契約更新 2026.10.15
ファクタリングの乗り換え・併用は違法か。二重譲渡にならない手順
ファクタリング会社の乗り換え(次からの請求書を別の会社に売ること)や併用(別々の請求書を別々の会社に売ること)は、それ自体は違法ではありません。違法になりうるのは、すでに売った請求書を別の会社にも売る二重譲渡で、だまして代金を受け取れば詐欺罪のおそれがあります。今の契約が将来の売掛金まで譲渡していないか、継続利用の約束や違約金、登記の抹消を確かめ、新しい会社の契約が済んでから今の会社との取引を終えてください。
- 21分読み終わるまで
- 9章見出し
- 10件公的な出典
フファクタリング図鑑編集部(執筆)・公開 2026.10.15

先に結論:乗り換えも併用もできる。してはいけないのは「同じ請求書を2回売る」こと
毎月のようにファクタリングを使っていると、「この手数料は高すぎるのでは」「今の会社が買ってくれる額では足りない」と感じる時期が来ます。そのとき多くの人が迷うのが、ほかの会社に移ってよいのか、2社を同時に使ってよいのか、そしてそれが知らないうちに違法なことにならないか、という点です。
この記事は、すでにファクタリング会社を使っている経営者・個人事業主に向けて、次の順で答えます。
- 乗り換え・併用・二重譲渡は何が違い、どこからが違法になるのか
- 他社を使っていることは新しい会社に伝わるのか
- 乗り換える前に、今の契約書のどこを読むか
- 入金が途切れる月を作らずに移る段取り
- 新しい見積りが本当に得かを数字で確かめる方法
- 2社を同時に使うときの管理のしかた
- 「乗り換えキャンペーン」の勧誘で気をつけること
- そもそも乗り換えでは解決しない場合
先に要点だけ書きます。
- 乗り換え(これから発生する請求書を別の会社に売ること)と併用(別々の請求書を別々の会社に売ること)は、それ自体は違法ではありません。
- 違法になりうるのは二重譲渡、つまりすでに売った請求書を別の会社にも売ることです。2社目の会社をだましてお金を受け取れば、刑法の詐欺罪に当たるおそれがあります。
- 見落としやすいのは、今の契約が「これから発生する請求書」まで買い取る内容になっている場合です。この場合、まだ発行していない請求書でも、新しい会社に売ると二重譲渡になりえます。
- 他社の利用は、債権譲渡登記の証明書や通帳の記録から新しい会社に伝わることが多く、隠して申し込むのは得策ではありません。
乗り換え・併用・二重譲渡の違い:線を引くのは「請求書ごと」
3つの言葉は似ていますが、法律の上では意味がまったく違います。判断の単位は会社ではなく、1枚1枚の請求書(売掛金)です。
| 言葉 | 何をすることか | 例 | 法律上の扱い |
|---|---|---|---|
| 乗り換え | 今の会社との取引を終え、次からの請求書を別の会社に売る | 10月分まではA社、11月分からはB社 | 問題ない。ただし今の契約に縛りや将来分の譲渡がないかを確かめる |
| 併用 | 同じ時期に、別々の請求書をそれぞれ別の会社に売る | 甲社あての請求書はA社、乙社あての請求書はB社 | 問題ない。ただし請求書ごとの管理が必要 |
| 二重譲渡 | すでに売った請求書を、別の会社にも売る | 甲社あての11月分をA社に売ったあと、同じ11月分をB社にも売る | 契約違反になり、だまして代金を受け取れば詐欺罪のおそれ |
民法では「先に対抗要件をそなえた方」が勝つ
売掛金を売ることを、法律では債権の譲渡と呼びます。債権の譲渡は、売った人が債務者(売掛先)に通知をするか、売掛先が承諾しなければ、売掛先やそのほかの第三者に主張できません。※1さらに、売掛先以外の第三者に主張するには、その通知や承諾を確定日付のある証書で行う必要があります。※2
同じ請求書が2社に売られると、2社のどちらがその売掛金を持つかの争いになります。法人であれば債権譲渡登記をすると確定日付のある通知があったものとみなされ、法務省のQ&Aは、登記による対抗要件と民法の方法による対抗要件の優劣は「具備した時の先後」で決まると説明しています。※3つまり、2社のうち一方は必ず負けます。負けた会社は代金を回収できないので、売った人に返金や損害の賠償を求めることになります。登記そのものの仕組みは債権譲渡登記とはで説明しています。
刑事では詐欺罪のおそれ
人をだまして財物を渡させると詐欺罪にあたり、刑罰は10年以下の拘禁刑です。※4すでにA社に売った請求書を、まだ売っていないかのように装ってB社に売り、代金を受け取れば、B社をだまして財物を交付させたことになりえます。申込書や契約書で「この売掛金はほかに譲渡していません」と表明する欄に事実と違う内容を書けば、だます意思があったことの証拠にもなります。
2社間ファクタリングでは、売掛先から自社の口座に入った代金を、期日までにファクタリング会社へ渡す約束になっています。この代金を別の支払いに回してしまうことも、契約違反になります。自分が預かっている他人の物を横領すると罪になるため、事情によってはこの点が問題にされることもあります。※5乗り換えの時期は資金が苦しいことが多く、こうした流用が起きやすいので注意してください。
「これから発生する請求書」も売れる、という落とし穴
債権の譲渡は、その時点で債権が発生していなくてもでき、後で発生した債権は譲受人が当然に取得します。※6これを将来債権の譲渡といいます。
ファクタリングの契約の中には、毎月の請求書を1枚ずつ売る形ではなく、「売掛先○○に対する、今後○年間に発生する売掛金」をまとめて譲渡し、毎月の買取代金をそのつど払う形のものがあります。この場合、まだ発行していない来月の請求書も、法律上はすでに今の会社のものになっている可能性があります。それを新しい会社に売れば、本人は「次の月から乗り換えただけ」のつもりでも二重譲渡になります。乗り換えの前に契約書を読む理由は、ここにあります。
この章の根拠(6件)
- 民法467条1項
- 民法467条2項
- 動産・債権譲渡特例法4条1項
- 刑法246条1項
- 刑法252条
- 民法466条の6
他社を使っていることは新しい会社に伝わるか
「今の会社のことは黙って申し込めばいいのでは」と考える人もいますが、多くの場合は伝わります。主な経路は次の3つです。
1. 債権譲渡登記の証明書は誰でも取れる
法人が2社間ファクタリングで登記をしている場合、その概要は第三者でも確かめられます。登記事項概要証明書と概要記録事項証明書は、「何人も」(誰でも)交付を請求できます。※1※2法務省によると、手数料は窓口・郵送ならどちらも1通300円で、概要記録事項証明書は全国の商業登記所・不動産登記所で取れます。
どちらの証明書にも、売掛先の名前など個々の債権を特定する事項は載りません。それでも、自社が譲渡人として登記されていることは分かります。法務省のQ&Aによると、登記事項概要証明書には登記原因とその日付、存続期間、債権の総額が載ります。新しい会社がこれを取り寄せれば、いつ、どれくらいの期間の登記があるかが見えるわけです。
2. 通帳の記録
多くの会社は審査で通帳のコピーや入出金明細を求めます。2社間を使っていれば、ファクタリング会社からの入金と、ファクタリング会社への送金が毎月のように記録されています。3社間を使っていれば、本来の売掛先からの入金が途中から消えているはずです。通帳は、他社の利用がもっとも自然に表れる書類です。
3. 申込書と契約書での申告
申込書に他社の利用状況を書く欄を設けている会社や、契約書で「ほかにファクタリングを利用していない」「対象の売掛金を第三者に譲渡していない」と表明させる会社があります。必要書類に「他社ファクタリング利用中の場合は契約書類と残高が確認できるもの」を挙げている会社もありました。
隠さず伝えた方がよい理由
伝わる経路がこれだけあるうえ、事実と違う申告をすれば、その時点で契約の解除や損害賠償の理由を相手に与えます。一方で、他社を使っていること自体を理由に一律に断る会社は多くありません。ファクタリング図鑑の86サービス(2026年10月15日時点の公式サイトの表記)では、他社を利用中でも申し込めると明記しているのが42サービス(49%)で、受け付けないと明記しているサービスはありませんでした。残る44サービスは記載がありません。明記している中にも「売掛金が別であれば可」「場合によっては可能」のような条件つきの書き方があります。赤字や滞納などほかの受付条件と並べた表は審査に落ちる理由と次にやることにまとめています。
正直に伝え、「今の会社とは○月分で終える」「この請求書はどこにも売っていない」と書類で示せる方が、審査は早く進みます。
反対に、今の会社が乗り換えに気づくかどうかは状況によります。新しい会社が登記をすれば、その概要は今の会社も証明書で見られる状態になります。今の会社との精算が残っているうちは、黙って移るより、終える時期を自分から伝えておく方がもめごとを防げます。
この章の根拠(2件)
- 動産・債権譲渡特例法11条1項
- 動産・債権譲渡特例法13条1項
乗り換える前に、今の契約書で読むところ
乗り換えでつまずく原因の多くは、今の会社との契約に書いてあります。手元の契約書(基本契約書と、毎回の個別の契約書や買取の明細)を出して、次の7か所を読んでください。契約書を受け取っていない、控えがない場合は、まず控えを求めることから始めます。
| 読むところ | 確かめること | 注意したい書き方 |
|---|---|---|
| 譲渡の対象 | 売ったのは特定の請求書だけか、将来の売掛金まで含むか | 「将来発生する」「○年○月から○年○月までに発生する」「売掛先○○に対する一切の」 |
| 契約の期間 | 基本契約に期間があるか、自動で更新されるか | 「期間満了の○か月前までに申し出がない限り更新」 |
| 継続利用の約束 | 毎月の利用や、一定額以上の利用を約束していないか | 「毎月○回以上」「最低利用額」「他社との取引をしない」 |
| 中途解約・解除 | 自分から途中でやめられるか、そのとき何が必要か | 解約の規定がない、相手方からの解除だけが書かれている |
| 違約金・損害金 | どんな場合に、何を基準にいくら払うか | 「残期間の手数料相当額」など、計算の基準があいまいなもの |
| 登記 | 登記の範囲(どの売掛先・どの期間)と、取引を終えた後の抹消 | 抹消の定めがない、抹消の費用を一方的に負担させる |
| 通知の預かり | 売掛先あての通知書や委任状を、あらかじめ預けていないか | どんな場合に通知を出すのかが書かれていない |
違約金は「書いてある額」を確かめる
違約金がいくらになるかは、契約によってまったく違います。世間の相場のようなものはないので、必ず自分の契約書の条文で計算してください。当事者は損害賠償の額をあらかじめ決めておくことができ、契約に書かれた違約金は、その賠償額を前もって決めたもの(賠償額の予定)と推定されます。※1※2契約に書かれた違約金は原則としてそのとおり請求されうる、という前提で考えておくのが安全です。
計算の基準が読み取れない、金額が今後の手数料の見込みを大きく超える、口頭の説明と書面が違う、といった場合は、署名済みの契約でも弁護士に相談する価値があります。契約書全体の読み方は契約書で確かめる箇所にまとめています。
自分の会社の登記を確かめる
法人なら、乗り換えの前に自社を譲渡人とする登記がいくつ、どの期間で残っているかを自分で確かめておきます。誰でも取れる登記事項概要証明書で、登記の日付と存続期間が分かります。自社は登記の当事者なので、個々の債権まで載る登記事項証明書も請求できます。※3手数料は債権1個につき500円です。
存続期間は、債務者がすべて特定している場合は50年、それ以外は10年を超えられないとされています。※4上限が長いぶん、取引を終えても登記だけが何年も残ることがあります。新しい会社は登記を見て確認を求めてくるので、先に把握しておくと説明が早く済みます。
この章の根拠(4件)
- 民法420条1項
- 民法420条3項
- 動産・債権譲渡特例法11条2項1号
- 動産・債権譲渡特例法8条3項
乗り換えの手順:入金が途切れる月を作らない段取り
毎月ファクタリングで資金を回している人にとって、いちばん怖いのは「今の会社をやめたのに、新しい会社の審査が間に合わない月」ができることです。次の順に進めると、その空白を避けやすくなります。
- 今の会社との「残り」を一覧にする:売ったがまだ売掛先から入金されていない請求書、まだ渡していない代金、未払いの手数料を書き出します。2社間なら、これらを渡し終えるまで取引は終わりません。
- 契約書の7か所を読む(前の章)。将来の売掛金まで譲渡している場合や、継続利用の約束がある場合は、ここで手順が変わります。
- 自社の登記を確かめる(法人のみ)。
- まだどこにも売っていない請求書で、新しい会社2〜3社に見積りを頼む。今の会社の利用状況は正直に伝えます。
- 新しい会社の契約が済むまで、今の会社はやめない。審査に落ちたり条件が合わなかったりしたときの受け皿を残します。
- 今の会社に「○月分で終える」と書面かメールで伝える。解約の手続きが契約に定められていれば、それに従います。
- 最後の精算を済ませる。売掛先から入った代金を期日どおりに渡し、精算が終わったことが分かる書類(精算書や残高がないことの確認)をもらいます。
- 登記の抹消を頼む。譲渡が解除などで効力を失ったときや債権が消滅したときは、譲渡人と譲受人が抹消登記を申請できます。※1抹消は双方の申請なので、今の会社の協力が要ります。法務省によると登録免許税は1件1,000円です。
- 新しい会社に、精算と抹消の書類を出す。
月ごとの段取りの例
たとえば、毎月末に売掛先へ請求書を出し、翌月末に入金される取引で、請求書を出した直後に2社間ファクタリングで売っている場合を考えます。
| 時期 | 今の会社 | 新しい会社 | 自分でやること |
|---|---|---|---|
| 1か月目 | いつもどおり今月分を売る | 見積りと審査の申込み(来月分の請求書の予定額で相談) | 契約書を読む、登記を確かめる、残りを一覧にする |
| 2か月目の前半 | 先月分の入金を待つ | 審査・契約 | 新しい会社と契約できたら、今の会社に終了を伝える |
| 2か月目の末 | 先月分が売掛先から入金→代金を渡して精算 | 今月分の請求書をここで初めて売る | どの請求書をどちらに売ったかを表に記録する |
| 3か月目 | 精算の確認書類と抹消登記 | 2回目以降の取引 | 抹消後の証明書を新しい会社に出す |
この例のポイントは、同じ月の請求書を両方の会社に出していないことと、新しい会社の契約が済むまで今の会社を残していることです。見積りの段階で請求書を見せるのは問題ありませんが、契約(譲渡)は1枚の請求書につき1社だけです。審査中に資金が必要になって今の会社にも同じ請求書を売ってしまう、という事故がいちばん起きやすいので、どちらに売るかは契約の前日までに決めておきましょう。
将来の売掛金まで譲渡していた場合
今の契約が将来の売掛金までまとめて譲渡する内容なら、終了を伝えるだけでは足りません。今の会社と、どの時点以降に発生する売掛金は譲渡の対象から外れるのかを書面で合意し、登記もその範囲で抹消(一部だけの抹消を含む)してもらってから、新しい会社に売ります。※2合意ができないまま新しい会社に売ると、二重譲渡の状態になりえます。
よくある失敗
- 審査が長引き、同じ請求書を今の会社にも売ってしまった:新しい会社の契約の前日に、資金が足りず今の会社にも申し込んだ例です。両方と契約すれば二重譲渡です。気づいた時点で、契約していない方の申込みを取り下げ、両方と契約してしまったなら隠さずに両社へ伝えて、弁護士に相談してください。
- 抹消を頼まずに移り、新しい会社の確認で止まった:精算は済んでいても登記が残っていれば、新しい会社は「まだ譲渡が続いているのでは」と考えます。精算の確認書類と抹消は、終了を伝えるときに一緒に頼むのが確実です。
- 違約金を確かめずに終了を伝えた:継続利用の約束がある契約で、先に終了を伝えてから違約金の条項に気づく例です。契約書を読み、費用を計算してから伝える順番を守りましょう。
- 最後の入金を別の支払いに使ってしまった:今の会社に渡すべき代金を、新しい会社の初回の入金までのつなぎに使ってしまう例です。前の章のとおり、契約違反になるうえ、乗り換えそのものが止まります。
今の会社を3社間で使っている場合
3社間では、売掛先が譲渡を承諾し、ファクタリング会社の口座に直接払っています。乗り換えると、売掛先にとっては支払先がまた変わることになるため、売掛先への連絡が欠かせません。すでに売った請求書の分は今の会社に払ってもらい、どの請求書から支払先が自社(または新しい会社)に戻るのかを、売掛先・今の会社・新しい会社の三者で食い違わないように書面で伝えます。この連絡を省くと、売掛先が新しい請求書の代金まで今の会社に払ってしまい、取り戻す手間が生じます。
個人事業主の場合
個人事業主の売掛金は債権譲渡登記の対象外です。登記の確認と抹消の手順はありませんが、二重譲渡のルールは同じです。登記がないぶん新しい会社は通帳と申告でしか確かめられず、そのぶん書類で精算の終了を示すことが大切になります。
この章の根拠(2件)
- 動産・債権譲渡特例法10条
- 動産・債権譲渡特例法10条3項
新しい見積りが本当に得かを確かめる
乗り換えの動機の多くは手数料です。ただ、1回の手数料率が下がっても、乗り換えの費用や2回目以降の条件しだいで得にならないことがあります。比べるときは、次の3つを数字にします。
1. 実質年率で比べる
手数料は売掛金の入金までの日数によって重さが変わるので、年率に直して比べます。この図鑑では「手数料額 ÷ 手取り額 ÷ 入金までの日数 × 365」で計算しています。
たとえば毎月200万円の請求書を売っていて、今の会社が手数料10%、入金まで30日なら、手数料は20万円、手取りは180万円で、実質年率は約135%です(20÷180÷30×365)。新しい会社の見積りが手数料7%・入金まで30日なら、手数料14万円・手取り186万円で約92%になります(14÷186÷30×365)。
2. 乗り換えの費用を足す
手数料の差は、この例で1か月6万円です。ここから、乗り換えにかかる費用を差し引きます。
- 今の会社の違約金(契約書で計算した額)
- 今の登記の抹消の費用(登録免許税1件1,000円。誰が負担するかは契約しだい)
- 新しい会社での登記の費用(登録免許税は債権5,000個以下で1件7,500円。司法書士に頼めばその報酬)
- 新しい会社の事務手数料や、最初の取引だけにかかる費用
元が取れるまでの月数は、(乗り換えの費用の合計)÷(1か月の手数料の差)で出せます。計算のための仮の額として、違約金12万円、登記と抹消の登録免許税8,500円がかかるとすると、合計12万8,500円÷6万円で約2.1か月です。3か月目から得になる計算ですが、半年でやめるつもりなら差は小さく、1〜2か月で使うのをやめるなら損になります。
見積りで聞いておく項目
| 項目 | 聞く理由 |
|---|---|
| 手数料率と手数料の額 | 率だけでなく、実際に引かれる額で比べるため |
| 手数料以外の費用 | 登記・事務手数料・印紙など、別の名目で引かれる額を足すため |
| 手取り額 | 年率の計算と、資金が足りるかの確認に使うため |
| 入金までの日数 | 同じ率でも日数が短いほど年率は高くなるため |
| 登記の要否と範囲 | 将来の売掛金まで含む登記なら、次に乗り換えるときにまた手間がかかるため |
| 継続利用の条件・違約金 | 今と同じ縛りを新しい会社でも負わないため |
3. 2回目以降の条件を書面でもらう
見積りの手数料率は、多くの場合その請求書についての率です。2回目以降も同じ率になるとは限りません。「次回以降の率はどう決まるか」「売掛先が変わったらどうなるか」を聞き、答えをメールなどで残してください。最初の1回だけが安い見積りで乗り換えると、2回目から元の会社より高くなることもあります。
2〜3社の見積りを並べて手取りと実質年率を比べるには見積りの比較が使えます。入力した数字はその画面の中だけで計算されます。手数料の決まり方そのものは手数料の相場で説明しています。
2社を併用するときの管理のしかた
1社が買い取ってくれる額では足りない、売掛先によって得意な会社が違う、といった理由で2社を同時に使うことは、請求書が分かれていれば問題ありません。ただし、1社のときより管理が複雑になり、うっかりの二重譲渡が起きやすくなります。
分け方は「売掛先ごと」がいちばん安全
同じ売掛先の請求書を月ごとにA社とB社に振り分けると、どの月をどちらに売ったかが混ざりやすく、登記の範囲も重なりがちです。できるだけ売掛先ごとに会社を分ける(甲社あてはA社、乙社あてはB社)方が安全です。片方の会社の登記が「売掛先○○に対する将来の売掛金」を広く含む形になっていると、同じ売掛先の請求書をもう一方に売れないこともあります。
譲渡の台帳を作る
2社以上を使うなら、次の項目を1行ずつ記録する表を作っておきます。
| 項目 | 書くこと |
|---|---|
| 請求書 | 請求書番号、売掛先、金額、支払期日 |
| 売った先 | 会社名、契約日、2社間か3社間か |
| お金の動き | 受け取った買取代金、手数料、売掛先からの入金日、ファクタリング会社へ渡した日 |
| 状態 | 精算済みか、登記の有無と抹消の済み・未済み |
この台帳があれば、新しい請求書を売る前に「まだどこにも売っていない」ことを自分で確かめられ、審査で聞かれたときにもすぐ示せます。税理士に仕訳を頼むときの資料にもなります。
併用で総額の負担が増えていないか
併用すると、売る請求書の総額が増えます。手数料率がそれぞれ妥当でも、毎月の売上のうち手数料で消える額は大きくなります。2社を使い始めたら、毎月の手数料の合計が粗利のどれくらいを占めているかを一度計算してください。2社目が必要になった理由が「1社では足りないほど資金が不足しているから」なら、それはファクタリングの使い方を見直す合図でもあります(最後の章)。
「乗り換えキャンペーン」の勧誘で気をつけること
他社を使っている事業者に向けて、「乗り換えなら手数料を下げる」「今の会社より安くする」と勧誘する会社があります。条件がよいなら乗り換えればよいのですが、次のような話が出たら立ち止まってください。
| 勧誘の言葉 | 何が問題か |
|---|---|
| 「今の会社への支払いを当社が立て替えます」「残りを肩代わりします」 | 立て替えたお金を自分の資金で返す約束になっていれば、中身はお金の貸し借りに近い。金融庁は、売主が自分の資金で業者に支払わなければならない取引は貸金業に当たるおそれがあるとしている |
| 「同じ請求書をそのまま当社に回してください」 | 今の会社に売った請求書なら二重譲渡。違法の責任を負うのは売った本人 |
| 「登記は気にしなくていい」「前の会社にはばれません」 | 抹消の手続きを踏まずに進める話で、権利関係のもめごとを先送りしているだけ |
| 「初回○%」とだけ書かれ、2回目以降の率は口頭 | 最初の1回だけ安く、継続の縛りや違約金で取り戻す設計のことがある |
| 「今日中に決めれば」と急がせる | 契約書を読む時間を与えないのは、それ自体が危険のサイン |
| 手数料率は低いが「事務手数料」「調査料」が別にある | 率だけ下げて別の名目で取る。手取りの額で比べないと分からない |
とくに注意したいのが、1つ目の「肩代わり」です。乗り換えの時期は今の会社への精算が残っていて資金が苦しく、「それも含めて面倒を見ます」という話に乗りやすくなります。しかし、新しい会社が払ったお金を、売掛先の支払いがあろうとなかろうと自分が返す約束になっているなら、それは債権の売買ではなく借入れに近い取引です。金融庁は、ファクタリングを装った高金利の貸付けを行うヤミ金融業者の存在を確認しているとして注意を呼びかけています。
契約書に「売買」と書かれていても、金融庁は形式だけでなく経済的な側面や実態で判断されるとしています。今の会社の精算は、売掛先からの入金で自分で済ませるのが原則です。危ない会社の見分け方の全体は危ないファクタリング業者の見分け方にまとめています。困ったときは、金融庁の金融サービス利用者相談室(0570-016811、平日10時〜17時)に相談できます。
乗り換えでは解決しない場合と、ほかの方法
手数料の安い会社に移るのは、毎月の負担を減らす手段として筋が通っています。ただ、次のような状態なら、会社を替えても資金繰りは楽になりません。
- 毎月の請求書を売らないと翌月の支払いができず、それが何か月も続いている
- 前の月に売った分の穴を、次の月の請求書を売って埋めている
- 2社目、3社目と使う会社が増えている
- 手数料の合計が、その取引で得られる粗利に近づいている
この状態では、手数料が数%下がっても、売上の一部が毎月手数料として出ていく構造は変わりません。金融庁も、高額な手数料を払うとかえって資金繰りが悪化し、多重債務に陥る危険があると注意しています。ファクタリングを使い続けることの得失はファクタリングのメリット・デメリットで、融資や早期支払いと総額で比べています。
乗り換えの検討を機に、次の方法も並べてみてください。
- 融資への切り替え:銀行・信用金庫・日本政策金融公庫の融資は、審査に時間がかかります。ただ、融資の利息には法律で上限があり、元本100万円以上なら年15%までです。※1この記事の例の約135%や約92%と比べると、差は大きくなります。毎月のファクタリングを1回の運転資金の融資に置き換えられれば、売掛金を売り続ける循環から抜けられます。違いはファクタリングと融資の違いで説明しています。
- 3社間への切り替え:売掛先に知られてもよい関係なら、売掛先の承諾を得る3社間に移すことで手数料が下がることがあります。
- 入金と支払いの時期の見直し:売掛先に支払いを早めてもらえないか、仕入先や外注先に支払いを遅らせてもらえないかを相談します。
- 税金の猶予:税金の支払いが重なっているなら、国税庁は、納期限までに納付することが難しい人向けに国税の猶予制度があると案内しています。早めに税務署へ相談してください。
どの方法が合うかは、資金調達診断で状況を入れると整理できます。乗り換えるにしても、やめるにしても、まず今の契約書と登記を確かめ、請求書ごとの台帳を作るところから始めてください。
この章の根拠(1件)
- 利息制限法1条
出典(10件)公的機関の資料・法令。2026.10.15に確認
- 民法(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 刑法(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 利息制限法(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 法務省:第3 証明書交付請求の手続www.moj.go.jp
- 法務省:(債権譲渡登記)Q&Awww.moj.go.jp
- 法務省:(債権譲渡登記等)添付書面・登録免許税www.moj.go.jp
- ファクタリングの利用に関する注意喚起:金融庁www.fsa.go.jp
- 納期限までに納付することが困難な方へ|国税庁www.nta.go.jp
- ファクタリング図鑑の掲載86サービスの公式サイト調査(2026年10月15日時点)facto-ring.com
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