手数料更新 2026.11.05
掛け目とは?ファクタリングで全額が入らない理由と、残りが戻る時期
ファクタリングの掛け目は、請求額のうち、いま受け取れるお金の割合です。全額が入らないのは手数料が引かれ、会社によっては一部を留保金として回収後まで預かるからです。意味の違い、残りが戻る時期、計算例をまとめました。
初めての方へファクタリングを使う前に知る5つのこと・申込みから入金まで →
フファクタリング図鑑編集部(執筆)・公開 2026.11.08

ファクタリングの見積もりで「掛け目80%」と言われ、請求額の全額が入らないと知って戸惑う人は少なくありません。掛け目(かけめ)は、請求額のうち、いま受け取れるお金の割合を表す言葉です。この記事では、掛け目が会社によって違う意味で使われていること、全額が入らない理由、残りのお金(留保金)が戻る時期と戻らない場合を、計算例とあわせて説明します。
この記事を6枚で
1 / 6結論:掛け目は「請求額のうち、いま受け取れる割合」。残りは手数料か、回収後に戻るお金
掛け目って、要するに何の数字なの?
請求額のうち、いま受け取れるお金の割合です。残りは戻らない手数料か、回収の後に戻る留保金のどちらか。どちらかは会社ごとに違います。
ファクタリングで請求額の全額が入らないのは、請求額から手数料が引かれるからです。それに加えて、会社によっては請求額の一部を預かったままにし、取引先からの回収が済んでから払う契約があります。この預かる分を「留保金」(りゅうほきん)と呼びます。
つまり、請求額は次の3つに分かれます。先に受け取るお金・回収後に戻るお金・手数料です。掛け目という言葉が、このうちどれを指しているかは会社によって違います。数字だけを比べると、同じ「80%」でも手取りがまったく違うことがあります。
100万円の請求書なのに、80万円しか入らないの?
残りのうち10万円は回収の後に戻ってくる。戻らないのは手数料の10万円だけだよ。
- 掛け目には「買取額の割合(手数料を引いた後)」と「先に払う割合(残りは留保)」の2つの使われ方があります。融資の掛目は別の意味です
- 留保金が戻るのは、多くの契約で取引先の支払いが済んで精算した後です。2社間なら、自分が回収したお金をファクタリング会社に送った後になります
- 値引きや相殺で取引先の支払いが減ると、留保金から差し引かれて戻る額が減ることがあります。どう精算するかは契約書の条項で決まります
- ファクタリング図鑑で一般の請求書を扱う168サービス(2026年11月5日時点)の記録に、掛け目や買取率の数字を書いた会社はありませんでした。掛け目は審査の後に個別に決まります
この記事では、掛け目の意味の違い、全額が入らない理由、残りが戻る時期、計算例、見積書と契約書の読み方、残りが戻らないとき、掛け目を上げてもらうための準備、ほかの方法を順に書きます。審査のどの点が掛け目や手数料に響くかはファクタリングの審査で見られることに、手数料の率の相場はファクタリング手数料の相場にまとめています。
掛け目の意味は1つではない:買取率・先払いの割合・融資の掛目
「買取率」と「掛け目」は同じもの?
同じ意味で使う会社も、違う意味で使う会社もあります。買取率80%なら80万円で終わり、先払い80%なら残りから手数料を引いて戻ります。
掛け目は法律で決まった言葉ではありません。ファクタリングの見積もりや説明では、主に次の2つの意味で使われています。さらに、銀行などの融資で使う「掛目」は、似た言葉ですが別の仕組みです。
| 使われ方 | 指しているもの | 請求額100万円・「掛け目80%」のとき |
|---|---|---|
| ① 買取率としての掛け目 | 手数料を引いた後に受け取る額の割合 | 80万円を受け取って終わり。20万円が手数料 |
| ② 先払いの割合としての掛け目 | 契約のときに先に払う額の割合。残りは回収後に精算 | 先に80万円。残り20万円から手数料を引いた額が後で戻る |
| ③ 融資(ABL)の掛目 | 担保に入れた売掛金のうち、借りられる額の割合 | 80万円まで借りられる。売掛金は売らず、借りたお金は返す |
表のとおり、同じ「80%」でも、①なら手数料は20万円、②なら手数料は残りの20万円の中から引かれるので、20万円より少ないこともあります。「80%」という数字だけでは、手数料がいくらかは分かりません。見積もりでは、言葉ではなく金額で確かめます。
③の融資の掛目は、売掛金を担保に入れてお金を借りる売掛債権担保融資(ABL)で使う言葉です。売掛金を売るファクタリングとは仕組みが違い、借りたお金には返済があります。ABLの掛目と借りられる額の計算は売掛債権担保融資(ABL)とはで説明しています。
見積もりの例:同じ請求書に2社から届いた見積もり
請求額100万円の請求書で、2社から次の見積もりが届いたとします(架空の例です)。A社は「買取率85%」で、契約の日に85万円を払い、後の精算はありません。B社は「掛け目90%・手数料8%」で、契約の日に90万円を払い、回収後に残りの10万円から手数料8万円を引いた2万円を払います。
契約の日に使えるお金はB社の方が5万円多く、受け取る合計もA社の85万円に対してB社は92万円です。この例では、数字の小さく見える「85%」と「90%」の差以上に、条件の差が大きいことが分かります。逆に、先払いが多くても後で戻る額が小さかったり、戻る条件が厳しかったりする見積もりもあります。両方を金額にして並べることが大切です。
「買取率」「前払い率」「留保金」など、会社ごとの呼び方
同じものでも、会社によって呼び方が違います。①を「買取率」「買取額」と書く会社、②の先に払う分を「前払い金」「一次払い」、後で戻る分を「留保金」「保証金」「残金」と書く会社があります。言葉がそろっていないので、見積書を受け取ったら、言葉ではなく「いつ・いくら・何が済んだら払われるか」を書き出して比べます。
請求額の全額が入らない理由:手数料と留保金
なんで全部まとめて払ってくれないの?
取引先が値引きや相殺で減らして払うことがあるからです。売った後でも取引先はそれを主張できるので、減るかもしれない分を預かっておく、という考え方です。
手数料は、ファクタリング会社が売掛金を買い取る対価として差し引くお金です。売掛先が払わない危険や、回収までの期間、事務の手間をもとに決まります。一方、留保金は手数料とは別の考え方で、取引先からの回収が請求額どおりにいかなかったときに備えて、ファクタリング会社が一時的に預かるお金です。
取引先からの回収が請求額どおりにいかないのは、次のようなときです。
- 値引き・返品:納品した商品に不良があり、取引先が値引きを求めて減らして払う
- 相殺:取引先も自社に請求(材料の支給代、協力会費など)を持っていて、差し引いて払う
- 振込手数料の差し引き:取引先が振込手数料を引いて払う
- 支払いの遅れ:取引先の支払いが期日より遅れる
とくに値引きや相殺は、売掛金を売った後でも、取引先が主張できる場合があります。売掛先は、売ったことを知らされる前から自社に言えた理由を、買った側にも言えるからです。※1 ファクタリング会社から見ると、請求額の100%を回収できる保証はありません。そこで、減るかもしれない分をあらかじめ預かり、回収が済んでから精算する、というのが留保金の考え方です。
手数料と留保金の違い
手数料と留保金は、どちらも「契約のときに受け取れないお金」ですが、性格がまったく違います。手数料はファクタリング会社の取り分で、戻ってきません。留保金は預けているだけのお金で、回収が済めば戻るのが原則です。
| 比べる点 | 手数料 | 留保金 |
|---|---|---|
| 何のためのお金か | 売掛金を買い取る対価 | 回収が減ったときに備えて預かる |
| 戻ってくるか | 戻らない | 回収と精算が済めば戻る |
| 額が変わるとき | 契約で決まった後は変わらないのがふつう | 値引き・相殺などで減ることがある |
| 見積書での見え方 | 率と金額で書かれる | 「後で振り込まれる額」として書かれる |
| 帳簿での扱い | 売却の損として費用になる | まだ受け取っていない代金として残る |
見積書で「掛け目」とだけ書かれていると、この2つが1つの数字に混ざって見えます。差し引かれる額のうち、戻らない手数料がいくらで、戻る留保金がいくらかを分けてもらうと、本当の費用が分かります。
留保金がない契約も多い
すべてのファクタリングに留保金があるわけではありません。手数料を引いた額をまとめて払い、後の精算がない契約も多くあります。留保金があるかどうかは、見積もりの段階で「契約のときに振り込まれる額」と「後で振り込まれる額」を分けて聞けば分かります。後で振り込まれる額が0円なら、留保金のない契約です。
この章の根拠(1件)
- 民法468条1項
残りが戻る時期:2社間と3社間の流れ
2社間だと、戻ってくるまでに何をすればいい?
取引先から回収したお金をファクタリング会社に送ります。入金を確かめてもらってから精算され、残りが戻ります。相殺して差額だけ送る契約もあります。
留保金が戻る時期は、取引先からの支払いがファクタリング会社に届き、精算が済んだ後が基本です。いつ届くかは、2社間(取引先に知らせずに売る方法)か3社間(取引先からファクタリング会社へ直接払ってもらう方法)かで変わります。
残りの10万円は、いつ戻ってくるの?
取引先が払って、精算が済んだ後。この例だと37日後だね。何営業日以内か、契約の前に聞いておこう。
2社間:自分が回収して送った後に、残りが戻る
2社間では、取引先は期日に今までどおり自社の口座に払います。自社はそのお金をファクタリング会社に送り、ファクタリング会社が入金を確かめてから、留保金から手数料などを精算した残りを返します。契約によっては、送るお金から留保金の分をあらかじめ差し引いて送る(相殺して精算する)形もあります。
相殺して精算する形を、図の例の数字で見ます。取引先から100万円を回収したら、本来は100万円を送り、後で留保の残り10万円を受け取ります。相殺する契約なら、差し引いた90万円だけを送れば精算が終わります。どちらでも受け取る合計は同じですが、相殺なら留保金を待つ日数がなくなります。どちらの形かは契約書に書かれているので、勝手に差し引いて送らないようにします。
3社間では、取引先がファクタリング会社に直接払います。ファクタリング会社は取引先からの入金を確かめた後、精算して残りを返します。自分で送る手間はありませんが、取引先の支払いが遅れれば、そのぶん留保金が戻るのも遅れます。2社間と3社間の違いそのものは2社間と3社間の違いにまとめています。
- 先払い 80万円契約の日に入金
- 取引先の支払い30日後の期日
- 留保の残り 10万円37日後に精算して入金
契約の日期日(30日後)精算(37日後)
取引先の支払いが期日より遅れたとき
取引先の支払いが遅れると、留保金が戻るのもそのぶん遅れます。2社間では、取引先から入金がないかぎり自社も送るお金がないので、遅れていることをすぐファクタリング会社に伝えます。黙っていると、回収したお金を送っていないのではと疑われ、精算の話がこじれます。3社間では、ファクタリング会社が取引先に直接確かめますが、取引先との関係を考えて、自社からも事情を聞いておくと安心です。
精算までの日数は契約で決まります。「取引先の入金を確かめてから○営業日以内」のように日数が書いてある契約なら、資金繰りの表に戻る日を入れられます。日数が書いていなければ、契約の前に聞いて、書面に残してもらいます。
精算書で確かめること
留保金が戻るときには、ファクタリング会社から精算の明細(精算書)が届くのがふつうです。精算書では、取引先から回収した額、差し引かれた手数料、登記や振込の費用、戻る額の4つが、契約の内容と合っているかを確かめます。精算書が届かないときは、送ってもらうよう頼みます。精算書と契約書は、決算のときに残高を確かめる材料にもなるので、まとめて保存しておきます。
数字で確かめる:掛け目80%と90%で、手取り・戻る額・年率はどう変わるか
受け取る合計が同じなら、どっちの契約でも同じ?
合計が90万円で同じでも、先に使えるのが90万円か80万円かで負担は違います。使えるお金で見ると、年率は約135%と約152%です。
架空の例で計算します。請求額は100万円、取引先の支払いの期日は30日後です。率はすべて仮に置いた値で、実際には審査で決まります。数字は build/stats/kakeme.py で出しています。
80万円が要るとき、請求書はいくら分あればいい?
先払い80%なら100万円分。70%だと約114万3,000円分が要る。計画は先に受け取る額で立てよう。
| 例 | 契約のときの入金 | 後で戻るお金 | 受け取る合計 | 差し引かれる額 |
|---|---|---|---|---|
| 例1:買取率90%(留保なし) | 90万円 | 0円 | 90万円 | 10万円 |
| 例2:先払い80%・留保あり | 80万円 | 10万円 | 90万円 | 10万円 |
| 例3:先払い70%・留保あり | 70万円 | 25万円 | 95万円 | 5万円 |
例1と例2は、受け取る合計も差し引かれる額も同じです。違うのは、契約のときにいくら使えるかです。例2では、先に使えるのは80万円で、残りの10万円は回収と精算が済むまで使えません。
例1は、手数料10%・30日なので、実質年率(手数料を1年あたりの率に直したもの)は約135%です。式は「手数料額÷手取り額÷日数×365」で、10万円÷90万円÷30日×365になります。例2も、受け取る合計で見れば同じ式で同じ値です。ただ、30日のあいだ実際に使えるお金は80万円です。分母を80万円に置き換えて計算し直すと、年率は約152%になり、実際の負担は重く感じられます。
例3は差し引かれる額が5万円で、受け取る合計は95万円と、例1・例2より多くなります。それでも先に使えるのは70万円だけです。80万円の支払いに使いたいなら、例3の条件では足りません。
差し引かれる額が同じでも、先払いの割合で負担の重さが変わる
差し引かれる額を10万円に固定して、先払いの割合だけを変えてみます。受け取る合計はどれも90万円ですが、30日のあいだ使えるお金が違います。年率は、使えるお金を分母にして計算し直した参考の値です。
| 先払いの割合 | 契約の日に使えるお金 | 後で戻るお金 | 使えるお金で見た年率(参考) |
|---|---|---|---|
| 90%(留保なし) | 90万円 | 0円 | 約135% |
| 80% | 80万円 | 10万円 | 約152% |
| 70% | 70万円 | 20万円 | 約174% |
先払いの割合が下がるほど、同じ10万円の負担で使えるお金が減るので、負担は重くなります。見積もりで手数料の額が同じ2社なら、先払いの割合が高い方、つまり契約の日に多く振り込まれる方が有利です。
必要な額から、要る請求額を逆に計算する
先払いの割合が決まっていると、必要な額を用意するのに要る請求額も決まります。80万円が必要なとき、先払い80%なら請求額100万円の請求書で足ります。先払い70%なら、80万円÷0.7で約114万3,000円分の請求書が要ります。
「後で戻るなら損はない」と考えがちですが、支払いに間に合うのは先に受け取る分だけです。資金繰りの計画は、先に受け取る額で立てます。自分の請求額で手取りと年率を試すなら手数料と実質年率の計算が使えます。
留保金は帳簿でどう扱うか
留保金は、売った売掛金の代金のうち、まだ受け取っていない分です。売掛金はすでに帳簿から消えているので、残りは別の科目で受けます。仕訳の具体例はファクタリングの仕訳と勘定科目で説明しています。
毎月使うと何が起きるか:留保金が資金繰りに残り続ける
1回だけ使うなら、留保金は37日後に戻って終わりです。ところが、毎月の請求書を続けて売ると、いつも前の月の留保金が戻る前に次の月の契約をすることになります。架空の例で、毎月末に100万円の請求書を、例2の条件(先払い80万円・手数料10万円・留保の残り10万円・精算は翌月の7日ごろ)で売り続けた場合を見ます。
| 月 | その月の先払い | 前の月の留保の戻り | その月に入るお金 | 月末に預けたままの留保の残り |
|---|---|---|---|---|
| 1か月目 | 80万円 | 0円 | 80万円 | 10万円 |
| 2か月目 | 80万円 | 10万円 | 90万円 | 10万円 |
| 3か月目 | 80万円 | 10万円 | 90万円 | 10万円 |
2か月目からは、毎月入るお金は90万円で、留保がない契約と変わらないように見えます。しかし、月末にはいつも10万円がファクタリング会社に預けられたままです。使い続けるかぎり、留保金の分は手元に戻らないと考えて、資金繰りの表を作ります。やめるときに、最後の月の留保金がようやく戻ります。
また、使い始めの1か月目だけは、先払いの80万円しか入りません。最初の月の支払いを80万円で間に合わせられるかを、先に確かめておきます。毎月の利用が当たり前になっているなら、ファクタリングから抜け出す順番も考えます。
見積書と契約書で掛け目を読む:確かめる6つの点
見積書を受け取ったら、何を数字で聞けばいい?
契約の日の入金、後で戻る額、手数料の額、戻る日です。さらに、値引きや不払いのときに自分が払う決まりがないかも確かめます。
掛け目の意味が会社ごとに違う以上、見積書と契約書で中身を確かめるしかありません。言葉の名前ではなく、次の6つを金額と日付で読みます。
契約書のどこを読めばいいの?
精算の条項。いつ戻るか、値引きや相殺のときにどうなるか、自分が買い戻す決まりがないかを見よう。
- 契約のときに振り込まれる額手数料・登記の費用などを引いた後の額か
- 後で振り込まれる額0円なら留保金のない契約
- 手数料の額請求額に対する率と金額の両方で
- 残りが戻る日「入金の確認から○営業日以内」などの決まり
- 値引き・相殺のときの扱いが書いていない留保金から引くのか、別に払うのかを聞く
- 不払いのとき自分が払う条項買戻しや、自分のお金で払う義務がないか
とくに大事なのは最後の2つです。値引きや相殺で取引先の支払いが減ったときに、その分を留保金から引くのか、留保金を超える分を自分が払うのか。取引先が払わなかったときに、自分が売掛金を買い戻すのか。これらは、精算や償還(売掛先が払わなかったときに、利用者が買い戻す義務)の条項に書かれています。
償還請求権の有無の確かめ方は償還請求権とはに、契約書全体の読み方はファクタリングの契約書で確かめることにまとめています。
手数料の率を何に掛けるかで、額が変わる
留保金のある契約では、手数料の率を「請求額」に掛けるのか、「先に払う額」に掛けるのかも確かめます。請求額100万円・先払い80万円・手数料10%なら、請求額に掛ければ手数料は10万円、先に払う額に掛ければ8万円です。同じ「10%」でも2万円違います。見積書に手数料の金額まで書いてもらえば、この違いで迷うことはありません。
見積もりで聞くときの言い方
見積もりを頼むときは、「請求額100万円のとき、契約の日にいくら振り込まれますか。後で振り込まれるお金はありますか。あるなら、いつ、何が済んだらいくら振り込まれますか」と聞きます。答えを数字でもらえば、掛け目という言葉の意味が会社ごとに違っても、同じ物差しで比べられます。
残りが戻らない・減るとき:値引き・相殺・不払い
留保金が全部戻らないのは、どんなとき?
取引先の値引きや相殺で回収が減ったときです。値引き5万円なら戻るのは5万円で、受け取る合計は85万円。支払いが遅れれば戻るのも遅れます。
留保金は、取引先からの回収が請求額どおりに済んだときに、手数料などを引いて戻るお金です。回収が減れば、戻る額も減ることがあります。例2(先払い80万円・手数料10万円・留保の残り10万円)で考えます。
| 起きたこと | 戻る額の例 | 受け取る合計 |
|---|---|---|
| 取引先が100万円を期日に払った | 10万円 | 90万円 |
| 取引先が不良品の値引き5万円を引いて95万円を払った(留保金から引く契約) | 5万円 | 85万円 |
| 取引先の支払いが2週間遅れた | 10万円(戻るのが2週間遅れる) | 90万円 |
値引きの例では、戻る額が5万円に減り、受け取る合計は85万円になりました。留保金は、取引先とのもめごとの影響を受けるお金だということが分かります。品質の問題や値引きの交渉が起きそうな取引は、留保金が減るかもしれないと見込んでおきます。
取引先が払わなかったとき
取引先が倒産などで払えなくなったとき、留保金がどう扱われるかは契約によります。償還請求権のない契約(ノンリコース)なら、取引先が払えない危険はファクタリング会社が負います。一方、利用者が売掛金を買い戻すことになっている契約や、利用者が自分のお金で払う決まりの契約は、金融庁が「貸付け」に当たるおそれがあるとして注意を促しています。※1 図鑑の168サービスのうち、償還請求権がないと明記している会社は98社でした。
回収が済んだのに戻ってこないとき
取引先が期日に全額を払い、2社間なら自分もお金を送ったのに、留保金が戻ってこないことがあります。まず、契約書で精算の日を確かめ、その日を過ぎているなら、精算書を出してもらうよう書面やメールで求めます。やりとりは記録が残る形にします。それでも払われないときや、説明のない差し引きがあるときは、相談先に持ち込みます。相談先と、型ごとの最初の一手はファクタリングのトラブルの相談先にまとめています。
ノンリコースの契約でも、留保金の扱いは別に読む
償還請求権がない契約でも、値引きや相殺、返品のように、自社と取引先の間の事情で回収が減った分は、留保金から差し引くと決めている契約があります。取引先の倒産のような「払えない危険」と、自社の取引に原因がある「減った分」は、別のものとして扱われやすいからです。ノンリコースと書いてあるから留保金は全額戻る、とは考えず、精算の条項を読みます。
低すぎる掛け目は、偽装ファクタリングのサインのことも
金融庁は、ファクタリング業者から受け取るお金(買取の代金)が債権額に比べて著しく低い場合を、注意すべき例として挙げています。※1 先払いの割合がとても低く、残りの戻る条件があいまいな契約は、実際には高い手数料と同じです。戻る条件が書面で示されないなら、契約しない方が安全です。
この章の根拠(1件)
- 金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」
掛け目を上げる(留保を小さくする)ための準備
先払いの割合を上げてもらうには?
値引きや相殺のない取引先の、検収済みの請求書を選びます。過去の入金が請求額どおりだと通帳で示し、2〜3社に同じ条件で見積もりを頼みます。
掛け目や留保金の大きさは、ファクタリング会社が「請求額どおりに回収できるか」をどう見るかで決まります。審査でどの点が響くかの全体は審査で見られることに任せ、ここでは掛け目に直結する準備を挙げます。
- 値引き・相殺がない取引の請求書を選ぶ:差し引きの決まりがある取引先より、毎回請求額どおりに払う取引先の請求書の方が、留保を小さくしやすくなります。
- 過去の入金が請求額どおりだと示す:通帳や入出金明細で、同じ取引先から前回・前々回に請求額どおり入ったことに印をつけます。
- 検収が済んだ請求書を出す:取引先が納品や作業を確認した後の請求書なら、返品や値引きの心配が小さいと見てもらえます。
- 差し引かれる額が決まっているなら先に伝える:振込手数料や源泉徴収のように毎回同じ額が引かれるなら、その額を伝えておくと、余分な留保をかけずに済むことがあります。
- 2〜3社に同じ条件で見積もりを頼む:同じ請求書でも、会社によって先払いの割合や留保の有無が違います。契約の日に振り込まれる額で比べます。見積もりの比べ方は見積りの比較が使えます。
必要な額が請求額より少ないなら、請求書の一部だけを売れないか相談する方法もあります。売る額が小さければ、手数料や留保金の額も小さくなります。応じるかどうかは会社によって違い、詳しくは審査で見られることの掛目の章で触れています。
3社間で取引先の承諾が得られるなら、取引先からファクタリング会社へ直接払われるので、回収の不安が小さいと見てもらいやすくなります。ただし取引先に知られることになるので、知られてもよいかを先に考えます。
掛け目でよくある失敗と注意点
いちばんやりがちな失敗は?
戻ってくる留保金を、支払いの計画に入れてしまうことです。戻るのは回収と精算の後なので、計画は契約の日に受け取る額だけで立てます。
- 「掛け目」の数字だけで会社を比べる:A社の「買取率90%」とB社の「掛け目90%(先払い)」は、手取りが違うことがあります。契約の日の入金・後で戻る額・手数料を金額で並べて比べます。
- 戻る留保金を、支払いの計画に入れてしまう:留保金が戻るのは回収と精算の後です。取引先の支払いが遅れれば、戻るのも遅れます。支払いの計画は、契約の日に受け取る額だけで立てます。
- 値引きの交渉中の取引の請求書を売る:取引先が値引きを求めている請求書は、留保金が減るか、精算でもめるもとになります。差し引きの決まりがない請求書を選びます。
- 精算の日を書面に残さない:口頭の「すぐ戻ります」だけでは、遅れたときに求める根拠がありません。精算の日の決まりを契約書か見積書に書いてもらいます。
- 2社間で回収したお金を、送る前に使ってしまう:回収したお金はファクタリング会社に送るものです。送らなければ留保金は戻らず、契約違反として扱われるおそれがあります。
どれも、見積もりと契約の段階で金額と日付を確かめれば防げます。契約書のどこを読むかはファクタリングの契約書で確かめることを見てください。
掛け目が合わないときの、ほかの方法
先に入る額が足りないときは、どうすれば?
留保のない会社で見積もる、請求書を足す、時間があればABLや融資を使う、取引先に早期支払いを頼む、の4つを比べます。
先に受け取れる額が支払いに足りないとき、または留保の条件に納得できないときは、次の方法も比べます。
- 留保のない会社で見積もる:手数料を引いた額をまとめて払う会社もあります。図鑑のファクタリング会社の一覧から候補を選び、契約の日に振り込まれる額を聞きます。
- 請求書を足す:先払いの割合が低くても、ほかの取引先の請求書をあわせて売れば、必要な額に届くことがあります。手数料の合計が増える点と、売った請求書の数だけ回収したお金を送る手間が増える点に気をつけます。
- 売掛金を担保に借りる:時間に余裕があるなら、銀行などのABLや保証つきの融資の方が、費用が軽いことが多くあります。売掛金を売らないので留保金という考え方はなく、借りた額と返す日がはっきりします。
- 取引先に早く払ってもらう:取引先に早期支払いの制度があれば、留保も手数料も小さく済むことがあります。取引先の経理に、早く払ってもらえる制度があるかを聞いてみます。
どの方法が間に合うかは、お金が必要な日までの日数で決まります。使える方法を条件から探すなら資金調達診断を使ってください。
掛け目は、数字そのものより「何の割合か」が大事な言葉です。見積もりを受け取ったら、契約の日の入金・後で戻る額・手数料・戻る日の4つを書き出してから、契約するかどうかを決めます。
出典(3件)公的機関の資料・法令。2026.11.05に確認
- ファクタリングの利用に関する注意喚起(金融庁)www.fsa.go.jp
- 民法(第468条)(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- ファクタリング図鑑(会社ごとの値と出典)facto-ring.com
FAQ
よくある質問
ファクタリングの掛け目とは何ですか?
請求額のうち、いま受け取れるお金の割合を表す言葉です。会社によって、手数料を引いた後に受け取る額の割合(買取率)を指すことも、契約のときに先に払う額の割合を指し、残りを回収後に精算することもあります。数字だけでなく、何の割合かを金額で確かめます。
掛け目80%なら、手数料は20%ですか?
そうとは限りません。手数料を引いた後の割合(買取率)なら手数料は20%ですが、先に払う割合なら、残りの20%から手数料を引いた額が回収後に戻ります。請求額100万円・先払い80万円・手数料10万円なら、後で10万円が戻り、受け取る合計は90万円です。
留保金はいつ戻ってきますか?
多くの契約では、取引先の支払いがファクタリング会社に届き、精算が済んだ後に戻ります。2社間なら、自分が回収したお金をファクタリング会社に送った後です。精算までの日数は契約で決まるので、「入金の確認から何営業日以内か」を契約の前に聞いて、書面に残してもらいます。
留保金が戻ってこないことはありますか?
取引先が値引きや相殺で支払いを減らすと、その分を留保金から差し引かれて戻る額が減ることがあります。請求額100万円・留保の残り10万円の例で、取引先が5万円を引いて払えば、戻るのは5万円です。どう精算するかは契約書の条項で決まるので、契約の前に確かめます。
掛け目が低いと危ない業者ですか?
掛け目が低いだけで違法とは言えませんが、金融庁は、買取の代金が債権額に比べて著しく低い場合を注意すべき例に挙げています。先払いの割合がとても低く、残りが戻る条件があいまいな契約は、実際には高い手数料と同じです。戻る条件が書面で示されないなら、契約しない方が安全です。
掛け目を高くしてもらうにはどうすればいいですか?
値引きや相殺のない取引先の、検収が済んだ請求書を選び、過去の入金が請求額どおりだと通帳で示します。毎回差し引かれる振込手数料などは先に伝えます。同じ請求書でも会社によって先払いの割合や留保の有無が違うので、2〜3社に見積もりを頼み、契約の日に振り込まれる額で比べます。
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