会計更新 2026.10.17
売掛金の仕訳を15場面で。入金・振込手数料・値引き・決算・貸倒れの例
売掛金の仕訳は、売った日に借方へ売掛金を立て、入金・値引き・相殺・貸倒れのたびに貸方で消します。振込手数料を引かれた・決算をまたぐ・回収できないなど15の場面を、同じ数字の仕訳例と消費税の扱いで示します。
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フファクタリング図鑑編集部(執筆)・公開 2026.10.17

この記事は、請求書を出して入金を待つ取引をしている中小企業の経営者・個人事業主・経理の担当者に向けて、売掛金の仕訳を場面ごとに並べたものです。売ったときと入金されたときの基本から、振込手数料を引かれた・値引きした・相殺した・決算をまたいだ・回収できなかった、といった迷いやすい場面まで、同じ前提の数字で書きます。
この記事を6枚で
1 / 6結論:売掛金は「売った日に左へ立て、入金・値引き・相殺・貸倒れで右から消す」
売掛金の仕訳って、結局どう考えればいいの?
売った日に借方(左)へ売掛金を立て、入金・値引き・相殺・貸倒れのたびに貸方(右)で消します。迷うのはほとんどが「入金額が請求額と合わない」ときで、差額には理由ごとの科目があります。
売掛金(うりかけきん)の仕訳は、形にすると単純です。商品を渡した日、仕事を終えた日に、借方(左側)に売掛金、貸方(右側)に売上を書きます。そのあと、入金や値引き、相殺、貸倒れなど、売掛金が減る理由が起きるたびに、貸方に売掛金を書いて消していきます。
迷うのは、ほとんどが「入金額が請求額と合わない」ときです。差額にはたいてい理由があり、理由ごとに使う科目が決まっています。理由を確かめずに差額を雑損失などで埋めると、残高が請求書と合わなくなり、消費税の計算もずれます。
下の表は、この記事で扱う15の場面の一覧です。金額を入れた仕訳は、それぞれの章で示します。
| No. | 場面 | 借方(左) | 貸方(右) |
|---|---|---|---|
| 1 | 商品を掛けで売った | 売掛金 | 売上 |
| 2 | 全額が振り込まれた | 普通預金 | 売掛金 |
| 3 | 振込手数料を引かれて入金 | 普通預金・売上値引(または支払手数料) | 売掛金 |
| 4 | 一部だけ入金 | 普通預金(入金した額だけ) | 売掛金 |
| 5 | 請求より多く入金 | 普通預金 | 売掛金・仮受金 |
| 6 | 値引きした | 売上値引 | 売掛金 |
| 7 | 返品を受けた | 売上(売上戻り) | 売掛金 |
| 8 | 早く払ってもらい割り引いた | 普通預金・売上割引 | 売掛金 |
| 9 | 買掛金と相殺した | 買掛金 | 売掛金 |
| 10 | 前受金を代金に充てた | 前受金・売掛金 | 売上 |
| 11 | 手形・でんさいで受け取った | 受取手形・電子記録債権 | 売掛金 |
| 12 | 決算日に未請求の売上を計上 | 売掛金 | 売上 |
| 13 | 回収できず貸倒れにした | 貸倒損失 | 売掛金 |
| 14 | 貸倒れにした分が戻った | 普通預金 | 償却債権取立益 |
| 15 | 決算で回収の見込みを見積もった | 貸倒引当金繰入 | 貸倒引当金 |
表の左右を見ると、売掛金が左に出るのは1・10・12の「増える」場面だけで、ほかはすべて右に出ています。売掛金は、増える理由より減る理由のほうがずっと多い科目です。
この先は、計上する日と基本の2行(2章)、入金の仕訳(3章)、差額があるときの科目の選び方(4章)、相殺・前受金・手形(5章)、決算をまたぐとき(6章)、貸倒れ(7章)、1か月の台帳で確かめる計算(8章)、売掛金を早くお金にするとき(9章)、よくある間違い(10章)の順に進みます。
- 納品・完了の日立てる売掛金/売上。請求書を出す日ではなく、渡した日・終えた日
- 入金の日消す普通預金/売掛金。差額があれば理由ごとの科目で埋める
- 相殺・手形の日形を変える買掛金や受取手形・電子記録債権と入れ替える
- 決算日残高をそろえる未請求の売上を足し、回収の見込みを引当金で見積もる
- 回収できないと決まった日落とす貸倒損失/売掛金。消費税も調整する
売掛金の勘定科目と基本の仕訳:いつ、いくらで立てるか
売掛金は、請求書を出した日に立てればいいの?
いいえ、商品を渡した日・仕事を終えた日です。出荷・着荷・検収などから基準を選び、毎年同じ基準を続けます。売掛金の額は、税込経理でも税抜経理でも相手に請求する税込みの額にします。
売掛金という言葉の意味や、未収入金・前受金との違いは売掛金とはで説明しています。ここでは仕訳に必要なことだけを押さえます。売掛金は、本業の商品やサービスを売って、まだ受け取っていない代金に使う勘定科目です。本業以外、たとえば使わなくなった車の売却代金なら「未収入金」にします。
計上する日は「渡した日」。請求書の日ではない
売掛金を立てる日は、請求書を出した日や入金の日ではありません。商品を渡した日、サービスを終えた日です。法人税の決まりでは、商品の売上は引渡しの日の事業年度に入れます。引渡しの日は、出荷した日・相手に着いた日・相手が検収した日など、取引に合う日の中から会社が選び、毎年同じ基準を続けます。※1
出荷した日を基準にしている会社が、決算の月だけ検収の日にずらすことはできません。どの基準にするかを最初に決め、社内のルールとして書いておきます。
例:本体30万円・消費税3万円の商品を掛けで売った
以下、この記事では「卸売の会社が、4月10日に本体30万円(消費税10%込みで33万円)の商品を掛けで売り、5月31日に入金される」取引を例にします。
| 経理のしかた | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 税込経理 | 売掛金 330,000 | 売上 330,000 |
| 税抜経理 | 売掛金 330,000 | 売上 300,000 仮受消費税 30,000 |
税込経理(消費税を含めた額で記録する方法)でも、税抜経理(消費税を分けて記録する方法)でも、売掛金は相手に請求する税込みの額にします。違うのは売上の側だけです。どちらを使うかは会社ごとに決め、途中で混ぜません。
取引先ごとに補助科目を付ける
会計ソフトでは、売掛金に取引先の名前を「補助科目」として付けます。こうすると、取引先ごとの残高がすぐに出せ、入金があったときにどの請求を消すかがわかります。補助科目が無いと、決算で「売掛金の合計は合っているが、誰の分かわからない」という状態になります。
個人事業主も同じ科目を使います。青色申告決算書の貸借対照表には「売掛金」の欄があり、年末の残高を書きます。現金で受け取る売上だけの人は売掛金を使いませんが、請求書で月末にまとめて払ってもらう取引があるなら、売掛金を使います。
この章の根拠(1件)
- 法人税基本通達2-1-2
入金されたときの仕訳:全額・一部・多すぎた・個人の口座に入った
入金があったら、どう書けばいいの?
普通預金を左、売掛金を右に書いて消し込みます。一部だけなら入った額だけ消し、多すぎた分は仮受金で受けます。入金を「売上」で受けると、売上が二重になるので注意です。
入金の仕訳は、普通預金を左、売掛金を右に書いて、立てた売掛金を消すだけです。この「どの売掛金を消したか」を合わせる作業を「消し込み」と呼びます。
| 場面 | 借方(左) | 貸方(右) |
|---|---|---|
| 5月31日:全額が振り込まれた | 普通預金 330,000 | 売掛金 330,000 |
| 5月31日:200,000円だけ振り込まれた | 普通預金 200,000 | 売掛金 200,000 |
| 5月31日:341,000円振り込まれた(11,000円多い) | 普通預金 341,000 | 売掛金 330,000 仮受金 11,000 |
| 事業用でない個人の口座に振り込まれた(個人事業主) | 事業主貸 330,000 | 売掛金 330,000 |
一部だけ入金されたときは、入った額だけ売掛金を消します。残りの130,000円は売掛金のまま残り、次の入金を待ちます。残りがいつ払われるのかを、その場で相手に確かめておきます。
請求より多く入ったときは、差額を「仮受金」で受けておき、理由がわかったら科目を移します。次回の請求に充てると決まったなら前受金に、返すなら返金したときに仮受金を消します。相手の二重払いであることが多いので、黙って次回分に回さず、連絡してから処理します。
個人事業主で、事業用でない個人の口座に振り込まれたときは、預金の代わりに「事業主貸」を使います。事業のお金が個人の財布に移った、という記録です。
消し込みは、この順で進める
- 通帳や入金明細で、振込人の名前と金額を確かめます。名前が会社名と違う(親会社や経理代行の名前など)こともあります。
- その取引先の売掛金のうち、どの請求書の分かを決めます。複数の請求をまとめて払われたら、古い請求から順に当てるのが基本です。
- 金額が合えば消し込みます。合わなければ、次の章の手順で差額の理由を確かめてから処理します。
- 月末に、取引先ごとの残高が、自社の請求書の控えと合っているかを見ます。
入金の仕訳で多い間違いは、入金を「売上」で受けてしまうことです。こうすると売掛金が消えずに残り、売上は二重に計上されます。売上は納品のときに一度だけ、入金は売掛金を消す、と分けて覚えます。
入金額が請求額と違うとき:振込手数料・値引き・返品・割引の仕訳
振込手数料を引かれて入金されたら、どうするの?
差額の理由を確かめてから科目を選びます。振込手数料なら売上値引か支払手数料、値引きは売上値引、返品は売上戻り、早払いの割引は売上割引です。理由のわからない差額は相手に問い合わせます。
入金額が請求額より少ないとき、差額の理由はおおむね4つです。振込手数料を引かれた、値引きの約束があった、返品を受けた、早く払ってもらった割引です。理由がどれかで、科目と消費税の扱いが決まります。
| 場面 | 借方(左) | 貸方(右) |
|---|---|---|
| 振込手数料660円を引かれた(売上値引で処理) | 普通預金 329,340 売上値引 660 |
売掛金 330,000 |
| 品質の問題で22,000円値引きした | 売上値引 22,000 | 売掛金 22,000 |
| 33,000円分の返品を受けた | 売上 33,000(売上戻り) | 売掛金 33,000 |
| 支払日より早く払ってもらい2%割り引いた | 普通預金 323,400 売上割引 6,600 |
売掛金 330,000 |
値引き・返品・割引は、どれも売上を減らす取引です。消費税では、まとめて「売上げに係る対価の返還等」と呼ばれ、返還した課税期間の売上の消費税から差し引きます。早く払ってもらったことへの売上割引も、ここに入ります。※1
「売上値引」「売上戻り」は、売上の中の内訳として使う科目です。売上から直接引いて処理してもかまいませんが、値引きや返品がどれだけあったかが後から見えなくなります。品質の問題が続いていないかを見るためにも、科目を分けておくと便利です。
- 差額は、振込のときの手数料の分ですか?はい → 売上値引(消費税は売上の返還)か支払手数料。どちらかに決めて毎回同じにいいえ → 次へ
- 品質・数量の問題で、代金を下げる約束がありましたか?はい → 売上値引。品物が戻ってきたなら売上戻り(返品)いいえ → 次へ
- 支払日より早く払ってもらった見返りですか?はい → 売上割引いいえ → 次へ
- 相手に払うお金(買掛金など)と差し引かれましたか?はい → 買掛金/売掛金で相殺。合意の書面を残すいいえ → 理由不明。売掛金を残したまま相手に問い合わせる
振込手数料は「売上値引」か「支払手数料」か
取引先が振込手数料を差し引いて払うことは、珍しくありません。この660円の処理には2つのやり方があります。
1つは、売上を660円値引きしたとみなして「売上値引」にするやり方です。インボイス制度では、値引きをしたときは「返還インボイス」を相手に渡すのが原則ですが、税込1万円未満の値引きは渡さなくてよいとされています。国税庁は、売り手が負担する振込手数料を売上値引きとして処理する場合、通常は1万円未満なので返還インボイスは要らない、と例に挙げています。※2
もう1つは「支払手数料」にするやり方です。この場合、消費税の上で仕入として差し引くには、金融機関や取引先から受け取るインボイスが要ります。取引先が払った振込手数料について、自社あてのインボイスが手元に来ることはまずありません。
売上値引として処理売上の返還として扱う
- 仕訳
- 売上値引 660/売掛金 660
- 消費税
- 売上の消費税から引ける
- 必要な書類
- 1万円未満なら返還インボイスは不要
- 帳簿
- 売上の返還とわかるように記録
支払手数料として処理費用として扱う
- 仕訳
- 支払手数料 660/売掛金 660
- 消費税
- 仕入の消費税として引く
- 必要な書類
- 金融機関や取引先のインボイスが要る
- 帳簿
- 売上の返還として扱うなら別の科目コードで区別
帳簿の上では支払手数料の科目を使い、消費税だけ売上の返還として扱うこともできます。その場合は、ふつうの支払手数料と区別できるよう、科目のコードを別に用意するなどして帳簿に記録します。※3どのやり方でも、決めたら毎回同じ処理を続けます。
そもそも引かれてよいのか
振込手数料をどちらが負担するかは、契約や取引の慣習で決まります。契約で「振込手数料は買い手の負担」と決めているのに引かれたなら、仕訳の前に相手へ伝えます。
また、自社が取引先から製造や修理、情報の作成、サービスの提供などを委託されている中小の受け手で、取適法(中小受託取引適正化法)の対象の取引なら、合意があっても振込手数料を代金から引くことは違反になります。※4こうした取引で引かれていた場合は、仕訳で処理して終わりにせず、相手に払ってもらうよう求めることができます。
この章の根拠(4件)
- 消費税法38条、国税庁タックスアンサーNo.6359
- 消費税法57条の4第3項、国税庁「少額な返還インボイスの交付義務免除の概要」
- 国税庁「少額な返還インボイスの交付義務免除の概要」
- 公正取引委員会「よくある質問コーナー(取適法)」Q99
相殺・前受金・手形で受け取ったときの仕訳
お金で受け取らなかったときは、どう書くの?
買掛金と相殺したら買掛金/売掛金で、お金は動きません。先に受け取った手付金は売上にせず前受金にし、納品のときに振り替えます。手形やでんさいなら受取手形・電子記録債権に移します。
売掛金は、預金で受け取る以外の形で消えることもあります。相手への支払いと差し引いた、前もって受け取っていたお金を充てた、手形やでんさいで受け取った、の3つです。
| 場面 | 借方(左) | 貸方(右) |
|---|---|---|
| 相手への買掛金110,000円と相殺した | 買掛金 110,000 | 売掛金 110,000 |
| 残りが振り込まれた | 普通預金 220,000 | 売掛金 220,000 |
| 受注時に100,000円を先に受け取った | 普通預金 100,000 | 前受金 100,000 |
| 納品した(前受金を充て、残りを掛けに) | 前受金 100,000 売掛金 230,000 |
売上 330,000 |
| 約束手形で受け取った | 受取手形 330,000 | 売掛金 330,000 |
| でんさい(電子記録債権)で受け取った | 電子記録債権 330,000 | 売掛金 330,000 |
相殺:買掛金と売掛金を同時に消す
同じ相手に売掛金と買掛金の両方があるとき、差し引いて残りだけをやりとりするのが相殺です。仕訳では、買掛金を左、売掛金を右に同じ額だけ書きます。お金は動かないので、預金の行は出てきません。
相殺は、互いに同じ種類の債務(ここではお金を払う義務)を持ち、どちらも支払日が来ているときに、相手への意思表示でできます。※1ただ実務では、後から「相殺した覚えはない」と言われないよう、相殺する額と日付を書いた合意書か通知書を残します。仕訳の日付は、その書面の日付に合わせます。払う側の買掛金の仕訳は買掛金とはに載せています。
前受金:先に受け取った分は売上ではない
受注したときに手付金や着手金を受け取ったら、その時点では売上にせず「前受金」にします。まだ品物を渡していないからです。納品したときに、前受金を消して売上に振り替え、足りない分を売掛金にします。前受金を受け取った日に売上にしてしまうと、決算をまたぐ取引で売上の年がずれます。
手形・でんさい:売掛金が別の科目に変わる
代金を約束手形で受け取ったら「受取手形」、でんさいで受け取ったら「電子記録債権」に振り替えます。売掛金は消えますが、お金はまだ入っていません。期日に入金されたときに、受取手形や電子記録債権を消します。手形やでんさいの仕組みと、期日の前にお金にする方法はでんさいとはで説明しています。
この章の根拠(1件)
- 民法505条1項・506条1項
決算をまたぐときの仕訳:締め日のあとの売上と、貸倒引当金
決算のときに、漏れやすいところはある?
締め日のあとの納品です。20日締めなら、3月21日〜31日の納品は請求前でも3月31日に計上します。翌月の請求書にはこの分が入っているので、売上にするのは4月分だけにします。
売掛金の仕訳でいちばん漏れやすいのが、決算日の前後です。原因は、請求書の締め日と決算日がずれていることにあります。
締め日のあとの納品を、決算日までに計上する
3月決算の会社が、20日締めの取引先に毎日納品しているとします。3月20日締めの請求書には、3月21日〜31日の納品が入りません。この期間の納品が88万円あったなら、請求書はまだ出していなくても、3月31日の日付で売掛金と売上を立てます。
| 場面 | 借方(左) | 貸方(右) |
|---|---|---|
| 3月31日:3月21日〜31日の納品880,000円を計上 | 売掛金 880,000 | 売上 880,000 |
| 4月20日:3月21日〜4月20日分の請求書を出した | 売掛金(4月1日〜20日の分だけ) | 売上(同じ額) |
| 決算:期末の売掛金2,000万円に1,000分の10で引当金を設定 | 貸倒引当金繰入 200,000 | 貸倒引当金 200,000 |
| 翌期の決算:前期の引当金を戻し、計算し直す | 貸倒引当金 200,000 | 貸倒引当金戻入 200,000 |
注意するのは、翌期の4月20日に出す請求書です。この請求書には3月21日〜4月20日の分が入っていますが、3月分の88万円はすでに計上済みです。請求書の総額をそのまま売上にすると、88万円が二重になります。売上にするのは4月1日〜20日の分だけです。
計上を漏らすと、その期の利益が小さく見え、翌期に多く見えます。税務調査でもよく見られる箇所です。決算月だけは、締め日のあとの納品書を集めて足す作業を、毎年の決まりにします。
決算日の残高を、取引先の数字と合わせる
決算日の売掛金の残高は、取引先ごとに「いくら払ってもらう予定か」と一致しているはずです。金額の大きい取引先には残高の確認を頼むか、相手から届く支払通知と突き合わせます。何年も動いていない残高があれば、回収できるかを確かめます。
貸倒引当金:回収できない分を前もって見積もる
決算では、期末の売掛金のうち回収できなくなりそうな分を見積もり、「貸倒引当金」として費用にすることがあります。法人税で引当金を費用にできるのは、資本金1億円以下の中小法人などに限られます。中小法人は、過去の実績の割合の代わりに、業種ごとの「法定繰入率」を使えます。卸売業・小売業は1,000分の10、製造業は1,000分の8、その他の事業は1,000分の6です。※1
期末の売掛金が2,000万円の卸売業なら、1,000分の10で20万円です(細かな計算のしかたは税理士に確かめます)。翌期の決算では、前期の引当金を戻し入れて計算し直します。
青色申告の個人事業主は、年末の売掛金などの貸金の5.5%以下を貸倒引当金にして必要経費にできます(金融業は3.3%)。※2年末の売掛金が500万円なら、275,000円までです。仕訳は法人と同じく、貸倒引当金繰入/貸倒引当金です。
この章の根拠(2件)
- 法人税法52条、国税庁タックスアンサーNo.5501
- 国税庁タックスアンサーNo.2070
回収できない売掛金の仕訳:貸倒損失と消費税の調整
取引先が倒産して払ってもらえないときは?
貸倒損失/売掛金で落とします。消費税も戻せて、税込55万円なら50,000円を貸倒れの年の消費税から引けます。税込経理では仕訳に出ないので、申告で忘れないようにしましょう。
取引先が倒産した、何度催促しても払われないとき、回収できない売掛金は「貸倒損失」として落とします。仕訳は、貸倒損失を左、売掛金を右に書きます。
| 場面 | 借方(左) | 貸方(右) |
|---|---|---|
| 税込経理:取引先が破産し、全額回収できないことが明らかになった | 貸倒損失 550,000 | 売掛金 550,000 |
| 税抜経理:同じ場面 | 貸倒損失 500,000 仮受消費税 50,000 |
売掛金 550,000 |
| 取引を止めて1年以上たち、1円を残して落とした | 貸倒損失 549,999 | 売掛金 549,999 |
| 翌期:落とした売掛金のうち110,000円が戻った(税込経理) | 普通預金 110,000 | 償却債権取立益 110,000 |
いつ落とせるか(税務の条件は短く)
法人税で貸倒損失を費用にできるのは、主に3つの場合です。法的な手続きで債権が切り捨てられたとき、相手の資産や支払能力から全額を回収できないことが明らかになったとき、続けて取引していた相手の支払能力が悪くなって取引を止め、1年以上たったときです。3つ目では、1円などの「備忘価額」を残して落とします。表の3行目で549,999円になっているのはこのためです。※1
担保がある売掛金は、担保を処分してからでないと全額回収できないとは言えません。どの条件に当たるかの判断は、顧問の税理士と相談します。回収の手続きの段取りは支払督促とはなどで扱っています。
消費税も戻す:税込55万円なら50,000円
売ったときに納めた消費税は、売掛金が貸倒れになると、貸倒れの年の消費税から差し引けます。差し引ける国の消費税は、税込の貸倒れの額の110分の7.8です。税込55万円なら39,000円で、地方消費税と合わせると50,000円になります。※2
税抜経理なら、仕訳で仮受消費税を50,000円減らします。税込経理なら仕訳は貸倒損失の1行のままで、消費税の申告書で差し引きます。どちらの場合も、債権が切り捨てられたことを示す書類など、貸倒れの事実がわかる書類を保存しておくことが条件です。
あとで戻ってきたとき
落とした売掛金が、破産の配当などで後から一部戻ることがあります。このときは売掛金を復活させず、「償却債権取立益」という収益で受けます。消費税も、戻った税込の額の110分の7.8を、戻った年の消費税に足します。110,000円戻ったなら7,800円です。※3
前の決算で貸倒引当金を積んでいた場合は、貸倒れのときにまず引当金を取り崩し、足りない分を貸倒損失にする書き方もあります。引当金の戻し方は会社の方法に合わせます。
この章の根拠(3件)
- 法人税基本通達9-6-1〜9-6-3、国税庁タックスアンサーNo.5320
- 消費税法39条、国税庁タックスアンサーNo.6367
- 国税庁タックスアンサーNo.6631
数字で確かめる:取引先1社の1か月の台帳と、振込手数料の消費税
仕訳が合っているか、どう確かめればいい?
取引先ごとに「前月の残高+売上−入金−値引き−相殺」を計算します。振込手数料は1回660円でも、20社×12か月で1年158,400円。消費税14,400円が含まれています。
ここまでの仕訳が正しく入っていれば、取引先ごとの残高は「前月の残高+売上−入金−値引き−相殺」で計算できます。5月の1か月を、取引先1社の台帳で確かめます。
| 項目 | 金額(円) | 中身 |
|---|---|---|
| 前月の残高 | 1,100,000 | 4月分の請求(5月末払い) |
| 今月の売上(+) | 1,650,000 | 5月中の納品 |
| 入金(−) | 1,100,000 | 普通預金に1,099,340円+振込手数料660円 |
| 値引き(−) | 22,000 | 品質の問題で合意した分 |
| 相殺(−) | 110,000 | 相手への買掛金と差し引き |
| 今月の残高 | 1,518,000 | 6月末に入金される予定の額 |
1,100,000円+1,650,000円−1,100,000円−22,000円−110,000円=1,518,000円です。この1,518,000円が、6月末に入金される予定の額と一致していれば、5月の仕訳は合っています。
入金の行に注目します。通帳に入ったのは1,099,340円ですが、消した売掛金は1,100,000円です。差の660円を振込手数料として仕訳していなければ、残高は660円ずれたままになり、翌月以降もずっと合いません。小さな額ほど放っておかれ、1年後に理由がわからなくなります。
振込手数料を1年分まとめると
660円は小さく見えますが、取引先が20社あり、毎月引かれると、1年で660円×240回=158,400円です。この額には消費税が14,400円含まれています(10%の取引の場合)。
売上値引として処理し、売上の返還として扱えば、この14,400円を売上の消費税から差し引けます。支払手数料にしたうえで、インボイスが手元に無いまま仕入として差し引くと、税務調査で認められないおそれがあります。差し引かずにおけば、そのまま消費税を多く払うことになります。簡易課税や2割特例を使っている会社は計算のしかたが違うので、ここでの差額は本則課税の場合です。
取引先との間で「振込手数料は買い手の負担」と決め直せれば、この158,400円そのものがなくなります。契約を見直す前に、まず台帳で年間にいくら引かれているかを数えると、交渉の材料になります。
売掛金を早くお金にしたとき:仕訳の違いと、使わない方がよい場合
売掛金を早くお金にしたら、仕訳は変わる?
変わります。ファクタリングなら売掛金を消し、差額を売上債権売却損などにします。帳簿の残高が取引先と合っていないまま売ると、存在しない額を売ることになりかねません。
入金日まで待てず、売掛金を支払日の前にお金にする方法もあります。方法によって仕訳が変わります。
- 相手に早く払ってもらう:4章の売上割引の仕訳です。割り引いた額は売上の返還として消費税からも引けます。
- 手形やでんさいを割り引く:受取手形や電子記録債権を消し、割り引かれた額を「手形売却損」などの費用にします。
- 売掛金をファクタリング会社に売る:売掛金を消し、受け取った額を預金に、差額を「売上債権売却損」などにします。売掛金の売却は消費税がかからない取引なので、差額に消費税はつきません。詳しい仕訳はファクタリングの仕訳と勘定科目にまとめています。
どの方法も、元になるのは「いくらの売掛金が、いつ入る予定か」という台帳の数字です。消し込みが遅れて残高が実際より多く見えている、値引きや相殺が入っていない、といった状態で売掛金を売ろうとすると、存在しない額を売ることになりかねません。売る前に、8章の計算で残高を確かめます。
ファクタリングを使わない方がよい場合
- 入金日まで待てば間に合う:手数料を払う理由がありません。資金繰り表で、足りない日と額を先に確かめます。
- 帳簿の残高が取引先と合っていない:売る額が決められず、後でもめる原因になります。
- 毎月使わないと回らない:手数料のぶん利益が減り続けます。支払条件の見直しや融資を先に考えます。
ほかの方法としては、取引先に支払日を早めてもらう(売上割引を付ける)、でんさいや手形を割り引く、銀行や日本政策金融公庫の融資を受ける、支払先に支払日を延ばしてもらう、などがあります。方法ごとの比べ方は売掛金を早く現金にする方法の比較にあります。手数料と実質年率は手取りと実質年率のシミュレーターで計算できます。
売掛金の仕訳でよくある間違いと注意点
経理でよくある間違いって何?
入金を売上で受ける、請求書の日付で売上を立てる、差額を雑損失で埋める、貸倒れの消費税を戻し忘れる、などです。月末に取引先ごとの残高を確かめる習慣で防げます。
最後に、帳簿を見直すときによく見つかる間違いをまとめます。どれも、月末に取引先ごとの残高を確かめる習慣で防げます。
- 入金を売上で受ける:売掛金が残り、売上が二重になります。入金はいつも売掛金を消します。
- 請求書の日付で売上を立てる:締め日のあとの納品が決算から漏れます。基準は渡した日・終えた日です。
- 差額を雑損失や雑費で埋める:理由が追えず、消費税の扱いも誤ります。振込手数料・値引き・相殺のどれかに分けます。
- 振込手数料の処理が月ごとに違う:売上値引か支払手数料かを決め、毎回同じにします。
- 前受金を受け取った日に売上にする:品物を渡すまでは前受金です。
- 相殺の書面を残さない:相手と残高が合わなくなります。合意書か通知書の日付で仕訳します。
- 動かない残高を何年も放っておく:実際より財産が多く見え、金融機関からの見え方も悪くなります。回収できるかを確かめ、無理なら貸倒れの条件に当たるかを税理士と相談します。
- 貸倒れの消費税を戻し忘れる:税込経理の会社は仕訳に出てこないので、申告のときに漏れがちです。
- 取引先ごとの残高が請求書と合う前月残高+売上−入金−値引−相殺=今月の残高
- 差額の理由がすべてわかっている振込手数料・値引き・相殺のどれかに分けた
- 入金を売上で受けている売掛金が消えず、売上が二重になる
- 理由のわからない差額を雑損失にしたあとで相手から請求が来ても追えない
- 締め日のあとの納品を3月に入れた決算日までに渡した分は、未請求でも売上
- 何年も動かない残高がある回収の見込みを確かめ、貸倒れか引当金を検討
売掛金の仕訳は、場面が多く見えても「増えた理由」と「減った理由」を正しく選ぶだけです。迷ったら、その取引で相手に払ってもらう額が変わったのか、お金の形が変わっただけなのかを考えると、使う科目が決まります。
出典(11件)公的機関の資料・法令。2026.10.17に確認
- 法人税基本通達 第2章第1節第1款の2 棚卸資産の販売に係る収益(2-1-2 棚卸資産の引渡しの日の判定)(国税庁)www.nta.go.jp
- No.6359 値引き、返品、割戻しなどを行った場合の税額の調整(売上げに係る対価の返還等)(国税庁)www.nta.go.jp
- 少額な返還インボイスの交付義務免除の概要(国税庁)www.nta.go.jp
- よくある質問コーナー(取適法)Q99(公正取引委員会)www.jftc.go.jp
- 民法 第505条・第506条(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- No.5501 一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の設定(国税庁)www.nta.go.jp
- No.5500 一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の対象となる金銭債権の範囲(国税庁)www.nta.go.jp
- No.2070 青色申告制度(国税庁)www.nta.go.jp
- No.5320 貸倒損失として処理できる場合(国税庁)www.nta.go.jp
- No.6367 貸倒れに係る税額の調整(国税庁)www.nta.go.jp
- No.6631 貸倒債権を回収したときの消費税額の計算(国税庁)www.nta.go.jp
FAQ
よくある質問
売掛金の仕訳は、借方と貸方のどちらに書きますか?
商品を渡した日やサービスを終えた日に、借方(左)に売掛金、貸方(右)に売上を書きます。入金されたら、借方に普通預金、貸方に売掛金を書いて消します。値引き・返品・相殺・貸倒れで減るときも、売掛金は貸方に書きます。売掛金が借方に出るのは、増えるときだけです。
売掛金が入金されたときの仕訳はどう書きますか?
全額なら「普通預金/売掛金」の1行です。一部だけなら入った額だけ売掛金を消し、残りは売掛金のまま次の入金を待ちます。請求より多く入ったときは差額を仮受金で受け、理由がわかってから前受金に移すか返金します。入金を売上で受けると、売上が二重になるので注意します。
振込手数料を引かれて入金されたときの仕訳は?
たとえば33万円の請求に329,340円が入ったら、普通預金329,340円と売上値引(または支払手数料)660円を借方に、売掛金33万円を貸方に書きます。売上値引にすると、税込1万円未満なので返還インボイスは不要です。支払手数料にして消費税を引くには、金融機関などのインボイスが要ります。
売掛金の値引きや返品はどの勘定科目で処理しますか?
品質や数量の問題で代金を下げたときは売上値引、品物が戻ってきたときは売上戻り(返品)を使い、貸方に売掛金を書いて減らします。支払日より早く払ってもらった見返りの割引は売上割引です。消費税では、いずれも売上の返還として、返還した課税期間の売上の消費税から差し引きます。
決算日をまたぐ売掛金はどう仕訳しますか?
決算日までに渡した商品は、請求書を出していなくても決算日の日付で売掛金と売上を立てます。20日締めの取引先なら、3月21日〜31日の納品が対象です。翌期に出す請求書には計上済みの分が含まれるので、売上にするのは翌期の分だけにします。ここを誤ると売上が二重になります。
回収できない売掛金は、どう仕訳しますか?
「貸倒損失/売掛金」で落とします。税込55万円の売掛金なら、国の消費税39,000円(地方消費税と合わせて50,000円)を、貸倒れの年の消費税から差し引けます。法人税で費用にできるのは、債権の切り捨てや全額回収できないことが明らかになったときなどに限られるので、税理士と相談します。
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