法律更新 2026.11.07
フリーランス法の支払期日は60日以内|違反の見分け方と遅れたときの手順
フリーランス法では、報酬の支払期日を成果物を受け取った日から60日以内のできる限り短い日に決めます。月末締め翌月末払いは認められ、翌々月払いは多くが違反です。締め条件ごとの見分け方と、遅れたときの記録・相談・申出の手順を説明します。
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フファクタリング図鑑編集部(執筆)・公開 2026.11.07

業務委託で仕事を受けたのに、報酬がなかなか振り込まれない。「翌々月末払いです」と言われたけれど、それは普通なのか。フリーランスとして働く人が抱えやすいこの疑問には、2024年11月に始まったフリーランス法がはっきりした線を引いています。この記事では、支払期日の決まりと数え方、自分の契約が違反かどうかの見分け方、遅れたときに何をすればよいかを、日付の例を使って説明します。
この記事を6枚で
1 / 6結論:支払期日は「受け取った日から60日以内」。遅れたら記録して申し出られる
フリーランス法では、従業員を使う発注者は、報酬の支払期日を成果物を受け取った日(役務は提供を受けた日)から60日以内の、できる限り短い期間で決めなければなりません。決めた期日までに払うことも義務です。※1
押さえておきたい点は次の4つです。
- 数え始めは受け取った日:請求書を出した日や、検収が終わった日ではありません。検査をするかどうかに関係なく、受け取った日から数えます。
- 月末締め翌月末払いは認められる:60日を「2か月以内」として扱うためです。翌々月払いは、多くの場合60日を超えます。
- 期日を決めていなくても守られる:決めていなければ受け取った日が、60日を超えて決めていれば60日を経過する日が、支払期日とみなされます。
- 遅れたら申し出られる:公正取引委員会か中小企業庁に違反を申し出られます。申し出たことを理由に取引を減らすことも禁止です。
よくある支払条件を、この決まりに当てはめると次のようになります。日数は、締め期間のうちいちばん早く納品した日から数えたものです。
| 支払条件 | いちばん早い納品日から | 判定 |
|---|---|---|
| 月末締め翌月末払い | 4月1日納品→5月31日(61日目) | 問題としない(2か月以内の扱い) |
| 15日締め当月末払い | 3月16日納品→4月30日(46日目) | 60日以内 |
| 20日締め翌月末払い | 3月21日納品→5月31日(72日目) | 60日を超える |
| 月末締め翌々月10日払い | 4月1日納品→6月10日(71日目) | 月の初めの納品分が超える |
| 月末締め翌々月末払い | 4月30日納品→6月30日(62日目) | 月末の納品でも超える |
表のとおり、「月末締め翌月末」より遅い条件は、ほとんどが違反になる形です。ただし、この決まりが使えるのは、発注者とあなたの両方が条件に当てはまる取引だけです。まず対象かを確かめ、次に60日の数え方、再委託の例外、遅れたときの手順、待てないときの方法へと進みます。
中小企業どうしの取引に使う取適法(中小受託取引適正化法、2026年1月に下請法から変わった法律)にも60日の決まりがあります。取適法の中身は取適法(旧下請法)とはで、2つの法律の60日ルールの比べ方は請求書の買取(現金化)と、売掛金を早く現金にする方法の中で説明しています。
この章の根拠(1件)
- フリーランス法4条1項・5項
自分の取引は対象か:フリーランス法が使える人と発注者
フリーランス法の正式な名前は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」です。2024年11月1日に施行され、その日より後に頼まれた業務委託に使われます。公正取引委員会などは「フリーランス・事業者間取引適正化等法」とも呼びます。※1
守られる側:従業員を使わないフリーランス
法律が守るのは「特定受託事業者」です。この記事では「受けるフリーランス」と呼びます。次のどちらかに当てはまる人や会社です。※2
- 従業員を使わない個人
- 代表者1人だけで、ほかに役員がおらず、従業員も使わない会社(いわゆる1人社長の会社)
ここでいう「従業員」は、週20時間以上働き、31日以上続けて雇う見込みの人です。家族に短時間だけ手伝ってもらっている程度なら、従業員を使っていることにはなりません。※3
60日の義務を負う側:従業員を使う発注者
60日以内に支払期日を決める義務を負うのは「特定業務委託事業者」です。この記事では「発注する会社」と呼びます。従業員を使う個人か、役員が2人以上いるか従業員を使う会社がこれに当たります。発注者の資本金の大きさは関係ありません。※4
一方、発注者も従業員を使わないフリーランスの場合は、仕事の内容・報酬の額・支払期日などを書面やメールで示す義務だけがかかります。60日の決まりは使えません。※5
対象にならない取引
- 個人のお客からの仕事:事業者が「その事業のために」頼む業務委託が対象です。一般の消費者からの依頼は当たりません。
- 実態が雇用の場合:契約の名前が業務委託でも、働き方の実態から労働基準法の「労働者」と認められれば、この法律の対象ではありません。その場合は賃金の問題として労働基準監督署に相談します。※6
- 物を売るだけの取引:業務委託は、物の製造・情報成果物(プログラム、動画、文章、デザインなど)の作成・役務の提供を頼むことです。できあがった商品を売るだけなら当たりません。※7
- あなたは従業員を使わずに1人で仕事を受けているか?(1人社長の会社も含む)はい → 次へいいえ → フリーランス法の対象外。取適法などを確かめる
- 発注者は事業者で、その事業のために頼んだ仕事か?はい → 次へいいえ(個人のお客から) → 対象外。契約と民法で考える
- 指揮命令を受けて働く「労働者」の実態ではないか?はい(実態も事業者) → 次へいいえ → 労働基準法の問題。労働基準監督署へ
- 発注者は従業員を使っているか、役員が2人以上いるか?はい → 受け取った日から60日以内の支払いが義務いいえ → 条件の明示(書面・メール)の義務だけ
発注者の従業員の数は、外からはわかりにくいものです。取引先が会社で、担当者のほかに社員がいるのが明らかなら、まず対象と考えてよいでしょう。迷うときは、次の章以降の手順で相談するときに、取引の中身を伝えて確かめます。
この章の根拠(7件)
- 公正取引委員会「フリーランス法Q&A」問1・問34
- フリーランス法2条1項
- 公正取引委員会「フリーランス法Q&A」問3
- フリーランス法2条6項・4条1項
- フリーランス法3条1項
- 公正取引委員会「フリーランス法Q&A」問5
- フリーランス法2条3項・4項
60日の数え方:締め条件ごとに違反かどうかを判定する
数え始めは「受け取った日」
60日は、発注者が成果物を受け取った日を1日目として数えます。何をもって受け取ったとするかは、仕事の種類で変わります。※1
| 仕事の種類 | 受け取った日 |
|---|---|
| 物を作る仕事 | 発注者が物を自分の手元(占有の下)に置いた日 |
| デザイン・原稿・プログラムなど(メールで納品) | 発注者のコンピュータに記録された日 |
| デザイン・原稿など(USBなどで納品) | 記録した媒体を受け取った日 |
| 作業・講師・撮影などの役務 | 役務の提供を受けた日。長く続くものは、一連の提供が終わった日 |
ここで大事なのは、検収や請求書を待たずに数える点です。法律は「検査をするかどうかを問わず」と書いています。発注者の検収が1か月かかっても、60日の時計は納品の日から進みます。請求書を出していないことも、支払いを遅らせる理由にはなりません。※2
ただし、あなたの責任でやり直しになったときは、やり直した成果物を受け取った日から数え直します。発注者の都合での修正なら、数え直しにはなりません。※3
「60日」は「2か月以内」として扱う
毎月の締めで払う取引では、31日の月が続くと、月末締め翌月末払いでも60日を1〜2日超えることがあります。たとえば7月1日に納品した分を8月31日に払うと62日目です。公正取引委員会は、この場合は「受け取った日から2か月以内」として扱い、問題としないとしています。※4
逆に言えば、この扱いで救われるのは月末締め翌月末払いの形までです。翌々月に払う条件は、2か月にも収まりません。
フリーランスに多い3つの落とし穴
締め条件の一覧だけでは見落としやすい場面があります。フリーランスの仕事で起きやすい3つを、2026年の日付で確かめます。
| 場面 | 日付の例 | 受け取った日から |
|---|---|---|
| 20日締めで翌月末に払う | 3月21日納品→締めは4月20日→支払いは5月31日 | 72日目。60日目は5月19日 |
| 翌々月10日払いで月初に納品 | 4月1日納品→6月10日払い | 71日目。4月12日以降の納品分だけが60日に収まる |
| 検収の月で締める | 4月10日納品→検収5月15日→検収月末締め翌月末の6月30日払い | 82日目。60日目は6月8日 |
3つめは特に気づきにくい形です。発注書に「検収月末締め翌月末払い」と書かれていると、普通の条件に見えます。しかし数え始めは検収ではなく納品の日なので、検収が長引くほど60日を超えます。納品から検収までの日数を、契約の前に聞いておきます。
期日の書き方と、休日のとき
- 「まで」「以内」は期日にならない:「翌月10日まで」のような書き方では、いつ払うのか日を特定できないため、支払期日を決めたとは認められません。「毎月末日」「翌月10日」のように日を書きます。※5
- 休日の順延:支払日が金融機関の休業日に当たり、翌営業日に延ばすことを前もって書面やメールで合意していれば、延びるのが2日以内なら60日を超えても問題としません。延ばした後でも60日以内に収まるなら、2日を超えても構いません。
- 60日いっぱいに延ばすのは逆に問題:これまで納品の直後に払っていたのに、法律を理由に支払いを60日後に遅らせることは、「できる限り短い期間」の決まりに反します。※6
発注する側が条件を直すとき
フリーランスに仕事を出す会社の側で、今の支払条件が60日を超えているとわかったら、次の取引から直します。社員向けの経費精算と同じ締めで回していると、20日締め翌月末払いのような形になりがちです。フリーランスへの支払いだけでも、月末締め翌月末払いか、15日締め当月末払いにそろえると、どの日に納品されても60日に収まります。
検収を挟む場合は、検収の日ではなく納品の日で締める形に変えます。また、発注書やメールには支払期日を日で書き、再委託として30日の例外を使うなら3つの事項を必ず書きます。
請求書に書く支払期限の文例や、締め条件ごとの請求書の日付は請求書の支払期限の決め方と書き方で説明しています。
この章の根拠(6件)
- 公正取引委員会「フリーランス法Q&A」問45
- フリーランス法4条1項/公正取引委員会「フリーランス法Q&A」問58
- 公正取引委員会「フリーランス法Q&A」問46
- 公正取引委員会「フリーランス法Q&A」問48
- 公正取引委員会「フリーランス法特設サイト(2025年)」
- 公正取引委員会「フリーランス法Q&A」問49
再委託の例外:元請の支払期日から30日以内になる条件
制作会社が大手から受けた仕事の一部を、あなたに回すような場合を「再委託」といいます。この場合だけは、60日ではなく「元の発注の支払期日から30日以内」で期日を決めることが認められています。※1
ただし、例外が使えるのは、発注者が最初の取引条件の明示で次の3つをあなたに示したときだけです。※2
- 再委託であること
- 元の発注者(元委託者)の名前
- 元の発注の対価の支払期日
3つのどれかが示されていなければ、原則の60日に戻ります。「うちも元請からの入金待ちだから」と言われても、示されていない限り理由になりません。
示されていた場合も、基準は元請から実際に入金された日ではなく、決められた支払期日です。元請の支払いが遅れても、あなたへの期日は動きません。元請から分割で払われる場合は、原則として最後の支払日から30日以内です。※3
また、元請から前払金を受け取った発注者は、あなたにも材料費などの着手の費用を前払金として払うよう、配慮しなければなりません。※4
あなたの側の原因で払えなかったとき
あなたが誤った口座番号を伝えたなど、あなたの責任で払えなかった場合は、その原因がなくなった日から60日以内(再委託は30日以内)に払えばよいとされています。振込先を変えたときは、すぐに発注者へ知らせ、届いたことを確かめておきます。※5
この章の根拠(5件)
- フリーランス法4条3項
- 公正取引委員会「フリーランス法Q&A」問51・問55
- 公正取引委員会「フリーランス法Q&A」問52・問57
- フリーランス法4条6項
- フリーランス法4条5項/公正取引委員会「フリーランス法Q&A」問58
報酬が支払期日に遅れたときの手順:記録→催促→相談→申出
期日を過ぎても入金がないときは、次の4段階で進めます。いきなり行政に申し出るより、記録をそろえて催促し、相談を挟む方が早く解決することが多いからです。
- 期日の翌日記録をそろえる受け取った日・決めた期日・入金の有無を1枚に
- 2〜3日以内書面で催促する期日と金額を書き、新しい期日を日付で示す
- 返事がない・断られた110番に相談する無料。和解あっせんや申出の助言を受ける
- 直らないとき公取委・中小企業庁に申し出る違反を調べて指導・勧告する
1. 記録をそろえる
行政に申し出るときも、話し合いで解決するときも、最初に問われるのは「いつ受け取ったか」「期日はいつと決めたか」です。次のものを、取引ごとに1つのフォルダにまとめます。
- 納品のメール・送信記録添付やURLを送った日時がわかるもの
- 受け取りの返信「受領しました」「確認します」の返事
- ファイル共有の記録アップロード日時・共有した相手
- 作業の終わりの記録役務なら最後に作業した日の報告
- 取引条件の明示(発注書)支払期日・報酬の額が書かれたもの
- 電話や口頭だけの納品日付が残らず、60日の起点が争いになる
電話で「今日納品しました」と伝えただけでは、受け取った日が残りません。納品はメールやファイル共有で行い、送った日時が残る形にします。発注者が取引条件を書面やメールで示していないなら、それ自体が違反です。※1
2. 書面で催促する
最初の催促は、行き違いもありうる前提で、やわらかく書きます。それでも支払期日と金額、新しい期日ははっきり示します。2回目以降は、フリーランス法の決まりにふれる一文を加えます。
文例(2回目):
件名:【再度のご確認】5月31日お支払い予定のご報酬について
〇〇株式会社 経理ご担当者様
いつもお世話になっております。〇〇です。4月10日に納品いたしました「〇〇の制作」のご報酬30万円(支払期日5月31日)について、6月3日にご連絡いたしましたが、本日時点で入金を確認できておりません。
本件は、フリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)第4条により、定めた支払期日までにお支払いいただくものと理解しております。お手数ですが、6月16日(火)までにお振込みいただくか、お支払いの予定日をご返信ください。
行き違いでお支払い済みの場合は、ご容赦ください。
法律の名前を出すのは、相手を脅すためではなく、相手の経理に「期日を守る義務がある取引」だと伝えるためです。1回目の文面や、電話での伝え方、督促状の書き方は請求書の未払いの催促(メールと督促状の文例)にまとめています。
3. 相談する・4. 申し出る
催促しても払われない、取引を切ると言われた、というときは、外の窓口を使います。窓口ごとに、できることが違います。
| 窓口 | してくれること | してくれないこと |
|---|---|---|
| フリーランス・トラブル110番(厚生労働省の委託で第二東京弁護士会が運営) | 弁護士への無料相談。双方の話を聞いて解決案を示す和解あっせん(無料)。行政への申出のしかたの助言 | 代理人として相手と交渉すること。申出の代行 |
| 公正取引委員会・中小企業庁(申出の窓口) | 違反の事実を調べ、認めれば指導や勧告をする | 話し合いの仲立ちや和解。調査の進み具合の回答 |
| 厚生労働省(都道府県労働局) | ハラスメント対策・契約の中途解除の予告など、働く環境の決まりの申出を受ける | 報酬の支払期日の申出(公取委・中小企業庁の担当) |
| 弁護士(個別に依頼) | 代理人としての交渉、内容証明、裁判所の手続き | 無料ではないことが多い |
110番の電話は0120-532-110で、受付は9時30分から16時30分(土日祝日を除く)です。メールの相談はフォームからいつでも送れます。※2
申出は、厚生労働省のサイトにまとめられたオンラインのフォームからできます。郵送なら、申出書に書いて地域の公正取引委員会の事務所に送ります。報酬の支払いは公正取引委員会・中小企業庁の担当で、郵送で担当を間違えると申出書が戻されます。※3
申出書や相談のときに伝えることは、おおむね次のとおりです。先にメモにしておくと、話が早く進みます。
- 発注者の名前・所在地と、従業員がいるとわかる事情(担当者のほかに社員がいる、など)
- 仕事の内容と、頼まれた日・受け取ってもらった日
- 示された支払期日と報酬の額(発注書やメールの写し)
- 実際の入金の有無と、催促した日・相手の返事
申出を受けた役所は、必要な調査をし、事実と認めれば措置をとらなければなりません。公正取引委員会は、期日までに払わない発注者に「速やかに報酬を支払うべきこと」を勧告でき、従わなければ命令を出せます。命令に違反すると50万円以下の罰金です。※4
申し出たことを理由に、取引の量を減らしたり、取引をやめたりすることは禁止されています。この禁止は、従業員のいない発注者にもかかります。※5
行政が動いても、お金が戻らないとき
役所の調査は、違反を正させるためのものです。あなたの代わりにお金を取り立てる手続きではありません。払われないまま時間が過ぎるときは、内容証明郵便や裁判所の支払督促などを使って回収します。段取りの全体は売掛金の回収の進め方で説明しています。
この章の根拠(5件)
- フリーランス法3条1項
- フリーランス・トラブル110番
- 公正取引委員会「フリーランス法の違反申出について」
- フリーランス法6条2項・8条2項・9条1項・24条
- フリーランス法6条3項
数字で確かめる:納品日ごとの60日目と、遅れた日数
同じ「月末締め翌月末払い」でも、納品日によって受け取った日から払われるまでの日数は変わります。2026年の日付で3つの例を見ます。
| 受け取った日 | 60日目 | 月末締め翌月末払いの支払日 | 受け取った日から |
|---|---|---|---|
| 4月10日 | 6月8日 | 5月31日 | 52日目 |
| 4月30日 | 6月28日 | 5月31日 | 32日目 |
| 5月25日 | 7月23日 | 6月30日 | 37日目 |
どれも60日目より前に払われるので、この条件なら問題ありません。一方、4月10日に納品して検収が5月15日、検収月末締め翌月末払いだと、支払日は6月30日で82日目です。60日目の6月8日を22日過ぎます。
- 4月30日納品・月末締め翌月末払い5月31日=32日目
- 5月25日納品・月末締め翌月末払い6月30日=37日目
- 4月10日納品・月末締め翌月末払い5月31日=52日目
- 4月10日納品・検収(5月15日)の翌月末払い6月30日=82日目(60日を超える)
受け取った日30日60日90日
遅れたら、いくら上乗せを求められるか
フリーランス法には、遅れた日数に応じた利息の決まりがありません。取適法には年14.6%の遅延利息の決まりがありますが、フリーランス法の条文にはこれに当たるものがありません。※1
そのため、契約に遅延損害金の定めがなければ、民法の法定利率で計算します。法定利率は年3%で、2026年4月1日から2029年3月31日までも3%のままです。※2
| 報酬 | 遅れた日数 | 年3%の遅延損害金 |
|---|---|---|
| 30万円 | 45日 | 1,109円 |
| 30万円 | 90日 | 2,219円 |
計算は「30万円×3%×45日÷365日」です。金額は小さく、利息を取るために争う意味はあまりありません。遅れへの対策の中心は、利息ではなく、期日を守らせることと、次の契約の条件を正すことです。契約書に遅延損害金の率を書いておけば、その率で求められます。
この章の根拠(2件)
- フリーランス法(e-Gov法令検索)/取適法6条
- 民法404条・419条1項/法務省「令和8年4月1日以降の法定利率について」
支払期日のほかに確かめる発注者の義務と禁止行為
取引条件の明示
発注者は、仕事を頼んだら直ちに、仕事の内容・報酬の額・支払期日などを書面かメールなどで示さなければなりません。この義務は、従業員のいない発注者にもかかります。メールで示された場合でも、あなたが書面を求めれば、原則として渡さなければなりません。※1
示された条件に支払期日が書いていない、または「納品後、請求書到着から60日以内」のように日が決まらない書き方なら、その時点で確認を求めます。後で期日を争うより、最初に日付を確かめる方がずっと楽です。
1か月以上の仕事での7つの禁止
1か月以上続く業務委託(更新で1か月以上になるものを含む)では、発注者に次の7つの行為が禁止されています。※2
- 受領拒否:あなたに落ち度がないのに、成果物を受け取らない
- 報酬の減額:あなたに落ち度がないのに、決めた報酬を減らす
- 返品:受け取った後に、落ち度がないのに引き取らせる
- 買いたたき:相場より著しく低い報酬を不当に決める
- 購入・利用の強制:正当な理由なく、指定の物やサービスを買わせる
- 不当な経済上の利益の提供:お金や無償の作業を出させる
- 不当な内容の変更・やり直し:落ち度がないのに費用を負担せずに変えさせる
「振込が遅れたので今回は5%引きで」「やり直したので報酬は据え置き」といった話は、減額や不当なやり直しに当たらないか確かめます。6か月以上続く仕事では、契約を途中で解除したり更新しなかったりするとき、少なくとも30日前の予告も必要です。※3
実際にどれだけ違反が見つかっているか
公正取引委員会の令和7年度(2025年度)の運用状況では、新しく調べ始めた事件が1,626件、指導が1,542件、勧告が10件でした。見つかった違反の延べ2,727件のうち、期日までに報酬を払わない違反が1,135件(41.6%)で最も多く、取引条件を示さない違反の1,126件(41.3%)が続きます。発注者から受けるフリーランスへ戻されたお金は総額1,734万円でした。※4
支払いの遅れは、法律が施行されてからも最も多い違反です。「言っても変わらない」とあきらめず、決まりを根拠に話してよい問題だといえます。
取適法とどちらが使われるか
発注者の規模によっては、取適法の対象にもなる取引があります。両方の法律に違反する行為には、原則としてフリーランス法が優先して使われます。※5遅延利息のように取適法にしかない決まりもあるので、相談するときは取引の中身を伝えて確かめます。
この章の根拠(5件)
- フリーランス法3条1項・2項
- フリーランス法5条1項・2項/公正取引委員会「フリーランス法特設サイト(2025年)」
- フリーランス法16条1項
- 公正取引委員会「令和7年度におけるフリーランス法の運用状況等」
- 公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」
期日まで待てないとき:入金を早める方法と、使わない方がよい場合
支払期日が法律の範囲内でも、カード代や外注費の支払いが先に来ることはあります。その場合は、次の順で考えます。
- 発注者に早めの支払いを相談する:費用がかからない方法です。「今回だけ月の中ごろに払ってもらえないか」と、理由と日付を添えて頼みます。
- 次の契約で条件を変える:着手金・中間金を入れる、締め日を月末にそろえるなど。長い仕事ほど効きます。
- 請求書を買い取ってもらう:期日前の請求書を売り、手数料を引いた額を先に受け取ります。
3つめの請求書の買取(ファクタリング)は、借入れではなく、報酬を受け取る権利を売る取引です。図鑑に載せている197サービス(2026年10月16日時点)のうち、個人事業主も対象と明記しているのは117サービスです。少額の請求書を扱うかどうかなど、個人で使うときの見方は個人でもファクタリングは使えるかで、会社の選び方は個人事業主・フリーランス向けのファクタリングで説明しています。
費用は年率に直すと大きい
たとえば30万円の請求書を、期日の40日前に手数料10%で売ると、手数料は3万円、手取りは27万円です。実質年率(手数料額÷手取り額÷日数×365)に直すと、手数料10%・40日で約101%になります。手取りと実質年率のシミュレーターで、自分の請求書の額と日数を入れて確かめてから決めます。
使わない方がよい場合
- 支払条件そのものが違反のとき:翌々月末払いのような条件を前提に、毎回手数料を払って早めるのは損です。先に条件の見直しを求めます。
- 毎月使う前提になるとき:手数料の分だけ、毎月の報酬が目減りし続けます。
- 雇用の給料を売る話のとき:実態が雇用の給料を前払いで買い取る「給与ファクタリング」は、貸金業に当たるとされています。給与ファクタリングが違法とされる理由を確かめてください。
よくある失敗と注意点
- 受け取った日を残していない:60日の起点があいまいになり、違反かどうかを示せません。納品は日時が残る方法で行います。
- 口約束で期日を決める:「いつもの感じで」で始めると、期日がないまま遅れても指摘しにくくなります。示された条件に日付があるかを最初に確かめます。
- 検収の日から数えてしまう:発注者の検収が長いと、気づかないうちに60日を超えます。数え始めは納品の日です。
- 取適法とフリーランス法を混ぜて考える:年14.6%の遅延利息は取適法の決まりで、フリーランス法にはありません。どちらが使われるかは取引ごとに確かめます。
- 再委託だと言われて30日を受け入れる:3つの事項が示されていなければ、原則の60日です。
- 催促をためらって時間がたつ:報酬を請求できる権利も、期日から5年で時効にかかります。※1やり取りが空くほど記録も薄れるので、期日の翌日から動きます。
フリーランス法は、受けるフリーランスが「期日を守ってほしい」と言うための根拠になります。まず自分の取引が対象かを確かめ、受け取った日と期日を記録し、遅れたら日付を決めて催促する。それでも直らなければ、無料の相談と申出の窓口を使ってください。
この章の根拠(1件)
- 民法166条1項1号
出典(10件)公的機関の資料・法令。2026.11.07に確認
- 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス法)(第2条〜第9条・第16条・第24条)(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- フリーランス法に関するQ&A(公正取引委員会)www.jftc.go.jp
- 公正取引委員会フリーランス法特設サイト(2025年)www.jftc.go.jp
- フリーランス法の違反申出について(公正取引委員会)www.jftc.go.jp
- 令和7年度におけるフリーランス法の運用状況等(公正取引委員会、2026年6月10日)www.jftc.go.jp
- フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン(公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省、令和8年1月1日改定)www.mhlw.go.jp
- フリーランス・トラブル110番(厚生労働省委託・第二東京弁護士会)freelance110.mhlw.go.jp
- 令和8年4月1日以降の法定利率について(法務省)www.moj.go.jp
- 民法(第166条・第404条・第419条)(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(取適法)(第6条)(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
FAQ
よくある質問
フリーランス法の60日はいつから数えますか?
発注者が成果物を受け取った日(役務は提供を受けた日)を1日目として数えます。請求書を出した日や検収が終わった日からではありません。メールで納品したものは、発注者のコンピュータに記録された日が受け取った日です。検収に時間がかかっても、60日は納品の日から進みます。
月末締め翌月末払いはフリーランス法違反ですか?
違反にはなりません。31日の月が続くと60日を1〜2日超えることがありますが、公正取引委員会は「受け取った日から2か月以内」として扱い、問題としないとしています。この扱いで認められるのは月末締め翌月末払いの形までで、翌々月に払う条件は2か月にも収まりません。
翌々月末払いの契約はどうなりますか?
月末締め翌々月末払いは、月末に納品した分でも62日目の支払いになり、60日を超えます。60日を超えて期日を決めた場合は、受け取った日から60日を経過する日が支払期日とみなされます。発注者が従業員を使う事業者なら、その日までの支払いと条件の見直しを求められます。
フリーランス法で報酬が遅れたら遅延利息はもらえますか?
フリーランス法には、取適法の年14.6%のような遅延利息の決まりがありません。契約に定めがなければ、民法の法定利率の年3%で遅延損害金を求めます。30万円が45日遅れた場合で1,109円です。契約書に遅延損害金の率を書いておけば、その率で求められます。
報酬の支払いが遅いときはどこに相談すればよいですか?
まずフリーランス・トラブル110番(0120-532-110、平日9時30分〜16時30分)で、弁護士に無料で相談できます。違反を正してほしいときは、公正取引委員会か中小企業庁に申し出ます。申し出たことを理由に取引を減らすことは禁止されています。
フリーランス法と取適法はどちらが適用されますか?
従業員を使わないフリーランスへの業務委託ならフリーランス法の対象です。発注者の規模によっては取適法の対象にもなりますが、両方に違反する行為には、原則としてフリーランス法が優先して使われます。遅延利息のように取適法にしかない決まりもあります。
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