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法律更新 2026.10.15

ファクタリングは違法か。合法な売買と「貸付け」とされた判例の違い

結論

ファクタリングは法律上は売掛金という債権の売買で、法律が認める取引なので、それ自体は違法ではありません。違法になるのは、名前がファクタリングでも、売掛先が払わないときに利用者が買い戻す・払うなど、実態が貸付けと同じ「偽装ファクタリング」です。裁判所は契約書の題名ではなく、不払いのリスクを誰が負うかで判断しており、貸付けとされれば貸金業法・利息制限法・出資法がかかります。

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  • 13件公的な出典

フファクタリング図鑑編集部(執筆)・公開 2026.10.15

ファクタリングは違法か。合法な売買と「貸付け」とされた判例の違い
01

先に結論:ファクタリングそのものは合法。違法になるのは「中身が貸付け」のとき

ファクタリングを使った、またはこれから使おうとしている経営者の方から多いのは、「これは違法な取引ではないのか」「自分も違法なことに巻き込まれていないか」「この契約は実は借金ではないのか」という不安です。この記事では、その3つの問いに、法律の条文と裁判例、金融庁や都道府県の資料、ファクタリング図鑑が集めたデータで答えます。

結論を先にまとめます。

  • ファクタリングは、法律上は債権(売掛金を受け取る権利)の売買です。民法は債権を売ることを認めており、売買として成り立っていれば、貸金業の登録がない会社が行っても違法ではありません。金融庁も「法的には債権の売買(債権譲渡)契約」と説明しています。
  • 違法になるのは、名前がファクタリングでも、経済的な働きが貸付けと同じ取引です。金融庁は、ファクタリングを装って高金利の貸付けを行うヤミ金融業者が確認されているとして、これを「偽装ファクタリング」と呼び、注意を呼びかけています。
  • 裁判所は、契約書の題名ではなく実態で判断しています。金融庁が紹介する裁判例では、売掛先が払わないときの負担が業者に移っているかどうかを中心に、手数料の大きさや、利用者が事実上買い戻すしかない状況だったかなどを合わせて見て、売買とされたもの(2件)と貸付けなどとされたもの(5件)に分かれています。
  • 貸付けとされれば、貸金業法・利息制限法・出資法がかかります。処罰の対象になるのは、登録なしに貸す側や、上限を超える利息を取る側です。
  • 利用した側が、偽装ファクタリングを使ったこと自体で罰せられる規定はありません。ただし、架空の請求書を使うなど、利用者側が人をだます行為をすれば話は別です。

以下、法律上の性質、裁判例の比較、貸付けとされたときに適用される法律と契約の行方、偽装ファクタリングの型、図鑑のデータの順に説明し、最後に「もう契約している人」と「これから契約する人」が次にやることをまとめます。

02

法律上の性質:債権の売買だから、貸金業の登録は要らない

民法は売掛金を売ることを認めている

ファクタリングの土台は、債権を人に譲る(売る)ことについての民法の決まりです。債権は、原則として自由に譲り渡すことができます。※1売掛金は取引先にお金を払ってもらう権利(債権)なので、原則として他人に売ることができます。

取引先との契約に「この債権を他人に譲ってはいけない」という特約(譲渡制限の特約)があっても、譲渡そのものの効力は妨げられません。※2ただし、特約を知っていた買い手などに対して、取引先が支払いを拒めることがあり※3、取引先との関係にも影響しうるため、特約の有無は契約前に確かめておくべき点です。

売ったことを取引先(売掛先)やほかの人に主張するには、売った側から取引先への通知か、取引先の承諾が必要です。※4取引先以外の人(たとえば同じ債権を別に買った人)に主張するには、確定日付のある証書による通知・承諾が必要になります。法人なら、これに代えて債権譲渡登記を使う方法もあります。登記の仕組みは債権譲渡登記とはで説明しています。

売買と貸付けは、どこが違うのか

売買と貸付けの違いは、「お金を受け取った人が、あとで返す約束をしているかどうか」です。

見る点 債権の売買(本来のファクタリング) 貸付け(借入れ)
受け取ったお金 売掛金の代金。返す約束はない 借りたお金。返す約束がある
売掛先が払わなかったとき 損をするのは買った会社 借りた人が自分のお金で返す
差し引かれるお金の性質 債権の値引き分(手数料) 利息(名目を問わず利息とみなされる)
会社に必要な登録 貸金業の登録は要らない 貸金業法の登録が要る
上限の規制 利息の上限規制はそのままは当てはまらない 利息制限法・出資法の上限がかかる

ポイントは、売掛先が払えなかったときの損を誰が負うかです。本当の売買なら、代金を払って債権を買った会社が、その債権を取り立てられないリスクも引き受けます。大阪府の注意喚起も、ファクタリングは貸付けではないため、売掛先が払わない場合の回収義務はファクタリング事業者にあり、利用者に不払い債権の買戻しや補償が求められることはないと説明しています。

法律は「形を変えた貸付け」を最初から想定している

見落とされやすいのが、貸金業法の「貸付け」の定義です。この法律でいう「貸付け」には、普通の金銭の貸付けだけでなく、「手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法によつてする金銭の交付」も含まれます。※5つまり、売買や割引の形をとっていても、働きが貸付けと同じなら貸金業法の対象になりうることが、条文に書かれています。

金融庁が「契約書に『債権譲渡契約(売買契約)』であることが定められた取引であっても、経済的に貸付けと同様の機能を有していると思われるようなものについては、貸金業に該当するおそれがあります」と説明しているのは、この考え方によるものです。さらに金融庁は、契約書にノンリコース(売掛先が払えなくなっても利用者に返済義務が生じないこと)の規定があるかといった形式だけでなく、経済的側面や実態に照らして判断されると注意しています。

この章の根拠(5件)
  1. 民法466条1項
  2. 民法466条2項
  3. 民法466条3項
  4. 民法467条
  5. 貸金業法2条1項
03

裁判所はどこで線を引いたか:売買とされた2件と、貸付けなどとされた5件

金融庁の注意喚起のページは、事業者向けのファクタリングが争われた裁判例を7件紹介しています。下の表は、その内容を「売買」と「貸付けなど」に分けて並べたものです。理由の欄は金融庁の要約によっています。

裁判所・日付 結論 判断の決め手(金融庁の要約)
東京地裁 令和2年9月18日判決 売買(貸金業法は適用されない) 業者は償還請求権を持たず、利用者も買戻しを予定していなかったため、売掛先の不払いのリスクが実質的にも業者に移っていた。取引先への通知などの手続き(対抗要件)は猶予されていたが、業者の判断でいつでも行える状態だった。手数料も、担保目的を推認させるほど大きくはなかった
東京高裁 令和4年6月15日判決 債権の確定的な売買 回収できなかった額を利用者が負担するとはされておらず、実際に売掛先の無資力の危険が業者に移っていた。手数料も、実質的に担保目的と推認させるほど多額ではなかった
大阪地裁 平成29年3月3日判決 金銭消費貸借契約に準じるもの 業者が売掛先の不払いのリスクをほとんど負っていなかった。債権の額面と関係なくお金がやりとりされていた
東京高裁 令和3年7月1日判決 貸金業法上の貸付け 売掛先が払わなかったら利用者が債権額以上を業者に払う旨の公正証書を作るなど、業者が負うべき不払いのリスクを負っていなかった
名古屋地裁 令和3年7月16日判決 貸金業法上の貸付け 契約上は「売主は売掛先の支払い能力を保証しない」とされていたが、債権の性質と、譲渡から支払日までの期間の短さから、売掛先が払わない可能性は極めて低かった
札幌高裁 令和4年7月7日判決 公序良俗に反し無効 債権を売ったことが知られると取引先の信頼を失い事業が続けられなくなるため、利用者は何としても期限までに買い戻すしかなく、業者もそれを知っていた。事実上、債権を担保にした金銭の貸し借りに近い働きをしており、貸金の規制を逃れるものと評価された
東京地裁 令和4年3月4日判決 金銭消費貸借契約 ノンリコースの規定はあったが、売掛先に支払いを拒む理由がないこと、支払停止の状態にないこと、破産の原因がないことなどを利用者に表明保証させており、利用者に債務の保証を求めているのと同じだった

この7件は、金融庁が「売買とされた例」「貸金業に当たるなどとされた例」として紹介しているもので、ファクタリングをめぐる裁判例のすべてではありません。また、裁判所の裁判例検索で全文が公開されているとは限らず、この記事では金融庁の要約の範囲で紹介しています。個別の事案の判断は、契約書の文言と取引の実際によって変わります。

比べてわかること

7件を並べると、結論を分けたのは「契約書にどう書いてあるか」ではなく、「実際に誰がリスクを負っていたか」だとわかります。

  • 売買とされた2件は、どちらも不払いのリスクが現実に業者へ移っていたことが決め手でした。手数料が担保目的を疑わせるほど大きくなかったことも、両方で挙げられています。
  • 貸付けなどとされた5件のうち2件は、契約書にはリスクを業者が負うような規定がありながら貸付けとされました。※1※2一方は、そもそも不払いが起きる可能性がほとんどない債権だったため、もう一方は、表明保証の条項で結局は利用者が保証しているのと同じだったためです。
  • 公序良俗に反し無効とされた1件では、利用者の置かれた立場(取引先に知られたら事業が続かない)を業者が分かったうえで、買い戻すしかない状況を作っていた点が重く見られました。※3

つまり「ノンリコースと書いてあるから売買」「償還請求権の条項がないから大丈夫」とは言えません。逆に、2社間で取引先に通知していないことだけで、ただちに貸付けになるわけでもありません。売買とされた例では、通知が猶予されていても、業者の判断でいつでも通知できたことが、売買の側に働く事情として挙げられています。※4

給与ファクタリングの最高裁決定

個人の給料を対象にした「給与ファクタリング」については、最高裁判所が、貸金業法と出資法にいう「貸付け」に当たると判断しました。※5給料は本人に直接払う決まりがあるため、業者は利用者から回収するしかない、という事情が決め手でした。事業者の売掛金とは前提が違うため、ここでは触れるだけにします。詳しくは給与ファクタリングが違法とされる理由をご覧ください。

この章の根拠(5件)
  1. 名古屋地裁令和3年7月16日判決
  2. 東京地裁令和4年3月4日判決
  3. 札幌高裁令和4年7月7日判決
  4. 東京地裁令和2年9月18日判決
  5. 最高裁令和5年2月20日決定
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裁判例から読み取れる4つの物差し

裁判例の判断を、利用者が自分の契約に当てはめて考えられるよう、4つの物差しに整理します。どれか1つで決まるのではなく、全体を合わせて判断される点に注意してください。

1. 売掛先が払わなかったとき、最後に損をするのは誰か

いちばん重い物差しです。買戻しの義務、償還請求、利用者が自分のお金で払う約束、債権額以上を払う公正証書などがあれば、損をするのは利用者です。そうした取引は、お金を受け取った人が返す約束をしているのと同じで、貸付けに近づきます。条項の名前は「買戻し」「補償」「違約金」などさまざまです。償還請求権の考え方は償還請求権とはで詳しく説明しています。

2. そのリスクは本物か、名目だけか

契約書でリスクを業者が負うことになっていても、それが名目だけなら意味がありません。支払いが確実な債権を、支払日のごく直前に買う形では、業者が負うリスクは実際にはほとんどありません。※1売掛先の状態について利用者に広く表明保証させ、違反があれば利用者が責任を負う形も、リスクを利用者に戻す働きをします。※2

3. 手数料は「値引き」の範囲か、「利息」に見えるほどか

売買とされた2件では、手数料が担保目的を推認させるほど大きくないことが理由の一つになっていました。逆に、貸付けに準じるとされた例では、債権の額面とは関係なくお金がやりとりされていました。※3代金が債権の価値ではなく「いくら貸すか」で決まっているなら、それは売買の値段ではなく貸付けの元本に近いということです。

4. 利用者が事実上「買い戻すしかない」状況に置かれていないか

取引先に知られたら事業が続かない利用者の弱みを前提に、期限までの買戻しを事実上強いる仕組みは、契約書に買戻しの義務が書かれていなくても問題になります。※4給与ファクタリングについての最高裁の判断も、利用者が勤務先に知られたくないために自分で買い戻すしかなかった点を挙げています。※5

この4つは法律の考え方を整理したもので、業者を選ぶときの具体的な確認手順は危ないファクタリング業者の見分け方に、契約書のどの条項を読むかは契約書で確かめる箇所にまとめています。

この章の根拠(5件)
  1. 名古屋地裁令和3年7月16日判決
  2. 東京地裁令和4年3月4日判決
  3. 大阪地裁平成29年3月3日判決
  4. 札幌高裁令和4年7月7日判決
  5. 最高裁令和5年2月20日決定
05

貸付けとされたら、どの法律がかかるか

取引が貸付けと判断されると、貸金業者を縛る法律がそのまま当てはまります。主なものは次の3つです。

貸金業法:登録のない営業は禁止

貸金業を営もうとする者は、2つ以上の都道府県に営業所を置くなら内閣総理大臣の、1つの都道府県だけなら都道府県知事の登録を受けなければなりません。※1登録を受けずに貸金業を営むことは禁止され※2、違反した者は10年以下の拘禁刑もしくは3,000万円以下の罰金、またはその両方の対象です。※3金融庁は、登録の窓口を「財務局又は都道府県」と案内しています。

偽装ファクタリングの業者の多くは、売買だから登録は要らないという立場で営業しています。それが実態として貸付けと判断されると、無登録営業という重い違反になります。

出資法:年20%と年109.5%の2本の線

出資法は、高い利息を刑事罰で禁じています。※4

条文 対象 線 刑
5条1項 金銭の貸付けを行う者(業としてでなくても) 年109.5%超 5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、または両方
5条2項 業として金銭の貸付けを行う者 年20%超 5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、または両方
5条3項 業として金銭の貸付けを行う者 年109.5%超 10年以下の拘禁刑もしくは3,000万円以下の罰金、または両方

いずれも、その割合を超える利息の契約をしたときだけでなく、受け取ったり、支払いを求めたりした者も同じく処罰されます。ファクタリングを装う業者は「業として」行っているのが普通なので、問題になるのは2項と3項です。

利息制限法:民事上の上限

利息制限法は、お金の貸し借りの利息の上限を、元本10万円未満は年20%、10万円以上100万円未満は年18%、100万円以上は年15%と定め、超えた部分を無効としています。※5出資法が「処罰の線」なのに対して、こちらは「払う義務がなくなる線」です。

「手数料」は利息とみなされる

偽装ファクタリングでは、差し引かれるお金は「手数料」「事務手数料」「調査料」などと呼ばれます。しかし法律は、貸付けに関して受け取るお金は、礼金、手数料、調査料その他どんな名目でも利息とみなすと定めています。※6※7貸付けと判断されれば、名目に関係なく、差し引かれた額が利息として計算されます。

計算の決まりもあります。貸付けの期間が15日未満なら15日として計算します。※8利息を先に差し引く(天引きする)貸付けでは、実際に渡した額を元本として計算します。※9給料ファクタリングの事案の裁判例でも、業者が渡した額を元本、利用者が払った額との差を利息として年率を計算し、年250%を超えると認定されています。※10

貸付けとして計算すると、何%の手数料で線を超えるか

仮に、取引が貸付けとされ、受け取った手取り額を元本、差し引かれた手数料を利息として計算すると、どのくらいの手数料で各法律の線を超えるのかを計算しました。式は図鑑の実質年率と同じ「手数料額 ÷ 手取り額 ÷ 日数 × 365」です。15日未満の取引は、出資法の計算の決まりにならって15日として扱っています。※8

受け取りから期日までの日数 年15%の線(利息制限法・元本100万円以上) 年20%の線(出資法5条2項) 年109.5%の線(出資法5条3項)
15日以内 額面の約0.6% 額面の約0.8% 額面の約4.3%
30日 額面の約1.2% 額面の約1.6% 額面の約8.3%
45日 額面の約1.8% 額面の約2.4% 額面の約11.9%
60日 額面の約2.4% 額面の約3.2% 額面の約15.3%
90日 額面の約3.6% 額面の約4.7% 額面の約21.3%

検算の例を挙げます。額面100万円の売掛金を、期日の30日前に手数料8.26万円で売ると、手取りは91.74万円です。8.26 ÷ 91.74 = 約0.0900、0.0900 ÷ 30 × 365 = 約1.095 で、年率に直すと約109.5%です。出資法の年109.5%の線とちょうど同じになります。※11

この表から分かるのは、売買なら普通の水準の手数料でも、貸付けとされた途端に出資法の線を大きく超えうるということです。期日まで30日の取引で額面の1.6%を超える手数料を取れば、貸付けとしては年20%超です。だからこそ、契約が本当に売買になっているかどうかが、利用者にとっても業者にとっても決定的に重要になります。

念のため付け加えると、この表は「貸付けと判断された場合」の計算です。本当の売買であれば、手数料は利息ではなく、利息制限法や出資法の上限はそのままは当てはまりません。ふだんの比較に使う実質年率の見方は手数料の計算と実質年率と手数料と実質年率の計算で確かめられます。

この章の根拠(11件)
  1. 貸金業法3条1項
  2. 貸金業法11条1項
  3. 貸金業法47条
  4. 出資法5条
  5. 利息制限法1条
  6. 出資法5条の4第4項
  7. 利息制限法3条
  8. 出資法5条の4第1項
  9. 出資法5条の4第2項
  10. 東京地裁令和3年2月9日判決
  11. 出資法5条3項
06

貸付けとされた契約はどうなるか:無効になる範囲と、払ったお金

「借金だったなら、払わなくていいのか」「払ったお金は戻るのか」という疑問は多いのですが、答えは事案によって変わります。法律の条文と最高裁の判断で確かめられる範囲を、段階に分けて説明します。

段階1:利息制限法を超える部分は無効

貸付けとされた場合、利息制限法の上限を超える利息の部分は無効です。※1この段階では契約全体が無効になるわけではなく、元本と上限内の利息は返す義務が残る、というのが条文の形です。

段階2:年109.5%を超える利息の契約は、契約そのものが無効

貸金業を営む者が業として行う金銭の消費貸借(手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法で金銭を渡す契約を含みます)で、年109.5%を超える利息の契約をしたときは、その消費貸借の契約自体が無効になります。※2金融庁の注意喚起も、年109.5%を超える利息の契約をした場合、消費貸借契約自体が無効だと説明しています。

段階3:公序良俗に反すれば無効、渡したお金の返還も求められないことがある

公の秩序または善良の風俗(公序良俗)に反する契約は無効です。※3事業者向けのファクタリングでも、この決まりで契約が無効とされた例があります。※4

さらに、不法な原因のために渡したものは、返還を求められません(不法原因給付)。※5最高裁判所は、ヤミ金融業者が、年利数百%〜数千%という著しく高利の貸付けの形で借主にお金を渡していた事案について、業者は渡したお金を返せと求めることはできず、借主が業者に損害賠償を求める場面でも、借りたお金の分を損害から差し引くことはこの決まりの趣旨に反して許されないと判断しました。※6

この考え方を、ファクタリングの名目の取引に当てはめた例もあります。給料ファクタリングの事案で、契約の実質は金銭消費貸借で、年109.5%を超える利息の契約として無効であり、業者が渡したお金は不法原因給付に当たるとして、利用者が業者に払ったお金の全額の返還を業者に命じた裁判例です。※7※2ただしこの事案は、業者が裁判に出てこなかったもので、給与債権という事業者向けとは違う取引でした。

この部分で注意してほしいこと

  • 「貸付けだったら全額戻る」とは言えません。どの段階に当たるかは、手数料を年率に直した高さ、業者の悪質さ、取引の実態によって変わり、最終的には裁判所が個別に判断します。売買と認められれば、そもそもこの話になりません。
  • 自分の判断で支払いを止めるのは危険です。契約が有効か無効かが決まっていない段階で支払いを止めると、業者との紛争が激しくなったり、取引先に連絡されたりするおそれがあります。止める前に弁護士に相談してください。
  • 無効の主張や返金の請求は、自動的には実現しません。交渉や裁判が必要です。業者の所在が分からなくなっていることもあり、回収できるかは別の問題です。
この章の根拠(7件)
  1. 利息制限法1条
  2. 貸金業法42条1項
  3. 民法90条
  4. 札幌高裁令和4年7月7日判決
  5. 民法708条
  6. 最高裁平成20年6月10日判決
  7. 東京地裁令和3年2月9日判決
07

使った側は罪に問われるか

「違法な取引だったなら、使った自分も罪になるのでは」という心配に答えます。

貸金業法・出資法で処罰されるのは貸す側

ここまで見た罰則の対象は、登録なしに貸金業を営んだ者※1※2や、上限を超える利息の契約をし、受け取り、または支払いを求めた者です。※3お金を受け取った利用者を処罰する規定は、これらの条文にはありません。偽装ファクタリングの利用者は、法律上は被害を受けた側として扱われるのが基本です。金融庁が相談窓口を案内し、悪質な取立てを受けたら警察に相談するよう呼びかけているのも、そのためです。

ただし、利用者がうそをついた場合は別

利用者の側に問題が生じるのは、ファクタリング会社をだました場合です。

  • 実在しない請求書や、金額を水増しした請求書を使う:人をだましてお金を受け取れば、詐欺罪(10年以下の拘禁刑)に当たるおそれがあります。※4
  • 同じ売掛金を複数の会社に売る(二重譲渡):買った会社どうしの争いになり、利用者は大きな賠償の責任を負いかねません。だます意図があれば、やはり詐欺の問題になりえます。
  • 2社間で、売掛先から入ったお金を約束どおりファクタリング会社に渡さない:売った債権の代金は、もう利用者のお金ではありません。契約違反として深刻なトラブルになります。

正しい請求書で、正しく手続きをしている限り、利用者がファクタリングを使ったこと自体で罪に問われることはありません。業者に「請求書を少し多めにすれば通る」などと持ちかけられても、応じないでください。

取引先との関係は別に考える

法律上の違法とは別に、取引先との契約に譲渡制限の特約がある場合や、取引先に知られることを強く避けたい場合は、取引関係への影響も考える必要があります。取引先に知られるかどうかの仕組みは取引先に知られるかで説明しています。

この章の根拠(4件)
  1. 貸金業法11条1項
  2. 貸金業法47条
  3. 出資法5条
  4. 刑法246条
08

偽装ファクタリングの型:金融庁と大阪府が挙げるもの

公的機関は、偽装ファクタリングの典型をどう説明しているか。金融庁と大阪府の資料にある型を、裁判例と結び付けて整理します。

型 挙げている機関 なぜ貸付けに近いのか
受け取る代金が、債権額に比べて著しく低い 金融庁 債権の値段ではなく、高い利息を天引きした貸付けの手取りに近い
回収を利用者に任せ、回収できなければ利用者が買い戻す 金融庁・大阪府 売掛先の不払いのリスクが利用者に残り、返す約束と同じになる
回収できなければ、利用者が自分の資金で業者に払う 金融庁・大阪府 同上。東京高裁(令和3年7月1日)の公正証書の事案もこの型
契約書に「売買契約」であることがはっきり書かれていない 大阪府・金融庁(リーフレット) そもそも売買として組み立てられていない疑いがある
代金の一部しか先に払わず、債権が全額回収できなければ代金を減らす 大阪府 売掛先の不払いの損を、代金の減額という形で利用者に負わせている

最後の型は見落としやすいものです。大阪府は、売掛債権を売ったのに、売主が債権を全て回収するまで買取代金の一部しか払わない、最終的に債権の全額を回収できなかった場合は買取代金から減らす、という条件が付いている場合を、偽装ファクタリングが疑われる例として挙げています。「買戻し」「償還請求」という言葉が契約書になくても、代金の後払いや減額の仕組みで同じ効果を生むことができる、ということです。

金融庁は別の注意喚起で、ファクタリングを装って、貸金業登録のない業者が債権を担保とした違法な貸付けを行っている事案が確認されているとし、高額な手数料や大幅な割引率の契約を結ぶと、かえって資金繰りが悪化し多重債務に陥る危険があるとも注意しています。偽装ファクタリングは違法かどうかの問題であると同時に、資金繰りを壊す問題でもあります。

契約前に具体的にどこを見て、どの順で確かめるかは危ないファクタリング業者の見分け方にまとめているので、ここでは繰り返しません。

09

図鑑の86サービスで見る「売買である」ことの示し方

ファクタリング図鑑は、86サービス(2026年10月15日時点)の公式サイトの表記と、運営会社の法人登記を確かめています。そのうち、この記事のテーマに関わる項目を集計しました。会社ごとの名前は出さず、全体の数だけを示します。

項目 数 読み方
公式サイトに「償還請求権なし(ノンリコース)」と明記 86中47 半分強。残る39は、サイト上で記載を見つけられなかった(償還請求権ありと明記したサービスはなかった)
うち2社間に対応するサービス 70中43 利用者が回収を任される2社間でも、6割強が明記
2社間だけを扱うサービス 26中14 ほぼ半分は記載が見つからない
契約書のひな形を公開 86中1 契約前に条項を読めるサービスはほとんどない
運営会社の商号と所在地が法人登記と一致 86中84 残る2は照合できなかったか、所在地の表記が登記と違った
運営会社が日本貸金業協会の会員と表記 86中3 貸金業の登録業者がファクタリングも扱っている例
図鑑で推奨しない(注意の表示) 86中2 理由は下のとおり

「推奨しない」とした2つのサービスの理由

  • 1つ目:公式サイトの解説に「2社間は場合によっては金銭消費貸借契約」「融資を受けた分の金員・金利等の返済が必要」とあり、売掛金の買取ではなく貸付けと読める記載がありました。同じサイトの「償還請求なし」という表示とも食い違っています。この記事で見た、ノンリコースの表示と実態が食い違うという問題そのものです。
  • 2つ目:運営会社の会社概要の事業内容にファクタリングの記載がなく、「審査の通りやすい書類を作成」「申請を代行」と書かれていました。会社概要の郵便番号と所在地も一致しませんでした。

この数字から言えること、言えないこと

  • 「償還請求権なし」と書いていないことは、違法の証拠ではありません。表記がないだけで、契約書には定めがあるかもしれません。逆に、書いてあっても実態が伴うとは限らないことは、裁判例と1つ目の注意の例が示すとおりです。どちらの場合も、最後は契約書で確かめる必要があります。
  • 契約書のひな形を公開しているのは1サービスだけです。多くの場合、利用者が条項を読めるのは申し込んだ後です。署名の前に持ち帰って読む時間をもらうことが、実際上の防御になります。
  • 貸金業の登録の有無は、ファクタリングの適法性とは別の話です。本当の売買なら登録は要らず、登録のある会社のファクタリングでも、契約の中身は個別に確かめる必要があります。「登録がない=違法」ではない点は危ないファクタリング業者の見分け方でも触れています。

会社ごとの表記と出典は、図鑑の各社のページで確かめられます。

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次にやること:もう契約している人、これから契約する人

もう契約していて、不安がある人

  1. 手元の書類を集める:契約書と控え、見積書、振込の記録、業者とのメールやチャット、電話のメモ。業者から返却や削除を求められても、自分の控えは手放さないでください。
  2. 契約書の3か所を読む:売掛先が払わなかったときに誰が払うか、代金の一部が後払いや減額の条件になっていないか、表明保証の範囲がどこまでか。
  3. 年率に直す:手数料額 ÷ 手取り額 ÷ 日数 × 365。上の表の線と比べ、どのくらいの重さの取引なのかを把握します。
  4. 支払いを止める前に相談する:契約の有効・無効の判断や返金の請求は、弁護士への相談が確実です。悪質な取立てを受けたら警察に相談してください。相談先の選び方とトラブルの型ごとの対処はトラブル事例と相談先にまとめています。

これから契約する人

  • 契約書に「売買」「債権譲渡」と書かれ、売掛先が払わなかったときに利用者が払う定めがないこと
  • 手数料が、受け取る額との関係で説明のつく水準であること(年率に直して比べる)
  • 契約書の控えを受け取れ、持ち帰って読む時間があること

この3つで一つでも引っかかれば、その場では契約しないでください。

使わない方がよい場合と、ほかの方法

次の場合は、合法な売買であっても、ファクタリングを使うこと自体を見直した方がよいでしょう。

  • 毎月のように売掛金を売らないと資金が回らない
  • 手数料を年率に直すと、事業の利益で払える水準を超えている
  • 買戻しや償還請求のある契約しか見つからない(その場合は、利息の上限が法律で決まっている融資の方が条件がはっきりしています)

ほかの方法としては、取引のある銀行や日本政策金融公庫への融資の相談、仕入先や外注先への支払いの延期の相談、税金や社会保険料の納付が難しいときの猶予の相談があります。どれが合うかは支払いに間に合わないときの対処の順番や資金調達診断で整理できます。

ファクタリングは違法な取引ではありません。違法なのは、ファクタリングの名前を借りた貸付けです。その違いは契約書の題名ではなく、「売掛先が払わなかったとき、誰が損をするのか」に表れます。

出典(13件)公的機関の資料・法令。2026.10.15に確認
  1. ファクタリングの利用に関する注意喚起:金融庁www.fsa.go.jp
  2. その資金調達 大丈夫ですか?(金融庁 ファクタリング注意喚起リーフレット 表面)www.fsa.go.jp
  3. 多重債務防止のための注意喚起(高額な手数料によるファクタリングの利用に関する注意喚起):金融庁www.fsa.go.jp
  4. 違法なファクタリングについて(大阪府)www.pref.osaka.lg.jp
  5. 民法(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
  6. 貸金業法(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
  7. 出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
  8. 利息制限法(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
  9. 刑法(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
  10. 裁判例結果詳細 最高裁判所第三小法廷 平成20年6月10日判決(平成19(受)569)www.courts.go.jp
  11. 裁判例結果詳細 東京地方裁判所 令和3年2月9日判決(令和2(ワ)11883)www.courts.go.jp
  12. 裁判例結果詳細 最高裁判所第三小法廷 令和5年2月20日決定(令和4(あ)288)www.courts.go.jp
  13. 登録貸金業者情報検索サービス:金融庁www.fsa.go.jp

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