資金繰り更新 2026.11.05
SESの資金繰り|給料が入金より先に出る会社の資金繰り表と給料日の組み方
SESの資金繰りは、月末ではなく給料を払った直後の25日の残高で見ます。月末締め翌月末払いでは給料が代金より約36日先に出るためです。資金繰り表の作り方、増員と賞与の月の記入例、給料日の組み方、足りない月の埋め方をまとめました。
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フファクタリング図鑑編集部(執筆)・公開 2026.11.06

SES(エンジニアの技術力を月単位で提供する契約)や受託開発の会社は、毎月の給料を、その月の働き分の代金が入るより先に払います。黒字でも、人を増やした月や賞与の月に口座が足りなくなるのはこのためです。この記事では、給料日・納付日・入金日を1枚の資金繰り表に並べる作り方と、足りない日を前もって見つける見方、給料日の決め方を、エンジニア10人の会社の記入例で説明します。
この記事を7枚で
1 / 7結論:SESの資金繰りは「月末」ではなく「25日の残高」で見る
うちは黒字なのに、給料日の前になると口座が心細いんだけど?
SESは給料を25日に払い、その月の代金は翌月末に入るからです。月末の残高ではなく25日の残高を見ます。記入例では、月末は241万円以上あるのに、25日は4か月足りませんでした。
月末締め翌月末払いの取引先が多いSESでは、お金の出入りが月の中で偏ります。給料の手取りは25日に出ていき、代金はその数日後の月末に入ります。月末の残高だけを並べた資金繰り表では、いちばん苦しい25日の時点が見えません。
この記事の記入例では、エンジニア10人の会社が5月に3人を採用し、7月に賞与を払います。月末の残高はどの月も241万円以上あるのに、25日の残高は7月から10月までの4か月、足りなくなりました。最も深いのは8月25日で、211万円足りません。
月末の残高は足りてるのに、なんで苦しいの?
底は25日にあるからだよ。記入例の8月は、月末に293万円あっても25日は211万円足りない。
- 資金繰り表は、10日(源泉所得税・住民税の納付)、25日(給料)、月末(社会保険料・入金)の3つの日付に分けて書きます
- 人を1人増やすと、待機1か月・翌々月末払いの案件なら、最初の入金までに約169万円が先に出ていきます(記入例の前提で計算)
- 給料日を「当月25日」にするか「翌月25日」にするかで、給料から入金までの日数は36日と6日ほど違います。ただし今いる社員の給料日を後ろにずらすのは、就業規則の変更と社員の同意が必要な大きな変更です
- 足りない月が4か月続くなら、1回だけ請求書を売っても翌月にまた足りなくなります。続く月数に合わせて、融資と組み合わせて埋めます
このあと、なぜ給料が入金より先に出るのかをカレンダーで確かめ、資金繰り表の作り方、記入例、給料日の組み方、増員の前の計算、足りない月の埋め方、使わない方がよい場面、よくある失敗の順に書きます。IT・SESの会社が使えるファクタリング会社の一覧はIT・SESのファクタリングに、受託開発の契約の形ごとの請求の時期はシステム開発のファクタリングにまとめています。
給料が入金より先に出る仕組み:1か月のお金のカレンダー
給料って、いつの分の入金で払ってるの?
25日に払うのはその月の働き分ですが、月末に入るのは前の月の分です。当月25日払い・翌月末入金なら、給料を約36日立て替えています。翌々月末払いなら約66日です。
SESの会社の1か月を、お金が動く日で並べると次のようになります。ここでは、給料は「末締め当月25日払い」、取引先からの代金は「月末締め翌月末払い」とします。SESで多い組み合わせです。
じゃあ、1か月でいちばん苦しいのは何日?
給料を払う25日から、取引先のお金が入る月末までの間。だから資金繰り表は、月末だけでなく25日の残高も見るんだ。
| 日付 | 出ていくお金・入るお金 | どの月の分か |
|---|---|---|
| 10日 | 源泉所得税と住民税の納付(給料から預かった分) | 前月に払った給料の分 |
| 25日 | 給料の手取りを振り込む | その月の働き分 |
| 月末 | 社会保険料の納付(会社と本人の分を合わせて) | 前月の分 |
| 月末 | 取引先から代金が入る | 前月の働き分 |
給料から預かった源泉所得税は、原則として払った月の翌月10日までに納めます※1。住民税の特別徴収分も、徴収した月の翌月10日までに市区町村に納めます※2。社会保険料は、その月の分を翌月末日までに納めます※3。
表を見ると、4月の働き分の給料は4月25日に出ていきますが、同じ4月の働き分の代金が入るのは5月31日です。給料日から入金日まで、およそ36日、会社が給料を立て替えていることになります。取引先が翌々月末払いなら、立て替える期間は約66日に延びます。
月末の残高だけを見ると、25日の谷が見えない
月の中で残高がいちばん低くなるのは、給料を払ったあと、代金が入る前の25日から月末までの数日です。月ごとの資金繰り表は月末の残高で書くことが多いため、月末に代金が入ると、その直前の谷が消えて見えます。毎月の利益が出ていても、谷の底で口座が足りなければ、給料は払えません。
谷の深さは「月初の残高 −(10日の納付+25日の手取り)」で出せます。25日の前日の口座に、少なくとも10日の納付と25日の手取りの合計があるか。これがSESの資金繰りでまず確かめることです。
土日と祝日で、日付が数日ずれる
2026年は、25日が土日に当たる月が4回ありました(1月・4月・7月・10月)。給料日が休日のときに前の営業日に払う決まりの会社なら、給料はその分早く出ていきます。反対に、月末が土日の月(2026年は1月・2月・5月・10月)は、取引先の契約によっては入金が翌営業日にずれます。
たとえば2026年10月は、25日が日曜日、31日が土曜日でした。前営業日払いの給料は10月23日(金)、翌営業日払いの代金は11月2日(月)で、給料から入金まで10日空きます。毎年の休日の並びは、年の初めに資金繰り表に書き込んでおきます。
この章の根拠(3件)
- 国税庁 No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例
- 地方税法321条の5
- 日本年金機構「厚生年金保険料等の納付」
SES・受託開発の資金繰り表の作り方:6つの手順
資金繰り表は今のままじゃだめなの?
1か月を10日・25日・月末の3列に分け、エンジニアを1人1行にして、取引先の支払条件どおりの月に入金を置きます。待機・賞与・労働保険の月も入れ、25日の残高に印をつけます。
資金繰り表の一般的な作り方(項目の分け方・テンプレート)は資金繰り表の作り方で説明しています。ここでは、SES・受託開発の会社が足すとよい行と、書き方の決まりだけを並べます。
- 最初に日付の列を3つに分ける1か月を「10日」「25日」「月末」の3列にする
- 人ごとエンジニアを1人1行にする行き先の案件・単価・取引先の支払条件を横に書く
- 案件ごと入金は支払条件どおりの月に置く翌月末と翌々月末を混ぜない
- 待機案件が切れる月を書き込む売上は0、給料はそのまま
- 年に数回賞与と労働保険の月を入れる賞与の社会保険料は翌月末に出る
- 毎月25日の残高に印をつける0に近い月が、手を打つ月
手順1〜3:人と案件を行にする
SESの売上は「人×単価×月」でほぼ決まります。売上をまとめて1行にせず、エンジニアごとに行を作り、行き先の取引先と支払条件を並べて書きます。同じ会社の中に、翌月末払いの取引先と翌々月末払いの取引先が混ざっていることが多いからです。
入金の欄には、その人の働き分の代金が入る月を、支払条件どおりに置きます。翌々月末払いの取引先に移った人は、移った月から2か月間、入金の行が空きます。支払いサイト(締め日から支払日までの日数)の数え方は支払いサイトとはで説明しています。
精算幅のある契約は、下の側で書く
SESの契約には、月の稼働時間に幅(たとえば140〜180時間)を決め、幅を超えたら足し、足りなければ引く「精算」の取り決めがよくあります。請求額は、月末に勤務表が確定するまで決まりません。資金繰り表には単価そのものか、時間が足りなかったときの引かれた額の方を書いておくと、入金が予定より少なくても崩れません。
受託開発は、検収の月に入金を置く
受託開発(請負)の案件は、開発の間は毎月の給料だけが出ていき、代金は検収のあとにまとめて入ります。案件ごとに1行を作り、検収予定の月と、そこから支払条件どおりの入金月に、代金を置きます。検収が1か月延びれば入金も1か月延びるので、延びた場合の行も並べて書いておくと、谷の深さの違いがすぐ分かります。
手順4〜6:待機・賞与・年1回の支払いを入れる
案件と案件の間の待機の月は、売上が0でも給料と社会保険料は出ていきます。採用した人がすぐに案件に入れない月も同じです。待機の見込みは、営業の担当者に月ごとの人数を聞いて書き込みます。
年に数回の大きな支払いも忘れずに入れます。賞与の月は手取りが増え、翌月10日に源泉所得税、翌月末に賞与の社会保険料が出ていきます。労働保険(労災保険と雇用保険)は、毎年6月1日から7月10日までに前年度の確定分と今年度の概算分を申告して納めます。概算保険料が40万円以上なら、7月10日・10月31日・1月31日の3回に分けられます※1。
この章の根拠(1件)
- 厚生労働省「労働保険料の申告・納付」
記入例:エンジニア10人の会社が3人採用し、賞与を払う7か月
3人採用して、賞与も出したら、どうなる?
記入例では、7月から10月まで25日の残高がマイナスになり、最も深い8月は211万円足りません。3人の代金が初めて入るのは8月末で、それまで給料が出続けるからです。
ここからは、数字を入れた資金繰り表で確かめます。数字はすべて説明のための仮定で、実際の会社の数字ではありません。前提は次のとおりです。
- エンジニア10人。単価は1人月60万円、取引先はどこも月末締め翌月末払い
- 給料は末締め当月25日払い。1人あたり総支給40万円=手取り31万円+源泉所得税・住民税3万円(翌月10日に納付)+本人の社会保険料6万円
- 会社が負担する社会保険料は1人6万円(仮定)。本人分と合わせた12万円を翌月末に納める
- 5月1日に3人を採用。5月は待機(売上なし)、6月から翌々月末払いの取引先に入る(6月分は8月末に入金)
- 7月25日に、もとの10人に賞与1人20万円(手取り16万円・源泉所得税1万円・社会保険料は会社と本人で6万円)
- 家賃・ツールなどの経費は毎月末に60万円。4月1日の残高は450万円
この前提で、1か月を「25日まで」と「月末」に分けて書いたのが次の表です(単位は万円)。
| 月 | 25日までに出る(10日の納付+25日の手取り) | 25日の残高 | 月末に入る | 月末に出る(社会保険料+経費) | 月末の残高 |
|---|---|---|---|---|---|
| 4月 | 340 | 110 | 600 | 180 | 530 |
| 5月 | 433 | 97 | 600 | 180 | 517 |
| 6月 | 442 | 75 | 600 | 216 | 459 |
| 7月 | 602 | −143 | 600 | 216 | 241 |
| 8月 | 452 | −211 | 780 | 276 | 293 |
| 9月 | 442 | −149 | 780 | 216 | 415 |
| 10月 | 442 | −27 | 780 | 216 | 537 |
月末の残高だけを見ると、どの月も241万円以上あり、10月には537万円まで増えています。ところが25日の残高は、7月から10月まで4か月続けてマイナスです。11月25日に95万円に戻るまで、毎月25日に給料が払えない計算になります。
何が谷を深くしたのか
谷を深くしたのは3つの重なりです。1つめは、5月に採用した3人の給料が5月から出ているのに、その3人の代金が初めて入るのが8月末であること。2つめは、7月25日の賞与160万円(手取り)が、7月末の入金より前に出ていくこと。3つめは、8月に賞与の源泉所得税と社会保険料が上乗せされることです。
とくに効いているのは1つめです。3人分の代金180万円は8月末から入り始めますが、それまでに3人の給料と社会保険料が出続けています。人を増やすと利益は増えますが、お金は先に減ります。この「先に減る額」は、次の章のように1人あたりで計算できます。
手を打ったら、谷はどう変わるか
同じ前提のまま、打てる手を1つずつ入れて、25日の残高のいちばん低い値を比べました。
| 打つ手 | 25日の残高のいちばん低い値 | 25日に足りない月 |
|---|---|---|
| 何もしない | −211万円(8月) | 7〜10月の4か月 |
| 賞与を7月末の入金のあとに払う | −211万円(8月) | 8〜10月の3か月 |
| 3人の行き先を翌月末払いの取引先にする | −143万円(7月) | 7・8月の2か月 |
| 上の2つを両方 | −31万円(8月) | 8月だけ |
| 7月の初めに250万円を借りる | 39万円(8月) | なし |
賞与の日をずらすだけでは、7月の谷が消えても8月以降は変わりません。採用した3人の行き先の支払条件と賞与の日を両方整えると、足りない月は8月だけ、額も31万円まで小さくなります。それでも足りない分は、融資のように数か月使えるお金で埋めるのが向いています。埋め方は足りない月の埋め方の章で比べます。
給料日の組み方:当月払い・翌月払いと、賞与の支給日
給料日を翌月払いに変えれば楽になる?
立て替える日数は36日から6日に縮みます。ただ、今いる社員の給料日を後ろにずらすのは、就業規則の変更と社員の同意が要る大きな変更です。社会保険労務士に相談してから進めます。
給料日は、資金繰りの谷の深さを決める大きな要素です。ただし、社員の生活に直接かかわる決まりなので、お金の都合だけで動かせるものではありません。決める前に、仕組みと制約を両方知っておきます。
翌月払いにすれば、ずっと楽になるの?
立て替える日数は36日から6日に縮む。でも今いる社員の給料日を変えるのは、同意が要る大きな変更だよ。
当月25日払いと翌月25日払いで、立て替える日数が変わる
「末締め当月25日払い」は、その月の働き分をその月の25日に払う形です。月末までの数日分は見込みで払います。「末締め翌月25日払い」は、締めた月の翌月25日に払う形で、残業代なども確定してから払えます。
| 給料の払い方 | 4月の働き分の給料日 | 代金の入金(翌月末払い) | 給料から入金までの日数 |
|---|---|---|---|
| 末締め当月25日払い | 4月25日 | 5月31日 | 36日 |
| 末締め翌月25日払い | 5月25日 | 5月31日 | 6日 |
| 末締め当月25日払い(翌々月末払いの取引先) | 4月25日 | 6月30日 | 66日 |
翌月25日払いにすると、給料から入金までの日数は6日まで縮みます。ただし、6日でも給料の方が先に出ることは変わりません。25日の谷が浅くなるだけで、消えるわけではありません。
今いる社員の給料日を後ろにずらすのは、大きな変更
給料は、毎月1回以上、決まった日に払わなければなりません※1。給料の締め日と支払日は就業規則に書く事項で、社員が常時10人以上の職場では、変えたときも届け出が必要です※2。変えるときは、社員の過半数の代表などの意見を聴きます※3。
当月25日払いから翌月25日払いに移ると、社員にとっては1か月分の給料が後ろにずれます。社員の同意を得ずに就業規則の変更で不利益に変えることは、変更が合理的な場合を除いてできません※4。移る月に給料が1回も出ない月を作らないよう、移行の月の払い方も決める必要があります。今いる社員の給料日を変えるなら、社会保険労務士に相談し、社員に事情を説明して同意を得てから進めます。
現実的なのは、会社を作るとき、または就業規則を初めて作るときに、入金の日との関係を考えて給料日を決めておくことです。すでに当月25日払いで回っている会社は、給料日には手をつけず、ほかの方法で谷を浅くする方が無理がありません。
賞与の支給日は、入金日の後に置けるか確かめる
賞与は毎月の給料と違い、支給の時期を賞与の規程でどう決めているかが会社ごとに違います。記入例のように、7月25日の賞与が7月末の入金の前に出ていくと、その月の谷が一気に深くなります。規程の範囲で、支給日を入金日の後に置けないかを確かめてください。規程を変える場合は、給料日と同じように社員への説明が要ります。
給料日の前日に見る3つの数字
給料日の組み方にかかわらず、毎月、給料日の3営業日ほど前に次の3つを確かめる習慣をつけると、谷に気づくのが早くなります。
- 口座の残高
- 給料日までに出ていく額(10日の納付と、給料の手取りの合計)
- 給料日のあと、最初に入る代金の日付と額
1が2を下回るなら、その月は手を打つ月です。3の日付が給料日から1週間以上あとなら、谷は思ったより長く続きます。
この章の根拠(4件)
- 労働基準法24条2項
- 労働基準法89条
- 労働基準法90条
- 労働契約法9条・10条
人を増やす前の計算:1人あたり最初の入金までに出ていくお金
単価60万円の人を雇えば、すぐ儲かるよね?
利益は増えますが、お金は先に減ります。待機1か月・翌々月末払いなら、最初の入金までに約169万円が先に出ていきます。入社月と案件の開始月を合わせると、約46万円減らせます。
SESの会社では、売上が減ったときだけでなく、人を増やしたときにもお金が足りなくなります。採用した人の給料が、その人の働き分の代金が入る前から出ていくからです。その額は、入社の前に1人あたりで計算できます。
採用するなら、いつまでにお金を用意すればいい?
入社した月の25日から給料が出ていくよ。最初の入金は翌々月末のこともあるから、採用を決めた時点で資金繰り表に足しておこう。
記入例と同じ前提(手取り31万円・源泉所得税と住民税3万円・社会保険料は会社と本人で12万円、当月25日払い)で、5月1日に1人採用したとします。最初の入金までに出ていく額は、待機の有無と取引先の支払条件で次のように変わります。
| 入社した月 | 翌月末払いの取引先 | 翌々月末払いの取引先 |
|---|---|---|
| すぐ案件に入る | 約77万円(6月末に最初の入金) | 約123万円(7月末に最初の入金) |
| 1か月待機してから入る | 約123万円(7月末に最初の入金) | 約169万円(8月末に最初の入金) |
1人の単価が60万円でも、最初の入金までに、待機1か月・翌々月末払いなら169万円ほどが先に出ていきます。記入例の3人なら、約507万円です。これは利益ではなく、手元のお金から立て替える額です。
増員の前に決めておく3つのこと
- 入社月と案件の開始月を合わせる:待機の1か月がなくなるだけで、1人あたり約46万円(1か月分の手取り・納付・社会保険料)が先に出なくなります。
- 行き先の取引先の支払条件を先に確かめる:同じ単価でも、翌々月末払いの取引先に入ると、翌月末払いより約46万円多く立て替えます。単価の高さだけで行き先を決めず、支払条件も並べて比べます。
- 何人まで増やせるかを、口座の残高から逆算する:今の25日の残高の最も低い値を、1人あたりの立替額で割ると、手元のお金だけで増やせる人数の目安になります。記入例の4月25日の残高は110万円なので、169万円かかる条件では、手元のお金だけでは1人分にも足りない計算です。
増員でいつ・いくら足りなくなるかが分かれば、融資の相談も早く始められます。銀行は、足りない理由と額と時期が説明できる相談を受けやすいからです。運転資金の借り方は運転資金の融資を受けるにはにまとめています。
足りない月の埋め方:谷が何か月続くかで選ぶ
足りない月は、請求書を売れば済むんじゃない?
谷が4か月続くなら、売ると翌月の入金が減り、また売ることになります。記入例では4か月で678万円を売り、手数料は約54万円でした。続く谷には融資、1回だけの谷なら売却も比べます。
資金繰り表で25日の谷が見つかったら、まず「何か月続くか」を数えます。1か月だけの谷と、4か月続く谷では、向いている埋め方が違うからです。
足りない月は、請求書を売ればいいんじゃない?
谷が4か月続くなら、売ると翌月の入金が減ってまた売ることになる。続く谷には融資の方が向いてるよ。
- 谷は2か月以上続く?はい → 融資(当座貸越・短期の借入れ)を先に相談するいいえ → 次へ
- 給料日まで2週間以上ある?はい → 取引先の支払条件・賞与の日・納付の時期を見直すいいえ → 次へ
- 足りないのは1回だけの理由(賞与・入金の遅れなど)?はい → その月だけ、入金予定の請求書を売ることも比べるいいえ → 毎月足りない状態。単価・人数・経費から見直す
谷が続くなら、1回売っても翌月にまた足りなくなる
記入例で、足りない月ごとに、その月末に入る予定の請求書をファクタリングで売って埋めたとします(手数料は8%と仮定)。すると、7月156万円、8月243万円、9月197万円、10月82万円と、4か月続けて売ることになり、売った額は合わせて678万円、手数料は約54万円になりました。
請求書を売ると、その分は月末に入らなくなります。次の月の初めの残高が減るので、翌月もまた売る必要が出ます。谷が続いている間は、この連鎖が止まりません。4か月続く谷には、4か月使える融資の方が向いています。同じ谷を、7月の初めに250万円を借りて埋めると、25日の残高は一度もマイナスになりませんでした。
融資・支払条件・納付の見直し
- 当座貸越や短期の借入れ:決まった枠の中で必要なときに引き出せる当座貸越は、毎月の谷が深い月だけ使う形に合っています。人を増やす計画を見せて、谷が深くなる前に相談します。
- 取引先の支払条件:翌々月末払いの取引先に、翌月末払いにできないかを相談します。交渉のしかたは支払いサイトとはの後半にあります。
- 源泉所得税の納期の特例:給料を払う人が常時10人未満なら、源泉所得税を半年分まとめて納める特例があります(1〜6月分は7月10日、7〜12月分は翌年1月20日)※1。毎月10日の納付がなくなる代わりに、7月と1月にまとめて出ていくので、その月を資金繰り表に書き込みます。使い方は資金繰り改善の方法で説明しています。
- 再委託先への支払い:協力会社やフリーランスのエンジニアに支払う日を、取引先からの入金のあとに置けているかを確かめます。ただし、支払いを延ばせる日数には法律の上限があるので、変える前にシステム開発のファクタリングにある支払期日の決まりを確かめてください。
1回だけの谷を請求書で埋めるとき:給料日に間に合う会社の数
賞与の月だけ、取引先の入金が遅れた月だけ、のように1回だけの谷なら、入金予定の請求書を売る方法も候補になります。給料日に間に合うかどうかを、ファクタリング図鑑のデータで数えました。一般の請求書を扱う168サービス(2026年11月5日時点、図鑑で注意喚起をしている会社を除く)のうち、必要書類と対象(法人・個人事業主)が分かる106社が母数です。
| 公式サイトに書いていること | 社数(106社のうち) |
|---|---|
| 最短入金の目安を書いている | 102社 |
| └ 最短で当日中(4時間以内) | 91社 |
| └ 最短で60分以内 | 30社 |
| 当日入金に間に合う申込みの締め時刻を書いている | 7社 |
| 土日も対応すると書いている | 10社 |
| 赤字の決算でも申し込めると書いている | 67社 |
最短で当日中と書く会社は91社ありますが、その日の何時までに申し込めば当日に入るかまで書いている会社は7社だけです。初めての申込みでは確認に時間がかかることもあるので、給料日の前日に申し込むのでは遅いと考えてください。給料日の3営業日前には申し込めるよう、資金繰り表で谷を早く見つけておくことが大切です。土日に対応すると書く会社も10社にとどまるので、給料日が月曜日の月は、とくに早めに動きます。
IT・SESの会社が申し込める会社はIT・SESのファクタリングで探せます。売る額と日数から手取りを出すときは手取りと実質年率の計算を使ってください。
この章の根拠(1件)
- 国税庁 No.2505
毎月の給料をファクタリングで払い続けない方がよい理由
毎月ちょっとずつ売るなら、問題ないでしょ?
1人あたりの粗利は14万円ほどなので、手数料10%なら6万円、粗利の4割以上が消えます。毎月の谷は構造の問題なので、融資の枠や支払条件で解くのが筋です。
25日の谷が毎月あるからといって、毎月請求書を売って給料を払う形にすると、利益が手数料で削られていきます。SESの1人あたりの利益は、売上に比べて大きくないからです。
記入例の前提では、1人あたりの売上60万円に対し、給料(総支給40万円)と会社の社会保険料(6万円)で46万円かかり、残る粗利は14万円です。この人の請求書を毎月売ると、手数料は次のようになります。
| 手数料の率 | 1人1か月の手数料 | 粗利14万円に占める割合 | 10人分を1年続けると |
|---|---|---|---|
| 5% | 3万円 | 約21% | 360万円 |
| 8% | 4万8,000円 | 約34% | 576万円 |
| 10% | 6万円 | 約43% | 720万円 |
手数料10%なら、粗利の4割以上が手数料に消えます。実質年率(手数料の額 ÷ 手取り額 ÷ 入金までの日数 × 365)で見ると、手数料5%・30日で約64%、手数料10%・30日で約135%です。毎月くり返すと、年間の負担はこの年率に近づきます。
毎月の谷は、給料日と入金日の構造から来るものです。構造の問題は、融資の枠、取引先の支払条件、手元に残すお金の厚さで解くのが筋です。すでに毎月使う状態になっているなら、ファクタリングから抜け出す方法で、利用を減らしていく順番を確かめてください。
社会保険料の納付が先に苦しくなったとき
給料を優先して払った結果、月末の社会保険料が払えなくなる会社もあります。社会保険料は、年金事務所に早めに相談すると、分けて納める猶予を受けられることがあります。滞納を請求書の売却で埋め続ける前に、社会保険料が払えないときの手順を確かめてください。図鑑のデータでも、税金や社会保険料の滞納中でも申し込めると書く会社は106社のうち47社にとどまり、滞納があると使える会社は半分以下に減ります。
どの方法が自社に合うかを条件から探すときは、資金調達診断も使えます。
SESの資金繰りでよくある失敗と注意点
ほかに気をつけることは?
精算で請求額が減ったのに予定を直さない、請求書を出すのが遅れて入金が1か月ずれる、案件の終わりを表に入れていない、の3つが多い失敗です。どれも日付つきの表で前もって気づけます。
最後に、SESや受託開発の会社でよく起きる失敗を並べます。どれも、資金繰り表を日付つきで書いていれば、前もって気づけるものです。
- 25日の残高を見ているか月末の残高だけの表では、給料日の谷が見えない
- 採用の日を案件と合わせずに決める待機1か月で、1人あたり約46万円が余分に先に出る
- 取引先ごとの支払条件を書いているか翌月末と翌々月末を1行にまとめない
- 賞与の月を入金の前に置いたまま記入例では7月25日の残高がマイナス143万円に
- 年1回の支払いを入れているか労働保険は6月1日〜7月10日、源泉の納期の特例なら7月と1月
- 続く谷を1回の売却で埋める翌月の入金が減り、毎月売る形から抜けにくくなる
精算で請求額が減ったのに、予定を直さない
稼働時間が精算幅の下限を割った月は、請求額が引かれます。月末の勤務表で額が分かったら、その日のうちに資金繰り表の入金予定を直します。予定と実績の差を毎月書き直すと、次の月の谷の深さも正しく読めます。
請求書を出すのが遅れて、入金が1か月ずれる
取引先によっては、請求書が届いた日で締める決まりのところがあります。勤務表の承認が遅れて、請求書を出すのが翌月にずれると、入金も1か月後ろにずれます。月末の勤務表は締め日の翌営業日に集め、請求書はその日のうちに出す、と社内で決めておきます。
案件の終わりを資金繰り表に入れていない
契約の更新がないと分かった時点で、その人の入金の行は、終わる月の翌月(翌々月末払いなら翌々月)で止まります。一方、給料は次の案件が始まるまで出続けます。更新の時期は営業の担当者に月ごとに確かめ、更新が決まっていない人は、資金繰り表では待機に入る前提で書いておくと安全です。
個人事業主のエンジニアに再委託している場合
再委託先への支払日を、取引先からの入金日より前に決めていると、給料と同じ形の立替えが起きます。支払条件は最初の契約で決まるので、再委託の契約を結ぶときに、取引先からの入金日との関係を必ず確かめてください。支払いの日数の上限など法律の決まりは、システム開発のファクタリングの「資金繰りで起きること」にまとめています。
SESの資金繰りは、給料日・納付日・入金日という毎月決まった日付の組み合わせでほぼ決まります。決まった日付で動く分、資金繰り表を日付つきで書けば、足りない日と額は数か月前から読めます。人を増やす前、賞与の前、取引先が変わる前に、25日の残高を書き直してから判断してください。
出典(8件)公的機関の資料・法令。2026.11.05に確認
- No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例(国税庁)www.nta.go.jp
- 厚生年金保険料等の納付(日本年金機構)www.nenkin.go.jp
- 厚生年金保険料額表(日本年金機構)www.nenkin.go.jp
- 労働保険料の申告・納付(厚生労働省)www.mhlw.go.jp
- 労働基準法(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 労働契約法(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 地方税法(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- ファクタリング図鑑(会社ごとの値と出典)facto-ring.com
FAQ
よくある質問
SESの会社が黒字なのにお金が足りなくなるのはなぜですか?
給料を25日に払い、その月の働き分の代金は翌月末に入るため、給料を約36日立て替えているからです。取引先が翌々月末払いなら約66日になります。人を増やした月や賞与の月は立て替える額が増え、月末の残高が足りていても、給料日の25日に口座が足りなくなることがあります。
SESの資金繰り表はどう作ればいいですか?
1か月を10日(源泉所得税と住民税の納付)、25日(給料)、月末(社会保険料と入金)の3つの日付に分け、エンジニアを1人1行にして、行き先の取引先の支払条件どおりの月に入金を置きます。待機の月、賞与、労働保険の申告の月も入れ、毎月25日の残高に印をつけて、0に近い月を手を打つ月にします。
エンジニアを1人採用すると、どれくらいお金が必要ですか?
この記事の前提(手取り31万円、当月25日払い)では、すぐ案件に入り翌月末払いなら最初の入金までに約77万円、1か月待機して翌々月末払いの取引先に入るなら約169万円が先に出ていきます。単価が高くても、入社月と案件の開始月を合わせ、行き先の支払条件を確かめることで立て替える額を減らせます。
給料日を当月払いから翌月払いに変えられますか?
給料の締め日と支払日は就業規則に書く事項で、変えるには社員の代表の意見を聴く手続きがあり、不利益な変更は社員の同意か合理的な理由が必要です。給料が1回も出ない月を作らない移行の段取りも要るので、社会保険労務士に相談してください。すでに回っている会社は、給料日以外の方法で谷を浅くする方が無理がありません。
給料が払えない月にファクタリングを使ってもいいですか?
賞与の月だけ、入金が遅れた月だけのように1回だけの谷なら、入金予定の請求書を売る方法も候補になります。ただし谷が何か月も続くときに使うと、翌月の入金が減って毎月売る形になります。記入例では4か月で678万円を売り、手数料は約54万円でした。続く谷には融資の方が向いています。
給料日に間に合わせるには、いつ申し込めばいいですか?
図鑑のデータでは、必要書類と対象が分かる106社のうち91社が最短で当日中の入金と書いていますが、当日に間に合う申込みの締め時刻まで書いているのは7社だけです。初めての申込みは確認に時間がかかることもあるので、給料日の3営業日前には申し込めるよう、資金繰り表で谷を早めに見つけてください。
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