資金繰り更新 2026.10.17
経営セーフティ共済(倒産防止共済)とは?借りられる額と掛金・解約の損得
経営セーフティ共済(倒産防止共済)は、取引先が倒産したとき、掛金の10倍(上限8,000万円)まで無利子・無担保で借りられる国の共済です。借りられる額の計算、掛金の損金、一時貸付、解約で戻る額を計算例で示します。
初めての方へファクタリングを使う前に知る5つのこと・申込みから入金まで →
フファクタリング図鑑編集部(執筆)・公開 2026.10.17

経営セーフティ共済は、取引先が倒産したときに備えて、毎月の掛金で「無利子・無担保で借りられる枠」を積み立てておく国の制度です。正式な名前は中小企業倒産防止共済で、独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営しています。
この記事は、加入を考えている経営者・個人事業主と、取引先の倒産で売掛金が回収できなくなった人に向けて、借りられる額の計算、掛金の損金、一時貸付金、やめるときに戻るお金を、計算例で説明します。
この記事を7枚で
1 / 7結論:取引先の倒産に備える「借入枠」を、損金にしながら積み立てる制度
経営セーフティ共済って、どんな制度なの?
掛金を積み立てて、取引先が倒産したとき掛金の10倍(上限8,000万円)まで無利子・無担保で借りられる国の制度です。ただ、借りると借りた額の10分の1の掛金が戻らなくなります。
経営セーフティ共済の中身は、次の4つにまとめられます。
- 積み立てる:掛金は月5,000円〜20万円で、5,000円単位で選びます。総額800万円まで納められ、法人は損金、個人事業主は事業所得の必要経費にできます。
- 取引先が倒産したら借りる:回収できなくなった売掛金などの額と、納めた掛金の10倍の、どちらか小さい額まで借りられます。上限は8,000万円で、無利子・無担保・保証人なしです。
- 倒産がなくても借りる:12か月以上掛金を納めていれば、臨時の資金として「一時貸付金」を借りられます。利率は年0.9%、期間は1年です。
- やめると戻る:解約すると「解約手当金」が戻ります。12か月未満は戻らず、40か月以上納めていれば掛金の全額が戻ります。
無利子の貸付といっても、費用がゼロではありません。共済金を借りると、借りた額の10分の1にあたる掛金が戻らなくなります。また、使えるのは加入から6か月がたち、6か月分以上を納めた後の倒産だけです。取引先が危ないと感じてから入っても間に合いません。
この記事は、次の順で説明します。
- 制度の仕組みと、加入できる事業者
- 掛金の決め方と、損金・必要経費の扱い
- 取引先が倒産したときの共済金の貸付の条件
- 計算例:倒産1件でいくら借りられ、何が差し引かれるか
- 倒産がなくても借りられる一時貸付金
- やめるときに戻る解約手当金と税金
- 加入から借入までの手順
- 入らない方がよい場合と、ほかの備え
- よくある失敗と注意点
経営セーフティ共済の仕組み:誰が運営し、誰が入れるか
うちみたいな会社でも入れるの?
引き続き1年以上事業を行っている中小企業者なら入れます。会社は資本金か従業員数の基準で判断します。事業を始めて1年たっていない、法人税などを滞納している場合は入れません。
経営セーフティ共済は、中小企業倒産防止共済法にもとづく制度です。法律の目的は、取引先の倒産のあおりで中小企業が連鎖倒産するのを防ぐことです。※1制度は昭和53年に始まり、中小機構によると令和8年3月末で約67万の事業者が加入し、共済金の貸付は累計で約27万件・約1兆9,000億円です。
お金の流れは単純です。加入者が毎月の掛金を中小機構に納め、取引先が倒産したときに、その掛金をもとに中小機構から共済金を借ります。掛金は「預けたお金」として残り、やめるときに解約手当金として戻ります。保険のように払った掛金が消える仕組みではない点が、ほかの備えとの大きな違いです。
加入できる事業者
加入できるのは、引き続き1年以上事業を行っている中小企業者です。※2会社は資本金か従業員数のどちらかが次の基準に当てはまれば対象で、個人事業主は従業員数で判断します。
| 業種 | 資本金・出資の総額 | 常時使用する従業員 |
|---|---|---|
| 製造業・建設業・運輸業・その他 | 3億円以下 | 300人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| 小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
| ソフトウェア業・情報処理サービス業 | 3億円以下 | 300人以下 |
| 旅館業 | 5,000万円以下 | 200人以下 |
表にないゴム製品製造業(一部を除く)は、資本金3億円以下か従業員900人以下です。※3企業組合・協業組合と、一定の事業協同組合なども入れます。一方、医療法人・NPO法人・農事組合法人などは対象外です。
加入できない場合
中小機構の案内では、次のような場合は加入できません。
- 事業を始めて1年たっていない
- 所得税(個人)・法人税(法人)を滞納している
- 借入金や共済金の返済を怠っている
- 掛金を12か月以上滞納して契約を解除され、まだ12か月たっていない
- すでに加入している(1つの事業者で2つの契約は持てない)
開業したばかりの会社は、1年たつまで加入できません。創業直後に大口の取引先ができた場合は、1年後の加入を予定に入れておきます。
どこで申し込むか
申込みの窓口は、商工会・商工会議所・中小企業団体中央会などの委託団体と、銀行・信用金庫・信用組合などの金融機関です。ゆうちょ銀行・農業協同組合・労働金庫・インターネット専業銀行などでは扱っていません。申込書はオンラインでも作れますが、法人は掛金を引き落とす口座の届け出を金融機関で行う必要があります。
この章の根拠(3件)
- 中小企業倒産防止共済法1条
- 中小企業倒産防止共済法3条1項
- 中小企業倒産防止共済法施行令1条
掛金の決め方と、損金・必要経費の扱い
掛金はいくらにすればいいの?
月5,000円〜20万円で、総額800万円まで。法人は損金、個人事業主は必要経費にできます。目安は一番大きな取引先への売掛金の残高。減らすには理由が要るので、迷ったら低めで始めます。
掛金は月5,000円以上で、5,000円単位で決めます。上限は月20万円です。※1納めた掛金の合計が800万円に達すると、それ以上は納められません。※2800万円は、貸付の上限8,000万円の10分の1にあたる額です。
| 掛金月額 | 800万円に届くまで | そのときの貸付枠(掛金の10倍) |
|---|---|---|
| 5万円 | 160か月(13年4か月) | 8,000万円 |
| 10万円 | 80か月(6年8か月) | 8,000万円 |
| 20万円 | 40か月(3年4か月) | 8,000万円 |
貸付の枠は「掛金の10倍」なので、早く大きな枠がほしいほど月額を高くすることになります。ただし、借りられる額は回収できなくなった売掛金などの額までなので、枠を大きくしすぎても使い切れません。目安は、いちばん大きな取引先に対する売掛金の残高です。売掛金が常に1,000万円ある取引先がいるなら、掛金の合計が100万円に届けば、その1社の倒産分を枠でまかなえます。
増やすのは自由、減らすには理由が要る
掛金を増やす申込みは、中小機構が必ず承諾します。減らすのは、事業の縮小や経営の著しい悪化、病気やけがなど、決まった理由がある場合に限られます。※3※4資金繰りに余裕がない時期に高い月額で入ると、減らせずに困ることがあります。迷ったら低めの月額で始め、余裕が出てから増やす方が安全です。
掛金の合計が月額の40倍に達していれば、届け出て納付を止める「掛止め」もできます。※5止めている間は掛金を納めないので、その間の損金・必要経費はありません。
損金・必要経費にできる
掛金は、法人なら支払った事業年度の損金に、個人事業主なら支払った年の事業所得の必要経費に算入できます。※6※7資産として積み立てていながら、税金の計算では費用として扱える点が、この制度が節税の手段として語られる理由です。
損金にするには、確定申告書に「特定の基金に対する負担金等の損金算入に関する明細書」(個人事業主は「必要経費算入に関する明細書」)を付けます。法人は「適用額明細書」も必要です。付け忘れると、原則として損金・必要経費にできません。※8※9
掛金を前もってまとめて納める「前納」もできます。中小機構によると、前納した掛金は12か月分までなら支払った年(事業年度)の損金・必要経費にでき、1年を超える分は期間の経過に応じて算入します。
2024年10月から:解約して2年以内に入り直すと損金にならない
令和6年10月1日以後に解約し、その後に入り直した場合、解約の日から2年を経過する日までに納めた掛金は、損金・必要経費にできません。※10※11月20万円で入り直したなら、最大480万円(20万円×24か月)が損金になりません。解約手当金を受け取ってすぐ入り直し、また損金にする、という使い方はこの改正でできなくなりました。
個人事業主の場合、掛金を必要経費にできるのは事業所得です。不動産所得や雑所得しかない人は、必要経費にできるか税務署か税理士に確かめてください。決算を税理士に任せている場合も、明細書が付いているかは毎年確かめます。ファクタリングを併用している会社の仕訳はファクタリングの仕訳と勘定科目で説明しています。
この章の根拠(11件)
- 中小企業倒産防止共済法4条2項
- 中小企業倒産防止共済法14条3項
- 中小企業倒産防止共済法8条
- 中小企業倒産防止共済法施行規則9条
- 中小企業倒産防止共済法14条4項
- 租税特別措置法66条の11第1項2号
- 租税特別措置法28条1項2号
- 租税特別措置法66条の11第3項
- 租税特別措置法28条3項
- 租税特別措置法66条の11第2項
- 租税特別措置法28条2項
取引先が倒産したときの共済金の貸付:条件と借りられる額
取引先が倒産したら、すぐ借りられるの?
条件があります。加入から6か月以上たち、6か月分以上を納めていて、倒産から6か月以内に請求すること。夜逃げや支払いの遅れだけでは「倒産」に当たらず、借りられません。
共済金の貸付は、この制度の本来の目的です。直接の取引先が倒産して、売掛金や前渡金(先に払った代金を返してもらう権利)が回収できなくなったときに借りられます。
対象になる「倒産」
共済の「倒産」は、法律で決まった次の事態に限られます。※1※2
| 倒産の種類 | 倒産の日になる日 |
|---|---|
| 法的整理(破産・民事再生・会社更生・特別清算) | 裁判所への申立てがされた日 |
| 取引停止処分(手形・小切手の不渡り) | 電子交換所の参加金融機関から取引停止処分を受けた日 |
| でんさいネットの取引停止処分 | 取引停止の日 |
| 私的整理 | 弁護士・司法書士などから支払停止の通知が出された日 |
| 災害による不渡り・支払不能など | 手形の交換日、でんさいの支払期日など |
いわゆる夜逃げや、支払いが遅れているだけの状態は「倒産」に当たりません。取引先と連絡が取れなくなっても、弁護士などからの通知や裁判所の手続きがなければ、共済金は借りられません。
3つの「6か月」
共済金を借りるには、期間の条件が3つあります。※3
- 加入から倒産まで6か月以上:契約が効力を持った日から倒産の日まで、6か月以上たっていること。
- 掛金を6か月分以上:倒産の日までに、6か月分以上の掛金を納めていること。
- 倒産から6か月以内に請求:倒産の日から6か月を過ぎると請求できません。
このほか、請求する時点で中小企業者であること、自分の会社が倒産などの状態になっていないこと、前に借りた共済金の返済を怠っていないことが必要です。
借りられる額の決まり方
借りられる額は、次の2つのうち小さい方の範囲で、自分が請求した額です。※4
- 納めた掛金の合計の10倍(前に共済金を借りて差し引かれた分などは除く)
- 倒産した取引先に対する売掛金・前渡金のうち、回収が難しくなった額
あまり知られていませんが、取引の割合が大きい取引先が倒産した場合は、回収できない額に上乗せがあります。倒産した取引先への取引依存度が20%以上で、取引が1年以上続いていたときは、その取引先との月間の取引額に「依存度÷20」(上限2)を掛けた額が足されます。※5売上の柱を失って次の取引先を見つけるまでの資金を見込んだものです。
貸付額の上限は、すでに借りて返していない共済金と合わせて8,000万円です。※6反対に、借りる額が、50万円か月間の総取引額の20%のどちらか小さい方に届かない少額の場合は借りられません。※7
もう1つ注意したいのが掛金の増額の扱いです。倒産の日の前日の6か月前から請求の日までに掛金を増やした場合、増やした分の掛金は10倍の計算に入りません。※8取引先が危なそうだと感じてから掛金を増やしても、枠は広がらないということです。
返し方と費用
共済金は無利子で、担保も保証人も要りません。※9返す期間は借りた額で決まり、自分では選べません。どの期間も、最初の6か月は返済のない据置期間です。※10
| 借りた額 | 返す期間(据置6か月を含む) |
|---|---|
| 5,000万円未満 | 5年 |
| 5,000万円以上6,500万円未満 | 6年 |
| 6,500万円以上8,000万円以下 | 7年 |
利息はかかりませんが、借りると借りた額の10分の1が掛金の総額から差し引かれます。※11差し引かれた分は、借りたお金を返しても戻りません。返済が遅れると、遅れた額に年14.6%以内の違約金がかかります。※12予定より早く全額を返した場合は、早期償還手当金を受け取れることがあります。
請求すると、書類の不備、取引の事実、被害額の審査があります。審査にかかる期間は請求ごとに違い、中小機構は目安の日数を示していません。倒産の翌日に入金されるものではないので、つなぎの資金は別に考えておく必要があります。
- 取引先の倒産は、破産・民事再生などの申立て、取引停止処分、弁護士からの支払停止の通知のどれか?はい → 次へいいえ(夜逃げ・支払いの遅れだけ)→ 共済金は借りられない。一時貸付金を検討
- 加入から倒産まで6か月以上たち、掛金を6か月分以上納めていた?はい → 次へいいえ → この倒産では借りられない
- 倒産の日から6か月以内に請求できる?はい → 次へいいえ → 請求できない。倒産を知ったらすぐ書類を集める
- 回収できない売掛金(前渡金を含む)と、取引の記録を書類で示せる?はい → 掛金の10倍と被害額の小さい方まで請求できるいいえ → 売上帳・請求書・通帳などで取引の事実をそろえる
この章の根拠(12件)
- 中小企業倒産防止共済法2条2項
- 中小企業倒産防止共済法施行規則10条の2
- 中小企業倒産防止共済法9条1項
- 中小企業倒産防止共済法9条2項
- 中小企業倒産防止共済法施行規則16条・17条
- 中小企業倒産防止共済法施行令2条
- 中小企業倒産防止共済法施行規則12条
- 中小企業倒産防止共済法9条2項3号
- 中小企業倒産防止共済法10条1項・2項
- 中小企業倒産防止共済法施行令3条
- 中小企業倒産防止共済法11条4項
- 中小企業倒産防止共済法10条3項
計算例:取引先の倒産1件で、いくら借りられ、何が差し引かれるか
実際に、いくら借りられるものなの?
例のB社は掛金360万円で枠は3,600万円、被害額は上乗せを含めて1,600万円なので、1,600万円まで借りられます。ただし160万円が掛金の総額から差し引かれ、次の枠も小さくなります。
数字で確かめます。次のような卸売業のB社を考えます(金額はすべて仮の例です)。
- 経営セーフティ共済に月10万円で3年(36か月)加入。納めた掛金は360万円
- 大口の取引先C社が破産を申し立てた。C社への売掛金1,000万円が回収できなくなった
- C社との取引は月400万円、B社の売上に占める割合(取引依存度)は30%、取引は5年続いていた
借りられる額
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 掛金の10倍の枠 | 360万円×10 | 3,600万円 |
| 回収できない売掛金 | C社への売掛金 | 1,000万円 |
| 取引依存度による上乗せ | 月400万円×(30÷20=1.5) | 600万円 |
| 被害額の合計 | 1,000万円+600万円 | 1,600万円 |
| 借りられる額 | 3,600万円と1,600万円の小さい方 | 1,600万円 |
B社は1,600万円まで請求できます。上乗せの600万円は、取引依存度が20%以上で、取引が1年以上続いていたから付くものです。依存度が20%未満の取引先なら、借りられるのは売掛金と同じ1,000万円までです。実際に借りられる額は、中小機構の審査で確かめられた被害額で決まります。
差し引かれる掛金と、借りたあとの枠
1,600万円を借りると、その10分の1の160万円が掛金の総額から差し引かれます。B社の掛金の総額は360万円から200万円に減り、次に別の取引先が倒産したときの枠も、2,000万円(200万円×10)に下がります。やめるときに戻る解約手当金も、200万円をもとに計算されます。
160万円を、利息の代わりの費用として考えてみます。仮に据置の6か月のあと、54か月で毎月同じ額を返すとすると、5年間の平均の借入残高は約893万円です。160万円を5年で割り、平均残高で割ると、利息に置き換えて年3.6%ほどにあたります。無利子という言葉ほど安くはありませんが、担保も保証人も要らない5年の借入としては、低い費用で済みます。
共済で埋まらないもの
共済金は「借りるお金」なので、売掛金1,000万円の損そのものは消えません。B社は5年かけて1,600万円を返しながら、C社の分の売上(月400万円)を別の取引先で埋めていく必要があります。回収できない売掛金を貸倒損失として処理するか、破産手続きで債権を届け出るかは、顧問の税理士・弁護士と相談します。
また、回収できなくなった売掛金は、ファクタリングでも売ることができません。倒産した取引先の売掛金を買う会社はないからです。すでにファクタリングで売っていた売掛金の取引先が倒産した場合に誰が損をかぶるかは、契約の償還請求権(売掛先が払わないときに買い戻す義務)の有無で決まります。
取引先が倒産していなくても借りられる「一時貸付金」
取引先が倒産していなくても、借りられるの?
12か月以上納めていれば、一時貸付金を年0.9%・1年で借りられます。300万円なら利息は1年で2万7,000円です。同じ額をファクタリングで用意すると、手数料30万円の例もあります。
共済金は取引先が倒産しないと借りられませんが、加入者は、臨時に事業資金が必要なときに一時貸付金を借りられます。※1使いみちは運転資金・設備資金などの事業資金です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 使える人 | 加入から12か月がたち、掛金を12か月分以上納めた人 |
| 借りられる額 | 中小機構に契約を解除されたと仮定したときの解約手当金の95%まで(最高760万円)。30万円以上、5万円単位 |
| 利率 | 年0.9%(令和6年4月1日時点。金融情勢で変わる)。利息は借りるときに前払いで差し引かれる |
| 期間・返し方 | 1年。期日に一括で返す |
| 担保・保証人 | 要らない |
| 入金まで | 請求書と添付書類が中小機構に届いてから10日〜2週間程度 |
借りられる額の計算で使うのは、自分から解約したときの率ではなく、掛金の滞納などで中小機構に解除されたときの低い率です。※2そのため、同じ月数でも戻る額より少し小さくなります。
計算例:B社が一時貸付金を借りる場合
先ほどのB社(掛金360万円・36か月)が、取引先の倒産とは関係なく資金が必要になったとします。36か月での中小機構による解除の率は90%なので、計算は次のとおりです。
- 解約手当金(中小機構による解除の場合):360万円×90%=324万円
- その95%:324万円×95%=307万8,000円
- 5万円単位に切り捨て:305万円まで借りられる
- 利息(前払い):305万円×0.9%=2万7,450円。入金されるのは302万2,550円
期日に返せないときは、利息を払って同じ額を借り直す「同額借換」の手続きができ、新しい期日はその1年後になります。ただし、借りている間に取引先が倒産して共済金を借りると、共済金の額から一時貸付金の分が差し引かれることがあります。
ファクタリングと比べると
同じ300万円を用意する方法として、一時貸付金と、300万円の売掛金を手数料10%で30日早く受け取るファクタリングを比べます。一時貸付金の利息は1年で2万7,000円です。ファクタリングは手数料30万円で手取りが270万円になり、実質年率は10÷90÷30×365=約135%です。計算のしかたはファクタリングの手数料の計算と実質年率で説明しています。
一時貸付金共済に12か月以上加入
- 費用
- 利息2万7,000円(年0.9%)
- 使える期間
- 1年(期日に一括で返す)
- 入金まで
- 書類の到着から10日〜2週間程度
- 上限
- 解約手当金の範囲(最高760万円)
ファクタリング手数料10%・30日早く受け取る例
- 費用
- 手数料30万円(実質年率 約135%)
- 使える期間
- 売掛金の支払日までの30日
- 入金まで
- 会社と書類しだいで、最短で当日
- 上限
- 手元の売掛金の額まで
加入していて枠が足りるなら、急ぎでない資金は一時貸付金の方がはるかに安く済みます。ファクタリングが向くのは、加入して12か月たっていない、枠が足りない、10日〜2週間を待てない、といった場合です。手取りと実質年率は手取りと実質年率のシミュレーターで試せます。
この章の根拠(2件)
- 中小企業倒産防止共済法10条の2
- 中小企業倒産防止共済法施行規則24条〜26条
やめるときに戻るお金:解約手当金と税金
やめたら、掛金は返ってくるの?
自分から解約すると、12か月未満は戻らず、40か月以上で全額戻ります。月10万円で36か月なら、360万円を納めて342万円。戻った額は益金になるので、税金を払う時期が移ると考えます。
契約をやめると、掛金の総額に、納めた月数と解約の理由に応じた率を掛けた解約手当金が戻ります。※1※2
| 納めた月数 | 自分から解約 | 死亡・解散など | 中小機構が解除 |
|---|---|---|---|
| 1〜11か月 | 0% | 0% | 0% |
| 12〜23か月 | 80% | 85% | 75% |
| 24〜29か月 | 85% | 90% | 80% |
| 30〜35か月 | 90% | 95% | 85% |
| 36〜39か月 | 95% | 100% | 90% |
| 40か月以上 | 100% | 100% | 95% |
掛金の総額からは、共済金を借りたときに差し引かれた10分の1の額などが除かれます。自分から解約する場合、納めた額がそのまま戻るのは40か月以上からです。掛金には利息が付かないので、40か月以上納めても戻るのは納めた額までです。
納めた額より少ない納めた額と同じ
月10万円の会社が36か月でやめると、360万円を納めて342万円が戻り、18万円少なくなります。あと4か月続けて40か月にすれば、400万円が全額戻ります。月20万円なら、39か月でやめると741万円、40か月なら800万円です。やめる時期を1か月ずらすだけで戻る額が大きく変わるので、解約の前に納めた月数を確かめます。
戻ったお金には税金がかかる
掛金を損金・必要経費にしていた場合、戻った解約手当金は、法人なら益金、個人事業主なら事業所得の収入金額になります。つまり、掛金を損金にした効果は「税金がなくなる」のではなく、税金を払う時期が解約した年に移るということです。
たとえば月20万円なら、1年で240万円を損金にできます。仮に税率が30%なら、その年の税金は72万円少なくなる計算です。そのかわり、800万円の解約手当金を受け取った年には、800万円が益金になります。役員の退職金を払う年や、大きな赤字が出た年に解約を合わせると、益金と費用が相殺されて税負担を抑えられると言われるのはこのためです。実際の税額は会社ごとに違うので、解約の前に税理士に試算してもらいます。
なお、前の章で説明したとおり、令和6年10月1日以後に解約して2年以内に入り直すと、その間の掛金は損金になりません。解約は、しばらく入り直さなくてよい時期を選びます。
この章の根拠(2件)
- 中小企業倒産防止共済法11条
- 中小企業倒産防止共済法施行令4条
加入から借入までの手順
入るときと借りるとき、何をすればいい?
入るときは資格を確かめ、月額を決めて窓口かオンラインで申し込み、決算で明細書を付けます。倒産のときは、倒産の日と被害額を確かめ、書類をそろえて請求し、つなぎも同時に手当てします。
加入するとき
- 加入資格を確かめる:事業を1年以上続けているか、資本金・従業員数の基準に入るか、税金の滞納がないかを確かめます。
- 月額を決める:いちばん大きな取引先への売掛金の残高を目安に、掛金の合計が何か月でその10分の1に届くかを考えます。減らすには理由が要るので、資金繰りに無理のない額にします。
- 窓口かオンラインで申し込む:商工会・商工会議所や取引のある金融機関の窓口、またはオンラインで申込書を作ります。
- 掛金の引落口座を届け出る:法人は、掛金を引き落とす口座の届け出を金融機関で行います。
- 決算で明細書を付ける:掛金を損金・必要経費にするための明細書を、確定申告書に付けます。
取引先が倒産したとき
- 倒産の日と種類を確かめる:破産などの申立て日、取引停止処分の日、弁護士からの支払停止の通知の日付を確かめます。6か月の請求期限はこの日から数えます。
- 被害額を確定する:倒産した取引先への売掛金・前渡金の額を、請求書・売上帳で集計します。
- 書類をそろえる:3か月以内に取った登記事項証明書(個人は住民票)、売上帳など取引を示す帳票の写し、共済契約締結証書、倒産を示す書類(申立ての書類、支払停止の通知、取引停止処分の証明など)を用意します。
- 請求書を出す:中小機構から「共済金貸付セット」を取り寄せ、共済金貸付請求書などを書いて、登録された窓口に出します。
- 審査を待つあいだのつなぎを手当てする:審査には時間がかかることがあるので、一時貸付金や公的融資、取引先との支払日の相談を同時に進めます。
倒産のあとの資金繰りの立て方、支払先との交渉、税金・社会保険料の猶予の申請などは、資金繰りが苦しいときの対処の順番にまとめています。
入らない方がよい場合と、ほかの備え
どこの会社でも、入っておいたほうがいい?
12か月以内にやめるかもしれない、掛金で手元が苦しくなる、売上がほぼ現金払い、節税だけが目的、なら後にした方がよいです。取引先を分けるなど、ほかの備えも組み合わせます。
経営セーフティ共済は便利な制度ですが、すべての事業者に向くわけではありません。
入らない方がよい、または後にした方がよい場合
- 12か月以内にやめる可能性がある:12か月未満でやめると1円も戻りません。廃業や事業の売却を考えている時期には向きません。
- 掛金で手元の資金が苦しくなる:掛金は40か月未満でやめると目減りし、一時貸付金も12か月たつまで使えません。今の資金繰りが苦しいなら、先に資金繰りを立て直します。
- 取引先が多く、1社が倒産しても困らない:小口の取引先ばかりなら、1社の倒産で借りる必要は小さく、少額だと共済金の対象にもなりません。
- 売上がほぼ現金払い・前払い:回収できなくなる売掛金がほとんどない業態では、本来の使いみちが少なくなります。
- 節税だけが目的:損金の効果は税金を払う時期を移すだけです。解約の年の益金まで考えて決めます。
ほかの備えと、倒産が起きたあとの手段
| 方法 | 何に効くか | 注意点 |
|---|---|---|
| 取引先を分ける・取引の上限を決める | 1社の倒産で失う額そのものを小さくする | 大口の取引先を断る判断が要る |
| 日本政策金融公庫の取引企業倒産対応資金 | 取引先の倒産で経営が苦しくなったときの長期運転資金 | 中小企業事業の場合、限度額は1億5千万円、返済は10年以内(据置3年以内)。審査があり利息がかかる |
| 信用保証協会の保証付きの融資 | 金融機関から借りやすくする | 保証料がかかる。制度の一覧は資金繰りの記事へ |
| 償還請求権のないファクタリング | 売った売掛金については、売掛先が倒産しても買い戻さなくてよい | 手数料がかかる。契約で償還請求権の有無を確かめる |
公庫の取引企業倒産対応資金は、倒産した企業に50万円以上の売掛金がある人や、取引依存度が20%以上の人などが対象です。融資とファクタリングの違いはファクタリングと融資の違いで説明しています。
どの手段が自分に合うかわからないときは、資金調達の診断で、急ぎの度合いと金額から候補を絞れます。
よくある失敗と注意点
入るときに、気をつけることは?
取引先が危なくなってから入っても、加入から6か月未満の倒産は対象外です。請求の期限を過ぎる、40か月の手前でやめる、解約してすぐ入り直す、にも注意しましょう。
- 取引先が危なくなってから入る:加入から6か月未満の倒産は対象外です。また、倒産前6か月以内に増やした掛金は枠に数えません。備えは平時に始めます。
- 請求の期限を過ぎる:倒産の日から6か月を過ぎると請求できません。複数の倒産の事態がある場合は、自分が回収困難と判断した事態の日から数えます。倒産を知ったら、まず日付を確かめます。
- 夜逃げや支払いの遅れで請求しようとする:法律の「倒産」に当たらなければ借りられません。このときに使えるのは一時貸付金です。
- 10分の1の差し引きを忘れる:借りると掛金の総額が減り、次の枠も解約手当金も小さくなります。必要な額だけを請求します。
- 月額を高くしすぎる:減らすには理由が要ります。掛金を12か月以上滞納すると中小機構に解除され、戻る率も下がります。
- 40か月の手前でやめる:36〜39か月なら95%しか戻りません。解約の前に納めた月数を確かめます。
- 解約の年の税金を考えない:解約手当金は益金・事業所得の収入です。利益の大きい年に解約すると税金が増えます。
- 解約してすぐ入り直す:令和6年10月1日以後の解約では、入り直してから解約の日の2年後までの掛金は損金になりません。
- 一時貸付金を返す予定を立てない:1年後に一括で返す借入です。同額借換はできますが、利息は毎回かかります。
出典(19件)公的機関の資料・法令。2026.10.17に確認
- 中小企業倒産防止共済法(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 中小企業倒産防止共済法施行令(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 中小企業倒産防止共済法施行規則(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 租税特別措置法(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 経営セーフティ共済 制度の魅力(中小企業基盤整備機構)kyosai-web.smrj.go.jp
- 経営セーフティ共済 加入資格(中小企業基盤整備機構)kyosai-web.smrj.go.jp
- 経営セーフティ共済 加入手続き窓口(中小企業基盤整備機構)kyosai-web.smrj.go.jp
- 共済金貸付(中小企業基盤整備機構)kyosai-web.smrj.go.jp
- 共済金借入れ手続き(中小企業基盤整備機構)kyosai-web.smrj.go.jp
- 一時貸付金制度(中小企業基盤整備機構)kyosai-web.smrj.go.jp
- 解約(解約手当金)(中小企業基盤整備機構)kyosai-web.smrj.go.jp
- よくあるご質問:前納した掛金の損金算入(中小企業基盤整備機構)kyosai-faq.smrj.go.jp
- よくあるご質問:掛金を損金に算入する方法(中小企業基盤整備機構)kyosai-faq.smrj.go.jp
- よくあるご質問:解約手当金の税法上の取扱い(中小企業基盤整備機構)kyosai-faq.smrj.go.jp
- よくあるご質問:共済金を受け取るまでの期間(中小企業基盤整備機構)kyosai-faq.smrj.go.jp
- よくあるご質問:一時貸付金を受け取るまでの期間(中小企業基盤整備機構)kyosai-faq.smrj.go.jp
- よくあるご質問:一時貸付金を償還期日に返せないとき(中小企業基盤整備機構)kyosai-faq.smrj.go.jp
- 経営セーフティ共済の現況(中小企業基盤整備機構)www.smrj.go.jp
- 取引企業倒産対応資金(セーフティネット貸付)(日本政策金融公庫)www.jfc.go.jp
FAQ
よくある質問
経営セーフティ共済とは何ですか?
中小企業倒産防止共済の愛称で、中小機構が運営する国の共済制度です。毎月5,000円〜20万円の掛金を積み立て、取引先が倒産して売掛金などが回収できなくなったときに、掛金の10倍と被害額の小さい方まで、上限8,000万円を無利子・無担保・保証人なしで借りられます。
経営セーフティ共済の掛金は経費(損金)になりますか?
なります。法人は支払った事業年度の損金、個人事業主は事業所得の必要経費に算入できます。確定申告書に専用の明細書を付ける必要があります。ただし令和6年10月1日以後に解約して入り直した場合、解約の日から2年を経過する日までに納めた掛金は損金・必要経費にできません。
取引先が倒産していなくてもお金を借りられますか?
共済金の貸付は取引先の倒産が条件ですが、加入から12か月がたち掛金を12か月分以上納めていれば、一時貸付金を借りられます。中小機構に解除されたと仮定した場合の解約手当金の95%まで(最高760万円)、利率は年0.9%(令和6年4月1日時点)、期間は1年で期日に一括で返します。
共済金を借りると何かデメリットはありますか?
利息はかかりませんが、借りた額の10分の1が掛金の総額から差し引かれ、返しても戻りません。たとえば1,600万円を借りると160万円が差し引かれ、次の貸付の枠や解約手当金も小さくなります。返す期間は借りた額で決まり、5,000万円未満なら据置6か月を含む5年です。
経営セーフティ共済を解約するといくら戻りますか?
掛金の総額に、納めた月数に応じた率を掛けた額が戻ります。自分から解約する場合、12か月未満は0%、12〜23か月は80%で、40か月以上なら100%です。月10万円で36か月なら360万円を納めて342万円、40か月なら400万円が戻ります。戻った額は益金・事業所得の収入になります。
取引先が倒産する直前に加入しても使えますか?
使えません。加入から倒産の日まで6か月以上たち、掛金を6か月分以上納めていることが条件です。さらに、倒産の日の前日の6か月前から請求の日までに増やした掛金は、10倍の計算に入りません。取引先が危なくなってからではなく、平時に加入しておく制度です。
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