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契約更新 2026.10.16

2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの違い。費用・早さ・売掛先から見えること

結論

2社間は自社とファクタリング会社だけで契約し、売掛先から入った代金を自社が送る方式、3社間は売掛先の承諾を得て、売掛先がファクタリング会社へ直接払う方式です。3社間は率が低くなりやすい反面、承諾が出るまで入金されません。図鑑の調査では両方の率を公表する25社のうち13社が同じ率を書いており、「3社間なら安い」かどうかは会社ごとに確かめる必要があります。

  • 21分読み終わるまで
  • 10章見出し
  • 9件公的な出典

フファクタリング図鑑編集部(執筆)・公開 2026.10.15

2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの違い。費用・早さ・売掛先から見えること
01

先に結論:違うのは「代金の通り道」と「売掛先の承諾」

ファクタリングは、売掛金(売掛先から後で受け取る代金)を期日前にファクタリング会社へ売って現金にする取引です。金融庁は、法的には債権の売買(債権譲渡)契約だと説明しています。2社間と3社間の違いは、この売買に売掛先が加わるかどうかです。

  • 2社間ファクタリング:契約するのは自社とファクタリング会社だけ。売掛先は譲渡を知らないまま、期日に自社の口座へ払います。自社はそのお金をファクタリング会社へ送ります。
  • 3社間ファクタリング:売掛先に譲渡を伝えて承諾をもらい、期日には売掛先がファクタリング会社へ直接払います。

「3社間なら安い」と言われたときに確かめたいのは、次の4点です。

比べる点 2社間 3社間
費用 高めになりやすい。回収を自社に任せるぶんの危険が率に乗る 低めになりやすい。ただし図鑑の調査では、両方の率を公表する会社の約半数が同じ率を書いている
入金の早さ 売掛先とのやりとりがないので、書類がそろえば早い 売掛先の承諾が出るまで進まない。日数は売掛先の社内手続きしだい
売掛先から見えること ふだんは何も変わらない 譲渡の事実、売った請求書、新しい振込先
自社に残る危険 回収した代金を期日どおり送る義務。使い込みや二重譲渡のトラブル 承諾をもらう過程で、売掛先との関係に影響が出るおそれ

このページでは、お金と書類の流れを並べたうえで、図鑑のデータ、計算例、承諾の頼み方、3社間が向かない場面、2社間ならではの危険の順に見ていきます。売掛先に知られるきっかけそのものは取引先に知られるか、登記の手続きと費用は債権譲渡登記とはで扱っています。

02

お金と書類の流れを、日付の順に並べる

両者の違いは、契約書の名前ではなく「いつ、誰が、何に署名し、期日の代金がどの口座に入るか」に表れます。売掛金100万円・期日が月末という同じ請求書を、それぞれの方式で売る場合を日付の順に並べます。

2社間の場合

時期 自社がすること ファクタリング会社 売掛先
申込み 請求書、取引の基本契約書や発注書、入金が分かる通帳の写しを出す 売掛先の信用と取引の実在を確かめる 関わらない
契約 債権譲渡契約書に署名する。回収した代金の送り方を決めた条項(集金の委託)もここに入る 買取額と手数料を確定する。会社によっては登記を申請する 関わらない
入金 手数料を引いた買取代金を受け取る 自社の口座へ振り込む 関わらない
期日 売掛先から入った100万円を、決められた期限までにファクタリング会社へ送る 送金を確かめて取引を終える いつもどおり自社の口座へ払う

2社間の契約では、売掛先への通知を「しない」のではなく「しないでおく」形がとられます。金融庁が紹介する裁判例にも、通知などの手続きは先送りされているが、ファクタリング会社の判断でいつでも行えた、という事案があります。どんな場合に通知されるかは契約書に書かれるので、署名の前に読んでください。

3社間の場合

時期 自社がすること ファクタリング会社 売掛先
申込み 2社間と同じ書類を出し、3社間を希望すると伝える 売掛先の信用と取引の実在を確かめる まだ関わらない
承諾の依頼 売掛先の担当者に事情を説明し、承諾書の書式を渡す 承諾書の文面を用意する。売掛先に直接確認の連絡をする会社もある 社内で確認し、承諾書に記名押印する
契約 債権譲渡契約書に署名する 承諾書を受け取り、確定日付をとることがある 支払先の変更を社内の支払い台帳に登録する
入金 買取代金を受け取る 自社の口座へ振り込む —
期日 何もしない(誤って自社に入金されたら、すぐ転送する) 売掛先から直接受け取る ファクタリング会社の口座へ払う

書類の違いだけを抜き出すと

  • 両方で出す書類:債権譲渡契約書(自社とファクタリング会社が署名)、請求書、取引を裏づける書類、本人確認の書類。
  • 2社間に加わることがあるもの:債権譲渡登記の申請に使う書類。契約書には、一定の場合にファクタリング会社が売掛先へ通知できるとする条項が入ることがあります。
  • 3社間に加わるもの:売掛先の承諾書。売掛先の担当部署・決裁者・押印が必要になります。

承諾書は、売掛先以外の相手(同じ請求書を買ったと主張する別の会社や、差押えをした債権者など)にも譲渡を主張できるよう、確定日付のある書面にすることがあります。※1確定日付は、公証役場で私文書に日付の印を押してもらう方法や、内容証明郵便で得られます。※2公証役場で押してもらう手数料は1件700円です。※32社間では通知も承諾もしないので、この役目を登記が代わりに果たします。その仕組みは債権譲渡登記とはにまとめています。

この章の根拠(3件)
  1. 民法467条2項
  2. 民法施行法5条1項2号・6号
  3. 公証人手数料令37条
03

図鑑のデータ:2社間・3社間を扱う会社の数と入金の早さ

ファクタリング図鑑に載せている86社の公式サイトを、2026年10月15日に1社ずつ確かめた記録から集計しました(診療報酬・介護報酬を扱う会社を含みます)。

どちらを扱っているか

公式サイトの記載 社数 特徴
2社間と3社間の両方 44社 上限を1億円より上に書く7社はすべてこのグループ。12社は医療・介護の売掛金も扱う
2社間だけ(3社間の記載なし、または扱わないと明記) 26社 フリーランス向けの4社や、少額から受け付ける会社が多い。うち2社は3社間を扱わないと明記
3社間だけ 5社 リース会社や証券会社の系列、診療報酬・介護報酬を扱う会社。個人事業主を対象と書く会社はない
どちらとも書いていない 11社 —

3社間を選びたいなら、申込み先は「両方」の44社と「3社間だけ」の5社に絞られます。2社間だけの26社に3社間を頼んでも、受け付けてもらえないことがあります。

最低額と個人事業主

2社間だけの26社のうち、最低額を書いている12社では、8社が10万円以下から受け付けています(1万円からが4社)。個人事業主も対象とする会社は26社中18社です。両方を扱う44社でも、最低額を書く25社のうち10万円以下は9社にとどまり、30万円や50万円からという会社が目立ちます。少額の請求書を個人で売る場合は、選べる会社の多くが2社間専門になります。

登記の扱い

登記について公式サイトに書いている会社だけで見ると、2社間だけの会社は17社中15社が「不要」か「原則不要」でした。両方を扱う会社は、書いている20社のうち「原則必要」が7社、「場合による」が5社、「不要」「原則不要」が8社と分かれます。2社間だけの会社には少額を扱う会社が多く、少額では登記の実費が重くなるため、登記をしない運用に寄っていると考えられます。

入金の早さ

公式サイトの「最短」の中央値は、2社間だけの会社が3時間30分、両方を扱う会社が4時間で、ほとんど差がありません。ただし、両方を扱う会社の「最短」は、売掛先の承諾を待たない2社間を前提にした数字と考えるのが自然です。3社間の入金の早さを分けて書いている会社は、図鑑の調査では見当たりませんでした。

3社間だけの5社のうち、最短を書いている3社は3日・7日・14日です。2社間だけの26社でも、翌日以降と書く会社が6社あります。銀行系やオンラインの請求書買取のように、審査を自動化しているかわりに当日の入金をうたわない会社です。

3社間の日数を決めるのは、ファクタリング会社よりも売掛先の社内手続きです。担当者の確認、経理の承認、押印、支払い台帳の変更と進むので、早くても数日、月の締めをまたぐと次の支払い処理まで待つこともあります。期日まで2週間を切った請求書では、3社間は間に合わないことがあると考えてください。

04

「3社間なら安い」はどこまで本当か:公表値の差

同じ86社のうち、2社間と3社間それぞれの手数料の下限を公式サイトに書いている会社は25社でした。

2社間と3社間の率の書き方 社数
同じ率を書いている(区別していない) 13社
3社間の下限を2社間より低く書いている 11社
下限は同じで、上限だけ3社間を低く書いている 1社

つまり、両方の率を書く会社の約半数は、3社間にしても公表上の率が変わりません。そうした会社で3社間を選ぶと、承諾の手間と日数だけが増えることになりかねません。

率を分けている12社では、どれだけ違うか

1社ずつ「2社間の下限−3社間の下限」を引くと、差は0〜4ポイントで、中央値は3ポイントでした。上限も両方書いている8社では、上限の差は1.5〜10.1ポイントで、半数が3ポイント以下です。下限の差は小さく、上限の差のほうが大きく開く会社があります。条件が悪いときほど、2社間の率は上に伸びやすいということです。

もう一つ読み取れるのは、広告の数字の出どころです。12社のうち11社は、サイトでいちばん低い数字が3社間の下限でした。トップページの「○%〜」が3社間の率で、2社間はもっと高いところから始まる、という書き方は珍しくありません。2社間で申し込むなら、2社間の欄の率を確かめてください。

3社間だけの5社のうち率を書いている3社は、下限が0.2〜0.4%です。いずれも診療報酬・介護報酬のように公的な機関が支払う売掛金を扱う会社で、一般の請求書の率とは比べられません。公表値全体の分布や、2社間・3社間の中央値は手数料の相場で示しています。

なぜ差がつくのか

3社間では、売掛先が承諾した時点で、ファクタリング会社は売掛先に対して「この代金は自分に払ってほしい」と言える立場になります。※1代金は自社を通らずに届くので、自社が送金しない、同じ請求書を別の会社にも売る、といった危険が小さくなります。2社間ではこの危険をファクタリング会社が抱えたままになり、その分が率に上乗せされます。率の差は「自社をどこまで信用してもらえるか」の差とも言えます。

この章の根拠(1件)
  1. 民法467条1項
05

実質年率で比べる:同じ請求書を2つの方式で売った場合

率だけでなく、入金日から期日までの日数も合わせて比べます。このサイトでは、実質年率を次の式で計算します。

実質年率=手数料額 ÷ 手取り額 ÷ 入金までの日数 × 365

以下の数字は計算のしかたを示す仮の例で、相場を示すものではありません。

例1:率に差がある会社で、3社間の承諾に6日かかる

売掛金200万円、今日から期日まで45日。2社間は率8%で翌日に入金、3社間は率3%で、承諾が出るまで6日かかり7日目に入金するとします。

2社間 3社間
手数料 16万円(8%) 6万円(3%)
手取り 184万円 194万円
入金から期日までの日数 44日 38日
実質年率 16÷184÷44×365=約72% 6÷194÷38×365=約30%

手取りの差は10万円です。3社間の承諾書に公証役場で確定日付をとる700円を足しても、年率は約30%のままです。6日待てるなら、3社間のほうがはっきり得になります。

例2:2社間と3社間で同じ率を書いている会社

同じ200万円・45日の請求書で、どちらも率5%(手数料10万円、手取り190万円)とします。2社間は44日で10÷190÷44×365=約44%、3社間は入金が6日遅れて38日になり、10÷190÷38×365=約51%です。手数料の額は同じなのに、お金を手にするのが遅いぶん、年率は3社間のほうが重くなります。率が同じなら、3社間を選ぶ理由は費用ではなく、二重譲渡や送金の手間がなくなることだけです。

例3:公表値の差の中央値(3ポイント)を当てはめる

売掛金100万円・期日まで30日として、2社間5%なら5÷95÷30×365=約64%、3社間2%なら2÷98÷30×365=約25%です。100万円あたりの差は3万円です。年に何度も使うなら、この差は回数分だけ積み上がります。

例から分かること

  • 3社間の得は「率の差」から「待つ日数の重さ」を引いたものです。率の差が大きく、承諾が早く出るほど得になります。
  • 率の差がない会社では、3社間は遅いぶん損になりえます。
  • いちばん大きな損は、承諾が間に合わず支払いに遅れることです。支払いの期限が先に来るなら、率より日付を優先してください。

円で比べるか、年率で比べるか

1回きりの利用なら、最後に効くのは「いくら手元に残るか」という円の額です。例1なら3社間のほうが10万円多く残ります。一方、年率は、融資やほかの調達方法と並べるときの物差しです。3社間の約30%でも、銀行や公庫の融資の金利よりはずっと高い水準です。「3社間にすれば安い」は2社間と比べた話で、資金調達の中で安いという意味ではありません。

手元の数字は手数料と実質年率の計算で試せます。

06

3社間で売掛先に承諾をお願いする手順と依頼文の例

3社間でいちばん気が重いのは、売掛先への切り出し方です。相手は承諾する義務を負っていないので、手間をかけずに判断できる材料をそろえて頼むのが近道です。

手順

  1. 先にファクタリング会社と条件を決める:率、買取額、承諾書の書式、振込先の口座を確定させてから売掛先に連絡します。条件が決まらないうちに頼むと、二度手間になります。
  2. 窓口を選ぶ:ふだんの発注担当者に話を通してから、経理の担当者を紹介してもらうと進みやすくなります。
  3. 依頼文と承諾書を一緒に送る:何を承諾してほしいのかが1枚で分かるようにします。
  4. 期限を伝える:いつまでに返送してもらえると助かるかを書きます。月末の締め処理と重なると遅れやすいので、締めの前に頼みます。
  5. 支払先の変更が反映されたかを確かめる:承諾書の返送後、売掛先の支払い台帳に新しい振込先が登録されたかを確かめます。

依頼文の例

次は、メールや書面で送る文の一例です。社名や数字は自社のものに置き換えてください。

件名:〇月〇日お支払い分の振込先変更についてのお願い

株式会社〇〇 経理ご担当 〇〇様
いつもお取引いただき、ありがとうございます。
このたび、仕入れの資金に充てるため、貴社宛ての請求書(〇年〇月〇日付、請求番号〇〇、金額〇〇円、お支払い期日〇月〇日)の代金を受け取る権利を、株式会社△△(ファクタリング会社)へ譲り渡すことにいたしました。
つきましては、添付の承諾書にご記名・ご押印のうえ、〇月〇日までにご返送いただけますでしょうか。
お支払いの金額と期日は変わりません。変わるのは振込先のみで、新しい振込先は承諾書に記載の△△の口座です。
今後の取引の条件や納品には影響ありません。ご不明な点は、弊社〇〇(電話〇〇)までお問い合わせください。
株式会社□□ 代表取締役 〇〇

承諾書に入る主な項目

  • 譲渡する請求書の特定(日付、番号、金額、期日)
  • 譲り受ける会社の名前と、新しい振込先の口座
  • 売掛先が譲渡を承諾する旨、承諾の日付、記名押印

承諾書の文面の例

書式はファクタリング会社が用意することが多いものの、中身は次のような短い文です。

承諾書
株式会社△△ 御中/株式会社□□ 御中
当社は、株式会社□□が当社に対して有する下記の売掛金を、株式会社△△に譲渡したことを承諾します。下記の売掛金は、支払期日に株式会社△△の指定する口座へ支払います。
記 請求日〇年〇月〇日、請求番号〇〇、金額〇〇円、支払期日〇年〇月〇日/振込先 〇〇銀行〇〇支店 普通 〇〇〇〇〇〇〇 株式会社△△
〇年〇月〇日 株式会社〇〇(売掛先)代表取締役 〇〇 印

売掛先が知るのは、譲渡したという事実、譲渡先の名前、その請求書の金額と期日、新しい振込先までです。手数料の率や買取額は承諾書に書かれないので、売掛先に伝わることはありません。

承諾しても、売掛先が自社に対して持っていた言い分は消えません。たとえば納品物の不具合による値引きや、売掛先が自社に持つ別の債権との相殺は、承諾の後でも主張できる場合があります。※1※2ファクタリング会社が「売掛先に対して買掛金がないか」「値引きの話が出ていないか」を聞くのはこのためです。隠さず伝えてください。

断られたとき

売掛先が断るのは、社内規程で個別の譲渡を受け付けない、支払先の管理を増やしたくない、といった事務の理由も多いものです。断られたら食い下がらず、2社間にするか、ファクタリング以外の方法に切り替えます。承諾を頼んだ事実は相手に残るので、その後の取引で説明を求められたときに備え、資金の使い道を一言で話せるようにしておくと安心です。

この章の根拠(2件)
  1. 民法468条1項
  2. 民法469条1項
07

3社間ができない場合・やめたほうがよい場合

そもそも成り立たない、または難しい

  • 売掛先が承諾しない:承諾は売掛先の任意です。断られたら3社間は進みません。
  • 期日までの日数が足りない:承諾と支払い台帳の変更が期日に間に合わなければ、代金は自社に払われてしまいます。
  • 3社間を扱わない会社にしか申し込めない:図鑑の調査では、2社間だけの会社が26社あります。少額や個人事業主向けの会社に多い形です。
  • 売掛先が個人:売掛先が個人の請求書を対象と明記する会社は、図鑑の86社中5社だけです。3社間でも事情は同じです。

契約で譲渡が制限されているとき

売掛先との契約に「この代金を受け取る権利を他人に譲ってはならない」という特約があっても、譲渡そのものは無効になりません。※1ただし、特約を知っていた、または重大な不注意で知らなかった譲受人に対しては、売掛先は支払いを拒んで自社に払うことができます。※2また売掛先は、代金を法務局(供託所)に預けて支払いを済ませることもできます。※33社間で売掛先の承諾を得れば、この問題を契約の時点で片づけられます。逆に言えば、特約がある請求書は、承諾なしに2社間で売っても受け付けてもらえないことがあります。

国や自治体の工事の契約では、国が示す標準の約款に、代金を受け取る権利を譲るにはあらかじめ発注者の承諾がいると定められています。※4同じ約款には、資金が足りないことを示せば発注者が原則として承諾する、という定めを選んで使える条項もあり、その場合は得たお金を当の工事以外に使えません。※5公共工事の代金を売るなら、発注者の承諾を前提に段取りを組むことになります。建設業の事情は建設業のファクタリングで扱っています。

できるが、やめたほうがよいとき

  • 売掛先との取引条件の見直しが近い:単価交渉や契約更新の前に資金の事情を知らせると、交渉で不利になることを心配するなら、時期をずらします。
  • 売掛先が1社に偏っている:売上の大半を占める相手との関係に少しでも影響が出ると、事業全体が揺らぎます。
  • 率が2社間と変わらない:例2のとおり、3社間にする費用面の得がありません。
  • 毎月くり返す予定:毎月の承諾依頼は売掛先の負担になります。続けて使うなら、売掛先に支払いの早期化を相談するほうが筋がよいこともあります。
この章の根拠(5件)
  1. 民法466条2項
  2. 民法466条3項
  3. 民法466条の2第1項
  4. 公共工事標準請負契約約款5条1項
  5. 公共工事標準請負契約約款5条3項・4項
08

2社間ならではの危険:回収金の引き渡しと二重譲渡

回収した代金は「預かっているお金」

2社間では、期日に自社の口座へ入る代金は、すでにファクタリング会社のものです。自社は集金を任されているだけなので、入金されたら契約で決めた期限までに全額を送ります。ほかの支払いに回すのは、手元のお金が足りないときでも契約違反です。

実務で問題になりやすいのは、次の場面です。

  • 売掛先の支払いが遅れた:期日に入金がなければ、遅れていることと見込みの日をすぐ連絡します。黙っていると、使い込みを疑われ、売掛先へ通知される理由になりえます。
  • 一部だけ入金された、値引きされた:差額をどう扱うかは契約しだいです。入金額をそのまま伝え、指示を受けます。
  • ほかの入金とまとめて振り込まれた:売掛先が複数の請求書をまとめて払うと、どれが売った分か分からなくなります。請求書ごとの内訳を控えておきます。
  • 送金の振込手数料:誰が負担するかを契約で確かめます。少額をくり返す場合は無視できない額になります。

送金できなかったときに何が起きるか

本来のファクタリングでは、売掛先が倒産などで払えなかったときの損は、ファクタリング会社が負います。金融庁は、集金を売主に任せたうえで、集金できなかったときに売主が買い戻す、または自分のお金で払うと決めている取引は、貸金業に当たるおそれがあると注意しています。契約書にノンリコース(売掛先が払えなくても売主は返さなくてよいこと)と書いてあっても、形だけでなく実態で判断されます。2社間はこの形になりやすいので、「売掛先が払えなかったとき、自社に支払いを求められるか」を契約前に書面で確かめてください。詳しくは償還請求権とはで説明しています。

反対に、売掛先からは入金があったのに自社が送らなかった場合は、自社の契約違反です。違約金や、売掛先への通知、残りの取引の打ち切りにつながります。送金できない事情があるなら、期日の前に相談してください。

同じ請求書を2社に売らない

2社間では売掛先が譲渡を知らないので、同じ請求書を別の会社にも売れてしまいます。これが二重譲渡です。どちらの会社が代金を受け取れるかは、先に通知・承諾や登記をそなえた側で決まり、負けた側との間では自社が責任を問われます。乗り換えや他社との併用で起きやすく、手順を間違えると意図せずにやってしまうこともあります。避け方は乗り換え・併用・二重譲渡にならない手順にまとめています。

3社間では売掛先が支払先の変更を承知しているので、同じ請求書をもう一度売ろうとしても、ふつうは売掛先の段階で止まります。二重譲渡の心配が小さいのも、3社間の利点の一つです。

09

どちらを選ぶか:判断の順番

迷ったら、次の順に答えていくと決めやすくなります。

  1. 支払いの期限まで何日あるか:1週間を切っていて、売掛先の承諾が間に合う見込みがないなら2社間しかありません。
  2. 売掛先に相談できる関係か:相談できない、または関係に影響が出ると困るなら2社間です。譲渡制限の特約がある場合は、承諾を得る3社間を考えます。
  3. 申し込む会社は3社間の率を分けているか:同じ率なら、3社間にする費用の得はありません。
  4. 率の差を年率に直すとどうか:例1のように差が大きければ、数日待つ価値があります。
  5. 2社間なら、期日に確実に送金できるか:売掛先の入金とほかの支払いが同じ日に重なるなら、送金を先に済ませる段取りを決めておきます。

よくある失敗

  • 「3社間なら安い」と聞いて頼んだが、率が変わらなかった:申込み先が2社間と3社間で同じ率を書く会社だった。見積りで両方の率を並べてもらえば防げます。
  • 承諾を待つ間に支払い日が来た:売掛先の月末の締めと重なり、承諾書の返送が1週間以上遅れた。期日が近い請求書は、最初から2社間と比べておきます。
  • 3社間にしたのに、代金が自社の口座に入った:売掛先の支払い台帳が変わっていなかった。入ったお金はファクタリング会社のものなので、すぐ転送し、売掛先にも振込先の変更を再度お願いします。
  • 2社間で回収した代金を、給料の支払いに回してしまった:送金が遅れ、売掛先に通知が行った。送金の期限とほかの支払いの日付を、契約の前に1枚の表に並べておきます。
  • トップページの率を2社間の率だと思った:広告の「○%〜」は3社間の下限だった。図鑑の調査でも、率を分けて書く12社中11社はこの書き方です。

見積りのときに聞くこと

  • 2社間と3社間それぞれの率と手取り額(同じ請求書で両方を出してもらう)
  • 3社間の承諾書の書式と、承諾が出てから入金までの日数
  • 2社間の送金の期限、振込手数料の負担、入金が遅れたときの扱い
  • どんな場合に売掛先へ通知するか、登記をするか
  • 売掛先が払えなかったとき、自社に支払いを求められるか

答えは書面やメールで残しておくと、契約書と食い違ったときに確かめられます。契約書の読み方は契約書で確かめる箇所をご覧ください。

10

使わない方がよい場合と、ほかの方法

2社間でも3社間でも、毎月使わないと支払いが回らない状態なら、使うほど手数料で手元のお金が減っていきます。金融庁も、高額な手数料はかえって資金繰りを悪化させ、多重債務に陥る危険があると注意しています。

次のどれかに当てはまるなら、どちらの方式でも立ち止まってください。

  • 手数料を引いた手取りでは、目の前の支払いに足りない
  • 毎月の赤字を埋めるために、来月も再来月も売ることになりそう
  • 融資の入金が支払いの期限に間に合う
  • 買取額が請求額に比べて著しく低い(金融庁は偽装ファクタリングの疑いがある例に挙げています)
  • 売掛先が払えなかったときに自社が買い戻す条件を求められている

ほかの方法には次のようなものがあります。

  • 売掛先に支払いの前倒しを頼む:3社間の承諾を頼める関係なら、同じ相手に早く払ってもらえないか相談する余地があります。手数料はかかりません。取引先の支払期日のルールは売掛金を入金前に現金化する方法で触れています。
  • 銀行や日本政策金融公庫の融資:入金まで時間はかかりますが、費用は抑えやすくなります。違いはファクタリングと融資の違いにあります。
  • 仕入れ先や外注先に支払いの延期を相談する。
  • 税金の納付が重なっているなら、税務署に猶予を申請する:国税庁は、一度に納めることが難しい場合に、換価の猶予や納税の猶予が認められる場合があると案内しています。

どの方法が合うか迷うときは資金調達診断で整理できます。条件に合う会社は図鑑で、2社間・3社間の扱いを絞り込んで探せます。

出典(9件)公的機関の資料・法令。2026.10.16に確認
  1. ファクタリングの利用に関する注意喚起:金融庁www.fsa.go.jp
  2. 民法|e-Gov法令検索laws.e-gov.go.jp
  3. 民法施行法|e-Gov法令検索laws.e-gov.go.jp
  4. 公証人手数料令|e-Gov法令検索laws.e-gov.go.jp
  5. 動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律|e-Gov法令検索laws.e-gov.go.jp
  6. 法務省:債権譲渡登記制度の概要www.moj.go.jp
  7. 公共工事標準請負契約約款(中央建設業審議会):国土交通省www.mlit.go.jp
  8. 建設工事標準請負契約約款について:国土交通省www.mlit.go.jp
  9. No.9206 国税を期限内に納付できないとき|国税庁www.nta.go.jp

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