会計更新 2026.10.17
請求書の支払期限の決め方と書き方|月末締め翌月末払いの意味と60日の上限
請求書の支払期限は法律で一律には決まっておらず、取引の始めに相手と合意して決め、請求書には「2026年11月30日(月)」のように日付で書きます。月末締め翌月末払いの意味、書き方の文例、取適法などの60日の上限を説明します。
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フファクタリング図鑑編集部(執筆)・公開 2026.10.17

取引先に請求書を出すとき、支払期限の欄に何と書けばよいか迷う方は多いはずです。「月末締め翌月末払い」と書くのか、日付で書くのか。そもそも期限は自分で決めてよいのか、法律の上限はあるのか。この記事では、請求書を出す側に向けて、支払期限の決め方、請求書への書き方と文例、締め条件ごとの日付、法律で決まっている上限、期限を短くする工夫までを順に説明します。
この記事を7枚で
1 / 7結論:支払期限は取引の始めに決め、請求書には「年月日」で書く
請求書の支払期限って、法律で決まっているんじゃないの?
一般の会社どうしでは、一律の決まりはなく合意で決めます。期限は取引の始めに決めておくもので、請求書には「2026年11月30日(月)」のように年月日と曜日で書きます。
請求書の支払期限は、一般の会社どうしの取引では法律で一律に決まっていません。取引する者どうしの合意で決めます。よく使われるのは「月末締め翌月末払い」で、締め日から支払日まで約30日です。
大事なのは、期限は請求書で決めるものではなく、取引の始めに決めておくものという点です。請求書に書く期限は、合意した条件を日付に直して確かめるためのものです。請求書だけで短い期限を書いても、相手は社内の支払日にしか払えないことがほとんどです。
請求書には「2026年11月30日(月)」のように年月日と曜日で書きます。「請求書到着後30日以内」「翌月末日まで」は、読む人によって数日から1か月ずれます。
法律で上限があるのは、一部の取引です。取適法(中小受託取引適正化法、2026年1月に下請法から変わった法律)とフリーランス法がその例です。対象になる取引では、発注者は受け取った日から60日以内に支払期日を決めます。建設工事の下請と、国との契約にも別の決まりがあります。
この記事では、次の順に説明します。
- 請求書の「期限」の3つの意味(支払期限・発行の時期・保存期間)
- 支払期限の決め方:取引の始めに決める4つのこと
- 請求書への書き方:位置・表記・文例
- 「月末締め翌月末払い」の意味と、締め条件ごとの請求書の日付
- 期限が土日・祝日のとき、書き忘れたとき
- 法律で決まっている上限(取適法・フリーランス法・建設業法・国との契約)
- 計算例:書き方ひとつで入金が1か月変わる
- 期限を短くする工夫と、待てないときの方法、よくある失敗
請求書の「期限」は3つある:支払期限・発行の時期・保存期間
「請求書の期限」って、支払期限のことだよね?
実は3つあります。いつまでに払ってもらうか、いつまでに請求書を出すか、いつまで取っておくかです。法人は請求書の控えなどを、申告書の提出期限の翌日から7年間保存します。
「請求書 期限」と調べる人が知りたいことは、大きく3つに分かれます。いつまでに払ってもらうか(支払期限)、いつまでに請求書を出すか(発行の時期)、いつまで請求書を取っておくか(保存期間)です。この記事の中心は1つめですが、残りの2つも短く押さえておきます。
支払期限・支払期日・支払条件の違い
似た言葉が多いので、先に意味をそろえます。
| 言葉 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| 支払条件 | 締め日と支払日の決め方。契約書や発注書に書く | 月末締め翌月末払い |
| 支払期限・支払期日 | その請求について、代金を払う最後の日。ほぼ同じ意味で使われる | 2026年11月30日 |
| 締め日 | 請求の対象をいったん区切る日 | 毎月の末日 |
| サイト | 締め日から支払日までの期間 | 約30日 |
支払条件は取引全体の決まりで、支払期限は1枚ごとの請求書に入る日付です。条件から期限を出すと考えるとわかりやすくなります。サイトの数え方や、自社の入金と支払いの日数の差については支払いサイトとは(計算方法と入金サイトとの違い)で説明しています。
請求書を出す時期
請求書をいつまでに出すかを、一般的に決めた法律はありません。ただし、インボイス制度の登録をしている事業者は、取引先の事業者から求められたとき、適格請求書を渡す義務があります。※1
実務では、締め日の日付で請求書を作り、締め日から数日以内に送ります。相手の会社が「毎月5日必着」のように受付の期限を決めていることが多く、これに遅れると支払いが翌月に回ります。この影響は後の計算例で確かめます。
請求書を取っておく期間
法人は、請求書の控えなど取引に関する書類を、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存します。欠損金が出た事業年度などは10年です。※2支払期限とは別の話ですが、入金が遅れて揉めたときも、控えと送った記録があれば話が早く進みます。
この章の根拠(2件)
- 消費税法57条の4第1項
- 国税庁 No.5930 帳簿書類等の保存期間
支払期限の決め方:取引の始めに決める4つのこと
期限を決めるとき、何を決めておけばいい?
締め日、支払日、数え始め(納品日か検収日か)、休日と振込手数料の扱いの4つです。請求書だけで期限を短くはできないので、見積書や契約書の段階で合意します。
支払期限は、取引を始める前に、相手と合意して決めます。見積書・契約書・発注書のどこかに書いておき、請求書はその条件どおりの日付を書く、という順番です。決めるのは次の4つです。
- 締め日:月末か、20日か、15日か。月に2回締める形もあります。
- 支払日:翌月末か、翌月10日か。締め日から何日後かで、入金までの長さが決まります。
- 数え始め:納品した日、検収(受け取った側が中身を確かめて合格とした日)の日、請求書が届いた日のどれを基準に締めるか。検収や請求書の到着を基準にすると、その分だけ遅くなります。
- 休日と振込手数料:支払日が銀行の休みに当たったら前の営業日か次の営業日か。振込手数料はどちらが持つか。
4つめは忘れられやすい項目ですが、後で数百円の差し引きや数日のずれで揉める原因になります。最初に決めておけば、毎回の請求書で迷いません。
取引の型ごとの決め方の目安
どの条件がよいかは、取引の型で変わります。次の表は法律の決まりではなく、実務でよく使われる形の目安です。
| 取引の型 | 決め方の目安 | 理由 |
|---|---|---|
| 毎月続く会社との取引 | 相手の締め日・支払日に合わせる(例:月末締め翌月末払い) | 相手は社内で決まった日にまとめて払うため、合わせないと翌月に回る |
| 1回きりの仕事 | 納品月の末締め翌月末払い、または請求書の日付から2〜4週間後の日付 | 相手の支払日に乗せやすく、期限が長くなりすぎない |
| 金額が大きい・期間が長い仕事 | 着手金・中間金・完了時に分け、それぞれに期限を付ける | 終わるまで1円も入らない期間をなくす |
| 初めての相手・個人のお客 | 納品から短い期限、または前払い | 支払いの実績がなく、遅れたときの回収が難しい |
毎月続く取引では、自社の都合で期限を決めても、相手の支払日の仕組みに乗らなければ意味がありません。最初の取引の前に「御社の締め日と支払日、請求書の受付の期限を教えてください」と聞くのが、いちばん早く入金される方法です。
初めての相手で金額が大きいときは、相手の支払い能力を確かめることも欠かせません。取引先の調べ方は与信管理のやり方(取引先の信用の確かめ方)にまとめています。
- 相手は取適法やフリーランス法の対象になる発注者か?はい → 受け取った日から60日以内に収める。数え方は取適法の記事で確かめるいいえ → 次へ
- 毎月続く取引か?はい → 相手の締め日・支払日・請求書の受付期限を聞いて合わせるいいえ(1回きり) → 次へ
- 金額が大きい、または仕事が2か月以上かかるか?はい → 着手金・中間金に分け、それぞれに期限を付けるいいえ → 次へ
- 初めての相手、または個人のお客か?はい → 納品から短い期限にするか、前払いにするいいえ → 納品月の末締め・翌月末払いなど、相手が払いやすい形で決める
請求書だけで期限を短くできるか
合意した条件より短い期限を請求書に書いても、相手がそれに従う義務は生まれません。契約で決めた期限が優先されます。急いで入金してほしい事情があるなら、請求書を送る前に電話やメールで相談し、了解を得てから書きます。
反対に、何も決めずに取引を始めた場合は、請求書に書いた日付が実際の期限として扱われやすくなります。期限を決めていない代金は、請求を受けた時から遅れの責任が生じるのが民法の決まりです。※1とはいえ、相手には社内の支払日があるので、請求書には相手が払える現実的な日付を書きます。
この章の根拠(1件)
- 民法412条3項
請求書への支払期限の書き方:位置・表記・文例
請求書には、期限をどう書けばいいの?
請求金額のすぐ近く、振込先と同じ枠に、年月日と曜日で書きます。「到着後30日以内」「翌月末日まで」は読み方でずれます。「速やかに」は期限がないのと同じです。
請求書の書き方に決まった形はありません。ただ、支払期限は入金に直接かかわる項目なので、見落とされず、読み違えられない書き方をします。
書く位置
請求金額のすぐ近く、振込先の口座と同じ枠に置きます。経理の担当者は、金額・期限・振込先を続けて読み、支払いの予定に入れるからです。下の明細の欄や備考の欄に小さく書くと、見落とされます。
表記:日付で書く
期限は年月日と曜日で書きます。曜日を添えると、休日に当たっていないかを双方がひと目で確かめられます。次の表は、よく見かける書き方を比べたものです。
| 書き方 | よい点・困る点 |
|---|---|
| お支払期限:2026年11月30日(月) | 誰が読んでも同じ日になる。遅れたかどうかがはっきりする |
| お支払期限:11月末日 | 年が抜けると年をまたぐ請求で迷う。曜日がないと休日に気づきにくい |
| 請求書発行日から30日以内 | 発行日が「作った日」か「送った日」かで数日ずれる |
| 請求書到着後30日以内 | 届いた日を送った側が知らない。郵送だと数日ずれる |
| 翌月末日まで | 何の「翌月」かがあいまい。届いた月の翌月と読まれると1か月ずれる |
| 速やかに・至急・ご確認後 | 期限がないのと同じ。遅れたと言えない |
「到着後○日以内」の形で数えるときは、民法の決まりで、届いた日を1日目に入れずに翌日から数えます。※1送る側と受け取る側で数え方が違うと、それだけで1日ずれます。日付で書けば、この問題は起きません。
支払期限と一緒に書くこと
- 振込先:銀行名・支店名・口座の種類・口座番号・口座名義(カタカナ)。名義が会社名と違うときは、そのことを添えます。
- 振込手数料の負担:「振込手数料は貴社にてご負担ください」など。特に決めていなければ、払う側が持つのが民法の原則です。※2取適法の対象の取引では、合意があっても、発注者が振込手数料を代金から差し引くことは違反とされています。※3
- 請求書番号:入金と請求書を突き合わせるために付けます。振込名義の後ろに番号を入れてもらうよう頼む会社もあります。
- 期限を過ぎたときの扱い(書く場合):遅延損害金(遅れた分の損害として払ってもらうお金)の率を書くなら、契約で決めた率にそろえます。決めていなければ、法定利率の年3%です。※4
なお、インボイス制度の適格請求書に書く項目は、登録番号、取引の年月日、内容、税率ごとの金額と消費税額などで、支払期限は入っていません。※5書かなくても適格請求書にはなりますが、入金の遅れを防ぐには書いておくべき項目です。
文例:請求書の支払期限の欄
ご請求金額 1,100,000円(税込)
お支払期限 2026年11月30日(月)
お振込先 ○○銀行 ○○支店 普通 1234567 カ)○○
※振込手数料は貴社にてご負担をお願いいたします。
※お支払期限が金融機関の休業日に当たる場合は、前営業日までにお願いいたします。
文例:請求書を送るメール
件名:10月分ご請求書送付のご案内(請求書番号 2026-1031)
○○株式会社 経理ご担当者様
いつもお世話になっております。10月分(10月1日〜31日納品分)のご請求書をお送りします。ご請求金額は1,100,000円、お支払期限は2026年11月30日(月)です。添付のPDFをご確認のうえ、期日までにお振込みくださいますようお願いいたします。内容に不明な点がございましたら、お知らせください。
メールの本文にも金額と期限を書いておくと、添付を開かなくても支払いの予定に入れてもらえます。対象の期間を「10月1日〜31日納品分」のように書くのも、相手の締めとの食い違いを防ぐのに役立ちます。
- 年月日と曜日で書いた「2026年11月30日(月)」の形
- 合意した条件と同じ日契約書・発注書の締め日と支払日から数え直す
- 請求金額のすぐ近くに置いた振込先と同じ枠にまとめる
- 休日に当たらないか見た土日・祝日・12月31日〜1月3日
- 「到着後○日以内」届いた日が人によって違い、数日ずれる
- 「速やかに」「至急」いつ遅れたのかを言えなくなる
この章の根拠(5件)
- 民法140条
- 民法485条
- 公正取引委員会 取適法 よくある質問 Q99
- 民法404条2項・419条1項
- 消費税法57条の4第1項
「月末締め翌月末払い」の意味と、締め条件ごとの請求書の日付
「月末締め翌月末払い」って、つまりいつ払われるの?
毎月1日から末日の取引をまとめ、翌月の末日に払う条件です。10月分なら請求書の日付は10月31日、支払期限は11月30日と書きます。締め日から支払日までは約30日です。
「月末締め翌月末払い」は、毎月1日から末日までの取引をまとめて、その翌月の末日に払う、という条件です。10月に納めた分は10月31日で締め、11月30日に払われます。締め日から支払日までは約30日です。
請求書を出す側は、条件を見たら「対象の期間」「請求書の日付」「書く支払期限」の3つに直します。2026年10月の取引を例に、よくある条件を表にしました。
| 支払条件 | 請求の対象の期間 | 請求書の日付(締め日) | 書く支払期限 |
|---|---|---|---|
| 月末締め翌月末払い | 10月1日〜10月31日 | 10月31日 | 2026年11月30日(月) |
| 月末締め翌月10日払い | 10月1日〜10月31日 | 10月31日 | 2026年11月10日(火) |
| 20日締め翌月末払い | 9月21日〜10月20日 | 10月20日 | 2026年11月30日(月) |
| 15日締め当月末払い | 9月16日〜10月15日 | 10月15日 | 2026年10月31日(土)→休日 |
| 月末締め翌々月末払い | 10月1日〜10月31日 | 10月31日 | 2026年12月31日(木)→銀行の休日 |
同じ「月末払い」でも、月によっては支払日が土曜や銀行の休日に当たります。表の下2つのように、休日に当たる月は、決めておいた扱い(前の営業日か次の営業日か)に直して書きます。扱いは次の章で説明します。
締め日と請求書の日付をそろえる
締めて払う取引では、請求書の日付は締め日にそろえるのがふつうです。締め日より前の日付で出すと、締め日までの納品が漏れます。締め日より後の日付にすると、相手が「11月分の請求」と受け取り、翌月の締めに回すことがあります。
請求書を締め日に作っても、送るのは翌月の初めになることがあります。その場合も日付は締め日のままにし、メールや送り状で「10月分」と対象の期間をはっきり書きます。
都度請求の場合
納品のたびに請求書を出す「都度請求」でも、相手が月末締めなら、支払いは締めた後になります。都度請求で早く払ってもらえるのは、相手が「請求書が届いたら○日以内に払う」形の会社の場合です。相手の仕組みを聞いてから、どちらにするかを決めます。
条件ごとに、納品した日から入金までが最長で何日かかるか、業界ごとの平均は何日かは、前に紹介した支払いサイトの記事で表にしています。
支払期限が土日・祝日のとき、期限を書き忘れたとき
期限が土日に当たったり、書き忘れたりしたら?
12月31日が期限なら、前の営業日と次の営業日で5日違います。どちらにするか契約で決めておきます。書き忘れても、契約や発注書で条件を決めていれば、その条件どおりの日が期限です。
支払期限まわりで実際に迷うのは、期限が休日に当たったときと、期限を書き忘れたり書き間違えたりしたときです。
銀行の休日に当たるとき
銀行の休日は、土曜日・日曜日・祝日と、12月31日から1月3日までです。※12026年の例では、10月31日は土曜日、12月31日は木曜日ですが銀行の休日です。
| 支払期限 | 前の営業日にする場合 | 次の営業日にする場合 |
|---|---|---|
| 2026年10月31日(土) | 10月30日(金) | 11月2日(月) |
| 2026年12月31日(木) | 12月30日(水) | 2027年1月4日(月) |
12月31日の例では、前に倒すか後ろに倒すかで5日違います。年末は支払いが重なる時期なので、この差は資金繰りに響きます。どちらにするかを契約で決め、請求書にも「休業日の場合は前営業日」のように書いておきます。
「〜日以内」のように期間で決めた期限なら、最後の日が休日で、その日に取引をしない慣習があるときは、翌日まで延びるのが民法の決まりです。※2一方、日付で決めた期限が休日に当たったときの扱いは、契約で決めるのが確実です。取適法の対象の取引では、休日を理由に後ろへずらせる日数にも限りがあり、その内容は次の章で紹介する取適法の記事で説明しています。
支払期限を書き忘れたとき
請求書に期限を書き忘れても、契約書や発注書で支払条件を決めていれば、その条件どおりの日が期限です。請求書の書き忘れで期限がなくなるわけではありません。
条件も決めておらず、請求書にも期限がない場合は、「期限の定めがない」代金として扱われます。このときは、相手が請求を受けた時から遅れの責任を負います。※3ただし、相手の社内では「期限がわからないから後回し」になりがちです。気づいたら、期限を書いた請求書を送り直すか、メールで「お支払期限は11月30日(月)でお願いします」と知らせます。
違う期限を書いてしまったとき
- 合意より早い日を書いた:相手は合意どおりの日に払うのがふつうです。訂正の連絡をして、正しい日を伝えます。
- 合意より遅い日を書いた:相手がその日まで待つことがあります。入金が遅れる前に、訂正した請求書を送ります。
- 年を間違えた:1月の請求書に前の年を書くことがよくあります。取引先の経理で止まるので、気づいたらすぐ差し替えます。
訂正した請求書は、前のものと同じ請求書番号に「訂正」と書くか、新しい番号にして前のものを取り消す旨を書きます。2枚とも払われる、どちらも払われない、という行き違いを防ぐためです。
この章の根拠(3件)
- 銀行法15条1項・銀行法施行令5条1項
- 民法142条
- 民法412条3項
法律で決まっている上限:取適法・フリーランス法・建設業法・国との契約
支払いを何か月も先にされても、文句は言えないの?
一般の取引に上限はありませんが、取適法とフリーランス法の対象なら、受け取った日から60日以内に支払期日を決めます。建設工事の下請と国との契約にも別の決まりがあります。
一般の会社どうしの取引では、支払期限の長さに法律の上限はありません。ただ、次の4つの取引では、法律が期限の上限や、決めなかったときの期限を定めています。
| 法律 | 当てはまる取引 | 支払期限の決まり | 決めていなかったとき |
|---|---|---|---|
| 取適法(中小受託取引適正化法) | 規模の大きい発注者から、中小の事業者への製造・修理・情報成果物・役務・運送などの委託 | 受け取った日から60日以内で、できる限り短く | 受け取った日が支払期日。60日を超えて決めたときは、60日を経過した日の前日 |
| フリーランス法 | 会社などから、従業員を使わないフリーランスへの業務委託 | 受け取った日から60日以内で、できる限り短く(再委託で条件を示したときは、元の委託の支払期日から30日以内) | 受け取った日が支払期日。60日を超えて決めたときは、60日を経過する日 |
| 建設業法 | 建設工事の下請 | 元請が注文者から支払いを受けた日から1か月以内。特定建設業者が注文者のとき(下請が資本金4,000万円未満の会社など)は、引渡しの申出の日から50日以内 | 引渡しの申出の日(特定建設業者が注文者のとき) |
| 政府契約の支払遅延防止法 | 国との契約 | 検査が終わり、正しい支払請求を受けた日から、工事は40日以内、そのほかは30日以内 | 支払請求をした日から15日以内 |
表のうち、請求書を出す側がいちばん出会うのは取適法とフリーランス法の60日です。どちらも数え始めは「受け取った日」で、検収や請求書の到着を待たずに数えます。毎月締めの取引で、どの条件なら60日に収まるかの見分け方は取適法とは(受注側が知る60日の支払期日)で説明しています。2つの法律の60日ルールの比べ方は、請求書の買取(現金化)の記事の中でまとめています。
自社が受ける側で、相手が60日を超える支払条件を示してきたときは、請求書の期限を自分で短く書くのではなく、条件そのものを見直してもらうよう求めます。請求書の期限だけ変えても、相手の支払日の仕組みは変わらないからです。
期限を過ぎたときのお金
支払期限を過ぎると、相手は期限の翌日から遅れの責任を負います。※2遅延損害金は、契約で率を決めていなければ法定利率の年3%で、2026年4月1日から2029年3月31日までも年3%です。※3取適法の対象の取引では、これとは別の率の遅延利息が決まっています。期限を過ぎた後の催促の手順は、回収の段階の話なので、この記事では扱いません。
この章の根拠(3件)
- 取適法3条・フリーランス法4条・建設業法24条の3・24条の6・建設業法施行令7条の2・政府契約の支払遅延防止等に関する法律6条・10条
- 民法412条1項
- 法務省「令和8年4月1日以降の法定利率について」
数字で確かめる:書き方ひとつで入金が1か月変わる(計算例)
書き方の違いで、入金はどれくらい変わるの?
日付で書けば締め日から30日の入金が、「到着後30日以内」では34日、「翌月末日まで」では61日まで延びることがあります。相手の受付に1日遅れるだけで、入金が次の月に回ることもあります。
支払期限の書き方や送る日が、入金の日をどれだけ動かすかを計算します。例は、10月分の請求額100万円、請求書の日付は締め日の10月31日(土)、郵送したのは11月2日(月)、届いたのは11月4日(水)とします。
例1:書き方ごとの「いちばん遅い支払日」
同じ請求書でも、期限の書き方で、相手が「まだ遅れていない」と考える最後の日が変わります。日数は締め日の10月31日から数えました。
| 期限の書き方 | 相手が払う最も遅い日 | 締め日から |
|---|---|---|
| お支払期限:2026年11月30日(月) | 11月30日(月) | 30日 |
| 請求書発行日から30日以内(送った11月2日を発行日と読まれた) | 12月2日(水) | 32日 |
| 請求書到着後30日以内(11月4日に届いた) | 12月4日(金) | 34日 |
| 翌月末日まで(届いた11月の翌月と読まれた) | 12月31日(木) | 61日 |
日付で書けば30日目に入金されるところが、「到着後30日以内」では34日目、「翌月末日まで」では61日目まで延びることがあります。あいまいな書き方は、相手に遅く払う理由を渡してしまいます。
日付で書いた期限読み方で数日ずれる書き方1か月ずれることがある書き方
例2:相手の受付に1日遅れたとき
相手の会社が「毎月5日必着の請求書を、その月の末日に払う」と決めているとします。11月5日までに届けば、入金は11月30日(月)です。
11月6日に届くと、12月の支払いに回ります。12月31日(木)は銀行の休日なので、前の営業日に払う会社なら12月30日(水)で30日遅れ、次の営業日に払う会社なら2027年1月4日(月)で35日遅れです。請求書が1日遅れただけで、100万円の入金が約1か月遅れます。
この1か月をファクタリング(売掛金を買い取ってもらい、早く現金にする方法)で埋めると、仮に手数料5%なら、手数料5万円・手取り95万円です。手数料5%・30日の実質年率は約64.0%になります(手数料5万円÷手取り95万円÷30日×365)。請求書を締め日に出すだけで避けられる費用としては、大きな額です。
例3:月2回締めと着手金で、入金を前に寄せる
毎月200万円の取引で、月の前半と後半に100万円ずつ納めているとします。月末締め翌月末払いを、15日締め翌月15日払いと月末締め翌月末払いの月2回締めに変えてもらうと、前半の100万円は15日早く入金されます。
3か月かかる300万円の制作の仕事なら、完了後の月末締め翌月末払いだけでは、始めてから約4か月は入金がありません。契約時に着手金30%を受け取る形にすると、90万円が先に入り、残りの210万円を完了後に請求します。その間に払う外注費や人件費を、自社のお金で立て替える額が減ります。
手数料や日数を変えて実質年率を確かめたいときは、手取りと実質年率のシミュレーターを使えます。
支払期限を短くする工夫と、期限まで待てないときの方法
入金を早めたいとき、まず何をすればいい?
自社でできることからです。請求書を締め日に出す、相手の受付の期限を最初に聞く、月2回締めや着手金にしてもらう。相手に条件を変えてもらうお願いは、その後にします。
入金を早めたいとき、まず手をつけるのは自社でできることです。相手の支払日を動かしてもらうお願いは、その後にします。
- 請求書を締め日に出す:例2のとおり、受付に1日遅れるだけで1か月遅れます。請求書を作る日を締め日に決め、PDFをメールで送れば郵送の数日もなくなります。
- 相手の受付の期限と支払日を最初に聞く:取引の始めに聞いておけば、自社の締め日を相手に合わせられます。受付の期限の前日を、自社の請求書の作成日にします。
- 月2回締めや都度請求にしてもらう:相手の支払日を変えずに済むので、受け入れてもらいやすい形です。例3のとおり、前半の分が半月早くなります。
- 着手金・中間金・前払いにする:期間の長い仕事や、初めての相手で使います。見積書の段階で「着手時30%、完了時70%」のように書いておきます。
- 支払いの方法を増やす:買い手が後払いを選べ、売り手は早く受け取れる「請求書払い」の決済サービスもあります。仕組みと費用は請求書払い(BtoB後払い)とはで説明しています。
- 早く払ってもらう代わりに少し値引く:早期支払いの割引です。割引の率を年率に直すと高くつくこともあるので、比べ方は支払いサイトの記事の交渉の章を見てください。
相手に支払条件を変えてもらうお願いは、契約の更新や新しい見積もりを出す時期に、変えたら自社に何が残るかを数字で示して行うと話が進みます。交渉の手順は支払いサイトの記事の「交渉のしかた」の章にまとめています。
短くすることは、相手の資金繰りを苦しくすることでもあります。相手にとって負担の少ない形(月2回締め、請求書の受付期限への対応)から提案するのが、関係を保ちながら入金を早める近道です。
期限まで待てないときの方法
期限はもう決まっていて、それまで待つと自社の支払いに間に合わない。そういうときは、期限を変えてもらうのではなく、資金の手当てを別に考えます。
- 期限前の売掛金を早く現金にする:請求書の売掛金をファクタリング会社に売る方法や、金融機関の売掛債権を担保にした融資があります。方法ごとの違いは売掛金を早く現金にする方法の比較にあります。
- 融資や当座貸越:入金の遅れが毎月続くなら、一時しのぎではなく、運転資金の融資の枠で用意する方が費用は小さくなります。
- 支払う側の期限を相談する:仕入先や外注先への支払い、税金や社会保険料の納付を待ってもらう方法もあります。対処の順番は資金繰りが苦しいときの対処の順番で説明しています。
早く現金にする方法を使わない方がよい場合
- 期限まで数日で、待てば間に合う:手数料を払ってまで早める理由が小さくなります。
- 毎月同じように足りない:例2の約64.0%のように、短い期間で手数料を払うと年率は高くなります。毎月続くなら融資や支払条件の見直しが先です。
- 期限を過ぎて払われていない請求書:回収の見込みが読みにくいため、売りにくく手数料も高くなりがちです。まず取引先に確認と催促をします。
- 契約で売掛金を売ることを禁じている:売ること自体はできても、取引先との関係で問題になることがあります。契約書の定めを先に確かめます。
どの方法が自社に合うかを順に確かめたいときは、資金調達診断で、入金までの日数や金額から候補を絞れます。
支払期限でよくある失敗と注意点
やってしまいがちな失敗って何?
相手の締め日と受付の期限を知らない、「到着後○日」と書く、休日や振込手数料の扱いを決めていない、などです。期限の翌営業日に入金を確かめ、なければすぐ連絡します。
支払期限の失敗は、どれも小さなことに見えますが、入金が1か月遅れる、数百円ずつ差し引かれる、といった形で積み重なります。
- 相手の締め日と受付の期限を知らない:自社の締めで請求書を出しても、相手の受付に間に合わず翌月に回ります。取引の始めに聞いておきます。
- 「到着後○日」「翌月末日」と書く:読み方で数日から1か月ずれます。年月日と曜日で書きます。
- 合意していない短い期限を書く:相手は契約どおりに払うので、入金は早まりません。急ぐ事情があるなら先に相談します。
- 休日の扱いを決めていない:12月31日のように前後で5日違う月があります。前の営業日か次の営業日かを契約に書きます。
- 振込手数料の負担を書かない:差し引かれて入金されると、請求額との差を毎回確かめる手間が増えます。負担する側を請求書にも書きます。
- 請求書の日付と対象の期間がずれる:締め日より後の日付にすると、翌月分として扱われることがあります。日付は締め日にそろえ、対象の期間を書きます。
- 長い仕事を完了後の一括請求にする:終わるまで入金がなく、その間の費用を立て替え続けます。着手金・中間金に分けます。
- 期限の翌日に入金を確かめない:期限を過ぎても何も言わないと、相手の中で支払いが後回しになります。期限の翌営業日に入金を確かめ、なければすぐ連絡します。
支払期限は、請求書の中で入金にいちばん効く1行です。取引の始めに条件を決め、請求書には日付で書き、締め日に送る。この3つを習慣にすれば、多くの入金の遅れは防げます。
出典(11件)公的機関の資料・法令。2026.10.17に確認
- 民法(第140条・第142条・第404条・第412条・第419条・第485条)(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 令和8年4月1日以降の法定利率について(法務省)www.moj.go.jp
- 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(取適法)(第3条)(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- よくある質問コーナー(取適法)Q99 振込手数料(公正取引委員会)www.jftc.go.jp
- 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス法)(第4条)(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 建設業法(第24条の3・第24条の4・第24条の6)(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 建設業法施行令(第7条の2)(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 政府契約の支払遅延防止等に関する法律(第6条・第10条)(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 銀行法施行令(第5条)(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- 消費税法(第57条の4)(e-Gov法令検索)laws.e-gov.go.jp
- No.5930 帳簿書類等の保存期間(国税庁)www.nta.go.jp
FAQ
よくある質問
請求書の支払期限は法律で決まっていますか?
一般の会社どうしの取引では、支払期限の長さを一律に決めた法律はなく、取引する者どうしの合意で決めます。ただし、取適法とフリーランス法の対象の取引では、発注者は受け取った日から60日以内に支払期日を決めます。建設工事の下請と国との契約にも、別の決まりがあります。
請求書の支払期限は「請求書到着後30日以内」と書いてもよいですか?
書くこと自体はできますが、おすすめしません。届いた日を送った側が知らず、郵送では数日ずれます。10月31日付の請求書が11月4日に届くと、期限は12月4日になり、日付で11月30日と書いた場合より4日遅くなります。「2026年11月30日(月)」のように年月日と曜日で書きます。
月末締め翌月末払いとはどういう意味ですか?
毎月1日から末日までの取引をまとめて、その翌月の末日に払う条件です。10月に納めた分は10月31日で締め、11月30日に払われます。締め日から支払日までは約30日です。請求書の日付は締め日の10月31日にし、支払期限の欄には「2026年11月30日(月)」と書きます。
請求書の支払期限が土日や祝日のときはどうなりますか?
前の営業日に払うか、次の営業日に払うかは契約で決めます。銀行の休日は土日・祝日と12月31日から1月3日までです。2026年12月31日が期限なら、前の営業日は12月30日、次の営業日は2027年1月4日で5日違います。請求書にも「休業日の場合は前営業日」のように書いておきます。
請求書に支払期限を書き忘れたらどうなりますか?
契約書や発注書で支払条件を決めていれば、その条件どおりの日が期限です。何も決めていない場合は「期限の定めがない」代金になり、相手は請求を受けた時から遅れの責任を負います。ただ、相手の社内で後回しにされやすいので、期限を書いた請求書を送り直すか、メールで日付を知らせます。
請求書の支払期限は60日を超えてもよいですか?
一般の会社どうしの取引なら、合意があれば60日を超えても法律の違反にはなりません。取適法やフリーランス法の対象の取引では、発注者は受け取った日から60日以内に支払期日を決める必要があり、超えて決めても60日の時点が期日とみなされます。受ける側は、請求書ではなく条件そのものの見直しを求めます。
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