会計更新 2026.11.05
貸倒引当金とは?中小企業の計算方法と法定繰入率、個人事業主の5.5%
貸倒引当金は、売掛金のうち回収できなくなりそうな分を決算で先に費用にする勘定です。資本金1億円以下の中小法人は期末の売掛金などに法定繰入率(製造業1,000分の8など)を掛けた額まで損金にでき、個人事業主は青色申告なら5.5%です。
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フファクタリング図鑑編集部(執筆)・公開 2026.11.07

貸倒引当金は、売掛金などのうち将来回収できなくなりそうな分を、決算で先に費用にしておくための勘定です。中小企業(資本金1億円以下の法人など)は、期末の売掛金などに業種ごとの法定繰入率(製造業なら1,000分の8)を掛けた額まで、税金の計算でも費用にできます。この記事では、使える会社の条件、計算の手順、取引先が危ないときの個別評価、個人事業主の5.5%までを、1社の決算の例で通して説明します。
この記事を6枚で
1 / 6結論:中小企業は「期末の売掛金など×法定繰入率」まで費用にできる
貸倒引当金って、うちみたいな中小企業でも使えるの?
資本金1億円以下の法人なら、多くは使えます。期末の売掛金などに業種ごとの法定繰入率を掛けた額まで、税金の計算でも費用にできます。危ない取引先の分は個別評価で足します。
貸倒引当金は、まだ起きていない貸倒れに備えて、決算で費用を先に見込んでおく仕組みです。会計では、回収の見込みに合わせて必要な額を積みます。税金の計算で費用(損金)にできる額には、法律で上限があります。
中小企業にとって大事なのは、次の3つです。
傘を差しても、雨は止まないよね?
そう、引当金は備えの記録で、お金は増えない。でも決算では、取れなくなりそうな分を先に費用にできるんだ。
- 使えるのは、資本金1億円以下の法人などに限られる:大きな会社の100%子会社などは、資本金が小さくても使えません
- ふつうの売掛金は「一括評価」:期末の売掛金・受取手形などの合計に、業種ごとの法定繰入率(卸売・小売業1,000分の10、製造業1,000分の8、その他の事業1,000分の6など)か、過去3年の貸倒実績率を掛けます。高い方を選べます
- 危ない取引先の売掛金は「個別評価」:破産の申立てなどの事実があれば、その売掛金だけを取り出し、一括評価とは別に上限まで積みます
引当金は、翌期にいったん全額を戻し入れて、その期末にあらためて積み直します。積むときは、決算で費用として記帳したうえで、申告書に明細を付ける必要があります。個人事業主は、青色申告なら年末の売掛金などの5.5%まで必要経費にできます。
この記事では、仕組み(2章)、使える会社(3章)、一括評価の計算(4章)、個別評価(5章)、1社の決算での計算(6章)、仕訳と申告書(7章)、個人事業主(8章)、資金繰りの手当て(9章)、よくある失敗(10章)の順に進みます。
貸倒引当金とは:まだ起きていない貸倒れを、先に費用にする仕組み
まだ貸倒れていないのに、費用にしていいの?
売上は前の期に計上しているので、取れなくなりそうな分も先に見込んでおく考え方です。ただし翌期に全額を戻して積み直すので、税金が永久に減るわけではありません。
掛けで売ると、売上は納品した期に立ちますが、代金が払われないまま終わることがあります。そのときの損失(貸倒損失)は、ふつう「回収できないと決まった期」の費用になります。けれども、損失の原因になった売上は、もっと前の期に計上されています。
貸倒引当金は、この時期のずれを小さくするための仕組みです。期末に残っている売掛金のうち、将来回収できなくなりそうな分を見積もって、その期の費用にしておきます。決算書では、売掛金の下に「貸倒引当金」としてマイナスで示され、売掛金のうち実際に回収が見込める額が分かるようになります。
会計の引当金と、税金の計算の引当金
決算書(会計)では、回収の見込みに合わせて、必要な額を積むのが本来の考え方です。一方、税金の計算では、費用にできる額に上限があり、上限を超えて積んだ分は費用になりません。中小企業では、税金の計算の上限額をそのまま決算書に積むやり方もとられます。ただし、回収の見込みがそれより明らかに低い売掛金があるなら、決算書にはその実態に合った額を積む方が、金融機関などに説明しやすくなります。
貸倒損失・貸倒引当金・償却債権取立益の違い
似た名前の勘定がいくつかあるので、ここで整理しておきます。
| 勘定 | いつ使うか |
|---|---|
| 貸倒引当金(繰入額) | 期末に、まだ回収できないと決まっていない売掛金の損失を見込むとき |
| 貸倒損失 | 回収できないと決まった売掛金を、帳簿から落とすとき |
| 貸倒引当金戻入益 | 翌期に、前期に積んだ引当金を収益に戻すとき |
| 償却債権取立益 | 貸倒損失として落とした売掛金が、後から一部でも払われたとき |
引当金は「見込み」、貸倒損失は「確定」です。見込みの段階では引当金を使い、回収できないと決まったら貸倒損失に移ります。
税金の計算で費用にするための3つの条件
- 使える法人であること:3章の中小法人などに限られます
- 決算で費用として記帳すること(損金経理):申告書の上だけで差し引くことはできません
- 確定申告書に明細を付けること:繰り入れた額の明細(別表十一)が必要です
そして、積んだ引当金は翌期の収益(益金)に戻します。毎期「戻して、積み直す」ので、引当金で税金が永久に減るわけではありません。貸倒れに備えて、費用を計上する時期を前に寄せる効果だと考えてください。※1
この章の根拠(1件)
- 法人税法52条1項〜3項・10項
貸倒引当金を使える会社と、使えない会社
資本金が1億円以下なら、どこでも使える?
大きな会社の100%子会社は使えません。前の3年の所得の平均が年15億円を超えると、法定繰入率は使えず実績率で計算します。グループ会社への売掛金も対象から外します。
税金の計算で貸倒引当金を使えるのは、期末の時点で次のどれかにあたる法人です。いまは、大きな会社の多くは貸倒引当金を費用にできません。※1
| 使える法人 | 中身 |
|---|---|
| 中小法人 | 資本金(出資金)が1億円以下の普通法人。ただし、資本金5億円以上の会社などの大法人に100%持たれている会社などは除く |
| 公益法人等・協同組合等・人格のない社団等 | 事業協同組合、信用金庫なども含む |
| 銀行・保険会社など | 銀行法の銀行、保険業法の保険会社と、これに準ずる法人 |
| 金融に関する取引の債権を持つ一定の法人 | リース債権を持つ法人、貸金業者、信用保証業を行う法人など(対象の債権は限られる) |
表のとおり、中小企業の多くは1行目の「中小法人」にあたります。判定は期末の時点の資本金で行うので、期の途中で増資して1億円を超えた場合は、その期から使えなくなります。
- 期末の資本金(出資金)は1億円以下?はい → 次へいいえ → 原則として使えない(銀行・保険会社などを除く)
- 資本金5億円以上の会社などに、100%持たれている?はい → 使えないいいえ → 中小法人として貸倒引当金を使える。次へ
- 前の3年の所得の平均が、年15億円を超える?はい → 法定繰入率は使えない。貸倒実績率で計算するいいえ → 法定繰入率と実績率の、多い方を選べる
法定繰入率を使えない中小法人:適用除外事業者
中小法人でも、前の3年の所得の平均が年15億円を超える法人(適用除外事業者)は、4章の法定繰入率を使えません。この場合は、過去の貸倒実績率で計算します。設立から3年たっていない法人は、原則としてこれにあたりません。※2
グループの会社への売掛金は入れない
親会社や兄弟会社など、100%の資本関係(完全支配関係)がある会社への売掛金は、貸倒引当金の計算の対象から外します。グループの中の売掛金が多い会社は、計算の前に取引先の一覧から除いておきます。※3
この章の根拠(3件)
- 法人税法52条1項
- 租税特別措置法57条の9第1項、国税庁「中小企業者等の判定」
- 法人税法52条9項2号
一括評価の計算方法:対象の債権・差し引く額・繰入率
前渡金や敷金も、売掛金と一緒に計算していいの?
入れません。対象は売掛金・受取手形・立替金など、お金を受け取る権利です。同じ相手への買掛金は差し引き、法定繰入率と貸倒実績率の多い方を選べます。
ふつうの売掛金にかける一括評価は、次の3つの段階で計算します。
- 段階1対象の債権を集める期末の売掛金・受取手形・未収入金・立替金など。個別評価の分とグループ会社の分は除く
- 段階2実質的に債権でない分を引く同じ相手への買掛金・預り保証金など(法定繰入率を使うときだけ)
- 段階3繰入率を掛ける法定繰入率と貸倒実績率の、高い方を選べる
段階1:対象になる債権、ならない債権
一括評価の対象は「売掛金、貸付金その他これらに準ずる金銭債権」です。どこまでが入るかは、通達で例が示されています。※1
| 入れるもの | 入れないもの |
|---|---|
| 売掛金・受取手形(割引・裏書した手形も、元の売掛金として入れる) | 預金・貯金とその未収利子、未収配当 |
| 未収の譲渡代金・加工料・請負金・手数料・地代家賃など、収益に計上したもの | 保証金・敷金・預け金 |
| 他人のために立て替えて払った立替金 | 手付金・前渡金など、物やサービスの代金に充てるために払ったもの |
| 未収の損害賠償金で収益に計上したもの、保証債務を払った後の求償権 | 前払給料・概算払の旅費など、後で精算する仮払金・立替金 |
| 貸付金 | 仕入割戻しの未収金、雇用関係の助成金などの未収金 |
表の左の列のうち、受取手形は、割引や裏書で手放していても、もとの売掛金として対象に入れられます(決算書の注記などで額が確かめられる場合)。逆に、前渡金や敷金は「お金を受け取る権利」ではないので、入れません。※2
ファクタリングで売った売掛金は、期末にはもう自社の債権ではないので、帳簿から消えた時点で対象からも外れます。手形の割引とは扱いが違うので、売った売掛金を数え直して入れないようにします。ファクタリングの仕訳はファクタリングの仕訳と勘定科目にあります。
段階2:実質的に債権とみられない額を引く(法定繰入率のとき)
法定繰入率を使うときは、同じ相手から受け入れている額があるために、実質的には債権とみられない部分を差し引きます。代表的なのは、同じ取引先に売掛金と買掛金の両方がある場合の、買掛金の額に相当する部分です。このほか、その取引先から預かっている営業の保証金や、借りているお金がある場合も、その額に相当する部分を差し引きます。※3
差し引く額は、取引先ごとに「売掛金と買掛金の少ない方」を数えるのが原則です。取引先が多くて数えるのが大変な会社には、簡単な方法もあります。2015年4月1日にあった法人は、2015年4月1日から2017年3月31日までに始まった各期の期末の数字から「債権とみられない額の割合」(小数点以下3位未満は切り捨て)を出し、その割合を毎期の対象の債権に掛けて差し引く額にできます。※4
段階3:法定繰入率と貸倒実績率
中小法人などは、次の法定繰入率を使えます。主な事業がどれにあたるかで決まります。※5
卸売・小売業製造業などその他
割賦販売小売業などの率は、2021年4月1日以後に始まる期から1,000分の7です。それより前の期は1,000分の13だったので、古い資料の数字をそのまま使わないようにします。建設業・運送業・サービス業・情報通信業などは、上の4つにあたらないので「その他の事業」の1,000分の6です。
もう一つの方法が、過去の実績から出す貸倒実績率です。前の3年の期に起きた貸倒損失などの合計を、1年あたりに直し、前の3年の期末の対象の債権の平均で割って出します。割合は小数点以下4位未満を切り上げます。実績率を使うときは、段階2の差し引きはしません。※6
中小法人などは、法定繰入率で出した額と、実績率で出した額のうち、多い方を選べます。貸倒れがほとんどない会社なら、ふつうは法定繰入率の方が多くなります。過去3年に大きな貸倒れがあった会社は、実績率の方が多くなることがあるので、両方を計算して比べます。
この章の根拠(6件)
- 法人税法52条2項、法人税基本通達11-2-16・11-2-18
- 法人税基本通達11-2-17
- 租税特別措置法施行令33条の7第2項、法人税基本通達11-2-9
- 租税特別措置法施行令33条の7第3項
- 租税特別措置法施行令33条の7第4項、国税庁タックスアンサーNo.5501
- 法人税法施行令96条6項
取引先が危ないときの個別評価:事実と書類で決まる
取引先が危なそうなら、いつでも50%積めるの?
決算日までに破産などの申立てや、手形の不渡りによる取引停止処分といった事実が必要です。受け入れている額や担保は先に引き、事実を示す書類を残します。
特定の取引先に、法律で決められた事実が起きているときは、その取引先への売掛金だけを取り出して、一括評価とは別に引当金を積みます。これが個別評価です。個別評価にした売掛金は、一括評価の対象から外すので、二重に数えることはありません。
B社の分は、ふつうの売掛金と一緒に計算していいの?
別にするんだ。一括評価の合計から外して、裁判所の通知などの書類と一緒に残しておこう。
個別評価にできる事実は、大きく、更生・再生計画の認可などで支払いが先に延びた場合、債務超過が続き事業の好転の見通しがない場合、破産・再生・更生などの申立てや手形の不渡りによる取引停止処分があった場合などに分かれます。どの事実なら、どこまで積めるかの表と計算例は、売掛金が回収不能になったときにまとめています。中小企業でいちばんよく使うのは、破産などの申立てがあったときに、売掛金の50%まで積める扱いです。
個別評価にするときに確かめる3つのこと
- 事実が決算日までに起きているか:破産などの申立ては、決算日までにあったものが対象です。手形の不渡りは、決算日までに不渡りになり、申告書の提出期限までに取引停止処分になれば、その期の個別評価にできます※1
- 受け入れている額や担保を引いたか:その取引先への買掛金や預かっている保証金、担保や保証で取れる見込みの額は、50%を掛ける前に差し引きます
- 事実を示す書類を残したか:裁判所の通知、債権者への案内、不渡りの通知など、事実がわかる書類を決算の資料と一緒に保存します
取引先の倒産を知った日の動き方や、債権届出のやり方は取引先が倒産したらやることで説明しています。
この章の根拠(1件)
- 法人税基本通達11-2-11
数字で確かめる:製造業の会社の決算で、引当金を計算する
実際に計算すると、いくらぐらいになるの?
製造業の例では、一括評価が216,800円、破産を申し立てたB社の個別評価が100万円で、合計1,216,800円です。実績率だと一括は121,690円なので、法定繰入率を使います。
ここからは、1社の例で通して計算します。前提は、資本金1,000万円・3月決算の製造業の会社です。グループの会社はなく、適用除外事業者にもあたりません。期末(3月31日)の数字は次のとおりです。
- 売掛金 2,400万円(うちB社への200万円。B社は3月に破産を申し立てた。B社への買掛金や担保はない)
- 受取手形 600万円、取引先のために立て替えた送料(立替金)30万円
- 前渡金 50万円、事務所の敷金 100万円
- C社には売掛金500万円と、C社から仕入れた分の買掛金120万円がある
C社の買掛金120万円を引くのは、なぜ?
同じ相手に払う分は、取れなくても相殺できるから、実質的には債権じゃないとみるんだ。法定繰入率を使うときだけ引くよ。
| 計算の段階 | 金額(円) | 中身 |
|---|---|---|
| 売掛金(B社の分を除く) | 22,000,000 | 2,400万円−B社200万円。B社は個別評価に回す |
| 受取手形+立替金 | 6,300,000 | 前渡金・敷金は対象外なので入れない |
| 一括評価の対象の債権 | 28,300,000 | 段階1の合計 |
| 実質的に債権とみられない額(−) | 1,200,000 | C社への買掛金120万円(売掛金500万円との少ない方) |
| 法定繰入率を掛ける元 | 27,100,000 | 段階2の後 |
| 一括評価の上限(1,000分の8) | 216,800 | 27,100,000×8÷1,000 |
| 個別評価の上限(B社・50%) | 1,000,000 | 200万円×50% |
| この期に積める貸倒引当金の合計 | 1,216,800 | 一括216,800円+個別100万円 |
表のとおり、この会社は合わせて121万6,800円を、この期の費用にできます。このうち100万円はB社1社の分で、残りの21万6,800円がふつうの売掛金全体への備えです。
貸倒実績率で計算すると、いくらになるか
比べるために、実績率でも計算します。前の3年の期末の対象の債権は合計8,400万円(平均2,800万円)で、その3年に起きた貸倒損失は合計36万円(1年あたり12万円)だったとします。
- 貸倒実績率:12万円÷2,800万円=0.004285…→小数点以下4位未満を切り上げて0.0043
- 一括評価の上限:2,830万円×0.0043=121,690円(実績率では、段階2の差し引きをしない)
法定繰入率なら216,800円、実績率なら121,690円です。多い方を選べるので、この会社は法定繰入率を使います。貸倒れの少ない会社ほど、中小法人の法定繰入率の効き目は大きくなります。
業種が違うと、上限はどれだけ変わるか
同じ会社が、もし別の業種だったら一括評価の上限がいくらになるかを、法定繰入率を掛ける元2,710万円のままで比べます。
| 主な事業 | 法定繰入率 | 一括評価の上限(円) |
|---|---|---|
| 卸売・小売業 | 1,000分の10 | 271,000 |
| 製造業(この会社) | 1,000分の8 | 216,800 |
| 割賦販売小売業など | 1,000分の7 | 189,700 |
| その他の事業(建設・運送・サービスなど) | 1,000分の6 | 162,600 |
| 金融・保険業 | 1,000分の3 | 81,300 |
表のとおり、卸売・小売業とその他の事業では、同じ売掛金でも上限が10万8,400円違います。主な事業がどれにあたるかで結果が変わるので、複数の事業をしている会社は、どれを主な事業とするかを税理士と確かめておきます。
簡単な方法で差し引く額を出すと
この会社が2015年4月1日からある法人で、基準の期の「債権とみられない額の割合」が仮に0.035だったとします。差し引く額は2,830万円×0.035=99万500円になり、法定繰入率を掛ける元は2,730万9,500円、一括評価の上限は218,476円です。原則の方法(216,800円)と比べて、多い方を使えます。
貸倒引当金の仕訳と、申告書に付ける明細
翌期の決算では、どう記帳するの?
前期の引当金を全額戻し入れてから、その期末の数字で積み直します。差額だけ記帳しても、申告書の明細に相殺前の額を書けば同じ扱いです。別表十一の明細は忘れずに。
貸倒引当金の仕訳は、期末の「繰り入れ」と、翌期の「戻し入れ」の2つです。6章の会社で、翌期末に積む額が110万円になったとすると、次のようになります。
| 日付 | 借方(左) | 貸方(右) | 中身 |
|---|---|---|---|
| 1年目の期末 | 貸倒引当金繰入額 1,216,800 | 貸倒引当金 1,216,800 | その期の費用にする |
| 2年目の期末(戻し入れ) | 貸倒引当金 1,216,800 | 貸倒引当金戻入益 1,216,800 | 前期の分を全額、収益に戻す |
| 2年目の期末(繰り入れ) | 貸倒引当金繰入額 1,100,000 | 貸倒引当金 1,100,000 | その期末の数字で積み直す |
このように、前期の分を全部戻してから、あらためて積むやり方を「洗替(あらいがえ)」と呼びます。会計ソフトによっては、差額の116,800円だけを戻し入れる記帳もできます。その場合でも、申告書の明細に相殺する前の額を書けば、全額を戻して積み直したものとして扱われます。※1
決算書のどこに出るか
貸借対照表では、貸倒引当金は売掛金や受取手形の下にマイナスで示すか、売掛金から差し引いた額を書いて、引当金の額を注記します。損益計算書では、取引先への売掛金・受取手形に対する繰入額は「販売費及び一般管理費」に、貸付金などに対する繰入額は「営業外費用」に入れるのが一般的です。戻入益は、その期の繰入額と相殺して示すこともあります。
金融機関は、決算書の売掛金と貸倒引当金を見て、回収の見込みが低い売掛金がどれだけあるかを読みます。危ない取引先への売掛金があるのに引当金がゼロだと、かえって説明を求められることがあります。
B社が実際に貸倒れになったとき
翌期にB社の破産の手続きが終わり、売掛金が回収できないと決まったら、その期に貸倒損失を計上します。前期に積んだ引当金は全額戻し入れるので、損失が二重に費用になることはありません。貸倒損失を計上できる条件と消費税の調整は5章で紹介した回収不能の記事を、売掛金の仕訳の全体は売掛金の仕訳を見てください。
申告書の明細:別表十一(一)と(一の二)
法人税の申告書には、個別評価の分は別表十一(一)、一括評価の分は別表十一(一の二)を付けます。明細がないと、引当金を費用にする扱いは受けられません。中小法人にあたるか、法定繰入率を使えるかの判定も、この明細を書くときに確かめます。※2
この章の根拠(2件)
- 法人税基本通達11-1-1
- 法人税法52条3項、国税庁「中小企業者等の判定」
個人事業主の貸倒引当金:青色申告なら年末の5.5%
個人事業主の5.5%って、法人より高くない?
そのとおりで、法人の法定繰入率は1,000分の6〜10です。青色申告なら、12月31日の売掛金などの5.5%まで必要経費にできます。法人成りの前後で比べるときは、この差も考えます。
個人事業主も、所得税の計算で貸倒引当金を使えます。法人とは決まり方が違うので、分けて説明します。※1
白色申告だと、5.5%は使えないの?
一括評価は青色申告だけ。でも取引先が破産を申し立てたときの個別評価なら、白色でも使えるよ。
- 一括評価は青色申告の事業所得だけ:青色申告をしている個人事業主が、事業所得の売掛金・貸付金などに使えます。白色申告や、不動産所得には使えません
- 率は1,000分の55(5.5%):金融業は1,000分の33(3.3%)です。法人のような業種ごとの区分や、実績率との比較はありません
- 計算の元は12月31日の残高:同じ相手から受け入れている額があって実質的に債権とみられない部分は、法人と同じく差し引きます
- 翌年の収入に戻す:前の年に必要経費にした引当金は、翌年の総収入金額に入れます
- 個別評価は白色申告でも使える:取引先に破産の申立てなどの事実があるときの個別評価は、青色申告に限られていません
たとえば、青色申告のデザイン業の個人事業主で、12月31日の売掛金が300万円(同じ取引先への買掛金などはない)なら、300万円×5.5%=16万5,000円まで、その年の必要経費にできます。確定申告書(青色申告決算書)に、繰り入れた額の明細を書くことが条件です。※2
同じ取引先から外注の仕事を受けて、その取引先に外注費の未払いがある場合などは、その未払いの額に相当する部分を差し引いてから5.5%を掛けます。たとえば上の300万円のうち、ある取引先への売掛金が50万円で、その取引先への未払いが20万円なら、元は280万円になり、上限は15万4,000円です。
個人事業主の5.5%は、法人の法定繰入率(1,000分の6〜10)よりかなり高い率です。法人成り(個人から会社に変えること)をすると、引当金の率は業種ごとの法定繰入率に変わるので、法人成りの前後で決算の数字を比べるときは、この違いも考えに入れます。
この章の根拠(2件)
- 所得税法52条、所得税法施行令145条
- 所得税法52条4項
引当金ではお金は増えない:取引先が危ないときの資金の手当て
引当金を積んだら、資金繰りは楽になる?
なりません。費用を前に寄せるだけで、手元のお金は1円も増えません。督促や出荷の見直しで取れる分を取り、資金の穴は確かな売掛金や融資で埋めます。
貸倒引当金は、費用を先に計上して、その期の税金の計算を実態に近づける仕組みです。積んでも手元のお金は1円も増えません。取引先の支払いが止まって困るのは、決算の数字よりも、目の前の支払いの方です。
まず、取れる分を取る
支払いが遅れ始めた取引先には、引当金を積むかどうかとは別に、すぐに督促を始めます。新しい出荷を止めるか、前払いに切り替えるかも決めます。取引先ごとに売掛金の上限を決める考え方は与信管理のやり方にあります。
穴があく前に備える
売上の多くを1社に頼っている会社は、その1社が払えなくなったときの資金の穴が大きくなります。売掛金の保証(取引先が払えなくなったときに保証会社が払う仕組み)に入っておく方法もあります。仕組みと費用は売掛金の保証で説明しています。
ファクタリングを使う場合と、使わない方がよい場合
危ない取引先とは別の、支払いの確かな取引先への売掛金があるなら、ファクタリングで早めにお金にして、資金の穴を埋めることもできます。手数料がかかるので、手取りと実質年率を手数料シミュレーターで計算してから決めます。
一方で、破産を申し立てた取引先や、支払いが止まっている取引先への売掛金は、ファクタリングに出すのは避けます。払われる見込みの低い売掛金は、買い取りを断られることが多く、買い取ってもらえても手数料は高くなります。払われなかったときの扱いで、ファクタリング会社ともめるもとにもなります。そうした売掛金は、引当金と回収の手続きで扱い、資金の手当ては融資や支払いの相談など、ほかの方法で考えます。
貸倒引当金でよくある失敗と注意点
貸倒引当金で、いちばん多い失敗は?
決算で記帳せずに申告書だけで差し引くことと、別表十一の明細を付け忘れることです。同じ相手の買掛金の引き忘れや、ファクタリングで売った売掛金を数えるのも注意です。
最後に、中小企業の貸倒引当金でよくある失敗をまとめます。どれも、決算の前に一度見直せば防げるものです。
- 決算で記帳せず、申告書だけで差し引く:貸倒引当金は、決算で費用として記帳したものだけが対象です。決算が締まった後に気づいても、その期には使えません
- 申告書に明細を付け忘れる:別表十一の明細がないと、記帳していても費用として認められません
- 前渡金や敷金まで入れる:お金を受け取る権利でないものは対象外です。科目の名前ではなく中身で判断します
- 同じ相手の買掛金を引き忘れる:法定繰入率を使うときは、実質的に債権とみられない額を差し引きます。税務調査で直されやすい点です
- 個別評価の売掛金を一括評価にも入れる:個別評価にした取引先の売掛金は、一括評価の対象から外します
- 古い率を使う:割賦販売小売業などの率は、2021年4月1日以後に始まる期から1,000分の7に変わっています
- 資本金や親会社の変化を見落とす:期末に資本金が1億円を超えた、大きな会社の100%子会社になった、といった変化があると、その期から使えなくなります
- 引当金を積んだのに出荷を続ける:個別評価にするほど危ない取引先に、決算のあとも同じ条件で掛け売りを続けると、損失が膨らみます。引当金を積むと決めたら、取引の条件も同時に見直します
- 翌期の戻し入れを忘れる:前期の引当金を戻さずに積み増すと、費用が二重になり、申告書の数字とも合わなくなります
- ファクタリングで売った売掛金を数える:売った売掛金は自社の債権ではないので、対象に入れません
貸倒引当金の計算は、期末の売掛金の台帳がそろっていれば、それほど難しくありません。迷うのは、どの科目を入れるか、個別評価にできる事実があるか、の2つです。判断に迷う取引先があるときは、事実を示す書類をそろえたうえで、税理士と決めてください。
出典(11件)公的機関の資料・法令。2026.11.05に確認
- No.5501 一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の設定(国税庁)www.nta.go.jp
- 法人税基本通達 第11章第2節第3款 一括評価金銭債権に係る貸倒引当金(国税庁)www.nta.go.jp
- 法人税基本通達 第11章第2節第2款 個別評価金銭債権に係る貸倒引当金(国税庁)www.nta.go.jp
- 法人税基本通達 第11章第1節 通則(貸倒引当金の差額繰入れ等の特例)(国税庁)www.nta.go.jp
- 別表十一(一)及び(一の二)における中小企業者等の判定・適用除外事業者(国税庁)www.nta.go.jp
- 法人税法(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 法人税法施行令(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 租税特別措置法(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 租税特別措置法施行令(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 所得税法(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 所得税法施行令(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
FAQ
よくある質問
貸倒引当金の法定繰入率はいくらですか?
中小法人の法定繰入率は、主な事業によって決まります。卸売・小売業(飲食店を含む)は1,000分の10、製造業は1,000分の8、金融・保険業は1,000分の3、割賦販売小売業などは1,000分の7、その他の事業は1,000分の6です。割賦販売小売業などは、2021年4月1日より前に始まった期は1,000分の13でした。
貸倒引当金はどの会社でも計上できますか?
税金の計算で費用にできるのは、期末の資本金が1億円以下の中小法人、公益法人等・協同組合等、銀行・保険会社などに限られます。資本金が1億円以下でも、資本金5億円以上の会社などの100%子会社は使えません。前の3年の所得の平均が年15億円を超える中小法人は、法定繰入率を使えず、貸倒実績率で計算します。
貸倒引当金の計算方法を教えてください。
一括評価は3段階です。期末の売掛金・受取手形・立替金などを集め、同じ相手への買掛金など実質的に債権とみられない額を引き、法定繰入率を掛けます。過去3年の貸倒実績率でも計算でき、多い方を選べます。破産の申立てなどがあった取引先の売掛金は、個別評価で別に計算します。
個人事業主も貸倒引当金を計上できますか?
青色申告をしている個人事業主は、事業所得の売掛金などの12月31日の残高に5.5%(金融業は3.3%)を掛けた額まで、一括評価で必要経費にできます。白色申告では一括評価は使えません。取引先に破産の申立てなどの事実があるときの個別評価は、白色申告でも使えます。前の年の引当金は翌年の収入に戻します。
貸倒引当金は翌期にどうなりますか?
前の期に積んだ引当金は、翌期に全額を収益(戻入益)に戻し、その期末の数字であらためて積み直します。これを洗替と呼びます。会計ソフトで差額だけを記帳しても、申告書の明細に相殺する前の額を書けば、全額を戻して積み直したものとして扱われます。毎期の計算の元は、その期末の売掛金の残高です。
貸倒引当金を積むと税金はどうなりますか?
積んだ額はその期の費用になるので、その期の所得が減ります。ただし翌期に全額を収益に戻すので、税金が永久に減るわけではなく、費用を計上する時期を前に寄せる効果です。決算で費用として記帳し、申告書に別表十一の明細を付けたときだけ認められます。引当金を積んでも手元のお金は増えません。
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