、受け取る前の確認点を解説します。
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フファクタリング図鑑編集部(執筆)・公開 2026.10.17

取引先から、ほかの会社の名前が裏に並んだ手形を受け取った。あるいは、手元の手形を自社の仕入先への支払いに回したい。そんなときに知っておきたいのが「裏書」です。
この記事では、裏書の書き方を記入例で示し、裏書したあとに負う責任を、不渡りになった場合の日付と金額で確かめます。受け取る前に見る8つの点もまとめました。
この記事を7枚で
1 / 7結論:裏書とは、手形の裏に署名して権利を渡すこと。渡したあとも支払いの責任は残る
手形の裏書って、要するに何をすることなの?
手形の裏面に署名して、代金を受け取る権利を次の人に渡すことです。ただし渡した後も、振出人が満期に払わなければ、後の持ち主から代わりに払うよう求められます。これを遡求といいます。
手形の裏書とは、手形の裏面に自社の名前を書いて署名し、次の持ち主に手形を渡すことです。これで手形の代金を受け取る権利がまるごと移ります。※1
大事なのは、渡したあとも責任が残る点です。振出人(手形を切った会社)が満期に払わなければ、裏書した会社は、後の持ち主から代わりに払うよう求められます。これを遡求(そきゅう)といいます。※2
受け取る側から見ると、裏書が多い手形ほど、払ってくれる可能性のある相手が増えます。その分、裏書が正しくつながっているかを確かめる手間も増えます。
この記事の流れは次のとおりです。
- 裏書で何が起きるか(権利が移る・責任を負う・持ち主と推定される)
- 裏書の書き方と記入例、書くときの決まり
- 裏書の種類(白地式・取立委任・無担保など)と使い分け
- 不渡りになったときの遡求の流れ
- 計算例:300万円の手形が落ちなかったら、いつまでに、いくら
- 受け取る前に確かめる8つの点
- 裏書して支払いに回すときの注意(取適法・帳簿)
- 裏書を使わない方がよい場合と、ほかの方法・よくある失敗
手形が渡っていく向き
支払いに回したあと、満期に落ちなかったら
この章の根拠(2件)
- 手形法14条1項・77条1項1号
- 手形法15条1項・43条
裏書で起きる3つのこと:権利が移る・責任を負う・持ち主と推定される
裏書すると、法律上は何が起きるの?
権利がまるごと移る、支払いを保証する、裏書がつながっていれば持つ人が正しい持ち主と推定される、の3つです。いちばん重いのは保証の責任で、満期に無事に落ちるまで続きます。
裏書には、法律上3つの働きがあります。名前は難しく見えますが、中身は「渡す」「保証する」「正しい持ち主だと見てもらえる」の3つです。
| 働き | 中身 | 実務での意味 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 権利が移る | 手形から生じる権利がすべて次の持ち主に移る | 受け取った会社が、満期に自分の名前で取立てを頼める | 手形法14条1項 |
| 支払いを保証する | 反対の書き込みがない限り、裏書した人は支払いを担保する | 振出人が払わないと、後の持ち主から請求される | 手形法15条1項 |
| 持ち主と推定される | 裏書がつながっていれば、持っている人を正しい持ち主とみなす | 銀行や振出人は、つながりを見て払えばよい | 手形法16条1項 |
表の2つめが、裏書でいちばん重い点です。費用はかからない代わりに、満期に無事に落ちるまで保証人のような立場が続きます。
前の取引のもめごとは、後の持ち主には持ち出せない
振出人がA社との取引で「納品物に欠陥があったから払わない」ともめていても、そのことを後の持ち主に言うことは原則できません。これを人的抗弁(その相手との事情を理由にした支払いの拒否)の切断といいます。※1
ただし、後の持ち主がそのもめごとを知りながら、振出人を困らせると分かって手形を取ったときは別です。裏書で受け取る側は、取引の経緯を聞いておくと、あとで争いになったときに困りません。
なくした手形でも、正しく受け取った人の権利は守られる
裏書がつながった手形を、事情を知らずに受け取った人は、手形を返さなくてよいとされています。前の持ち主が盗まれた手形でも同じです。※2
この決まりは、受け取る側には安心材料です。一方で、手形をなくした側にとっては、取り戻せないおそれがあるということです。保管の注意は最後の章で説明します。
手形そのものの仕組み(振出人・受取人・銀行の役割、満期と取立て)は、手形とは何かの記事で説明しています。
この章の根拠(2件)
- 手形法17条
- 手形法16条2項
裏書の書き方:記入例と、書くときの5つの決まり
裏面には、どこに何を書けばいいの?
空いているいちばん上の段に、日付・住所・会社名と代表者名を書いて印を押し、被裏書人に渡す相手を書きます。前の段の被裏書人と自社の名前が同じかを確かめましょう。書き間違えたら銀行に聞きます。
手形の裏面には、裏書を書く欄が上から何段か印刷されています。上の段から順に使い、1段に1回の裏書を書きます。
記入例:A社から受け取った手形を、仕入先C社に渡す
あなたの会社(B社)が、第1裏書人のA社から受け取った手形を、仕入先のC社に渡す例です。2段目があなたの書く欄になります。
| 欄 | 1段目(A社が書いた) | 2段目(あなたが書く) |
|---|---|---|
| 日付 | 2026年9月25日 | 2026年10月10日 |
| 裏書人の住所 | A社の本店の住所 | あなたの会社の本店の住所 |
| 裏書人の名前と署名 | A株式会社 代表取締役 甲野一郎(印) | B株式会社 代表取締役 乙川二郎(印) |
| 被裏書人(渡す相手) | B株式会社 殿 | C株式会社 殿 |
表のとおり、1段目の被裏書人と2段目の裏書人が同じ会社になっているのが、正しい形です。ここがずれると、後で説明する「裏書の連続」が切れます。
会社が書くときは、会社名・代表者の肩書・代表者の名前を書き、印を押します。法律上の「署名」には、名前を書いて印を押す形も含まれます。※1
- 書く前表面と前の段を確かめる金額・満期・振出人の署名、前の段の被裏書人が自社か
- 記入空いているいちばん上の段に書く日付・住所・会社名と代表者名を書き、印を押す
- 記入被裏書人に渡す相手の名前を書く空けたままにしない(白地式は避ける)
- 渡す前手形のコピーを取り、台帳に書く番号・金額・満期・渡した相手と日付
- 渡す相手に手形を渡し、受領書をもらう郵送なら書留など、記録が残る方法で
書くときの5つの決まり
- 条件を付けない:「納品が終わったら有効」のような条件を書いても、書かなかったものとして扱われます。※2
- 金額の一部だけを渡さない:300万円のうち100万円だけ、という裏書は無効です。※3
- 書く場所は手形の裏面か、つないだ紙:欄が足りなくなったら、手形につないだ紙(補箋)に書けます。※4
- 日付は書いておく:日付がなくても裏書は有効ですが、満期の後にした裏書かどうかでもめる元になります。※5
- 書き間違えたら、新しく書き直さない:消したり別の段に書き直したりせず、取引銀行に直し方を聞きます。消された裏書は、なかったものとして扱われるためです。※6
補箋は、手形と1枚の紙のようにのり付けし、境目に印を押して使うのが一般的です。使う前に取引銀行に、受け付けてもらえる形かを聞いておくと安心です。
「拒絶証書不要」の文字を確かめる
拒絶証書は、手形が払われなかったことを公証人に証明してもらう書類です。裏書した人は、手形に書いて署名することで、この書類を作らなくてよいことにできます。※7
多くの手形用紙は、裏書の欄にこの文言があらかじめ印刷されています。使う用紙の裏面を見て、各段に入っているかを確かめます。入っていれば、不渡りのときに拒絶証書なしで裏書人に請求できます。
この章の根拠(7件)
- 手形法82条
- 手形法12条1項
- 手形法12条2項
- 手形法13条1項
- 手形法20条2項
- 手形法16条1項
- 手形法46条1項
裏書の種類:白地式・取立委任・無担保など、6つの違いと使い分け
相手の名前を書かない裏書もあるって本当?
白地式です。名前なしで次へ渡せて便利ですが、なくすと拾った人に権利が移るおそれがあります。ほかに取立委任・無担保などもありますが、自社が裏書するときは相手の名前を書いて渡します。
ふだん使う裏書は、渡す相手の名前を書く形です。ほかに、書き方を変えることで働きが変わる裏書が5つあります。
| 種類 | 書き方 | どうなるか | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 記名式(ふつうの裏書) | 被裏書人に相手の名前を書く | 権利が移り、裏書した人は支払いを保証する | 手形法13条1項 |
| 白地式 | 被裏書人を空けたまま、または署名だけ | 受け取った人は名前を書かずにそのまま渡せる。裏面にしか書けない | 手形法13条2項・14条2項 |
| 取立委任裏書 | 「取立のため」などと書く | 権利は移らず、代わりに取り立てる権限だけを渡す | 手形法18条 |
| 質入裏書 | 「担保のため」などと書く | 手形を借入れなどの担保に入れる | 手形法19条 |
| 無担保裏書 | 「無担保」など、保証しない旨を書く | 権利は移るが、裏書した人は支払いを保証しない | 手形法15条1項 |
| 裏書禁止裏書 | 「裏書禁止」などと書く | その後に裏書された相手には、保証の責任を負わない | 手形法15条2項 |
表のうち、中小企業がふだん出会うのは記名式と白地式、それに銀行に取立てを頼むときの取立委任裏書です。無担保裏書は法律では使えますが、受け取る側が嫌うため、取引の現場ではまず受け入れてもらえません。
銀行に取立てを頼むときの裏書
満期が近づいて手形を取引銀行に預けるときも、裏面の空いている段に自社の名前を書いて印を押します。このときの裏書は、銀行に代わりに取り立ててもらうためのもので、権利を銀行に売るわけではありません。
書き方は銀行ごとに案内があるので、それに従います。被裏書人の欄に銀行名を書くか、空けておくかも、窓口で聞いて合わせます。預けた後も手形の持ち主はあなたなので、不渡りになれば手形は手元に戻ってきます。
白地式は便利だが、なくすと危ない
白地式の手形は、名前を書かずに次々と渡せます。そのため、なくしたり盗まれたりすると、拾った人が渡した先で正しい持ち主として扱われるおそれがあります。※1
自社が裏書するときは、被裏書人の欄に相手の名前を書いてから渡します。白地式で受け取った手形は、自社の名前を補ってから保管すると、なくしたときの危険を小さくできます。※2
「指図禁止」と書かれた手形は、裏書では渡せない
手形の表面に「指図禁止」と書かれていると、裏書では渡せません。渡すには、ふつうの債権と同じ手続き(債権譲渡)が必要になり、裏書のような保証の働きもありません。※3
債権譲渡の決まりと、相手に知らせる方法は債権譲渡とはの記事で説明しています。
満期を過ぎてからの裏書は、効き目が弱くなる
満期の後でも、支払いを断られたことが確定する前なら、裏書はふつうと同じに効きます。支払拒絶証書を作った後や、その作成の期限を過ぎた後の裏書は、債権譲渡と同じ効き目しかありません。※4
期限後裏書(きげんごうらがき)で受け取ると、前の取引のもめごとを振出人から持ち出されることがあります。満期を過ぎた手形を、支払いの代わりに受け取るのは避けます。
この章の根拠(4件)
- 手形法14条2項・16条
- 手形法14条2項1号
- 手形法11条2項
- 手形法20条1項
裏書譲渡の責任:不渡りになったら、誰が、誰に、いつまでに払うか
手形が落ちたら、誰が誰に払うことになるの?
最後の持ち主は、振出人にも裏書したすべての会社にも請求できます。請求できる期限は、振出人には3年、裏書人には1年。払った裏書人が前の人に請求し直す期限は6か月しかありません。
手形が満期に落ちなかったとき、最後の持ち主は、振出人だけでなく、裏書したすべての会社に支払いを求められます。順番は関係なく、1社にも全員にも請求できます。※1
請求された裏書人は、払った後で手形を受け戻し、自分より前の裏書人や振出人に請求し直せます。こうして責任は、最後は振出人までさかのぼります。※2
遡求の流れ:4つの手順
- 期限内に支払いを求める:持ち主は、満期日とそれに次ぐ2取引日のうちに取立てを頼みます。この期限を過ぎると、裏書人に請求できなくなります。※3
- 不渡りを前の人に知らせる:持ち主は呈示の日に次ぐ4取引日のうちに、自分に渡した裏書人へ知らせます。知らせを受けた裏書人は、次ぐ2取引日のうちに、さらに前の裏書人へ知らせます。※4
- 請求する:手形の金額に、満期からの法定利率(今は年3%)の利息と、通知などの費用を加えて求めます。※5
- 払った人が、前の人に請求し直す:払った総額に、払った日からの利息と費用を加えて求めます。※6
知らせるのが期限に遅れても、請求する権利は消えません。ただし、遅れたせいで前の人に損が出たときは、手形の金額までの範囲で償う責任を負います。※7
知らせ方に決まりはなく、手形を返すだけでもかまいません。期限内に知らせたことは知らせた側が示す必要があるので、書留など記録が残る方法で送ります。※8
請求できる期限(時効)は、相手によって違う
| 誰が | 誰に | 期限 | いつから数えるか |
|---|---|---|---|
| 最後の持ち主 | 振出人 | 3年 | 満期の日 |
| 最後の持ち主 | 裏書人 | 1年 | 満期の日(拒絶証書不要の手形のとき) |
| 払った裏書人 | 前の裏書人・振出人 | 6か月 | 受け戻した日、または訴えられた日 |
※根拠は手形法70条・77条1項8号・78条1項。振出人への請求の期限が長く、裏書人への期限は短くなっています。※9
裏書人に請求し直す期限は6か月しかありません。払ったらすぐに前の裏書人へ連絡し、話がまとまらなければ早めに弁護士に相談します。
この章の根拠(9件)
- 手形法47条1項・2項
- 手形法47条3項・49条
- 手形法38条1項・53条1項3号
- 手形法45条1項
- 手形法48条1項・民法404条
- 手形法49条
- 手形法45条6項
- 手形法45条4項・5項
- 手形法70条
計算例:300万円の手形が落ちなかったら、いつまでに、いくら払うか
300万円の手形が落ちたら、いくら払うことになるの?
満期から31日後に払うなら、年3%の利息7,644円を足した300万7,644円と、通知などの費用です。知らせを受けたら2取引日のうちに前の裏書人へ知らせるので、その日のうちに連絡するのが確実です。
日付と金額を入れて、遡求の流れを追ってみます。計算に使った前提は次のとおりです。
- 金額300万円の約束手形。振出人はX社、受取人(第1裏書人)はA社
- あなたの会社はA社から裏書で受け取り、仕入先C社への支払いに裏書して回した
- 満期は2026年11月20日(金)。C社が取立てを頼んだが、資金不足で不渡りになった
- 裏書の欄には「拒絶証書不要」の文言がある
知らせの期限:C社からは11月27日、あなたからA社へは2取引日
11月23日(月)は勤労感謝の日なので、取引日に数えません。C社が満期日に呈示したとすると、あなたへ知らせる期限は4取引日目の11月27日(金)です。
あなたが11月24日(火)に知らせを受けたら、A社へ知らせる期限は2取引日目の11月26日(木)です。期限はとても短いので、知らせを受けたその日のうちに、前の裏書人へ連絡するのが確実です。
払う額:C社に払うのは300万7,644円と費用
あなたが満期から31日後の12月21日(月)にC社へ払うとします。利息は、300万円×3%×31÷365=7,644円です。手形の金額と合わせて300万7,644円に、C社が通知などにかけた費用が加わります。
利息は300万円で1日あたり約247円です。金額そのものより、300万円がまるごと出ていく方が資金繰りには重く響きます。
取り戻す額:A社には払った総額と、その日からの利息
あなたは手形を受け戻し、A社(またはX社)に請求し直します。A社が30日後の2027年1月20日に払うなら、利息は300万7,644円×3%×30÷365=7,416円です。
受け取る額は合計301万5,060円と、あなたが使った費用です。ただしA社にも払う力がなければ、取り戻すまでに時間がかかります。
| 日付 | 起きること | 金額・期限 |
|---|---|---|
| 2026年11月20日(金) | 満期。C社が取立てを頼み、不渡りになる | 呈示の期限は11月25日(水) |
| 11月24日(火) | C社からあなたに知らせが届く | C社の期限は11月27日(金) |
| 11月26日(木)まで | あなたがA社に知らせる | 受けた日に次ぐ2取引日 |
| 12月21日(月) | あなたがC社に払い、手形を受け戻す | 300万7,644円+費用 |
| 2027年1月20日(水) | A社があなたに払う | 301万5,060円+費用 |
| 2027年6月21日 | あなたがA社・X社に請求できる期限 | 受け戻しから6か月 |
| 2027年11月20日 | C社があなた・A社に請求できる期限 | 満期から1年 |
| 2029年11月20日 | 持ち主が振出人X社に請求できる期限 | 満期から3年 |
表を見ると、裏書人どうしの期限は満期から1年以内に集まっています。いちばん長い3年は、振出人に対するものだけです。
- C社→あなたへの知らせ11月27日まで(4取引日)
- あなた→A社への知らせ受けた日に次ぐ2取引日
- あなた→A社・X社への請求2027年6月21日まで(受け戻しから6か月)
- C社→裏書人への請求2027年11月20日まで(1年)
- 持ち主→振出人への請求2029年11月20日まで(3年)
満期1年2年3年
裏書人が多いほど、請求できる相手は増える
同じ例で、誰が誰に請求できるかを並べると次のようになります。後ろにいる人ほど、請求できる相手が多くなります。
| 立場 | 請求できる相手 | 請求される相手 |
|---|---|---|
| C社(最後の持ち主) | あなた・A社・X社 | なし |
| あなた(第2裏書人) | A社・X社(受け戻した後) | C社 |
| A社(第1裏書人) | X社(受け戻した後) | C社・あなた |
| X社(振出人) | なし | 全員 |
受け取る側にとって、裏書人の多い手形は、払える相手が多い手形です。ただし、その全員に払う力があるとは限りません。裏書人の名前を見て、知っている会社か、取引を続けている会社かを確かめておくと、いざというときの見通しが立ちます。
計算に使った日付と利息は、手形法の期限と、2026年4月からも年3%のままの法定利率で出しました。※1
この章の根拠(1件)
- 法務省「令和8年4月1日以降の法定利率について」
裏書の手形を受け取る前に確かめる8つの点
裏書された手形を受け取る前に、どこを見ればいい?
表面の受取人から最後の被裏書人まで、名前が途切れずにつながっているかです。「無担保」「取立のため」などの書き込み、訂正の跡、満期が2027年3月31日より後でないかも確かめます。
裏書で受け取る手形は、振出人のほかに裏書人の信用も付いてきます。一方で、どこかの段が正しく書かれていないと、その分の保証が効かなくなります。受け取る前に、次の8つを見ます。
- 裏書がつながっているか表面の受取人=1段目の裏書人、各段の被裏書人=次の段の裏書人
- 最後の被裏書人が自社か会社名の書き間違い・旧社名になっていないか
- 満期が支払いを受けられる日か2027年3月31日より後の満期は、銀行で取り立てられるかを先に聞く
- 「拒絶証書不要」が各段にあるか消されていれば、その裏書人への請求に手間がかかる
- 「無担保」「裏書禁止」の書き込みその裏書人には、不渡りのとき請求できない
- 「取立のため」の書き込み権利そのものは移っていない。支払いには使えない
- 満期を過ぎた手形・表面の「指図禁止」裏書の働きが弱い、または裏書では渡せない
- 訂正の跡・印のない書き直し金額・満期・裏書の欄の消し跡は、受け取る前に理由を聞く
「裏書の連続」の見方
裏書の連続とは、表面の受取人から最後の被裏書人まで、名前が途切れずにつながっていることです。つながっていれば、持っている人は正しい持ち主とみなされます。※1
| 確かめる場所 | つながっている例 | 切れている例 |
|---|---|---|
| 表面の受取人 → 1段目の裏書人 | A株式会社 → A株式会社 | A株式会社 → A商事株式会社 |
| 1段目の被裏書人 → 2段目の裏書人 | B株式会社 殿 → B株式会社 | B株式会社 殿 → D株式会社 |
| 白地式の段の次 | 被裏書人が空欄 → 次の段は誰の裏書でもよい | (白地式の後はつながりとみなされる) |
白地式の段の次にほかの裏書があると、その裏書人は白地式で手形を受け取ったとみなされます。そのため、空欄があってもつながりは切れません。※1
名前が少しでも違うときは、受け取る前に渡してくる相手に理由を聞きます。社名の変更なら、変更が分かる書類の写しをもらっておくと、取立てを頼むときに銀行へ説明できます。
2027年3月31日より後が満期の手形は、先に銀行に聞く
銀行どうしで紙の手形を交換する仕組みは、2027年3月31日で終わります。満期がそれより後の手形は、取立てを引き受けてもらえるかが銀行しだいになります。※2
裏書で回ってくる手形は、振出しから時間がたっていることもあります。日程と切替えの段取りは手形廃止はいつかの記事にまとめています。
この章の根拠(2件)
- 手形法16条1項
- 全国銀行協会「紙の手形・小切手利用廃止へ」
裏書して支払いに回すときの注意:取適法・相手の了解・帳簿
もらった手形を、仕入先への支払いに回してもいい?
取適法の対象の取引では、手形を渡して払うことが禁じられています。条文は裏書した手形を分けていないので、避けるのが安全です。対象外でも、相手の了解を取ってから渡します。
受け取った手形を裏書して仕入先に渡せば、現金を使わずに支払いができます。ただし、2026年からは渡してよい取引が限られます。
取適法の対象の取引では、手形で払えない
2026年1月から、下請法は「中小受託取引適正化法(取適法)」に変わりました。対象の取引では、代金の支払いに手形を渡すことが禁じられています。※1
条文は「手形を交付すること」と書いており、自社で切った手形か、受け取った手形を裏書したものかを分けていません。受け取った手形を裏書して渡すことも、手形の交付にあたると考えておくのが安全です。迷うときは、公正取引委員会の相談窓口で確かめます。
公正取引委員会は、手形を渡して払うと支払遅延になり、満期日が払った日とみなされると説明しています。※2対象になるかは、取引の内容と、両社の資本金や従業員の数で決まります。
取適法の対象でなくても、相手の了解を取る
対象外の取引でも、振込で払う約束の代金を、相手の了解なく手形で払うことはできません。仕入先にとって手形は、満期まで現金にならず、不渡りの心配もあるからです。
了解をもらうときは、手形の金額・満期・振出人を先に伝えます。仕入先が嫌がるなら、無理に回さず、満期まで待つか、ほかの方法で現金を用意します。
帳簿では、裏書した手形を分けて記録する
裏書して渡した手形は、手元の受取手形から外します。ただし満期まで責任が残るので、裏書した手形の金額と満期を、別に記録しておきます。
仕訳のしかたはファクタリングの仕訳と勘定科目の記事に、考え方をまとめています。決算書にどう書くかは、顧問の税理士に確かめます。
この章の根拠(2件)
- 取適法5条1項2号
- 公正取引委員会「よくある質問コーナー(取適法)」Q83
裏書を使わない方がよい場合と、ほかの方法
裏書は使わないほうがいいのは、どんなとき?
振出人の支払いぶりが不安、取適法の対象、満期が2027年3月31日より後、不渡りのときに払う余裕がない、といった場合です。満期まで待つ、割り引く、振込にしてもらう、などの方法と比べます。
裏書は費用がかからず便利ですが、渡したあとも不渡りの心配を抱え続けます。次のようなときは、ほかの方法を考えます。
- 振出人の支払いぶりに不安がある(期日の延長を頼まれた、など)
- 渡したい相手との取引が取適法の対象になる
- 満期が2027年3月31日より後で、取り立てられるかがはっきりしない
- 不渡りになったとき、300万円などの金額を急に払う余裕がない
裏書で渡した日に、支払いは済んだように見えます。けれども満期に落ちるまでは、払った額が請求として戻ってくるおそれが残ります。資金繰り表には、裏書した手形の満期の週に「戻ってくるかもしれない額」として書いておくと、不渡りのときに慌てずに済みます。
| 方法 | 向いている場面 | 費用 | 不渡りのときの責任 |
|---|---|---|---|
| 満期まで待つ | 当面の支払いに余裕がある | かからない | 手元にあるので、自分で振出人に請求する |
| 銀行で割り引く | 満期の前に現金が要り、割引の取引がある | 割引料 | 銀行から買戻しを求められる |
| 次の分から振込・でんさいにしてもらう | 今後の取引の受け取り方を変えたい | 振込手数料など | 振込なら手形の責任はない |
| 手形になる前の売掛金を売る(ファクタリング) | 取引先が手形を切る前に、現金が要る | 手数料 | 契約の内容による |
| 融資・支払いの相談 | 不足が続く、金額が大きい | 利息 | 手形とは別の返済の約束 |
表のとおり、どの方法にも費用か責任のどちらかが付きます。割引の費用の考え方と、手形を早く現金にする方法の比べ方は手形とはの記事の「満期より前に現金にする方法」で説明しています。
でんさいの譲渡にも、裏書と同じ保証が付く
手形の代わりに広がっているでんさい(電子記録債権)にも、裏書にあたる「譲渡」があります。でんさいネットでは、譲渡するときに原則として譲渡した人の保証も一緒に記録されます。※1
受け取る人が保証を求めなければ、保証を付けずに譲渡することもできます。ただし扱わない金融機関もあります。でんさいの仕組みと使い始め方はでんさいとはの記事で説明しています。※2
ファクタリングで考えるなら、手形になる前の売掛金で
受け取った後の手形そのものを買い取るファクタリング会社は、ごく少数です。取引先が手形を切る前の売掛金や、振込で払われる別の売掛金を売る方が、選べる会社が多くなります。
売掛金を早く現金にする方法の比べ方は請求書の買取(現金化)に、手取りの額と実質年率は手取りと実質年率のシミュレーターで確かめられます。不渡りで支払いが間に合わないときの打つ手の順番は、資金繰りが苦しいときの対処にまとめています。
この章の根拠(2件)
- でんさいネット「よくあるご質問」(譲渡保証記録)
- 電子記録債権法17条・31条
よくある失敗と注意点
裏書で、やってしまいがちな失敗は?
被裏書人を空けたまま渡してなくされる、なくしてすぐに動かない、前の裏書人への連絡が遅れる、6か月の期限を過ぎる、などです。裏書した手形は台帳に満期を書き、落ちたか確かめます。
1. 被裏書人を空けたまま渡し、途中でなくされる
白地式で渡すと、郵送の途中や相手の会社で紛失したとき、拾った人に権利が移るおそれがあります。被裏書人の欄は、かならず相手の名前を書いてから渡します。
2. 手形をなくして、すぐに動かない
手形をなくしたら、まず警察に届け、手形に書かれた支払地を受け持つ簡易裁判所に公示催告を申し立てます。※1官報に載ってから、権利を争う申出の締切までに少なくとも2か月かかります。
申出がなければ除権決定が出て、手形がなくても請求できるようになります。※2時間がかかるので、なくしたと気づいたら、その日のうちに振出人と取引銀行にも知らせます。
3. 社名や代表者名を書き間違えて、そのまま渡す
裏書人の名前が表面の受取人や前の段の被裏書人と違うと、裏書の連続が切れます。書き間違えたら、上から書き足さず、受け取る相手と取引銀行に相談します。
4. 不渡りの知らせを受けて、前の裏書人に連絡しない
知らせを受けた裏書人には、2取引日のうちに前の裏書人へ知らせる決まりがあります。遅れても請求の権利は残りますが、そのせいで前の人に損が出れば償う責任を負います。※3
5. 払ったあと、6か月の期限を過ぎる
裏書人として払ったら、前の裏書人に請求し直せる期限は6か月です。話し合いが長引くうちに過ぎてしまうことがあるので、払った日をカレンダーに入れておきます。※4
6. 裏書した手形を帳簿から消して、責任を忘れる
渡した手形が満期に落ちたかを確かめないまま、不渡りの知らせを受けて慌てる例があります。裏書した手形の台帳に満期を書き、満期の翌週に落ちたかを確かめると、急な請求に早く気づけます。
7. 満期の長い手形を、言われるまま受け取る
裏書で回ってくる手形は、振出しから満期まで長いものがあります。満期が遠いほど、振出人や裏書人の事情が変わる時間も長くなります。受け取る前に満期を見て、自社の支払いの予定と合うかを確かめ、合わなければ別の払い方を相談します。
この章の根拠(4件)
- 東京簡易裁判所「公示催告」
- 東京簡易裁判所「公示催告手続の流れ」
- 手形法45条1項・6項
- 手形法70条3項
出典(11件)公的機関の資料・法令。2026.10.17に確認
- 手形法(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 民法(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 令和8年4月1日以降の法定利率について(法務省)www.moj.go.jp
- 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- よくある質問コーナー(取適法)(公正取引委員会)www.jftc.go.jp
- 紙の手形・小切手利用廃止へ(全国銀行協会)www.zenginkyo.or.jp
- 電子記録債権法(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- でんさいネット:よくあるご質問(「譲渡保証記録」について)www.densai.net
- でんさいネット:よくあるご質問(「譲渡保証記録」をしないで譲渡できるか)www.densai.net
- 公示催告(東京簡易裁判所)www.courts.go.jp
- 公示催告手続の流れ(東京簡易裁判所)www.courts.go.jp
FAQ
よくある質問
手形の裏書とは何ですか?
手形の裏面に自社の名前を書いて署名し、次の持ち主に手形を渡すことです。手形の代金を受け取る権利がまるごと移ります。費用はかかりませんが、振出人が満期に払わなければ、裏書した会社は後の持ち主から代わりに払うよう求められます。この責任は、満期に無事に支払われるまで続きます。
手形の裏書はどう書けばいいですか?
裏面の空いているいちばん上の段に、日付・本店の住所・会社名・代表者の肩書と名前を書き、印を押します。被裏書人の欄には渡す相手の会社名を書きます。前の段の被裏書人と自社の名前が同じであることを確かめ、条件や金額の一部だけの裏書は書きません。書き間違えたら書き直さず、取引銀行に直し方を聞きます。
裏書した手形が不渡りになったらどうなりますか?
最後の持ち主から、手形の金額に満期からの法定利率(年3%)の利息と費用を加えた額を求められます。払った後は手形を受け戻し、前の裏書人や振出人に、払った総額と払った日からの利息を請求し直せます。請求し直す期限は受け戻した日から6か月なので、払ったらすぐに連絡します。
裏書人に請求できる期限はいつまでですか?
拒絶証書不要の手形なら、最後の持ち主が裏書人に請求できるのは満期から1年です。払った裏書人が前の裏書人に請求し直せるのは、受け戻した日から6か月です。振出人への請求は満期から3年で、裏書人への期限より長くなっています。払ったら、その日をカレンダーに入れておきます。
白地式裏書とは何ですか?危なくないですか?
被裏書人の欄を空けたまま、または署名だけでする裏書です。受け取った人は名前を書かずに次へ渡せて便利ですが、なくしたり盗まれたりすると、拾った人の渡した先で正しい持ち主として扱われるおそれがあります。自社が裏書するときは、相手の名前を書いてから渡します。
受け取った手形を裏書して下請に払ってもいいですか?
取適法の対象の取引では、代金の支払いに手形を渡すことが禁じられています。条文は自社で切った手形と裏書した手形を分けていないため、裏書して渡すことも避けるのが安全です。対象外の取引でも、振込の約束なら相手の了解が要ります。迷うときは公正取引委員会に確かめます。
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