資金繰り更新 2026.11.05
外注費が払えないときは?延ばせる相手の見分け方と取適法・フリーランス法
外注費が払えないときは、まず外注先が取適法・フリーランス法・建設業法の対象かを確かめます。対象なら相手の了承があっても期日の後ろ倒しは違反なので、期日どおりに払うお金を用意し、延ばせる相手とだけ期日前に相談します。
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フファクタリング図鑑編集部(執筆)・公開 2026.11.07

今月の外注費が、手元のお金では払いきれない。そんなときに最初に確かめたいのは、その外注費が「支払いを延ばしてもらえる取引」かどうかです。取適法(中小受託取引適正化法)やフリーランス法の対象になる外注なら、相手が了承しても、決まった期日より後に払うことは違反になります。この記事では、外注先ごとに何ができて何ができないかを分け、頼み方の例文と、支払いに充てるお金の用意のしかたを説明します。
この記事を6枚で
1 / 6結論:まず外注先を「延ばせる相手」と「延ばせない相手」に分け、期日の前に動く
外注費が足りないとき、最初に何を確かめればいい?
外注先ごとに、取適法・フリーランス法・建設業法のどれかに当たるかを確かめます。当たる相手は期日どおりに払い、延長の相談は、どれでもない外注先にだけ期日の前にします。
外注費が払えないとき、多くの人は外注先に「少し待ってほしい」と頼もうとします。ところが外注費は、仕入れの代金と違い、法律で支払いの期日が厳しく決められていることが多い支払いです。頼む前に、相手ごとに決まりを確かめる必要があります。
外注先に、ちょっと待ってもらえばいいよね?
待ってもらえる相手は限られるんだ。取適法やフリーランス法の対象なら、了承があっても期日の後ろ倒しは違反だよ。
- 取適法の対象の外注:受け取った日から60日以内の期日に払う決まりがあります。期日を過ぎると、60日を過ぎた日から年14.6%の遅延利息がかかります。相手の了承があっても、期日の後ろ倒しはできません。
- フリーランス法の対象の外注:従業員を使わない個人などへの外注で、自社が従業員を使っているなら、同じく60日以内の期日に払う決まりがあります。
- 建設工事の下請:取適法ではなく建設業法の決まりがかかります。元請として代金を受け取ったら、1か月以内に下請に払います。
- どの法律の対象でもない外注:契約と民法で決まります。相手と合意できれば、支払いを延ばしたり分けたりできます。
つまり、延ばしてもらえる余地があるのは、主に最後の型だけです。延ばせない相手には期日どおりに払うお金を用意し、延ばせる相手とだけ期日の前に相談する、というのがこの記事の結論です。
この先では、外注先がどの型かを見分ける方法、型ごとにできること・できないこと、払えないと分かった日からの手順、頼み方の例文、遅れたときにかかるお金の計算、支払いに充てるお金の用意のしかた、よくある失敗を順に説明します。
自分の外注は、どの決まりの対象か:4つの型の見分け方
うちの外注が取適法の対象か、どう見分けるの?
建設工事の下請か、相手が従業員を使わない人か、自社の事業として仕事を頼んでいるか、資本金か従業員の数が基準に当たるか、の順に問いをたどります。迷ったら公正取引委員会に相談できます。
同じ「外注費」でも、相手と仕事の中身によって、かかる決まりが違います。次の順に問いをたどると、外注先ごとの型が分かります。
- 建設工事の一部を、別の建設業者に請け負わせている?はい → 建設業法の型(下請代金の支払いの決まり)いいえ → 次へ
- 相手は、従業員を使わない個人か、代表者1人だけの法人?はい → フリーランス法の型(自社が従業員を使っていれば60日の決まり)いいえ → 次へ
- 製造・修理・情報成果物の作成・役務の提供・運送を、自社の事業として頼んでいる?はい → 次へいいえ → どれでもない型(契約と民法)
- 自社と相手の資本金か従業員の数が、取適法の基準に当たる?はい → 取適法の型(60日・遅延利息14.6%)いいえ → どれでもない型。ただし2027年4月からは支払告示に注意
この順番で見ると、多くの中小企業の外注は、取適法かフリーランス法のどちらかに当たります。資本金と従業員の数の基準は取引の種類で違うので、細かい判定は取適法(旧下請法)とはの「自分の取引は対象か」の章で確かめてください。
取適法の型:自社の事業として頼む外注
取適法の「役務提供委託」は、自社が顧客に提供する仕事の一部を、ほかの事業者に頼む取引です※1。たとえば、顧客から受けたシステム開発の一部を外注する、顧客の荷物の運送を外注する、といった取引が当たります。一方、自社の事務所の清掃のように、自社で使うための仕事を頼む取引は、役務提供委託に当たらない場合があります。
フリーランス法の型:従業員を使わない相手への外注
フリーランス法で守られる相手は、従業員を使わない個人と、代表者1人のほかに役員も従業員もいない法人です※2。こちらは、自社で使うための仕事を頼む取引も対象になります。60日の期日の決まりを負うのは、従業員を使っている発注者です※3。自社も従業員を使わない1人の事業者なら、60日の決まりはかかりませんが、取引の条件を書面などで示す義務はあります。
建設業法の型:建設工事の下請
建設工事の一部を別の建設業者に請け負わせる取引は、取適法の対象から外れ、建設業法の決まりがかかります※1。元請負人は、注文者から出来高や完成の代金を受け取ったら、その日から1か月以内で、できる限り短い期間内に下請代金を払います※4。
元請が特定建設業者なら、下請が引渡しを申し出た日から50日以内に支払期日を定め、期日までに払わないと遅延利息がかかります。率は年14.6%です※5。ただし、下請が特定建設業者や一定の資本金以上の法人のときは、この50日の決まりから外れます。建設業の資金繰りの事情は建設業のファクタリングにまとめています。
どれでもない型:契約と民法で決まる
相手が自社より規模の大きい会社で、取適法の基準に当たらない外注などは、法律の特別な決まりがかからず、契約で決めた期日に払う義務だけがあります。期日に遅れると、契約に定めがなければ法定利率(2026年4月1日から2029年3月31日までは年3%)の遅延損害金がかかります※6。
ただし、2027年4月1日からは、独占禁止法にもとづく「支払告示」が始まります。取適法と同じ種類の委託なら、資本金や従業員数の基準がなくても、受け取った日から60日以内に払うことが求められます。取引上の立場が自社に劣っていない相手との取引は対象から外れます※7。今は延ばせる相手でも、2027年4月からは延ばせなくなることがある点に注意します。
型が分からないときは、公正取引委員会に相談できる
外注先がどの型に当たるか自分で判断できないときは、公正取引委員会の取適法の相談窓口を使えます。取適法の考え方についての相談は、発注する側・受注する側のどちらでも利用できると案内されています※8。相談するときは、仕事の中身、自社と相手の資本金と従業員の数、発注書の支払条件を手元にそろえておくと、話が早く進みます。
この章の根拠(8件)
- 中小受託取引適正化法2条4項
- 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律2条1項
- 同法4条1項
- 建設業法24条の3
- 建設業法24条の6、建設業法施行規則14条
- 民法404条・419条、法務省「令和8年4月1日以降の法定利率について」
- 公正取引委員会「支払告示をやさしく解説!」
- 公正取引委員会「取適法に関する相談」
型ごとに、できること・できないこと
今回が無理なら、次からの条件を変えるのはいいの?
次の発注からの見直しなら、受け取った日から60日以内、月の締めなら締めた日から30日以内の範囲で、合意して書面に残せば相談できます。断られたら押さないことも大切です。
外注先の型が分かったら、型ごとに何ができるかを確かめます。とくに取適法の型では、資金繰りのためにやりがちなことの多くが違反になります。
外注先が「いいですよ」って言ってくれたら?
それでも違反は消えないんだ。了承があっても、期日の後ろ倒しや振込手数料の差引きは認められないよ。
| やりたいこと | 取適法の型 | フリーランス法の型 | どれでもない型 |
|---|---|---|---|
| 今回の支払いを、決めた期日より後にしてもらう | できない(了承があっても支払遅延) | できない(期日までに払う義務) | 相手と合意すればできる |
| 今回の支払いを分けて払う | 期日までに全額がそろわない分けは不可 | 期日までに全額がそろわない分けは不可 | 相手と合意すればできる |
| 振込手数料を差し引いて払う | できない(合意があっても違反) | 相手の了承なく減らすのは不可 | 契約で決めた負担のしかたによる |
| 手形やでんさいに切り替えて払う | 手形は不可。60日以内に満額の現金にできないでんさいも不可 | 期日に満額を受け取れない形は避ける | 相手と合意すればできる |
| 代金を値引きしてもらう | 相手の責任がないのに減らすのは違反 | 1か月以上の仕事なら、相手の責任がない減額は違反 | 相手と合意すればできる |
| 次の発注から支払条件を変える | 受け取った日から60日以内の範囲で、合意して書面に | 受け取った日から60日以内の範囲で、合意して書面に | 合意して書面に |
表のとおり、取適法とフリーランス法の型では、今回の支払いを延ばす手段はほぼありません。できるのは、期日までに全額を払うお金を用意することと、次の発注からの条件を60日以内の範囲で見直すことです※1。
「相手が了承してくれた」は通らない
公正取引委員会は、取適法の質問への答えの中で、受注側からの依頼や合意があっても、代金は受け取った日から60日以内に定めた支払期日までに払わなければならないと説明しています※2。振込手数料を代金から差し引くことも、受注側の了承や合意があっても違反になるとしています(同Q99)。
外注先が「いいですよ」と言ってくれても、それで違反がなくなるわけではありません。相手の好意に頼るほど、後で公正取引委員会の調査や外注先からの申告があったときに、自社の立場が悪くなります。
フリーランス法で、遅れたときに起きること
フリーランス法には、取適法のような遅延利息の率の決まりはありません。期日までに払わなかった発注者に対して、公正取引委員会は速やかに報酬を払うよう勧告できます※3。勧告に従わなければ命令が出され、命令は公表されることがあり、命令に違反すると50万円以下の罰金の対象です※4。遅れた期間の遅延損害金は、契約に定めがなければ民法の法定利率で計算します。
建設業の下請で、払えないときに気をつけること
建設業法の型では、元請が注文者から代金を受け取ったかどうかで、下請への支払いの期限が決まります。注文者からの入金があったのに、そのお金を別の支払いに回して下請への支払いを遅らせると、1か月以内に払う決まりに反します。また、下請代金のうち労務費に当たる部分は、現金で払うよう配慮することが求められています※5。手元のお金が足りないときでも、労務費の分を手形などで払う形は避けます。
この章の根拠(5件)
- 中小受託取引適正化法3条・5条1項、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律4条5項・5条1項
- 公正取引委員会「よくある質問コーナー(取適法)」Q78
- 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律8条2項
- 同法9条・24条
- 建設業法24条の3第2項
払えないと分かった日からの手順
足りない分は、どの外注先に待ってもらえばいい?
例の会社なら、フリーランスのE社60万円と取適法のF社240万円を期日どおりに払い、どれでもない型のG社120万円だけ延長を相談します。言い出しやすさではなく型で選びます。
外注費の支払いに足りないと分かったら、期日を待たずにすぐ動きます。期日の前と後では、取れる手がまったく違うからです。次の6つを、上から順に進めます。
払えない月は、何から手をつければいい?
外注先・期日・額・型の4つで一覧にしよう。延ばせない相手の分を先に確保するんだ。
- 当日期日と額を一覧にする今月と来月の外注費を、外注先・期日・額・型の4つで並べる
- 当日払える額を数える期日までに入る売上と、手元の預金から、払える額と足りない額を出す
- 翌日まで延ばせない相手の分を先に確保する取適法・フリーランス法・建設業法の型の外注費は、期日に全額を払う前提で組む
- 2〜3日お金の用意を並べて動かす融資の相談、自社の売掛金の入金を早める相談、税・社会保険料の猶予を同時に進める
- 期日の1週間前まで延ばせる相手に相談するどれでもない型の外注先に、理由・払える日・払い方を示して頼む
- 合意したら書面に残す新しい支払日、分ける回数と額、遅延損害金の扱いを、メールか合意書に書く
延ばせない相手を先に守る理由
手元のお金が足りないとき、相手の型ではなく、言い出しやすい相手から延ばしてもらおうとしがちです。けれども、言い出しやすい相手ほど、小さな会社やフリーランスで、自社からの入金を生活や給料に充てていることが多くあります。その相手こそが、取適法やフリーランス法で守られている相手です。
支払いの順番は、延ばせない相手、つまり法律で守られている小さな外注先を先にします。延ばしてもらう相談は、立場が対等以上で、法律の特別な決まりがかからない外注先にだけします。
計算例:11月末に3社へ420万円を払う会社
11月末に外注費の支払いが3件ある会社で、手元に用意できるのが300万円だったとします(説明のための例です)。
| 外注先 | 型 | 11月末の外注費 | この会社の動き方 |
|---|---|---|---|
| E:デザインを頼むフリーランス | フリーランス法 | 60万円 | 期日どおりに全額払う |
| F:開発を頼む小さな会社 | 取適法 | 240万円 | 期日どおりに全額払う |
| G:規模の大きい保守会社 | どれでもない(取適法の基準に当たらない) | 120万円 | 期日の前に、12月末への延長を相談する |
| 合計 | 420万円 | 用意できる300万円で、EとFの300万円を払う |
この会社は、EとFの外注費300万円を期日どおりに払い、足りない120万円はGに1か月の延長を相談します。Gが応じなければ、120万円は次の章以降の方法で用意します。どの外注先にどの順で払うかを、型で決めておくのがポイントです。
延ばせる相手への頼み方と、延ばせない相手への伝え方
延長をお願いするとき、利息のことは言うべき?
遅れる期間の遅延損害金は自社で払う、と最初の連絡で申し出ます。相手の損を自社が負う姿勢が伝わり、分けて払う相談でも応じてもらいやすくなります。
延ばしてもらう相談は、期日の前に、書面で、具体的な日付と額を示して行います。「少し待ってください」だけでは、相手は自社の資金繰りを組み直せません。
「少し待ってください」じゃだめなの?
それだと相手は資金繰りを組み直せないよ。新しい支払日と、遅れる分の扱いを日付と額で書こう。
例文1:どれでもない型の外注先に、支払いの延長を頼む
いつもお世話になっております。11月30日にお支払い予定の保守費用120万円について、ご相談させてください。弊社の売上先からの入金が12月にずれ込んだため、11月末に全額をお支払いすることが難しくなりました。大変恐縮ですが、お支払いを12月25日に変更していただくことはできないでしょうか。遅れる期間の遅延損害金は、弊社でお支払いいたします。ご了承いただけましたら、変更後の条件を書面でお送りします。
理由・新しい支払日・遅れる分の扱いの3つを、最初の連絡で示します。遅延損害金を自分から申し出ると、相手の損を自社が負う姿勢が伝わります。
例文2:どれでもない型の外注先に、分けて払うことを頼む
11月30日にお支払い予定の120万円のうち、60万円を11月30日に、残りの60万円を12月25日にお支払いする形をご検討いただけないでしょうか。2回目のお支払いが遅れた場合は、残りの額を直ちにお支払いすることをお約束します。
分けて払う相談では、2回目が遅れたときにどうするかまで書くと、相手は応じやすくなります。合意したら、回数・日付・額・遅れたときの扱いを合意書に残します。
延長や分割で合意したら、合意書に書く6つの項目
どれでもない型の外注先と延長や分割で合意できたら、メールのやり取りだけで終わらせず、次の6つを1枚の合意書にまとめます。
- 対象の代金:どの発注の、いくらの外注費か(発注番号・請求書の日付・額)
- 新しい支払日と各回の額:分ける場合は、回ごとの日付と額
- 支払方法:振込先の口座と、振込手数料をどちらが負担するか
- 遅延損害金:遅れた期間について払うか、率は何%か
- 遅れたときの扱い:1回でも遅れたら、残りの額をすぐに払うこと
- 日付と双方の記名:合意した日と、両者の会社名・代表者名
5の決まりを入れておくと、外注先は「また遅れるのでは」という不安を持たずに済みます。自社にとっても、払う日と額が1枚で分かるので、資金繰り表に写しやすくなります。
例文3:取適法・フリーランス法の型の外注先には、延長を頼まない
取適法やフリーランス法の型の外注先には、今回の支払いの延長は頼めません。資金繰りが苦しいことを伝えたいときは、次のように、期日どおりに払うことを先に伝えます。
今月分のお支払いは、11月30日に全額をお振込みいたします。そのうえで、来年1月のご発注分から、お支払いの締め日と支払日を相談させていただけないでしょうか。現在の月末締め翌月20日払いを、月末締め翌月末払いとする形を考えております。
次の発注からの条件の見直しなら、受け取った日から60日以内、月の締めで払うなら締めた日から30日以内の範囲で相談できます。この例の「月末締め翌月末払い」はその範囲に収まります。相手が断れない立場であることを使って条件をのませると、買いたたきなどの別の違反になるおそれがあるので、相手の返事を待ち、断られたら押しません。
例文4:電話で先に伝えるとき
「11月末のお支払いのことで、ご相談があってお電話しました。期日までに全額をお支払いするのが難しくなりそうなので、払える日と払い方の案を、今日中にメールでお送りします。ご確認いただけますでしょうか。」
電話は、相手に早く知らせるために使います。新しい支払日や額は、記録に残るメールや書面で送ります。
- 相手の型を確かめたか取適法・フリーランス法・建設業法の型なら、延長は頼まない
- 新しい支払日を日付で書いたか「近いうちに」ではなく「12月25日」と書く
- 遅れる分の扱いを書いたか遅延損害金を払うか、分けて払う回数と額
- 期日の前に連絡しているか期日を過ぎてからの連絡は、相手の資金繰りを狂わせる
- 振込手数料を引こうとしていないか取適法の型では、合意があっても違反
- 次の発注を減らすとほのめかしていないか立場を使った頼み方は、別の違反になるおそれがある
数字で確かめる:遅れたときにかかるお金と、用意する費用
遅延利息って、いつから数えるの?
取適法では、受け取った日を1日目として60日を過ぎた日からです。10月15日に受け取ったなら12月14日からで、12月25日に払えば300万円で1万4,400円。ただし期日を過ぎた時点で違反です。
支払いが遅れたときにかかるお金は、外注先の型で変わります。外注費300万円の支払いが30日遅れた場合で比べました。
利息が3万6,000円なら、払ってでも遅らせた方が楽じゃない?
取適法の型では遅れること自体が違反で、勧告されると社名が公表されることがある。利息よりずっと大きな損だよ。
| 外注先の型 | 遅れたときにかかる率 | 300万円・30日遅れの額 | お金のほかに起きること |
|---|---|---|---|
| 取適法 | 遅延利息 年14.6% | 3万6,000円 | 勧告・社名の公表のおそれ |
| 建設業法(特定建設業者の元請) | 遅延利息 年14.6% | 3万6,000円 | 国土交通省などの指導・監督のおそれ |
| フリーランス法 | 契約に定めがなければ法定利率 年3% | 約7,400円 | 勧告・命令・公表、命令違反は50万円以下の罰金 |
| どれでもない(契約に定めなし) | 法定利率 年3% | 約7,400円 | 相手からの催促・訴えのおそれ |
取適法の遅延利息は、300万円 × 14.6% × 30 ÷ 365 で3万6,000円です。取適法の遅延利息は、受け取った日から60日を過ぎた日から数えるので、期日を60日目より前に定めていた場合は、期日を過ぎても60日目までは利息がかかりません。それでも、期日を過ぎた時点で支払遅延の違反です。
表を見ると、遅延利息の額そのものは大きくありません。だからといって、遅延利息を払えば支払いを遅らせてよい、ということにはなりません。取適法やフリーランス法の型では、遅れること自体が違反で、勧告を受ければ社名とともに公表されることがあります。取引先や金融機関の目に触れれば、遅延利息よりはるかに大きな損になります。
遅延利息はいつから数えるか:10月15日に受け取った外注の例
取適法の型で、10月15日に成果物を受け取り、10月末締め・11月末払いと決めていた外注費300万円を例にします。60日は受け取った日を1日目として数えるので、60日目は12月13日です。
| 日付 | 意味 |
|---|---|
| 10月15日 | 成果物を受け取った日(1日目) |
| 11月30日 | 決めていた支払期日。この日を過ぎると支払遅延の違反 |
| 12月13日 | 受け取った日から60日目 |
| 12月14日 | 遅延利息を数え始める日 |
| 12月25日に払った場合 | 遅延利息は12日分で、300万円 × 14.6% × 12 ÷ 365 = 1万4,400円 |
この例では、12月1日から12月13日までは遅延利息がかかりませんが、11月30日を過ぎた時点で違反です。利息がかからない期間があることと、遅れてよいことは別の話だと分かります。
足りない120万円を用意する費用
前の章の会社が、Gへの延長を断られ、足りない120万円を1か月分用意するとします。方法ごとの費用は次のとおりです(率は説明のための仮の数字です)。
| 方法 | 前提 | 1か月分の費用 |
|---|---|---|
| Gに延長してもらう(遅延損害金を払う) | 法定利率 年3%・30日 | 約3,000円 |
| 金融機関から借りる | 仮に年3%・30日 | 約3,000円 |
| ビジネスローンで借りる | 仮に年15%・30日 | 約1万5,000円 |
| 自社の売掛金を売る(ファクタリング) | 請求額130万円・手数料8% | 10万4,000円(手取り119万6,000円) |
ファクタリングは、入金まで早い代わりに費用がいちばん大きくなります。手数料8%・支払日まで30日なら、実質年率は約106%です。金融機関の融資が間に合うなら、そちらの方がはるかに軽い費用で済みます。ビジネスローンの金利の上限や費用の見方はビジネスローンとはで、ファクタリングの手取りは手取りと実質年率の計算で確かめられます。
外注費に充てるお金の用意:融資・売掛金・税と社会保険料の猶予
120万円を1か月だけ用意するなら、どれが安い?
延長の遅延損害金や金融機関の借入なら約3,000円、ビジネスローンを仮に年15%とすると約1万5,000円です。売掛金を手数料8%で売ると10万4,000円かかります。
延ばせない外注費は、期日までに全額を用意するしかありません。早く手を打てるものから、同時に進めます。
延ばせない分のお金は、どこから用意するの?
4つを同時に動かそう。融資が間に合うなら、売掛金を売るよりずっと軽い費用で済むよ。
- 自社の売掛金の入金を早めてもらう:外注費が払えない原因が、売上先からの入金の遅れなら、売上先に支払日を早めてもらえないか相談します。売上先が取適法の対象なら、自社も60日の決まりで守られています。
- 金融機関に運転資金を相談する:外注費の支払予定と、売上の入金予定を並べた表を持って相談します。毎月同じ時期に足りなくなるなら、当座貸越などの枠を作ってもらう相談もできます。
- 税金・社会保険料の納付を猶予してもらう:同じ時期に税金や社会保険料の納付があるなら、猶予を相談して、その分を外注費に回します。法人税・消費税の猶予の手順は法人税・消費税が払えないときにあります。
- 自社の売掛金を売る:融資が間に合わないときの方法です。前の章のとおり費用は大きいので、足りない額と日数を絞って使います。
どの支払いから守り、どの順番で手を打つかの全体像は、資金繰りが苦しいときの対処の順番で説明しています。条件から使える方法を探すなら資金調達診断を使ってください。
金融機関には、外注費と入金の予定を並べた表を持っていく
融資の相談では、なぜ足りないのか、いつ戻るのかを数字で示せるかが大事です。外注費の支払日と額、売上先からの入金日と額を、日付の順に1枚に並べます。前の章の会社なら「11月末に外注費420万円、用意できるのは300万円、売上先からの入金は12月20日」と書けば、足りない120万円が1か月で戻ることが伝わります。資金繰り表の作り方は資金繰り表の作り方で説明しています。
ファクタリングを使わない方がよい場合
- 外注費が毎月足りない場合:毎月売掛金を売ると手数料が積み重なり、外注で得る利益を削ります。受注の単価や、売上先との支払条件を見直す方が先です。
- 延ばせる相手の外注費だけが足りない場合:どれでもない型の外注先に延長を頼めるなら、遅延損害金の方が手数料よりずっと軽く済みます。
- 期日まで1か月以上ある場合:融資の申込みが間に合います。
それでもファクタリングを使うときは、手数料のほかにかかる費用と、償還請求権(売上先が払わなかったときに買い戻す義務)の有無を確かめます。仕組みはファクタリングとはで説明しています。
外注費の支払いでよくある失敗と注意点
検収を遅らせれば、支払日も先に延ばせる?
延びません。支払期日は、検査をするかどうかに関係なく、物や成果物を受け取った日から数えます。手形やでんさいへの切り替えや、振込手数料の差引きも避けてください。
外注費が払えない場面では、急いでいるために、かえって状況を悪くする動き方をしがちです。次の6つは避けてください。
1. 連絡せずに期日を過ぎる
何も言わずに期日を過ぎると、外注先は自分の支払いを組み直せず、取引の信頼が一気に崩れます。払えないと分かった日に連絡するのが、どの型の外注先にも共通する最低限の礼儀です。
2. 言い出しやすい外注先から延ばしてもらう
付き合いの長いフリーランスや小さな外注先は頼みやすい相手ですが、法律で守られている相手でもあります。延長を頼む相手は型で選びます。
3. 支払いを手形やでんさいに切り替える
手元の現金を残すために、支払いを手形や満期の長いでんさいに切り替えるのは、取適法の型では支払遅延に当たります。手形の交換は2027年3月31日に終わることもあり、新しく手形で払う形はとらないでください。
4. 振込手数料や「協力金」を差し引く
払う額を少しでも減らそうとして、振込手数料や協力金の名目で代金から差し引くと、取適法の型では減額の違反になります。合意があっても違反です。
5. 検収を遅らせて、期日を先に送る
支払期日は、検査をするかどうかに関係なく、物や成果物を受け取った日(役務なら提供を受けた日)から数えます※1。検収の手続きを遅らせても、期日は先に延びません。
6. 支払条件を変えたのに、書面を直さない
次の発注から条件を変えると合意したら、発注書や取引条件を書いた書面も直します。取適法の型では、発注のたびに支払期日などを書面かメールで示す義務があります※2。古い発注書のままだと、どちらの条件で払うのかが分からなくなります。
7. 外注先からの催促を放っておく
期日を過ぎて外注先から催促が届いたら、返事をしないままにしないでください。外注先は、内容証明郵便での請求や、裁判所の支払督促などの手続きをとることができます。取適法やフリーランス法の型なら、公正取引委員会に申し出ることもできます。払える日と額を書いた返事を、その日のうちに送ります。
外注費の支払いは、外注先の仕事と生活を支えるお金です。払えないときほど、相手の型を確かめ、延ばせない相手を先に守り、延ばせる相手には期日の前に正直に相談する、という順番を守ってください。平時に外注先への支払条件を見直す進め方は買掛金とはの「支払条件を見直す」章にまとめています。
この章の根拠(2件)
- 中小受託取引適正化法3条1項
- 中小受託取引適正化法4条1項
出典(10件)公的機関の資料・法令。2026.11.05に確認
- 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(取適法)(第2条・第3条・第4条・第5条・第6条)(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 委託事業者の義務(公正取引委員会)www.jftc.go.jp
- よくある質問コーナー(取適法)Q78・Q99(公正取引委員会)www.jftc.go.jp
- 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス法)(第2条・第4条・第5条・第8条・第9条・第24条)(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 建設業法(第24条の3・第24条の6)(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 建設業法施行規則(第14条)(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 取適法に関する相談(公正取引委員会)www.jftc.go.jp
- 民法(第404条・第419条)(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 令和8年4月1日以降の法定利率について(法務省)www.moj.go.jp
- 支払告示をやさしく解説!(公正取引委員会)www.jftc.go.jp
FAQ
よくある質問
外注費の支払いを待ってもらうのは違法ですか?
外注が取適法の対象なら、受け取った日から60日以内に定めた期日までに払う義務があり、外注先の了承があっても期日の後ろ倒しは支払遅延になります。フリーランス法の対象でも、期日までに払う義務があります。どの法律の対象でもない外注なら、相手と合意すれば支払日を変えられます。
外注費の支払いが遅れたら、利息はいくらかかりますか?
取適法の対象なら、受け取った日から60日を過ぎた日から年14.6%の遅延利息がかかり、300万円が30日遅れると3万6,000円です。契約に定めがない取引では法定利率の年3%で、同じ条件なら約7,400円です。ただし取適法やフリーランス法の対象では、遅れること自体が違反です。
フリーランスへの外注費が払えないとどうなりますか?
自社が従業員を使う発注者なら、フリーランス法で期日までに報酬を払う義務があります。払わないと、公正取引委員会から速やかに払うよう勧告され、従わなければ命令が出て公表されることがあります。命令に違反すると50万円以下の罰金の対象です。遅れた期間の遅延損害金は、契約に定めがなければ年3%の法定利率で計算します。
外注費を分割で払ってもいいですか?
どの法律の対象でもない外注なら、相手と合意すれば分けて払えます。回数・日付・額・遅れたときの扱いを合意書に残します。取適法やフリーランス法の対象では、期日までに全額がそろわない分け方は支払遅延にあたるため、期日に全額を払うお金を用意します。
外注費の振込手数料を差し引いて払ってもいいですか?
取適法の対象の外注では、外注先の了承や合意があっても、振込手数料を代金から差し引くことは減額の違反になると公正取引委員会は説明しています。振込手数料は自社で負担し、代金は満額を振り込みます。どの法律の対象でもない取引では、契約で決めた負担のしかたに従います。
外注費が払えないとき、最初に何をすればいいですか?
今月と来月の外注費を、外注先・期日・額・型の4つで一覧にします。取適法・フリーランス法・建設業法の型の外注費は期日に全額を払う前提で組み、足りない分は融資や税の猶予などで用意します。延長の相談は、どの法律の対象でもない外注先にだけ、期日の前に書面で行います。
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