書類更新 2026.11.05
請求書がない売掛金は売れる?口約束・発注メールだけの取引で使える方法
請求書がなくても、仕事を終えて金額が決まっていれば売掛金はあり、事実どおりの請求書を今から出せばファクタリングに申し込めます。図鑑の106社が求める書類と、口約束やメールだけの取引を売れる形に整える5つの手順をまとめました。
初めての方へファクタリングを使う前に知る5つのこと・申込みから入金まで →
フファクタリング図鑑編集部(執筆)・公開 2026.11.06

「仕事は終わったのに、まだ請求書を出していない」「発注は電話とメールだけで、契約書も注文書もない」。こうした取引の代金を、ファクタリングで早く現金にできるかを知りたい方に向けた記事です。結論からいうと、仕事が終わって金額が決まっていれば、売掛金は請求書がなくてもあり、正しい請求書を今から出せば売れる形になります。図鑑のデータ(2026年11月5日時点)で各社がどんな書類を求めているかを見ながら、口約束やメールだけの取引を売れる形に整える手順を説明します。
この記事を6枚で
1 / 6先に結論:売掛金は請求書がなくてもある。売るには今から正しい請求書を出す
請求書を出し忘れてた仕事、もう売れないの?
仕事を終えて金額が決まっていれば、売掛金はもうあります。事実どおりの請求書を今から作って取引先に送れば、ふつうの請求書と同じように申し込めます。発注のメールや納品の記録も添えましょう。
売掛金は、請求書を出したときに生まれるものではありません。仕事を引き受け、約束どおりに納めた時点で、代金を払ってもらう権利(債権)はすでにあります。契約は口約束でも成り立ち、書面を作らなくてもよいのが民法の原則です※1。
ただし、ファクタリング会社が買い取るには、その売掛金があること、金額と支払日が決まっていることを、書類で確かめられる必要があります。仕事が終わっているなら、事実どおりの請求書を今から作って取引先に送るのが、いちばん早い方法です。そのうえで、発注のメールや納品の記録を添えれば、契約書がない取引でも申し込める会社があります。
確認のメールって、何を書けばいいの?
納めた日・中身・金額・支払日の4つ。取引先が「はい」と返してくれれば、それが請求書の裏付けになるよ。
- 必要書類と対象が分かる106社のうち101社が、必要書類に請求書を挙げていました。請求書なしで申し込める会社はほとんどありません
- その一方で、請求書に加えて契約書・発注書・納品書などの取引の裏付けを挙げる会社が45社、請求書の代わりにほかの書類でもよいと読める会社が15社ありました
- 仕事がまだ途中、金額がまだ決まっていない、という段階なら、請求書を出せる状態ではありません。その場合は注文書のファクタリングか、ほかの方法を考えます
- してはいけないのは、事実と違う日付・金額の請求書を作ることです。取引先に確かめられれば分かり、罪に問われるおそれもあります
この記事では、まず請求書がなくても売掛金があると言える理由を説明し、次にファクタリング会社が求める書類をデータで見ます。そのあと、自分の売掛金がどの状態かの見分け方、売れる形に整える手順、口約束やメールだけのときに証拠になる記録、発注する側に書面を出す義務がある取引、やってはいけないことを順に書きます。
この章の根拠(1件)
- 民法522条2項
請求書がなくても売掛金はある:口約束でも契約は成り立つ
電話で頼まれただけの仕事でも、ちゃんと代金を請求できる?
できます。契約は申込みと承諾で成り立ち、書面は原則いりません。ただ支払日を決めていないと、請求を受けたときから期限が来る扱いなので、早めに請求書を出しておくのが大事です。
「請求書を出していないから、まだ売掛金ではない」と考える方もいますが、法律の上ではそうではありません。売掛金は、商品を売った、仕事をした、という取引から生まれる代金の権利です。請求書は、その代金を「いくら、いつまでに払ってください」と相手に知らせる書類で、権利そのものを作る書類ではありません。
契約は申込みと承諾で成り立ち、書面はいらない
民法は、契約は申込みに対して相手が承諾したときに成り立ち、法令に特別の決まりがある場合を除いて、書面などの形は必要ないとしています※1。電話で「この仕事を30万円でお願いします」と頼まれ、「引き受けます」と答えれば、その時点で契約は成り立っています。
取引の種類ごとに見ると、物を売る取引は売買、仕事を完成させて納める取引は請負、事務の作業を引き受ける取引は準委任にあたるのが一般的です。どれも、当事者の約束で効力が生じる契約です※2。
請求書・納品書・領収書は、それぞれ何を示すか
取引の書類は、それぞれ示すことが違います。発注書や注文書は「頼んだこと」、納品書は「納めたこと」、検収書は「取引先が受け取りを確かめたこと」、請求書は「いくらをいつまでに払ってほしいか」、領収書は「払ってもらったこと」を示します。ファクタリングで売るのは、納めたあとで、まだ払ってもらっていない代金です。ですから、領収書を出したあとの取引は、もう売るものがありません。
代金を請求できるようになる時期
代金をいつから請求できるかは、取引の種類によって違います。請負なら、原則として仕事の結果を引き渡すのと同時に報酬を払う決まりです※3。準委任なら、原則として引き受けた作業を終えたあとに報酬を請求できます※4。
支払日を決めていない取引では、取引先は、請求を受けたときから支払いが遅れた責任を負います※5。つまり、請求書を出さないままでいると、いつまでに払うべきかが決まらず、取引先もいつ払えばよいか分かりません。ファクタリング会社にとっても、回収の日が読めない売掛金は買い取りにくいのです。
口約束の売掛金を売ることも、法律の上はできる
債権は、原則として他人に譲り渡すことができます※6。口約束で生まれた売掛金も債権なので、ファクタリング会社に売ること自体は法律で禁じられていません。問題は法律ではなく、売掛金があること・金額・支払日を、第三者であるファクタリング会社が確かめられるかという点です。だからこそ、請求書と、取引を裏付ける記録をそろえる必要があります。
なお、取引先との契約に「債権を譲り渡してはいけない」という特約がある場合の扱いは、譲渡制限特約がある売掛金で説明しています。
放っておくと時効も進む
請求書を出さずに放っておいても、代金の権利が消えるわけではありません。ただし、権利を使えることを知った時から5年、使える時から10年たつと、時効で消えることがあります※7。仕事を終えたのに請求していない取引は、早めに請求書を出して整理しておきます。時効の数え方は売掛金の時効で説明しています。
この章の根拠(7件)
- 民法522条
- 民法555条・632条・643条・656条
- 民法633条
- 民法648条2項・656条
- 民法412条3項
- 民法466条1項
- 民法166条1項
ファクタリング会社は何を求めるか:106社の書類の条件
契約書がないと、相手にしてもらえない?
契約書の名前が出てくる会社は106社のうち37社で、多くは請求書と取引の記録で判断します。「送付済みの請求書」と指定する会社もあるので、請求書は取引先に送ってから申し込むのが確実です。
図鑑に載せている一般の請求書を扱う168サービスのうち、注意喚起をしておらず、必要書類と対象(法人・個人事業主)が公式サイトで分かる106社について、請求書とそれに関わる書類をどう書いているかを数えました(2026年11月5日時点)。
請求書なしで受けてくれる会社はないの?
106社のうち101社が請求書を挙げているよ。代わりの書類を認める15社も、注文書や契約書で代えるのがふつうなんだ。
| 請求書についての書き方 | 社数 | 請求書がない取引だと |
|---|---|---|
| 請求書だけを挙げる | 44社 | 請求書を出してから申し込む |
| 請求書に加えて、契約書・発注書・納品書など取引の裏付けも挙げる | 45社 | 請求書を出し、取引の記録も合わせてそろえる |
| 請求書の代わりにほかの書類でもよいと読める(「請求書または契約書」など) | 15社 | 請求書の前でも相談できることがある |
| 請求書に当たる書類の記載なし | 2社 | 申し込む前に問い合わせる |
| 合計 | 106社 |
請求書だけを挙げる会社と、請求書に加えて裏付けを挙げる会社を合わせると89社で、全体の8割を超えます。どちらも請求書が軸なので、請求書がない取引は、まず請求書を出せる状態にすることが先です。「請求書の代わりにほかの書類でもよい」と読める15社も、多くは注文書や契約書で売掛金を示す形で、何の書類もなしに申し込めるわけではありません。
請求書のほかに、どんな書類の名前が挙がるか
106社の必要書類の書き方に出てくる、請求書以外の取引の書類の名前を数えました。1社が複数の書類を挙げていることがあります。
取引の前に交わす書類取引のあとに出る書類書類の代わりの記録
契約書と発注書・注文書が多く、どちらも取引の前に交わす書類です。契約書がない取引でも、納品書・検収書や支払通知書のように、仕事のあとに出る書類で取引を示せることがあります。取引先とのメールや請求書の送受信の履歴を書類として挙げる会社は2社だけでしたが、「など」と書いて幅を残している会社も多く、メールを出してよいかは申し込むときに聞いてみる価値があります。
請求書の代わりを認める15社は、何で代えるか
請求書の代わりにほかの書類でもよいと読める15社の書き方を見ると、「請求書または契約書」「請求書または発注書」「注文書または請求書」のように、取引の前に交わす書類で代えられるとする会社が多くありました。そのほか、「支払通知書も可」と取引先が出す書類を認める会社や、ネット通販の売上なら売上の画面で確かめるとする会社もあります。
どれも、取引先がいくら払うかが分かる書類か記録で代えるという点で共通しています。口約束だけで何の記録もない取引を、そのまま買い取るという書き方の会社はありませんでした。
「提出済み」「確定した」請求書と指定する会社もある
請求書について「取引先に送付済の請求書」「支払期日が確定しているもの」「確定した債権の請求書」のように条件を付ける会社が4社ありました。自社の中で作っただけで、取引先に送っていない請求書は受け付けない、という意味です。請求書を作ったら、取引先に送り、受け取ってもらってから申し込む方が確実です。
また、注文書(発注書)の段階で買い取ると公式サイトに書いている会社は、106社のうち15社でした。仕事がまだ終わっていない取引を売りたいときは、この15社のような会社が候補になります。仕組みと注意点は注文書ファクタリングとはで説明しています。
自分の売掛金はどの状態か:4つの場合の分かれ道
金額をはっきり決めてないんだけど、だいたいで書いていい?
だいたいの額で請求書を作ると、取引先が認めるか分かりません。先に金額を伝えて、メールで了解をもらってから請求書にします。取引先が納得していない売掛金は、ファクタリング会社も買い取りません。
請求書がない売掛金といっても、状態によって取れる手段が違います。まず、自分の取引が次のどれに当たるかを確かめます。
まだ仕事の途中なんだけど、同じやり方でいい?
途中なら請求書はまだ出せないんだ。注文書の段階で買い取る会社に相談するか、前払いを頼む方法を考えよう。
- 仕事・納品はもう終わっている?はい → 次へいいえ → 請求書はまだ出せない。注文書のファクタリングか、ほかの方法を考える
- 金額は決まっている?はい → 次へいいえ → 取引先と金額を決め、メールなどで確認をもらう
- 取引先は、取引と金額を認めている?はい → 次へいいえ → 先に取引先と話し合う。もめている売掛金は売れない
- 支払日は決まっている?はい → 請求書を出し、取引の記録をそろえて申し込むいいえ → 請求書に支払期限を書いて送り、取引先の了解をもらう
仕事が終わり、金額も支払日も決まっている
いちばん多いのは、仕事は終わって金額も話がついているのに、請求書を出しそびれている、という場合です。この場合は、次の章の手順で請求書を作って送れば、通常の請求書と同じようにファクタリングに申し込めます。
毎月の取引で、締めごとに払ってもらっている
毎月同じ取引先から仕事を受け、月末で締めて翌月に払ってもらう取引なのに、請求書は出さず、取引先の計算で振り込まれている、という形もあります。この場合は、取引先が出す支払通知書や、毎月の入金の記録が、取引の裏付けになります。今月分についても、取引先の締めの金額を確かめたうえで請求書を出せば、売れる形になります。
仕事は終わったが、金額がはっきりしない
「だいたい50万円くらい」と口頭で話しただけで、正確な金額を決めていないこともあります。この状態では、請求書に書く金額を自分で決めることになり、取引先が認めるかどうかが分かりません。先に金額を取引先に伝え、メールなどで了解をもらってから請求書を作ります。
取引先が、取引や金額を認めていない
作業の出来に不満がある、追加の作業の代金で話がまとまっていない、など、取引先が支払いに納得していない売掛金は、ファクタリング会社も買い取りません。売ったあとで取引先が支払いを拒めば、回収できないからです。まずは取引先と話し合い、払ってもらえない場合の進め方は売掛金の回収の段取りを見てください。
仕事がまだ途中、またはこれから
仕事が途中の段階では、まだ代金を請求できる状態になっていないことが多く、請求書は出せません。この段階で資金が必要なら、注文書のファクタリングを扱う会社に相談するか、前払いや中間払いを取引先に頼む、融資を使う、といった方法を考えます。
請求書がない取引を、売れる形に整える手順
請求書の発行日は、仕事が終わった日にした方がいい?
発行した日は作った日の日付にして、取引の日に実際に納めた日を書きます。あとから作ったことは、申し込むときに先に伝えれば問題になりにくいです。
仕事が終わり、金額と支払日について取引先と話がついているなら、次の5つの手順で、ファクタリングに申し込める形に整えます。急いでいても、2と3を飛ばさないことが大切です。
1. 取引の記録を集める
発注を受けたときのメールやチャット、見積書、納品のときの連絡、作業の完了報告など、取引があったことを示す記録を集めます。日付と相手の名前が分かるものを優先します。電話で受けた発注なら、いつ、誰から、何を、いくらで頼まれたかのメモでも、ないよりはましです。どの記録がどこまで証拠になるかは、次の章で説明します。
2. 取引先に金額と支払日を確かめる
請求書を作る前に、取引先に「○月○日に納めた○○の代金は○円で、○月○日のお支払いでよろしいでしょうか」とメールで確かめます。返事が「はい」の一言でも、取引先が金額と支払日を認めた記録になります。口約束だけの取引では、このメールのやり取りが、契約書の代わりのいちばん強い記録になります。
確認のメールは、たとえば次のような短い文で足ります(説明のための例です)。
- 件名:10月分の作業代金のご確認
- 本文:いつもお世話になっております。10月20日に納品いたしましたホームページの改修作業の代金について、30万円(税込)、11月30日のお振込みでお間違いないか、ご確認をお願いいたします。問題なければ、本日中に請求書をお送りします。
相手の会社のメールアドレスから返事が来れば、日付・相手・金額・支払日がそろった記録になります。返事は消さずに、請求書と同じフォルダに保存しておきます。
3. 事実どおりの請求書を作る
請求書には、少なくとも次のことを書きます。
- 発行した日(今日の日付)と、請求書の番号
- 取引先の名前(宛名)と、自社の名前・住所
- 取引の日(納品した日、作業を終えた日)と、取引の内容
- 金額(税込・税抜と消費税の額)
- 支払期限と、振込先の口座
インボイス(適格請求書)を出す事業者なら、登録番号、税率ごとの合計と消費税の額なども必要です※1。発行した日は、あとから作った場合でも作った日の日付にし、取引の日は実際の日付を書きます。支払期限の書き方は請求書の支払期限の書き方にまとめています。
請求書の番号と控えを残す
あとから作る請求書でも、通し番号を付け、控えを保存します。番号がそろっていると、どの請求書をどのファクタリング会社に売ったか、どれが入金済みかを、あとで一覧にしやすくなります。表計算ソフトや請求書の作成サービスで作るなら、同じ取引先あての請求書が二重にできていないかも確かめます。
4. 取引先に送り、送った記録を残す
請求書は、メールやPDFで送ったなら送信の記録を、郵送なら送った日のメモを残します。「送付済み」の請求書を求める会社があるうえ、取引先が受け取ったことを示せれば、ファクタリング会社も安心して買い取れます。取引先から「受け取りました」と返事があれば、それも保存しておきます。
5. 申し込むときに、経緯を先に伝える
ファクタリング会社に申し込むときは、「契約書はなく、発注はメールで受けた」「請求書は仕事のあとで作った」と、最初に経緯を伝えます。隠して出すと、審査の途中で書類の日付の違いなどから気づかれ、確認に時間がかかります。先に伝えれば、どの記録を出せばよいかを相手から案内してもらえます。必要書類の全体と取り寄せ方はファクタリングの必要書類で説明しています。
この章の根拠(1件)
- 国税庁 No.6625 適格請求書等の記載事項
口約束・発注メールだけのとき、何が証拠になるか
電話で受けた発注、メモしかないんだけど…
自社のメモは弱い記録です。電話で決めた内容をメールで送り、取引先から返事をもらいましょう。返事が来れば、日付・相手・金額・支払日がそろった、取引先が認めた記録に変わります。
契約書も注文書もない取引では、ふだんのやり取りの記録が、取引を示す材料になります。ただし、記録によって示せることの強さが違います。手元にある記録を、次の表で整理してみてください。
メールしか残ってないけど、証拠になる?
なるよ。強いのは、取引先が書いたり認めたりした記録。自社だけで作った書類は、どれだけ詳しくても弱いんだ。
| 記録 | 示せること | 強さの目安 |
|---|---|---|
| 取引先が金額と支払日を認めたメール | 取引の中身・金額・支払日を取引先が認めたこと | 強い(契約書に近い) |
| 取引先が出した支払通知書・検収の連絡 | 取引先が受け取りを確かめ、払う予定であること | 強い |
| 発注のメール・チャット(取引先の会社のアドレスから) | 取引先が仕事を頼んだこと。金額が書いてあれば金額も | 中くらい |
| 見積書と、それに対する「お願いします」の返事 | 取引の中身と金額に合意したこと | 中くらい |
| 納品書・作業の完了報告(自社が作ったもの) | 仕事を終えたこと(取引先の受け取りの返事があれば強くなる) | 弱め |
| 同じ取引先からの過去の入金(通帳) | 取引が続いていて、これまで払ってくれていること | 補う材料 |
| 電話で受けた発注のメモ | 自社の記録だけで、取引先が認めた証拠にはならない | 弱い |
表のとおり、強いのは取引先が自分で書いた・認めた記録です。自社だけで作った書類は、どれだけ詳しくても、取引先が認めたことにはなりません。手元に弱い記録しかないときは、前の章の手順2のように、取引先に確認のメールを送って返事をもらうと、強い記録に変わります。
電話だけで受けた発注を、あとから記録にする
発注を電話だけで受けていて、メールもチャットも残っていない取引は、いまから記録を作ります。やり方は、電話で決めた内容を「先日お電話でいただいたご依頼の内容を、念のためお送りします」とメールで送り、取引先から返事をもらうことです。作業の中身・金額・納めた日・支払日を書き、間違いがあれば直してもらうよう添えます。返事が来れば、電話だけの取引でも、取引先が認めた記録が残ります。
チャットやSNSのやり取りを出すとき
発注をチャットやメッセージのアプリで受けている場合は、相手の名前・日付・発注の中身が分かる画面を保存します。相手が個人のアカウントで、会社の担当者だと分かりにくいときは、相手の会社名と担当者名を一言添えます。画面の一部を切り取ったり、文章を書き換えたりはせず、前後のやり取りも含めてそのまま出します。
過去の入金の記録は、通帳で補う
同じ取引先と何度も取引していて、これまで期日どおりに払ってもらっているなら、その入金が載った通帳が、契約書がないことを補う材料になります。通帳は、その取引先からの入金の行が写る期間を出し、どの行がその取引先の入金かに印をつけておくと伝わりやすくなります。
発注する側に書面で示す義務がある取引もある
取引先に「発注書ください」って言いにくいなあ。
取適法やフリーランス法に当たる取引なら、発注する側は仕事の内容や代金、支払期日を書面かメールで直ちに示す決まりです。建設工事も契約を書面で交わします。頼むのは受ける側として当然の求めです。
口約束で仕事を受けることは珍しくありませんが、取引によっては、発注する側が取引の条件を書面やメールで示すよう、法律で決められています。自分の取引がこれに当たるなら、取引先に発注の内容を書面かメールで出してもらうよう頼むことができます。
| 法律 | 対象になる取引の例 | 発注する側が示すこと |
|---|---|---|
| 中小受託取引適正化法(取適法) | 一定の規模の会社が、中小の事業者に製造・修理・情報成果物の作成・役務などを頼む取引 | 仕事の内容・代金の額・支払期日・支払方法などを、書面か電子メールなどで直ちに示す |
| フリーランス・事業者間取引適正化等法(フリーランス法) | 事業者が、従業員を使っていない個人や、代表者1人だけの会社に業務を頼む取引 | 仕事の内容・報酬の額・支払期日などを、書面か電子メールなどで直ちに示す |
| 建設業法 | 建設工事の請負契約 | 工事の内容・代金の額・工期などを書面に書き、署名か記名押印をして互いに交わす |
取適法では、発注する側は中小の受託事業者に対し、仕事の内容や代金の額、支払期日などを書面か電子メールなどの方法で直ちに示さなければなりません※1。フリーランス法にも同じような決まりがあります※2。建設工事では、請負契約の内容を書面にして交わすことが決められています※3。
これらの法律に当たる取引なのに書面やメールが出ていないなら、「発注の内容をメールでいただけますか」と頼むのは、受ける側として当然の求めです。書面が出てくれば、それがそのまま取引の裏付けになります。自分の取引が取適法の対象かの見分け方は取適法(旧下請法)とはで説明しています。
この章の根拠(3件)
- 取適法4条
- フリーランス法3条
- 建設業法19条
やってはいけないこと・よくある失敗
「請求書がなくても買い取る」って業者、助かるんだけど?
売掛金を確かめずにお金を出す業者は、実は利用者から返してもらうことを当てにしているかもしれません。金融庁も、ファクタリングを装った貸付けに注意を呼びかけています。
請求書がない取引を売れる形にしようとするとき、急いでいると、してはいけないことに手を出してしまうことがあります。次のことは避けてください。
前から請求してたことにした方が、通りやすくない?
それは逆効果。取引先に確かめればすぐ分かるし、事実と違う書類は罪にもなりうる。作った日の日付で出そう。
- 発行した日は作った日にする取引の日は実際の日付、発行の日は今日の日付
- 日付をさかのぼらせる前から出していたように見せると、事実と違う書類になる
- 金額は取引先が認めた額確認のメールの金額と請求書の金額をそろえる
- 金額を水増しする・ない取引を作る架空の請求書を売るのは詐欺に当たるおそれがある
- 売るのは1社だけ見積もりは複数でも、契約するのは1社
- 取引先の名前で書類を作る発注書や検収書を自分で作って出すのは偽造になりうる
日付をさかのぼった請求書
「前から請求していた」ように見せるため、発行の日付を過去にずらすのは避けます。取引先が受け取った日とずれていれば、取引先に確認したときに分かります。あとから作ったことは、正直に伝えれば問題になりにくいので、日付は作った日にしてください。
水増し・架空の請求書
実際より多い金額の請求書や、ない取引の請求書を作ってファクタリング会社に売れば、相手をだましてお金を受け取ったことになり、詐欺の罪に当たるおそれがあります※1。取引先の名前で発注書や検収書を作って出すことも、文書の偽造に当たりえます※2。
口約束の売掛金を、2社に売る
契約書がない売掛金は、どこに売ったかの記録も残りにくく、うっかり同じ売掛金を2社に売ってしまうおそれがあります。債権を譲り渡したことを取引先やほかの人に主張するには、取引先への通知か取引先の承諾が必要です※3。売った売掛金は、取引先・金額・売った会社・日付を一覧にしておきます。
取引先との関係を考えずに売る
取引先に知らせずに売る2社間のファクタリングでも、売ったあとに取引先が払ってくれなければ、回収のやり取りが始まります。請求書をあとから出したばかりの取引は、取引先の社内で支払いの手続きがまだ済んでいないこともあります。請求書を送ったら、取引先の経理に届いたか、支払日の予定に入ったかを確かめてから申し込むと、入金の日がずれて困ることが減ります。
請求書がないことにつけ込む業者
「請求書がなくても買い取る」「書類は何もいらない」と強くうたう業者には気をつけてください。金融庁は、ファクタリングを装って高い金利でお金を貸す業者に注意を呼びかけ、買取代金が債権額に比べて著しく低い場合などは偽装ファクタリングの疑いがあるとしています※4。売掛金を確かめずにお金を出す業者は、実際には売掛金ではなく、利用者から返してもらうことを当てにしている可能性があります。見分け方は危ないファクタリング業者の見分け方で説明しています。
この章の根拠(4件)
- 刑法246条
- 刑法159条
- 民法467条1項
- 金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」
売れないとき・急がないときのほかの方法
ファクタリングを使うべきか、待つべきか迷う。
30万円を手数料10%・支払日まで25日で売ると、手取り27万円で実質年率は約162%です。払う期日が11月30日より後なら、請求書を出して待てば3万円を払わずに済みます。
請求書を出すだけで間に合わないかを先に計算する
請求書を出していないせいで入金が遅れているなら、ファクタリングを使う前に、請求書を出して支払日を待てば間に合わないかを考えます。たとえば、10月20日に終えた30万円(税込)の仕事の請求書を11月5日に出し、支払期限を11月30日にしたとします。
| 方法 | 入る額 | 入る日 | 費用 |
|---|---|---|---|
| 請求書を出して支払日を待つ | 30万円 | 11月30日 | なし |
| 11月5日にファクタリングで売る(手数料10%の場合) | 27万円 | 11月5日ごろ | 3万円 |
手数料10%・支払日まで25日で売ると、実質年率は約162%です(3万円 ÷ 27万円 ÷ 25日 × 365)。25日待てるなら、3万円を払わずに済みます。支払いの期日が11月30日より前に来るときだけ、ファクタリングを比べる意味があります。自分の金額と日数で計算するときは手取りと実質年率の計算を使ってください。
請求書を出せる状態にならない、取引先が金額を認めない、など、ファクタリングに向かない場合もあります。次の方法も比べてから決めてください。
- 請求書を出して、支払日を早めてもらう:仕事が終わっているなら、まず請求書を出し、取引先に早めの支払いを頼みます。請求書を出していないことが、入金が遅れているいちばんの理由であることも少なくありません。
- 前払い・中間払いを頼む:仕事が途中なら、出来た分の代金や、材料費の前払いを取引先に相談します。次からの取引では、発注のときに支払いの条件を決めておきます。
- 融資を使う:売掛金を売るのではなく、事業の実績をもとに借りる方法です。日数はかかりますが、費用は低いのが一般的です。
次からの取引では、口約束で受けても、発注の内容・金額・支払日をメールで送り返して確認をもらう習慣をつけると、請求書がないまま困ることがなくなります。お金が必要な日までに間に合う方法を条件から探すなら、資金調達診断を使ってください。
出典(8件)公的機関の資料・法令。2026.11.05に確認
- 民法(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 建設業法(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 刑法(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- No.6625 適格請求書等の記載事項(国税庁)www.nta.go.jp
- ファクタリングの利用に関する注意喚起(金融庁)www.fsa.go.jp
- ファクタリング図鑑(会社ごとの必要書類と出典)facto-ring.com
FAQ
よくある質問
請求書がなくても売掛金はありますか?
あります。契約は口約束でも成り立ち、書面は原則として必要ありません。商品を納めた、仕事を終えた時点で代金の権利はあり、請求書はその代金を相手に知らせる書類です。ただし支払日を決めていない取引は、請求を受けたときから支払いの期限が来るので、早めに請求書を出して整理しておきます。
請求書がなくてもファクタリングできますか?
ファクタリング図鑑の106社のうち101社が必要書類に請求書を挙げていて、請求書なしで申し込める会社はほとんどありません。仕事が終わって金額が決まっているなら、事実どおりの請求書を今から作って取引先に送り、発注のメールや納品の記録を添えて申し込むのが早い方法です。
請求書を後から作ってもいいですか?
作ってかまいません。取引の日は実際に納品・作業を終えた日を書き、発行した日は作った日の日付にします。前から出していたように見せるために日付をさかのぼらせるのは避けてください。申し込むときは、請求書を仕事のあとで作ったことをファクタリング会社に先に伝えます。
口約束だけの取引で、証拠になるものは何ですか?
いちばん強いのは、取引先が金額と支払日を認めたメールです。取引先が出した支払通知書や検収の連絡も強い材料になります。発注のメールやチャット、見積書への返事、同じ取引先からの過去の入金が載った通帳も使えます。自社だけで作った書類や電話のメモは弱いので、取引先に確認のメールを送って返事をもらいます。
契約書がない取引でもファクタリングは使えますか?
使える場合があります。図鑑の106社のうち、必要書類の書き方に契約書の名前が出てくる会社は37社で、多くは請求書と、発注書・納品書・メールなどの取引の記録で判断します。契約書がないことを先に伝え、どの記録を出せばよいかを申込み時に聞いてください。
仕事がまだ終わっていない売掛金は売れますか?
仕事が途中の段階では、まだ代金を請求できないことが多く、請求書は出せません。注文書(発注書)の段階で買い取ると公式サイトに書いている会社は、図鑑の106社のうち15社でした。ほかに、取引先に前払いや中間払いを頼む、融資を使う、といった方法もあります。
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