法律更新 2026.10.18
ファクタリング中に自己破産したら?4つの場面で見る売掛金の行方と債務整理
ファクタリングは売掛金の売買なので、本来は自己破産や債務整理で整理する借金ではありません。ただし未送金の回収金や償還請求権などは債務として残ります。2社間・3社間と登記の有無で変わる売掛金の行方と、手続きごとの扱いを解説します。
初めての方へファクタリングを使う前に知る5つのこと・申込みから入金まで →
フファクタリング図鑑編集部(執筆)・公開 2026.10.17

この記事は、ファクタリングで売掛金を売ったことがあり、自己破産や債務整理を考えている経営者・個人事業主に向けたものです。「ファクタリングの分も借金として整理できるのか」「破産したら、売った売掛金の代金はどうなるのか」に、法律の決まりと計算例で答えます。
この記事を6枚で
1 / 6結論:本来のファクタリングは借金ではない。ただし残る債務が4つある
ファクタリング中に自己破産したら、売ったお金も借金扱いになるの?
本来のファクタリングは売掛金の売買なので、整理する借金には当たりません。ただ、未送金の回収金、償還請求権、表明保証の違反、代表者の連帯保証の4つがあると、債務として債権者の一覧に載ります。
ファクタリングは売掛金の売買です。売った時点で売掛金はファクタリング会社のものになり、利用者が代金を返す義務はありません。そのため、本来のファクタリングは、自己破産や任意整理で整理する「借金」には当たりません。
ただし、次の4つがあると、債務として債権者の一覧に載ります。破産・再生・任意整理のどれでも、隠さずに弁護士に伝えるものです。
- 回収金を渡す義務:2社間で、売掛先から受け取ったお金をまだ渡していない
- 償還請求権・買戻しの約束:売掛先が払わなければ、利用者が穴を埋める契約になっている
- 表明保証の違反:「破産の原因がない」などと約束した内容が事実と違った
- 代表者の連帯保証:会社の義務を、代表者個人が保証している
そのうえで、破産したときに売掛金がどうなるかは、2社間か3社間か、債権譲渡登記をしたかで分かれます。登記も通知もしていない2社間では、売った売掛金が破産の手続きの中で、ほかの債権者への配当に回ることがあります。
この記事の流れは次のとおりです。2章で「借金かどうか」の分かれ目、3章で破産したときの4つの場面、4章で計算例と図鑑のデータを見ます。5〜6章は個人の破産と、再生・任意整理での扱いです。7章以降で、偽装ファクタリングだった場合、相談までの段取り、使わない方がよい場合、よくある失敗をまとめます。
- 売掛先が払わなかったとき、買い戻す・穴埋めする約束があるか?はい → 償還請求権あり。債務として扱われる。中身が貸付けとされることもいいえ → Q2へ
- 2社間で、売掛先から受け取ったお金をまだ渡していないか?はい → 「回収金を渡す義務」が債務として残るいいえ → Q3へ
- 代表者が連帯保証している、または表明保証に反していたか?はい → 保証や損害賠償の請求が残ることがあるいいえ → 売買は終わっていて、債務は残らないのがふつう
ファクタリングの代金は借金か:債務が残る4つの場合
売買なのに、どうして債務が残ることがあるの?
契約の中に、売ったあとも利用者に義務を残す条項があるからです。2社間で回収金をまだ渡していない、売掛先が払わなければ買い戻す約束がある、といった場合がそれに当たります。
ファクタリングの契約書は、ふつう「債権譲渡契約」「売買契約」という名前です。売ったものは返さなくてよいので、受け取った代金そのものは借金ではありません。ただ、契約の中には、売買のあとも利用者に義務を残す条項がいくつかあります。債務整理で問題になるのは、この残った義務です。
1. 2社間の「回収金を渡す義務」
2社間ファクタリング(売掛先に知らせず、利用者が代金を受け取って渡す型)では、売掛先は期日に利用者の口座へ払います。利用者は受け取ったお金を、決められた日までにファクタリング会社へ送る約束をしています。
この送金の前に資金が尽きると、「渡すべきお金を渡していない」状態になります。これは破産・再生の手続きで、ファクタリング会社の債権として扱われます。2社間と3社間の仕組みの違いは2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの違いで説明しています。
2. 償還請求権・買戻しの約束
償還請求権(売掛先が払わなかったときに、利用者が買い戻す義務)がある契約では、売掛先が払えないと利用者に請求が来ます。この義務は、債務整理でも債務として数えます。契約書のどこを読めばよいかは償還請求権とノンリコースの確かめ方にあります。
3. 表明保証の違反による損害賠償
契約書には「売掛金は実在する」「二重に売っていない」「支払停止や破産の原因がない」と利用者が約束する条項(表明保証)がよく入ります。すでに払えない状態なのにこの約束をして売ると、違反を理由に損害賠償を求められることがあります。
4. 代表者の連帯保証
会社が売る契約で、代表者が会社の義務を連帯保証していることがあります。会社が破産しても、保証人の責任は消えません。保証人は、会社が払わないときに代わりに払う責任を負うからです。※1会社だけでなく、代表者個人の整理も一緒に考えることになります。
反対に、3社間で売掛先がファクタリング会社に直接払い、償還請求権も保証もない契約なら、売った時点で取引は終わっています。この場合、債務整理で整理する債務は残っていないのがふつうです。
「借金ではない」契約でも、弁護士には全部見せる
債務が残っていないと自分で思っても、契約はすべて弁護士に見せます。自分では売買のつもりでも、条文を読むと償還請求権や保証が入っていることがあるからです。また、破産の申立てでは、債権者の一覧を裁判所に出します。載せるべき相手を落とすと、あとで説明を求められます。一覧に載せるかどうかは、契約書を読んだ弁護士に決めてもらうのが確かです。
代表者の保証がどの義務を保証しているかの読み方と、ガイドラインで保証債務を整理するときの考え方は、経営者保証とファクタリングの連帯保証にまとめています。
この章の根拠(1件)
- 民法446条1項
自己破産したら売った売掛金はどうなるか:4つの場面
破産したら、売った売掛金はどうなるの?
対抗要件をそなえていたかで分かれます。3社間の確定日付のある承諾や法人の登記があれば、財団に入りません。2社間で登記も通知も無いと管財人に主張できず、配当に回ることがあります。
破産の手続きが始まると、破産した人が持っていた財産は「破産財団」になります。※1財団の管理と処分は、裁判所が選ぶ破産管財人が行います。※2ここで問題になるのは、「売った売掛金は、まだ破産した人の財産なのか」です。
答えを分けるのは、債権の譲渡を第三者に主張するための手続き(対抗要件)をそなえていたかどうかです。売掛金の売却を売掛先以外の第三者に主張するには、確定日付のある通知・承諾か、法人なら債権譲渡登記が必要です。※3※4破産管財人は、この「第三者」に当たると考えられています。
| 場面 | 売掛金の扱い | ファクタリング会社の立場 |
|---|---|---|
| ① 3社間で、売掛先が確定日付のある書面で承諾している | ファクタリング会社のもの。破産財団に入らない | 売掛先から直接受け取る |
| ② 2社間でも、法人が債権譲渡登記をしている | ファクタリング会社のものとして主張できる | 財団に入らない売掛金として、引渡しを求められる |
| ③ 2社間で、登記も確定日付のある通知もしていない | 管財人に主張できず、財団に入る扱いになりうる | 破産債権者として配当を受ける |
| ④ 2社間で、入金されたお金を使ってしまった | 売掛金はもう無い | 回収金を渡す義務の分が、破産債権になる |
表のとおり、ファクタリング会社が守られるのは①と②です。③と④では、ファクタリング会社の請求は、ほかの債権者と並ぶ「破産債権」になります。破産債権は、破産の手続きの中でしか払ってもらえません。※5※6
第三者に主張できる3社間(確定日付のある承諾)・法人の登記
- 売掛金
- ファクタリング会社のもの
- 破産管財人
- 取り込めない
- ファクタリング会社
- 売掛先から全額を受け取る
- ほかの債権者
- この売掛金からは配当を受けない
第三者に主張できない2社間で登記も通知もしていない
- 売掛金
- 破産財団に入る
- 破産管財人
- 売掛先から回収する
- ファクタリング会社
- 破産債権者として配当を待つ
- ほかの債権者
- この売掛金からも配当を受ける
個人事業主は債権譲渡登記を使えません。登記の特例は、法人が債権を譲渡した場合に限られているからです。※4このため、個人事業主の2社間ファクタリングは、確定日付のある通知・承諾をしていなければ③か④になります。登記の仕組みは債権譲渡登記とはで説明しています。
3社間でも、承諾の書面に日付の証明が無いと弱い
3社間ファクタリングは、売掛先が売却を承諾し、ファクタリング会社に直接払う型です。売掛先に対しては、承諾があればファクタリング会社が請求できます。※7ただし管財人のような第三者に主張するには、その承諾が確定日付のある書面(公証役場の日付印や内容証明郵便など)でされている必要があります。※3承諾書が手元にあるなら、日付の証明が付いているかを見ておくと、弁護士への説明が早くなります。
売掛先が、これまでどおり自分の口座に払ってきたら
2社間では、破産の手続きが始まったあとも、売掛先は事情を知らずに利用者の口座へ払ってくることがあります。このお金を自分の判断でファクタリング会社に送ったり、使ったりしてはいけません。だれに渡すべきお金かは、場面②か③かで変わり、それを決めるのは管財人です。入金があったら、そのまま残して弁護士に知らせます。
破産の手続きが始まったあとは、売掛金を売れない
手続きが始まったあとに、破産した人が財団の財産について結んだ契約は、手続きの中では効力を主張できません。※8開始前の仕事の売掛金を、あとからファクタリングで売ることはできないと考えてください。一方、個人の場合、手続きが始まったあとに新しく働いて得たお金は、原則として財団に入りません。※1
この章の根拠(8件)
- 破産法34条1項
- 破産法78条1項
- 民法467条2項
- 動産・債権譲渡特例法4条1項
- 破産法2条5項
- 破産法100条1項
- 民法467条1項
- 破産法47条1項
数字で確かめる:300万円の売掛金の計算例と、図鑑の197サービスの契約の型
登記の有無で、どれくらい違ってくるの?
財団900万円・破産債権3,000万円の例では、登記の無い2社間のファクタリング会社が受け取るのは配当率25%の75万円です。登記があれば300万円を受け取ります。数字は説明のための例です。
ここでは、小さな会社Bを例にします。数字は説明のために置いたものです。
- 売掛金300万円を、入金日の30日前に手数料10%で売った。手取りは270万円
- 実質年率は、手数料30万円÷手取り270万円÷30日×365=約135%
- 入金日の前に、会社Bが破産を申し立て、手続きが始まった
- 財団は換価して900万円(この売掛金300万円を含む)。管財人の報酬などの費用は150万円
- 破産債権の総額は3,000万円(ファクタリング会社の300万円を含む)
場面③(2社間で登記も通知も無い)なら、売掛金300万円は財団に入ります。配当に回るのは900万円−150万円=750万円です。配当率は750万円÷3,000万円=25%になります。
| 項目 | 場面③(主張できない) | 場面②(登記あり) |
|---|---|---|
| 売掛金300万円の行き先 | 財団に入り、全員で分ける | ファクタリング会社が受け取る |
| ファクタリング会社が受け取る額 | 配当75万円(300万円の25%) | 300万円 |
| 配当に回るお金 | 750万円 | 450万円 |
| ほかの債権者の配当率 | 25% | 約16.7%(450万円÷2,700万円) |
| ファクタリング会社の受け取れなかった額 | 225万円 | 0円 |
この比べ方から、2つのことがわかります。1つは、対抗要件の有無で、ファクタリング会社の取り分が300万円から75万円まで変わることです。もう1つは、ほかの債権者の取り分も変わることです。管財人が契約書と登記を細かく確かめるのはこのためです。
受け取れなかった225万円は、会社Bが法人なら、会社がなくなると回収されません。ただし代表者が連帯保証していれば、代表者個人に請求が来ます。会社Bが個人事業主なら、この225万円は免責(残った債務の支払いを免れること)の対象になるのが原則です。※1
支払停止のあとに売ると、財産が減る
払えない状態になってから、売掛金500万円を入金の45日前に手数料30%で売ったとします。手取りは350万円で、実質年率は約348%です。財産は150万円減り、その分ほかの債権者の配当が減ります。
支払停止のあとにした、債権者を害する行為は、管財人があとから否定できます(否認)。※2相応の値で売った場合でも、受け取ったお金を隠すつもりがあり、相手もそれを知っていれば否認されます。※3手取りで特定の債権者だけに返した場合も、否認の対象になりえます。※4
手数料の額と実質年率は、手取りと実質年率のシミュレーターで、自分の契約の数字を入れて確かめられます。
図鑑の197サービスで見る:登記と償還請求権をどう書いているか
破産したときの扱いを左右する「2社間か3社間か」「登記をするか」「償還請求権があるか」を、図鑑に載せている197サービス(2026年10月16日時点)の公式サイトで数えました。集計は build/stats/saimuseiri.py です。
| 項目 | サービス数 |
|---|---|
| 2社間に対応すると書いている | 146 |
| うち、3社間の記載が無い(2社間だけ) | 55 |
| 3社間に対応すると書いている | 108 |
| 債権譲渡登記の扱いを書いている | 78 |
| 償還請求権が無いことを明記している | 100 |
| 個人事業主を受け付けると書いている | 117 |
| うち、2社間にも対応している | 101 |
2社間に対応するサービスが多く、個人事業主を受け付けて2社間にも対応するものは101あります。先に見たとおり、個人事業主の2社間は登記が使えないため、破産したときに場面③や④になりやすい組み合わせです。
登記をすることがある登記をしないのが基本記載なし
登記の扱いを書いている78サービスのうち、「原則不要」「不要」が46、「原則必要」「場合による」が32でした。登記をしない契約では、ファクタリング会社は破産のときに守られにくくなります。その分、表明保証や代表者の保証で手当てしていることがあります。
償還請求権が無いことを明記するのは197のうち100です。残りの97は、公式サイトに書いていないだけのものを含みます。自分の契約で償還請求権があるかは、サイトの表示ではなく契約書の条文で確かめます。条文の読み方はファクタリング契約書で確かめる箇所にあります。
この章の根拠(4件)
- 破産法253条1項
- 破産法160条1項2号
- 破産法161条1項
- 破産法162条1項
個人事業主の自己破産で気をつけること:免責・使い込み・直前の売却
個人事業主が破産するとき、特に気をつけることは?
回収金の使い込みは、悪意の不法行為として免責の外だと争われることがあります。直前の安い売却や、ファクタリング会社を書かないうその債権者名簿は、免責が認められない事情になりえます。
個人が破産を申し立てると、原則として免責の申立てもしたものとみなされます。※1免責が認められると、破産債権の支払いを免れます。ただし、免責されない債権と、免責が認められない事情があります。
回収金を使い込んだ場合
2社間で受け取ったお金を渡さず、生活費や別の支払いに使った場合、ファクタリング会社の請求は破産債権になります。ここで、ファクタリング会社が「悪意で加えた不法行為による損害賠償」だと主張することがあります。この種類の請求は、免責の対象から外れるからです。※2
どちらに当たるかは、受け取ったお金をどう扱ったか、いつ払えないと分かっていたかで争われます。使い込みは、免責のあとまで請求が残るおそれがあると考えておきます。入金があったら、弁護士に相談するまで手を付けないのが安全です。
免責が認められない事情
破産法は、免責を認めない事情を挙げています。ファクタリングに関係しそうなのは次のものです。
- 債権者を害する目的で、財産を不当に安く処分した※3
- 破産を遅らせる目的で、著しく不利益な条件で債務を負った※4
- 特定の債権者にだけ、義務の無い返済や担保の提供をした※5
- うその債権者名簿を出した(ファクタリング会社を書かない、など)※6
払えないと分かってから、手数料の高い売却を何度も繰り返した場合は、1号や2号に当たると見られるおそれがあります。それでも裁判所は、事情をすべて考えて免責を認めることができます。※7隠さずに説明することが、免責を受けるうえでいちばん大事です。
また、前に免責を受けてから7年以内の申立ては、免責が認められない事情の1つです。※8
財産が少ないと、管財人が選ばれずに終わることもある
裁判所は、財産が少ない場合は、破産管財人を選ばずに手続きを終えることもあると案内しています。ただ、ファクタリングの契約があり、売掛金の行き先や未送金の扱いを調べる必要があるときは、管財人が選ばれて調べることが考えられます。契約の数や額が多いほど、早めに書類をそろえておく意味が大きくなります。
手続きのあと、事業を続けるとき
個人事業主は、破産しても事業を続けることができます。手続きが始まったあとの仕事で生まれた売掛金は、原則として本人のものです。ただし、新しくファクタリングを使うときは、契約書の「破産の手続き中でない」「過去の手続き」などの約束に、事実どおり答えます。事実と違う申告で売ると、それ自体が新しいトラブルのもとになります。
この章の根拠(8件)
- 破産法248条4項
- 破産法253条1項2号
- 破産法252条1項1号
- 破産法252条1項2号
- 破産法252条1項3号
- 破産法252条1項7号
- 破産法252条2項
- 破産法252条1項10号
民事再生・個人再生・任意整理では、ファクタリングはどう扱われるか
破産じゃなくて、任意整理や再生だとどうなるの?
任意整理は整理する相手を選べますが、未送金があるのに外すと、その請求だけが残ります。個人再生はすべての債権者が対象で、悪意の不法行為の分は減らせません。
債務整理には、裁判所を使わない任意整理と、裁判所を使う特定調停・個人再生・自己破産があります。会社なら民事再生もあります。どれを選ぶかは自分で決めるもので、迷うときは弁護士などに相談するよう裁判所も案内しています。
| 手続き | ファクタリングの債務の扱い | 気をつけること |
|---|---|---|
| 任意整理 | 弁護士が債権者と個別に交渉する。整理する相手を選べる | 売買が終わった契約は、そもそも整理の相手にならないことが多い |
| 特定調停 | 簡易裁判所の調停委員会のあっせんで話し合う | 相手が応じなければ進まない。費用は債権者1社につき1,000円程度 |
| 個人再生 | 債務を減らし、原則3年で分けて払う。すべての債権者が対象 | 債務は住宅ローンを除き5,000万円以下。悪意の不法行為の分は減らせない |
| 民事再生(会社) | 開始前の請求は再生債権になり、計画どおりにしか払えない | 手続き中の売却は、監督委員の同意が要ることがある |
| 自己破産 | 3章・5章のとおり。対抗要件の有無で売掛金の行き先が変わる | 回収金の使い込みは免責で争いになりうる |
任意整理は、裁判所を通さず、返し方を債権者と決め直す方法です。整理する相手を選べるので、取引を続けたい相手を外すこともできます。償還請求権も未送金も無い契約なら、ファクタリング会社は整理の相手にならないのがふつうです。
反対に、未送金の回収金があるなら、任意整理で外すと、ファクタリング会社からの請求だけが残ります。2社間の契約では、未送金が続くと、ファクタリング会社が売掛先に通知して直接取り立てる条項が入っていることもあります。取引先に知られたくない事情があるなら、なおさら弁護士に契約書を見せ、交渉の相手に入れるかを決めます。
特定調停は、簡易裁判所の調停委員会があっせんして、返し方を話し合う手続きです。相手が話し合いに応じなければ進まず、裁判所が支払い条件を決めることもできません。返済の期間が3〜4年を超えると、債権者の納得を得にくいとされています。
個人再生:債務800万円の計算例
個人再生(小規模個人再生)では、債務の総額に応じて最低限払う額が決まっています。総額が3,000万円以下なら、5分の1と100万円の多い方が目安です(5分の1が300万円を超えるときは300万円)。※1
未送金の回収金300万円を含む債務800万円の個人事業主なら、最低弁済額は800万円の5分の1で160万円です。原則3年で払うので、月およそ4.4万円になります。※2ファクタリング会社の300万円も同じ割合で減り、60万円を払う計算です。ただし、悪意で加えた不法行為による損害賠償は、相手の同意が無いと減らせません。※3
会社の民事再生
民事再生では、会社が事業を続けながら手続きを進めます。※4開始前の原因で生じたファクタリング会社の請求は再生債権になり、再生計画の定めによらなければ払えません。※5※6監督委員が選ばれると、財産の処分などに同意が必要になり、同意の無い行為は無効です。※7再生中の資金繰りでファクタリングを使うなら、先に弁護士と監督委員に確かめます。
この章の根拠(7件)
- 民事再生法231条2項4号
- 民事再生法229条2項
- 民事再生法229条3項1号
- 民事再生法38条1項
- 民事再生法84条1項
- 民事再生法85条1項
- 民事再生法54条2項・4項
偽装ファクタリング・給与ファクタリングだった場合
中身が実は貸付けだったら、どう扱われるの?
貸付けとされる契約なら、債務整理では借金として債権者の一覧に載せます。給与ファクタリングは、金融庁が貸金業に当たるとし、2023年2月20日の最高裁の決定も貸付けに当たると判断しました。
金融庁は、ファクタリングを装った高金利の貸付けをするヤミ金融業者がいると注意を呼びかけています。売主が買い戻すことになっている契約や、売主の資金で業者に払う取り決めがある契約は、貸金業に当たるおそれがあるとしています。
中身が貸付けとされる契約なら、債務整理では「借金」として扱い、債権者の一覧に載せます。契約が無効とされる範囲や、すでに払ったお金をどう考えるかは、裁判例が積み重なっています。売買と貸付けを分ける物差しと、貸付けとされた場合の法律はファクタリングは違法か(合法な売買と貸付けとされた判例)にまとめています。
個人が給与を売る給与ファクタリングは、金融庁が貸金業に当たるとしています。2023年2月20日の最高裁の決定も、貸付けに当たると判断しました。詳しくは給与ファクタリングが違法な理由を見てください。
偽装ファクタリングの業者は、破産や債務整理の話をすると、勤め先や取引先への連絡をにおわせて取り立てることがあります。弁護士が依頼を受けて通知を出せば、窓口は弁護士に移るのが一般的です。取立てへの対処と相談先の選び方はファクタリングのトラブルの相談先にあります。
債務整理を考えたときにやること:相談までの5つの手順
債務整理を考えたら、まず何をすればいい?
新しい売却を止め、契約書・通知書・通帳の記録をそろえ、売った請求書ごとの一覧を作って弁護士に相談します。入金があっても、指示があるまで手を付けません。
ファクタリングを使っている人が債務整理を考えたら、相談の前に次の順で動きます。どれも、あとで管財人や裁判所に説明するための準備です。
- 新しい売却を止める:払えないと分かってからの売却は、否認や免責の問題になりえます。申込み中の契約も進めません。
- 契約の書類をそろえる:契約書、債権譲渡の通知書や承諾書、登記の書類、入金と送金の通帳の記録を集めます。
- 請求書ごとに一覧にする:売った請求書ごとに、売った日・額面・手取り・入金日・送金したかを書きます。まだ入金されていないもの、入金されたが送金していないものに印を付けます。
- 弁護士に相談する:ファクタリングの契約も、債権者の一覧に入れるかどうかを含めて隠さずに見せます。費用の不安があれば、法テラス(0570-078374)で無料の法律相談の条件を確かめられます。
- 受け取ったお金に手を付けない:依頼のあとに売掛先から入金があっても、使わずに弁護士の指示を待ちます。
3つめの一覧は、たとえば次のように作ります。数字は例です。
| 売った請求書 | 額面・手取り | 入金日 | 今の状態 |
|---|---|---|---|
| C社 9月分(2社間) | 200万円・180万円 | 10月31日 | 入金前。期日に自分の口座に入る予定 |
| D社 8月分(2社間) | 150万円・135万円 | 9月30日 | 入金済み・未送金。口座に残っている |
| E社 8月分(3社間) | 300万円・276万円 | 9月30日 | 売掛先がファクタリング会社に支払い済み |
この一覧があると、弁護士はどの請求書が債務として残るか(D社の150万円)、入金前で扱いを決める必要があるか(C社)、取引が終わっているか(E社)をすぐに判断できます。契約書の写しを、この順に並べて持っていくと相談が短くすみます。
- 今日新しい売却を止める申込み中の契約も進めない
- 1〜3日契約の書類をそろえる契約書・通知書・入金と送金の記録
- 1〜3日未入金・未送金を一覧に売った請求書ごとに、今どこにお金があるか
- 1週間以内弁護士に相談するファクタリングの契約を隠さず見せる
- 依頼のあと受け取ったお金に手を付けない扱いは弁護士の指示に従う
弁護士に依頼すると、弁護士から債権者に「依頼を受けた」という通知が送られ、連絡の窓口が弁護士になるのが一般的です。3社間で売掛先が直接払う契約なら、売掛先への連絡はファクタリング会社と弁護士の間で整理されます。
ファクタリングを使わない方がよい場合と、ほかの方法
破産を先送りするために使うのは、まずいの?
避けます。手数料の分だけ財産が減って配当が減り、否認や免責の問題を自分で増やすからです。毎月の不足を翌月の売掛金で埋めているなら、先に専門家と事業を続ける道を考えます。
払えない状態が続いているときに、破産を先送りするためにファクタリングを使うのは避けます。手数料の分だけ財産が減り、配当が減るうえ、否認や免責の問題を自分で増やすことになるからです。
使わない方がよいのは、たとえば次のような場合です。
- 毎月の不足を、次の月の売掛金を売って埋めている
- 売った代金で、ほかの借入の返済をしている
- 契約書の「破産の原因がない」という約束に、本当は当てはまらない
- 税金や社会保険料を滞納していて、売掛金が差し押さえられそう
こうした状態なら、先に専門家と、事業を続ける道があるかを考えます。銀行への返済条件の変更、税・社会保険料の猶予、中小企業活性化協議会などの窓口は、資金繰りが苦しいときの対処の順番で説明しています。会社と代表者の保証を一緒に整理する方法として、経営者保証ガイドラインに沿った整理もあります。
反対に、一時的な入金のずれで、決まった売掛金の入金で埋まる不足なら、ファクタリングが役に立つ場面もあります。どちらに当たるか迷うときは、資金調達診断で手段の候補を確かめられます。
よくある失敗と注意点
やってしまいがちな失敗って何?
「借金ではないから」と申告しない、入金を使ってしまう、直前に安く売ってしのぐ、などです。業者の「破産しても関係ない」も信じず、契約書を持って弁護士に確かめます。
- 「借金ではないから」とファクタリングを申告しない:未送金や保証が残っていれば債務です。うその債権者名簿は、免責が認められない事情になります。
- 入金されたお金を使ってしまう:2社間の回収金は渡すべきお金です。使い込みは免責をめぐる争いのもとになります。
- 申立ての直前に、安く売ってしのぐ:財産が減り、管財人に否認されることがあります。
- 売った代金で、一部の債権者にだけ返す:特定の債権者への返済は否認の対象になりえ、免責にも響きます。
- 3社間の承諾書や通知書を探さないまま相談する:確定日付があるかどうかで、売掛金の行き先が変わります。書類の有無が分からないと、弁護士も判断できません。
- 同じ請求書を2社に売る:二重譲渡は、破産の前後を問わず大きなトラブルになります。
- 業者の「破産しても関係ない」を信じる:扱いを決めるのは裁判所と管財人です。業者の説明ではなく、契約書を持って弁護士に確かめます。
最後に、ここで書いたのは一般的な決まりです。実際の扱いは、契約書の文言、対抗要件をいつそなえたか、お金の動きで変わります。手続きを選ぶ前に、契約書と通帳の記録を持って弁護士に相談してください。
出典(8件)公的機関の資料・法令。2026.10.18に確認
- 破産法(e-Gov法令検索)第2条・第34条・第47条・第78条・第100条・第160条〜第162条・第248条・第252条・第253条laws.e-gov.go.jp
- 民事再生法(e-Gov法令検索)第38条・第54条・第84条・第85条・第229条・第231条laws.e-gov.go.jp
- 民法(e-Gov法令検索)第446条・第467条laws.e-gov.go.jp
- 動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律(e-Gov法令検索)第4条laws.e-gov.go.jp
- 破産(裁判所)www.courts.go.jp
- 借金を整理する手続について(大分地方裁判所)www.courts.go.jp
- ファクタリングの利用に関する注意喚起(金融庁)www.fsa.go.jp
- 法テラス(日本司法支援センター)www.houterasu.or.jp
FAQ
よくある質問
ファクタリングは自己破産で借金として扱われますか?
本来のファクタリングは売掛金の売買なので、受け取った代金は借金ではありません。ただし、2社間で売掛先から受け取ったお金をまだ渡していない、償還請求権や買戻しの約束がある、表明保証に反していた、代表者が保証している、といった場合は債務として残ります。どれに当たるかを含めて、契約書を弁護士に見せて確かめます。
ファクタリングを利用中に破産したら、売った売掛金はどうなりますか?
2社間か3社間か、債権譲渡登記をしたかで変わります。3社間で確定日付のある承諾があるか、法人が登記をしていれば、売掛金はファクタリング会社のものとして扱われます。2社間で登記も通知もしていなければ、破産管財人に主張できず、売掛金が破産財団に入り、ファクタリング会社は破産債権者として配当を受ける扱いになりえます。
ファクタリングは任意整理の対象になりますか?
売買が終わり、償還請求権も未送金も無い契約なら、整理する債務が無いので任意整理の相手にならないのがふつうです。未送金の回収金や償還請求権がある場合は、債務として交渉の対象になりえます。中身が貸付けとされる偽装ファクタリングなら、借金として扱います。任意整理は整理する相手を選べるので、弁護士と相談して決めます。
2社間ファクタリングの回収金を使い込んだまま自己破産できますか?
破産の申立て自体はできます。使い込んだ回収金の分は破産債権になりますが、ファクタリング会社が悪意で加えた不法行為による損害賠償だと主張し、免責の対象外だと争うことがあります。また、うその債権者名簿は免責が認められない事情です。使い込みを隠さず、契約書と通帳の記録を持って早めに弁護士に相談します。
破産する直前にファクタリングを使うと問題になりますか?
なりえます。払えない状態になってから売掛金を安く売ると財産が減り、破産管財人に否認されることがあります。例えば売掛金500万円を手数料30%で売れば、財産は150万円減ります。売った代金で一部の債権者だけに返した場合も否認の対象になりえ、個人では免責が認められない事情に当たると見られるおそれがあります。
個人事業主がファクタリングの債務を抱えて個人再生をするとどうなりますか?
小規模個人再生では、債務の総額が3,000万円以下なら、5分の1と100万円の多い方を原則3年で払うのが目安です。未送金の回収金300万円を含む債務800万円なら最低弁済額は160万円で、月およそ4.4万円です。ファクタリング会社の300万円も同じ割合で減ります。ただし悪意の不法行為による損害賠償は、相手の同意が無いと減らせません。
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