会計更新 2026.11.05
売掛金の残高確認書とは|監査で届いたときの答え方と、合わないときの直し方
残高確認書は、取引先の監査人が決算を確かめるために送る書類です。基準日の時点の自社の帳簿の売掛金を書き、合わなければ差額と理由を添えて監査人へ直接返します。答え方の5つの手順と、合わない原因の分け方を例で説明します。
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フファクタリング図鑑編集部(執筆)・公開 2026.11.07

取引先の監査法人や公認会計士から「残高確認書」が届いたら、自社の帳簿にある、その取引先への売掛金の残高を書いて、期限までに封筒の宛先(ふつうは監査人)へ直接返します。数字が合わないときは、無理に合わせずに差額とその理由を書き添えます。この記事では、届いたときの答え方の手順と、合わない原因の見つけ方、帳簿の直し方を、1社の例で通して説明します。
この記事を6枚で
1 / 6結論:自社の帳簿の残高をそのまま書き、合わなければ差額と理由を添えて返す
残高確認書って、うちが監査されるってこと?
いいえ、監査を受けているのは取引先です。聞かれているのは、基準日の時点でうちの帳簿に残っている売掛金だけ。先方に合わせず自社の数字を書き、合わなければ差額と理由を添えます。
残高確認書は、取引先の決算が正しいかを確かめるために、監査人が取引の相手に直接たずねる書類です。あなたの会社が監査を受けるわけではありません。聞かれているのは「あなたの帳簿では、決算日の時点で、この会社にいくら請求する権利が残っていますか」ということだけです。
答え方の要点は3つです。基準日(決算日)の時点の残高で答えること、先方の数字に合わせず自社の帳簿の数字を書くこと、合わない分は差額と理由を書くことです。差額があること自体は珍しくありません。締め日や入金日のずれだけなら、帳簿を直す必要もありません。
取引先の監査法人から、残高確認書が届いたんだけど…
3月31日の時点の、うちの帳簿の売掛金を書いて、同封の封筒で監査人へ直接返すんだ。
- 送ってくるのは、上場会社や大会社などの監査をしている監査法人・公認会計士です。返送先も監査人なので、取引先の経理あてには返しません
- 確認書には、金額が書いてあって「合っているか」を答える型と、金額が空欄で残高を書き込む型があります
- 合わない原因の多くは、締め日のずれ・振込手数料・値引きや返品・入金の行き違いの4つです
- 自社の処理漏れが見つかったら、その分だけ帳簿を直します。ずれが「時期の違い」だけなら直しません
この記事では、残高確認書の仕組み(2章)、届いたときの答え方の手順(3章)、合わない原因(4章)、数字で確かめる調整表の例(5章)、直し方と書き添える一言(6章)、自社から取引先に送るとき(7章)、ファクタリングで売った売掛金や未回収が見つかったとき(8章)、よくある失敗(9章)の順に進みます。
残高確認書とは:誰が、なぜ送ってくるのか
どうして取引先じゃなくて、監査法人から届くの?
取引先の帳簿が正しいかを、相手側の記録と突き合わせて確かめるためです。上場会社や、資本金5億円以上か負債200億円以上の大会社などが監査を受けています。回答は監査人へ直接返します。
残高確認書(確認状とも呼びます)は、会社の監査をする監査人が、その会社の取引の相手から、文書で直接回答をもらうための書類です。日本公認会計士協会の監査の基準では、この手続を「確認」と呼び、相手から監査人へ直接届く文書の回答は、会社の中の資料よりも証明力が高いとしています。※1
たとえば、あなたの会社が大きな会社Aに部品を納めているとします。A社の監査人は、A社の帳簿にある「あなたの会社への買掛金」が正しいかを確かめるため、あなたの会社に「A社に対する売掛金の残高」をたずねます。相手側の帳簿と突き合わせることで、A社の帳簿の誤りや不正を見つけやすくなるからです。
どんな会社が監査を受けているか
確認書を送ってくるのは、監査を受けている会社の監査人です。法律で監査を受けるのは、主に次のような会社です。
| 会社 | 監査のもとになる法律 |
|---|---|
| 上場会社など、有価証券報告書を出す会社 | 金融商品取引法の監査(公認会計士・監査法人の監査証明) |
| 資本金5億円以上、または負債の合計が200億円以上の株式会社(大会社) | 会社法で会計監査人を置く義務がある |
| 上の2つにあたらないが、自分で会計監査人を置いた会社など | 任意の監査 |
このほか、学校法人や地方の公的な団体など、別の法律で監査を受ける取引先からも届くことがあります。取引先がどれにあたるかを知る必要はありませんが、確認書が届いたら「この取引先は監査を受けている」と考えてよいでしょう。※2
届く時期と、毎年届くとは限らない理由
確認書は、取引先の決算日の前後に届くことが多く、3月決算の取引先なら3月末から4月にかけて届きます。ただし、基準日が決算日より前の日(2月末や12月末など)になっていることもあります。答えるのは、あくまで確認書に書かれた基準日の残高です。基準日が自社の月の締め日と違うときは、締め日の残高に、基準日までの請求と入金を足し引きして出します。
また、監査人は取引先全部に送るわけではなく、残高の大きさなどから選んで送ります。去年は届いたのに今年は届かない、ということはふつうにあります。届かなかった年に、こちらから何かをする必要はありません。
2つの型:金額が書いてある型と、空欄の型
確認書には、大きく2つの型があります。どちらも、確認書の宛先に回答を返すよう求める「積極的確認」と呼ばれるものです。
- 金額が書いてある型:「当社の記録では、貴社に対する買掛金は○○円です。相違ありませんか」とたずね、「相違ない・相違がある」に丸をつけて返します
- 金額が空欄の型:「貴社の記録による当社への債権の残高をご記入ください」とたずね、自社で数字を書き込みます
空欄の型は、相手が確かめずに「相違ない」と答えてしまうのを防ぐために使われます。手間はかかりますが、帳簿から数字を拾って書けばよいので、答え方はかえって単純です。※3
このほかに、内容が違うときだけ返事をする「消極的確認」もあります。書面に「ご回答ください」「ご返送ください」とあれば、返事を求める型です。返事がないと、監査人は請求書や入金の記録など別の資料で確かめ直すことになり、取引先の経理にも手間がかかります。※4
この章の根拠(4件)
- 監査基準報告書505「確認」第2項・第5項
- 金融商品取引法193条の2、会社法2条6号・328条
- 監査基準報告書505 A5項
- 監査基準報告書505 第5項・第11項
残高確認書が届いたときの答え方:5つの手順
届いたら、まず何から手をつければいい?
基準日と、聞かれている科目を読みます。相手の買掛金はうちの売掛金にあたります。次に帳簿の残高を出し、未入金の請求書の合計と一致するかを確かめてから記入します。
確認書が届いたら、次の5つの手順で答えます。返送の期限は書面に書かれているので、届いた日に期限を確かめ、答える担当者を決めておきます。
- 届いた日基準日と科目を読む何月何日の、どの科目の残高を聞かれているか
- 1日目帳簿から残高を出すその取引先の売掛金の、基準日の時点の残高
- 1〜2日目請求書の明細と突き合わせる未入金の請求書の合計が、帳簿の残高と一致するか
- 2日目差額があれば理由を調べる先方の金額と違うときは、請求書1件ずつ見比べる
- 期限まで記入・押印して直接返す会社名・記入者・日付を書き、同封の封筒で返送
手順1:基準日と、聞かれている科目を読む
最初に、確認書の「基準日」を確かめます。多くは取引先の決算日(3月31日など)です。答えるのは届いた日の残高ではなく、基準日の時点の残高です。
次に、何を聞かれているかを読みます。売掛金だけを聞く書式もあれば、受取手形・電子記録債権・前受金・預り保証金などを並べて、まとめて聞く書式もあります。逆に、あなたの会社がその取引先から仕入れもしているなら、買掛金も聞かれることがあります。欄ごとに、自社の帳簿のどの科目にあたるかを決めてから数字を拾います。
欄と科目の対応は、次のように考えると迷いません。確認書は相手の側から書かれているので、相手の「買掛金」は、自社の「売掛金」にあたります。
| 確認書の欄(相手の側の言い方) | 自社の帳簿で見る科目 |
|---|---|
| 買掛金・未払金(相手が自社に払う分) | 売掛金・未収入金 |
| 支払手形・電子記録債務 | 受取手形・電子記録債権 |
| 前渡金(相手が前払いした分) | 前受金 |
| 差入保証金(相手が預けた分) | 預り保証金 |
| 売掛金(自社が相手から仕入れている場合) | 買掛金 |
自社に該当する残高がない欄は、空欄のままにせず「0円」または「該当なし」と書きます。空欄だと、書き忘れか残高がないのかを監査人が判断できず、問い合わせのもとになります。
手順2:帳簿から、基準日の時点の残高を出す
会計ソフトや売掛金の台帳で、その取引先の補助科目(取引先ごとの内訳)を開き、基準日の時点の残高を出します。基準日のあとに入金や請求があっても、それは含めません。
税込みで答えるか税抜きで答えるかは、確認書に指定があればそれに従います。指定がなければ、請求書の金額と同じ税込みで答え、「税込み」と書き添えると誤解がありません。
手順3:未入金の請求書の明細と突き合わせる
帳簿の残高が正しいかを、未入金の請求書の一覧と比べて確かめます。「基準日までに出した請求書のうち、まだ入金されていないものの合計」が、帳簿の残高と一致すれば、自社の数字は正しいと言えます。
一致しないときは、自社の帳簿の中にずれがあります。入金を別の取引先の分として消していた、値引きを帳簿に入れていなかった、といった処理漏れが見つかるのはこの段階です。
手順4:差額があれば、理由を調べる
金額が書いてある型で、先方の金額と自社の金額が違うときは、理由を調べます。調べ方は、請求書を1件ずつ、日付・番号・金額で並べて見比べるのが確実です。原因は4章にまとめています。
手順5:記入・押印して、同封の封筒で直接返す
回答欄に金額(または「相違ない・相違がある」)を書き、会社名・所在地・記入者の名前・日付を書きます。押印を求める書式なら、社印か担当者印を押します。差額があるときは、余白か別紙に差額と理由を書きます。
返送は、同封されている返信用封筒(宛先は監査法人など)で行います。監査人は、回答が相手から直接届くことで信頼できる証拠になると考えているので、取引先の担当者に手渡ししたり、取引先の経理あてに送ったりすると、確認がやり直しになることがあります。電子メールやウェブの回答サービスを指定されたときは、その指示に従います。※1
この章の根拠(1件)
- 監査基準報告書505 A14項
残高が合わない主な原因:時期のずれと、処理漏れ
数字が合わないのは、どっちかが間違ってるから?
そうとは限りません。出荷と検収、振込と着金が基準日をまたぐと、どちらも正しいのに差が出ます。直すのは振込手数料・返品・消し込みの誤りといった処理漏れだけです。
先方の金額と合わないとき、原因は大きく「時期のずれ」と「どちらかの処理漏れ・誤り」の2つに分かれます。監査の基準でも、差異は必ずしも誤りを意味せず、基準日の設定や測定の違い、事務処理の誤りから生じることがあるとしています。※1
出荷と検収の日がずれてるだけでも、数字は合わないの?
合わなくなるよ。でもどちらの帳簿も正しいから、直さずに理由を書き添えればいい。
| 原因 | よくある例 | 帳簿を直すか |
|---|---|---|
| 出荷と検収のずれ | 3月30日に出荷し自社は3月の売上にしたが、先方は4月2日の検収で計上した | 直さない(時期のずれ) |
| 締め日の違い | 自社は月末締め、先方は20日締めで、21日〜月末の分が先方の帳簿にまだ無い | 直さない(時期のずれ) |
| 入金の行き違い | 先方は3月31日に支払い済みとしたが、着金が4月1日で、自社は4月に入金を記録した | 直さない(時期のずれ) |
| 振込手数料の差し引き | 先方が振込手数料を引いて払い、自社はその分を売掛金に残したままにしていた | 自社を直す |
| 値引き・返品 | 返品や値引きを先方は記録したが、自社は売上から引いていなかった | 自社を直す |
| 入金の消し込み誤り | 入金を別の取引先の売掛金として消していた | 自社を直す |
| 相殺・前受金 | 先方への買掛金と相殺した分、前払いで受け取った分を、片方だけが反映した | どちらが正しいか確かめて直す |
| 先方の誤り | 先方が別の会社への支払いを、自社への支払いとして記録していた | 直さない(先方に伝える) |
表のとおり、上の3つは「いつ記録するか」が違うだけで、どちらの帳簿も間違っていません。基準日をまたいだ取引があると、差額が出るのはふつうのことです。直すべきなのは、4行目から下の処理漏れや誤りです。
消費税の端数と、税込み・税抜きのずれ
数円〜数十円の差は、消費税の端数の処理の違いであることが多いものです。請求書1枚ごとに端数を処理するか、明細の行ごとに処理するかで、合計が少し変わります。また、先方が税抜きで、自社が税込みで書いている場合は、ちょうど10%(軽減税率の品目なら8%)ほどの差になります。差額を税率で割ってみると、すぐに見分けがつきます。
受取手形・電子記録債権に替わった分
売掛金の一部を手形や電子記録債権で受け取っていると、自社の帳簿では「受取手形」「電子記録債権」に振り替わっています。確認書が売掛金だけを聞いていて、先方が支払手形や電子記録債務を含めない数字を出していれば、その分は差額になりません。逆に、科目の区切り方が違うと差額に見えることがあるので、手形・電子記録債権の残高も並べて確かめます。手形での受け取りの仕訳は売掛金の仕訳にまとめています。
この章の根拠(1件)
- 監査基準報告書505 A22項
数字で確かめる:差額90万2,660円を、4つの理由に分ける
差額が90万円もあったら、どう調べるの?
請求書と入金を1件ずつ並べます。例では902,660円のうち880,000円が時期のずれ、22,660円が処理漏れでした。直したあとの残高2,463,340円を書いて返します。
ここからは、1社の例で通して確かめます。前提は次のとおりです。あなたの会社は月末締め・翌月末払いでB社に製品を納めています。B社の監査人から、3月31日を基準日とする残高確認書が届きました。
- 確認書に書かれた金額(B社の記録による、あなたの会社への買掛金):1,583,340円
- あなたの会社の帳簿の、B社への売掛金の残高(3月31日):2,486,000円
- 差額:902,660円(自社の方が多い)
請求書と入金を1件ずつ見比べると、差額は次の4つに分けられました。
90万円も違う! うちの帳簿が間違ってるの?
1件ずつ見ると、88万円は時期のずれ。うちの処理漏れは、振込手数料と返品の2万2,660円だけだったよ。
| 項目 | 金額(円) | どちらが、なぜ | 帳簿を直すか |
|---|---|---|---|
| 自社の帳簿の残高(3月31日) | 2,486,000 | ここから始める | - |
| 3月30日出荷・B社は4月に検収(−) | 330,000 | 時期のずれ。B社は4月の仕入れとして記録 | 直さない |
| B社が3月31日に振込、着金は4月1日(−) | 550,000 | 時期のずれ。自社は4月1日の入金として記録 | 直さない |
| 2月分の入金で差し引かれた振込手数料(−) | 660 | 自社の処理漏れ。売掛金に残したままだった | 直す |
| 3月25日の返品(−) | 22,000 | 自社の処理漏れ。返品伝票を入れていなかった | 直す |
| B社の記録(確認書の金額) | 1,583,340 | 2,486,000−330,000−550,000−660−22,000 | - |
表のとおり、差額902,660円のうち880,000円は時期のずれで、どちらの帳簿も正しい数字です。残りの22,660円は自社の処理漏れなので、3月31日の日付で帳簿を直します。直したあとの自社の売掛金は2,463,340円になります。
回答にはどう書くか
金額が書いてある型なら、「相違がある」に丸をつけ、自社の残高と差額の内訳を書きます。このとき、書く残高は直したあとの2,463,340円です。差額は時期のずれの2件だけになり、監査人はB社の帳簿の4月の記録で確かめられます。
- 当社の残高 2,463,340円(税込み)3月31日時点の売掛金。確認書の金額との差は880,000円
- 3月30日出荷分 330,000円請求書番号・出荷日・金額。貴社は4月検収のため未計上と思われる
- 3月31日振込分 550,000円当社の着金は4月1日。貴社は3月31日に支払いとして記録
- 記入者・連絡先問い合わせがあったときに答えられる担当者の名前と電話番号
差額の理由をここまで書いておけば、監査人からの問い合わせはたいていありません。理由が分からない差額が残ったときは、分からない旨と金額をそのまま書きます。分からない差額を、理由を作って埋めることはしません。
差額の大きさから考えること
この例のように、時期のずれだけで残高の3分の1を超える差額が出ることもあります。B社のような毎月の取引では、基準日の直前の1〜2週間の出荷と入金を見れば、差額の大半は説明できます。逆に、数か月前の請求書が差額に出てくるときは、時期のずれではなく、どちらかの処理漏れか、払われていない請求書です。その場合の動き方は8章で説明します。
合わないときの直し方と、取引先への伝え方
うちの処理漏れが見つかったら、いつの日付で直すの?
基準日、つまり決算日までの日付で直します。自社の決算がもう締まっていれば、気づいた期に直し、額が大きければ税理士に相談します。時期のずれは直しません。
差額の原因が分かったら、「自社が直すもの」「直さないもの」「先方に伝えるもの」に分けて動きます。
自社の処理漏れは、基準日の日付で直す
振込手数料・値引き・返品・入金の消し込み誤りなど、自社の処理漏れは、基準日(決算日)までの日付で帳簿を直します。自社の決算がまだ締まっていなければ、その期のうちに直すのが基本です。自社の決算がすでに締まっていれば、気づいた期に直し、大きな額なら税理士に相談します。振込手数料や返品の仕訳の書き方は、4章でふれた売掛金の仕訳の記事にあります。
時期のずれは、直さずに理由を書く
出荷と検収、振込と着金のずれは、どちらの帳簿も正しいので直しません。回答には、請求書の番号・日付・金額と、「貴社は4月に計上と思われる」といった理由を書き添えます。
ただし、検収のずれが毎回大きいときは、自社の売上の計上の時期を見直すきっかけになります。売上は「渡した日・終えた日」に立てるのが基本ですが、検収をもって引き渡しとする契約なら、検収の日に立てる方が実態に合います。どちらにするかは契約と会計の方針で決まるので、税理士と相談してください。
先方の誤りは、取引先の経理にも伝える
先方が別の会社への支払いを、自社への支払いとして記録していた、といった先方の誤りが疑われるときは、回答に事実を書くとともに、取引先の経理の窓口にも連絡します。とくに「先方は支払ったと記録しているのに、自社には入金がない」という差額は、振込先の誤りの可能性があります。振込の日付と金額を聞き、自社の通帳を確かめます。
差額を調べるときの台帳の見方
差額を早く見つけるには、取引先ごとに「前月の残高+今月の請求−今月の入金−値引き・返品=今月の残高」の形で、月ごとの台帳を並べておくのが役に立ちます。基準日の前後2か月の台帳を、先方の支払いの明細(支払通知書)と並べれば、どの月でずれたかがすぐに分かります。毎月の台帳の付け方は売掛金とはで説明しています。
監査のない会社が、自分から残高確認をするとき
監査がないうちの会社でも、残高確認ってやる意味ある?
あります。決算の前に残高の大きい取引先や期日を過ぎた請求書がある取引先へ送ると、誤りや未払いを早く見つけられます。相手の署名は債務の承認になり、時効は5年の数え直しです。
残高確認は、監査を受ける会社のための手続だけではありません。監査のない中小企業でも、決算の前に主な取引先へ自分で残高確認を送ると、帳簿の誤りや、払われていない請求書を早く見つけられます。
合わないときは、何て書けばいいの?
直したあとのうちの残高と、差の理由を請求書の日付と金額で書けば、確認はたいてい済むよ。
送る相手と時期
全部の取引先に送る必要はありません。残高の大きい上位の取引先、期日を過ぎた請求書がある取引先、入金額が請求額と違うことが多い取引先の3つを優先します。送る時期は、決算日の翌日から2週間ほどのうちに送り、決算の数字を固める前に返ってくるようにします。
確認書に入れる項目
- 基準日(決算日)と、確認したい科目(売掛金、受取手形など)
- 自社の記録による残高(請求書の番号・日付・金額の明細を付けると、先方が確かめやすい)
- 「上記の金額に相違ありません」と「相違があります(内容: )」の回答欄
- 回答する人の会社名・名前・日付の欄と、返送の期限・返送先
先方の手間を減らすには、金額を書いた型で送り、返信用の封筒か、回答を返せるメールの宛先を付けます。
文面は、たとえば次のようにします。「拝啓 平素より格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。当社の決算にあたり、貴社との取引の残高を確認させていただきたく、お手数ですが下記の金額をご確認のうえ、○月○日までにご返送くださいますようお願い申し上げます。」このあとに、基準日・科目・金額・請求書の明細・回答欄を並べます。
監査人が送る確認書と違い、自社から送る確認書は、取引先が自社に直接返します。返ってきた回答は、決算の資料と一緒に保管しておきます。差額があった取引先は、3章・4章と同じ手順で原因を調べ、自社の処理漏れなら決算の前に直します。税理士に決算を頼んでいるなら、返ってきた確認書の写しを渡しておくと、売掛金の残高の説明がしやすくなります。
署名をもらうと、時効の数え直しにもなる
取引先が「この金額の債務があります」と確認書に署名して返すと、それは債務の承認にあたり、そこから時効の数え直しになります。売掛金の時効は、権利を使えると知った時から5年です。長く払われていない請求書がある取引先には、残高確認書で署名をもらっておくことが、回収の備えにもなります。時効の数え方と止め方は売掛金の時効で詳しく説明しています。※1
返ってこないとき
期限を過ぎても返ってこない取引先には、電話かメールで一度だけ催促します。それでも返ってこないときは、基準日のあとの入金を確かめます。基準日の残高が、そのあとに全額入金されていれば、残高は正しかったと考えられます。入金がないまま期日を過ぎていれば、残高確認ではなく、督促の段階に移ります。
この章の根拠(1件)
- 民法152条1項・166条1項
ファクタリングで売った売掛金と、未回収が見つかったとき
確認書で、払われていない古い請求書が見つかったら?
残高確認とは別に、すぐ取引先へ連絡します。見落としならそれで払われます。先方と金額が合っていない請求書は、ファクタリングに出さない方がよいです。
残高確認をきっかけに、資金繰りの問題が見えることがあります。ここでは、ファクタリングを使っている会社に特有の注意点と、払われていない請求書が見つかったときの動き方をまとめます。
売った売掛金があると、残高は合わなくなる
請求書をファクタリング会社に売ると、その売掛金は自社の帳簿から消えます。ところが取引先の帳簿には、その請求書の分の買掛金が、支払いが済むまで残っています。そのため、売った請求書がある取引先から残高確認書が届くと、その分だけ数字が合いません。
- 3社間ファクタリング(取引先が債権の譲渡を知っている):取引先は支払先が変わったことを知っています。回答には、譲渡した請求書と譲渡の日付を書き添えれば、差額の理由が伝わります。仕訳と残高確認の書き方はファクタリングの仕訳にあります
- 2社間ファクタリング(取引先に知らせていない):答え方は、契約の中身と自社の会計処理で変わります。返送の前に、ファクタリング会社と税理士に確かめてください。事実と違う残高を書いて返すことは避けます
2社間と3社間で、取引先が知っていることの違いは2社間と3社間の違いで説明しています。
ファクタリングで売った請求書があると、どうなるの?
うちの帳簿からは消えるけど、取引先の帳簿には残る。2社間なら、返す前にファクタリング会社と税理士に確かめよう。
残高が確定していない請求書は、売らない方がよい
先方と金額が合っていない請求書を、そのままファクタリングに出すのは避けます。返品や値引きで先方が払う額が少なくなれば、ファクタリング会社への支払いの扱いでもめるもとになります。売るのは、残高確認や支払通知書で金額が確かめられた請求書にします。
払われていない請求書が見つかったら
差額を調べていて、数か月前の請求書が払われていないと分かったら、残高確認とは別に、すぐに取引先へ連絡します。単なる見落としなら、それで払われることがほとんどです。支払いが遅れる理由を言われたら、いつ払えるかを書面でもらいます。督促の進め方は請求書の督促に、取引先の経営が危ないと感じたときは、出荷を続けるかどうかも含めて早めに決めます。
入金が遅れて資金が足りないとき
払われていない請求書のせいで支払いに間に合わないときは、ファクタリングだけでなく、融資や支払いの相談なども含めて比べます。取引先が払うかどうか分からない請求書は、ファクタリングでも買い取りを断られることが多いので、資金の手当ては、ほかの確かな売掛金や融資で考えます。どの方法が間に合うかは支払いに間に合わないときの対処の順番を、使える方法を条件から探すなら資金調達診断を使ってください。
残高確認書でよくある失敗と注意点
取引先から「この金額で返して」と頼まれたら?
帳簿と違う数字は書きません。取引先の帳簿の誤りや不正の手助けになるおそれがあります。分からない差額も、理由を作らずに分からないと書きます。
最後に、残高確認書でよくある失敗をまとめます。どれも、返送の前に一度見直せば防げるものです。
- 先方の金額にそのまま丸をつける:確かめずに「相違ない」と答えると、自社の帳簿の誤りも、先方の誤りも見逃します。手順3の突き合わせは省きません
- 届いた日の残高で答える:基準日のあとの入金や請求を含めると、時期のずれとは別の差額が生まれ、確認がやり直しになります
- 取引先の担当者に返す:「経理に渡しておいてください」と営業の担当者に預けると、監査人に直接届きません。同封の封筒の宛先へ返します
- 頼まれて金額を合わせる:取引先から「この金額で返してほしい」と頼まれても、自社の帳簿と違う数字は書きません。取引先の帳簿の誤りや不正の手助けになるおそれがあります
- 期限を過ぎて放っておく:返さないと、監査人が別の方法で確かめることになり、取引先の経理に手間をかけます。期限に間に合わないときは、送り主に連絡します
- 記入者が分からない:記入者の名前と連絡先が無いと、監査人が差額を問い合わせる先がありません。答えた人の名前と電話番号を必ず書きます
- 差額の理由を作って埋める:分からない差額は、分からないと書きます。後で別の理由だったと分かると、かえって説明が難しくなります
確認書を装った連絡に注意
確認書が監査人から本当に届いたものか、迷うことがあります。送り主の監査法人の名前と、取引先の決算の時期が合っているかを確かめ、分からなければ取引先の経理の窓口に「御社の監査人から残高確認が届いた」と電話で確かめます。回答を求めるメールに、振込先の変更や支払いを求める文があれば、確認書ではありません。
残高確認は、取引先との数字を年に1回そろえる機会です。届いた確認書に答えるたびに、自社の売掛金の台帳を直しておけば、決算も、回収も、資金繰りの見通しも楽になります。
出典(4件)公的機関の資料・法令。2026.11.05に確認
- 監査基準報告書505「確認」(日本公認会計士協会、2022年10月13日改正)jicpa.or.jp
- 会社法(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 金融商品取引法(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 民法(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
FAQ
よくある質問
残高確認書はどこに返送すればいいですか?
同封されている返信用封筒の宛先に返します。宛先はふつう取引先の監査法人や公認会計士です。監査人は、回答が相手から直接届くことで信頼できる証拠になると考えているので、取引先の営業や経理の担当者に渡すと確認がやり直しになることがあります。メールやウェブで回答するよう指示があれば、それに従います。
残高確認書は税込みと税抜きのどちらで書きますか?
確認書に指定があれば、それに従います。指定がなければ、請求書と同じ税込みで書き、「税込み」と書き添えると誤解がありません。先方の金額と差額がちょうど10%ほどあるときは、片方が税抜きで書いている可能性があるので、差額を税率で割って確かめてください。
残高確認書の金額が合わないときはどうすればいいですか?
先方の金額に合わせず、自社の帳簿の残高を書き、差額と理由を添えて返します。差額の多くは、出荷と検収の時期のずれ、振込と着金のずれ、振込手数料、値引きや返品です。時期のずれは帳簿を直しません。振込手数料や返品の処理漏れなど自社の誤りが見つかったら、基準日の日付で帳簿を直します。
残高確認書に返信しないとどうなりますか?
回答がないと、取引先の監査人は請求書や入金の記録など、別の資料で確かめ直すことになります。取引先の経理に手間がかかり、取引の関係にもよくありません。期限に間に合わないときは、送り主の監査人に連絡して、いつ返せるかを伝えてください。基準日の残高を調べるのに時間がかかる場合も同じです。
残高確認書は自社から取引先に送ってもいいですか?
送ってかまいません。監査のない中小企業でも、決算の前に残高の大きい取引先や期日を過ぎた請求書がある取引先へ送ると、帳簿の誤りや払われていない請求書を早く見つけられます。取引先が金額を認めて署名すると、債務の承認にあたり、そこから時効の数え直しになります。
ファクタリングで売った請求書があると、残高確認書はどう書きますか?
売った売掛金は自社の帳簿から消えるので、取引先の買掛金と数字が合わなくなります。3社間なら、譲渡した請求書と日付を書き添えれば理由が伝わります。2社間は契約と会計処理で答え方が変わるので、返送の前にファクタリング会社と税理士に確かめてください。事実と違う残高を書くことは避けます。
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